題名 |
公開日 |
人数(男:女) |
時間 |
こんな話 |
作者 |
風のシルヴィア(4)~星の見える島~
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2014/07/10 |
4(2:2) |
25分 |
夜空を見上げなくても星はそこ等中にあるものなんだな。
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ニコ |
登場人物
(年齢) |
性別 |
その他 |
シルヴィア
(26)
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♀ |
記憶を取り戻す旅を続ける金髪碧眼の美女。
野蛮さと繊細さを併せ持つ大人な女性です。
皆を振り回す感じで。 |
ティエラ
(24)
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♀ |
海賊稼業の青い長髪の良い女。
姉御肌なんだけど弱い部分もある感じです。
一番難しいです。 |
ラウザ
(26)
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♂ |
海賊船長の『伊達男』
軽薄だけど考えてることは考えてる感じでお願いします。
序盤は舞台俳優の様に演技してください。 |
ヴェイン(64)
海賊A・B・C(不詳)
団長(29) |
♂ |
要するにモブ役です。
それでも出番は少ないので申し訳ないです。
七色の声を持つ貴方にお願いしたいです。 |
「風のシルヴィア(4)~星の見える島~」
かつての仲間との再開その2です。
夜の喧騒と静寂をイメージして作りました。
テーマは『再会と再開』です。
ヴェ:( 虫の息 )ヒュー…ヒュー…。
ちょいと…休むぜシルヴィア。
シル:おい、
大丈夫かヴェイン!?
ヴェ:ここいらでお別れだな。
シル:放って行けって言うのか?
ヴェ:長旅で疲れただけさ。
酒を飲んで一晩寝れば直ぐに良くなる。
……へへっ、
それよりやっと海賊島に着いたんじゃねえか、
お前はお前で楽しんできな。
シル:( 溜息 )そうかい。
あんたの旅路に幸がありますように。
大海賊ヴェイン船長。
ヴェ:お前もなシルヴィア。
裏切り者のラウザに逢ったら宜しく言っといてくれ。
シル:それはあんたの仕事だよ。
傍にいて欲しいとも言わない奴の願いを聞き届ける気はない。
ヴェ:へっ…へへっ…違いねえや…( 咳き込む )。
シル:おい本当に――( 手を振られて )。
……解ったよ分からず屋。
じゃあな。
( 間 )( 海賊島:常夜の宴会通 )
シル:海賊島…。
光り輝く魔石が街灯代わりの常夜の島…か。
海賊A:( 遠くから )よぉうパツキンの姉ちゃん!
どうだい俺と一発やらねえか!?
ガハハハ!!
シル:( 遠くから )ははっ!!
遠慮しておくよぉ!!
それと、もっと命を大事にした方が良いぞぉ!?
海賊A:命なんざ惜しかぁねえさあ!!
良い女に酒と肉!!
俺達ァそれだけで簡単に死ねるんでぇ!!
( 酔っ払い )ヒック!!
あんたを口説いた俺の人生に乾杯ぁぁぁい!!
シル:人間素直が一番だ!!
あんたの勇気に乾杯ぁぁい!!
( 酒を飲む )。
海賊A:( 酔っ払い )ガハハハハハ!!
おっ、よう赤髪の姉ちゃぁぁん!!
俺と一発やらねえかぁぁ!?
( フェードアウトしながら )実は女を口説くのはこれが初めてなんだ。
なにせあんたの煌めく髪がそこ等の魔石なんぞより遥かに上等なもんで―――。
シル:( 被せながら )…ふふっ、
気持ちのいい連中だな。
ラウ:ちょぉっと良いですか御嬢さん。
シル:( グラスから唇を離して指差す )んっ…んん?
ラウ:…ああ貴女、そうです貴女です。
金髪碧眼の美女。
シル:なんだい優男。
ラウ:貴女を口説き落とすには如何なる手管を用いれば良いのかと考えました。
シル:答えは出たのか?
ラウ:まずは一緒にお酒でも。
抱く抱かないは二の次、
一番大事なのは今をどうするか。
シル:ふふ…私はそう安くは無いぞ?
ラウ:( 咳払い )。
嗚呼、海賊島のどの女よりも気高く麗しい乙女よ!
私は貴女を誰よりも愛すると誓います!!
シル:解った解った。
それより人を探してるんだ。
構ってくれるかい?
ラウ:勿論ですとも綺麗な人。
この島の事なら私、
ラウザに何でもお尋ねください。
シル: ……おや。
ひょっとして海賊の『伊達男』か?
ラウ:ムフフン!!
その二つ名を知っているとは見所がありますね。
如何にも私が『伊達男』!!
海賊ラウザ・クルーガーです。
シル:( 呆れた溜息 )。
ラウ:おんやぁ?
ひょっとして海賊はお嫌い?
シル:そんなことは無いよ。
良い島に住む連中は皆良い奴らだ。
ラウ:この島は我々の誇りです。
誰にも侵させはしませんよ。
シル:こうして見れば只の良い男なんだがな、
これが親殺しを平然と行う海賊だとは信じられん。
ラウ:( 得意げに )いえいえ、それ程でも。
何せ私は『伊達男』ですからね!!
シル:( 申し訳なさそうに )…ええっと。
ところで私はマーソルド・ヴェインの知り合いなのだが。
ラウ:それはそれは御丁寧に。
……え?
シル:うん。
ラウ:やべっ!!
シル:こら逃げるな。
ラウ:ウゴォォォォ!?
なんて馬鹿力だこの女!!
畜生、俺を殺したってどうにもならねえぞ!?
シル:別にお前をどうこうしようって訳じゃない。
ラウ:だったら何だって言うんでぇ!?
シル:お前の船に乗ってる青い髪の女に逢わせてくれ。
ラウ:あん?
ティエラ・カプリスに用があるのか?
シル:良い名前だ。
きっと悩み抜いて命名されたのだろうな。
ラウ:本人に言ってやんな。
偏屈者だから気を悪くして俺に当たるんじゃねえぞ?
シル:案内してくれ。
ラウ:やれやれ…。
( 間 )( 海賊船ディザイア号 )
海賊B:( 酔っぱらった演技 )( 好きに歌って下さい )
海賊島は常夜の島だよ~♪
俺たちゃそれに錨を降ろし希望を灯した~♪
トンガリクボミに魔石を散りばめ酒と女を持ってきて~♪
武器と麻薬をばら撒きハイ完成~♪
ラウ:着いたぜ御嬢さん。
俺の船だ。
海賊B:おう船長!!
異常無いぜ!!
ラウ:お前も楽しんできな。
取って置きの真水が待ってるぜ。
海賊B:ヒック!!
陸だ――――――!!!
ラウ:行ってら。
シル:これが…?
ヴェインから聞いていたのよりずっと小さいな。
ラウ:ハンッ!
馬鹿でかい船なんぞ大飯喰らいの良い的だからな。
今時の海賊は小型スループで徒党を組んで襲いかかるのさ。
シル:敵に襲われたらどうする?
ラウ:俺は俺らしくトットト逃げます、っての。
……おおいティア!!
ティ:( 寝息 )スー…スー…。
ラウ:起きろ、ティア。
ティ:( 気だるげに )……んん?
何だいラウザ。
ラウ:お客さんだよ。
もし恨みでも買ってたら覚悟するんだな。
ティ:おや。
あんたは……。
ラウ:この女、
すっげぇ強いぞ?
ティ:解ってるよ。
それは誰よりも良く知ってる。
シル:ティエラ・カプリスか?
噂に違わぬ綺麗な髪だな。
海の様に深くてなめらかだ。
ティ:あんたもあい変わらず綺麗だよ。
シルヴィア隊長。
シル:ヴェインの言っていた通りだ。
私の事を知っているんだな?
ティ:確か記憶を失ってるんだっけ?
それにしても丸くなったもんだね。
シル:今の方が良いと良く言われる。
ティ:( 鼻で笑う )少なくとも友達には困らないだろうね。
シル:記憶を取り戻したいんだ。
ティ:知らない方が良いと思うけどね。
あたしは昔をあまり思い出したくないんだよ。
語るなんてもってのほかさ。
シル:ロミオ・ジュピトリアという少年を知っているか?
ティ:ああ…居たねえそんな子。
黒髪の可愛い男の子だった。
シル:敵に捕まった私をかばって死んだよ。
ティ:……まあそんな気はしてたよ。
長生き出来そうな子じゃなかったしね。
シル:ロミオが教えてくれたんだ。
私の名前と記憶があることの大切さを。
だから真実を教えてくれ。
ティ:( 溜息 )。
何であたしなんだい?
シル:ヴェインにお前の事を聞いたんだ。
だから一緒にこの島に来た。
ラウ:( 出来れば酒を吹き出す演技 )――なっ!?
え、ちょ――。
ティ:どういう事だいラウザ?
シル:( 不思議がる )?
ティ:あんたヴェインを殺さなかったのかい?
ラウ:いっ、いや!!
海賊の古くから伝わる伝統でなぁ?
仲間同士で処刑するのはご法度なんだよ。
だから仕方なぁ~く島流しに…ははっ…。
( 小声で )生理中の女も同船させないのは、
ティエラちゃんも知ってるだろうけど
ティ:それで復讐に来られちゃザマァねえだろうが!!
ラウ:『臆病風邪』に吹かれた病人が生き延びる方が可笑しいんだ!!
舵がぶっ壊れたガレー船にまとめて突っ込んで置き去りにしたんだからな!!
ティ: ……食い物と酒も?
ラウ:俺たちゃ海賊だぜ?
酒と肉が無きゃ死んじまうよ。
ティ:( 溜息 )やれやれ。
あんたは甘いんだよ。
だから足元をすくわれるんだ。
ラウ:幸運の女神がついていたのは俺だけじゃ無かったってだけさ。
ティ:シルヴィア!!
ヴェインの野郎は何処にいるんだい!?
シル:知ってどうするつもりだ?
ティ:殺すに決まってるじゃないか!
あいつは只でさえ海賊島に影響力を持ってるんだ!
何時再起するか判ったもんじゃない。
シル:( 戸惑い )……。
ティ:それにね、あいつはあたし達船乗りにとっちゃ最高に厄介な病気にかかってる!!
殺さなきゃ海賊島が滅んじまうんだよ!!
シル: ……病気。
『臆病風邪』か?
ラウ:知ってるのか?
シル:いや。
ティ:伝染病さ。
海の上で恐怖や躊躇いを抱いた時に発病して命を蝕むんだ。
誰も逃れられない死の病なんだよ。
シル:あのヴェインが恐怖や躊躇いを?
冗談だろう?
ラウ:ハッ!
あいつとの間に何があったか知らないがな、
あんたにヴェインの何が解るってんだよ?
シル:それは…。
ラウ:揃いも揃って俺を裏切り者扱いしやがる!!
ヴェインなんざ糞喰らえってんだ!!
シル:( 戸惑い )……。
ティ:取引だよシルヴィア。
あんたがヴェインの居所を教えれば、
あんたの欲しがってた記憶を教えてあげる。
シル:良し。
ティ: ……すまないね。
身内のゴタゴタに巻き込んじまったお詫びだよ。
あんたの方を先払いにしてあげる。
シル:( 被せる )お前等全員ぶっとばす!!
ラウ&ティ:は?
シル:素手で。
ラウ&ティ:ハァ!?
シル:誰が正しいかなんて記憶喪失の女に解るもんか。
だから私のやりたいようにやることにした。
ラウ:あのなぁシルヴィアとやら。
いくら小さいとは言っても、
この船には屈強な海賊が100人は乗ってるんだぜ?
海賊C:( ワリオみたいに )ウワッハッハ!!!
聞いちまったぜ!?
面白い事を言う姉ちゃんだ!!
ラウ:負けたらどうなるか想像はつくよな?
シル:この程度の困難に打ち負けるようではシルヴィア等名乗りはしない!
海賊らしく徒党を組んでかかってこい!!
ティ:あんたは本当にいけ好かないね。
昔も今もあんたなんか大嫌いだ。
シル:悪いが私が勝てばラウザをヴェインの所へ連れて行く。
それに比べたら記憶なんて二の次で構わない。
ラウ:俺にあの爺ぃの前で何を吐かせるつもりだ?
嘘偽りのない愛の言葉か?
シル:親子の最後の会話だ。
ヴェインは今夜にも死んでいて、
お前は明日には悪党に戻っているかもしれない。
……だけどお前等は親子なんだろう?
ラウ:ケッ!!
ティ:シルヴィア隊長、
あんたは何時まで経っても綺麗なままで本当にうらやましいよ。
シル:ティエラ・カプリス。
過去の事は思い出せないがお前は綺麗だよ。
ティ:あの時から私は汚いまんまさ。
シル:元気そうで良かった。
ティ:なっ!?
ラウ:野郎共出てこい!!
この娘さんが自分を好きにしても良いとさ!!
海賊C:( 獣の様な歓声 )うぉぉぉぉ!!
ラウ:海賊の怖さを教えてやんな。
海賊C:うぉぉぉぉ!!
キャプテン・ラウザァァァ!!
シル:ふふっ…。
おいで『坊や』達。
その心臓にシルヴィアの名を刻んでやるよ。
ティ:力があるから強いんじゃない。
強くなりたいから力をつけた…か。
( 間 )( 回想 )( とある戦線の後方 )
団長:( 大声 )エルツィ傭兵団の勇士達よ!!
今日は良く戦ってくれた!!
今の内にたっぷりと英気を養ってくれ!!
シル:ハァ…ハァ…。
団長:明日の敵は騎士の国ベルホストだ!!
その重装騎兵団は分厚い装甲と巧みな馬術で知られている!!
ティ:ハァ…ハァ…。
団長:気後れした奴は容赦無く敵に首を狩られると思え!!
解散!!
ティ:ふふ…。
団長も無理を仰りますね。
まさか傷も癒えぬうちから転戦命令とは。
シル:それがエルツィ傭兵団の仕事だからな。
あの人も辛い立場だろう。
ティ:苦しい立場なのは相身互い、
といった所ですか?
シル:男の成りをしていてもお前は女だ。
どうしても辛いなら後方に控えて無理をするな。
ティ:( 疲れながら )…まだ戦えます。
隊長ばかりに無理はさせられません。
シル:敵に捕まればどうなるかは解らんぞ?
騎士の国が相手とはいえ、
奴らも所詮は男なんだからな。
ティ:あはは!
その時はそいつのを噛み千切ってやりますよ!!
シル: …本当に大丈夫か?
ティ:( 逆切れっぽく )大丈夫じゃ無ければ何なんですか!?
また隊長一人で敵を斬りまくるつもりですか!?
シル:お前達を死なせたくないだけだ。
ティ:はん!!
偉大なる四騎士の一人、
シルヴィアの名を冠してるからって自分も英雄気取りですか。
シル:私は…そんなつもりじゃ…。
ティ:団長も隊長も凡人の気持ちなんて理解出来ないでしょうね。
ましてや女の癖に男の真似をする出来損ないの気持ちなんて。
シル:気が立っているのは皆も同じだ。
それに今夜は出陣前夜だぞ?
…言葉には気をつけろ。
ティ:何が言いたいんです?
シル: …私は元々強かったわけじゃない。
それなりに失って涙を流して此処まで来たんだ。
それだけは信じてくれ。
ティ: …私にはもう、
貴女も団長も信じられません。
シル: ……。
ティ:( 独白 )その後私は文字通り『噛み千切って』女として生きる事にした。
私をそうさせたのは騎士の国ベルホストでも隊長の諫言でも無い。
つまらない喧嘩で私を負かしたエルツィ傭兵団の一人だった。
( 間 )( 海賊船ディザイア号:甲板 )
シル:はぁ…はぁ…。
ふう。
ラウ:全く…。
何て女だよお前さんは。
海賊C:グッヘェェェ!?
バ…化けもんだ…。
シル:ん?
もう立ち上がってくる奴は居ないのか?
海賊C:( 小声で )し…死んだふりしておこう。
シル:いや、ちょっと立ってくれ。
もう少しだけ付き合ってくれないか?
勘を取り戻せそうな気がするんだ…ここを…こう抉るように殴れば。
海賊C:ヒィィィィ!?
ラウ:鬼かてめーは。
シル:ふふっ♪
ラウ:良いよ、俺が親父に逢いに行けば済む話なんだろ?
あんたの勝ちだよシルヴィア。
ティ: …そうは行かないよ。
シル:ん?
ティ:ラウザを危険に晒させやしない。
ラウ:おい、止めときなティア。
ティ:この人はあたしに『女で良い』って言ってくれたんだ。
海賊島に流れ着いたあたしを、
海賊の掟を破ってまで同じ船の仲間に入れてくれたんだ。
シル:自分が女であることがそんなに嫌だったのか?
ティ:違う!!この人は弱かったんだ!!
あたしと同じ位弱くて優しくて!!
あんたなんかよりよっぽど人間らしかったんだよ!!
シル: ……。
ティ:行かせやしないよ。
あんたなんてなんだい!!
記憶を失ってても他の人間の何倍も強いままじゃないか!!
シル:他人の強さを妬むくらいなら自分の未熟を恨めばいい。
ティ:何?
シル:何時だって夢を叶える奴は前を向いて他人なんか見向きもしない。
だからこそ人はその人に憧れ、同じように前を向こうと頑張る気になる。
ラウ:おぅおぅ耳が痛いねえ。
シル:だけど、弱いなら弱いままでも良いと思う。
ティ: …なんだって?
シル:そういう生き方も大事だって最近思うようになったんだ。
現にティオは今幸せなんだろ?
ラウ:ティオ?
こいつはティアだぜ?
ティ:あんた…記憶が…?
シル:少しだけな。
そんな仲間が昔居たような気がしたんだ。
あいつと同じでさ…。
何時か女に還ることが出来たら、きっと綺麗なのになって。
そう思ってた。
ティ:あたしはあの時の事謝らないからね?
…あんたとあたしは根本的に違ったんだ。
今更仲直りしたって意味が無いじゃないか。
シル:そうだなぁ。
お前が幸せならそれで十分だよ。
ティ: ……。
ラウ:あ、お話は終わり?
じゃあ行ってくるわ。
シル:ああ頼む。
ラウ:止せよ約束じゃねえか。
ティ:ちょっとあんた!!
ラウ:何だよ『ティア』。
まさかこの伊達男が臆病風邪に吹かれるとでも?
ティ:あんた、
臆病じゃないか。
ラウ: …なんかお前等見てたらよ、
運命って奴に身を任せてみたくなったんだ。
ティ: ……。
ラウ:まあそれでも駄目だったらよ、
お前俺の船頼むわ。
ティ:馬鹿だねえ。
ラウ:へへっ、
そこが良いんだろ?
ティ:仕方ない、
そん時はあたしが『伊達男』になってやるよ。
ラウ:良いよ女のまんまで。
じゃあな。
ティ: ……。
シル:じゃあ私もそろそろ行くかな。
ティ:何処へだい?
シル:海賊を見なくて済みそうな所だな。
お前らが笑顔で人を殺す様を見なくて済む所が良い。
ティ:意地悪で言ってるんじゃないけどさ、
どうしても記憶が欲しいならベルホストって国に行ってみるといい。
シル:ベルホスト?
ティ:そこにあんたとあたしの元同僚が居る筈だよ。
飛び切りの聞かん坊がね。
シル:成程、楽しみだ。
ティ:楽しい出会いじゃないかもしれないけどね。
記憶を取り戻したいなら行く価値はあるよ。
シル:ありがとう…『ティア』。
ティ:こちらこそだよ。
シル:うん?
ティ:いっ、いやっ!?謝りはしないけどさ、
今のあたしがあるのは、ある程度はあんたのおかげな訳だしィ!?
感謝位はしといてやろうかなって思っただけなんだからねッ!?
シル:良く解らんが、まあ受け止めといてやろう。
じゃあな。
ティ:あんたも幸せにね。
シル: …海賊島か。
悪党の休む常夜の島。
ああ…夜空を見上げなくても星はそこ等中にあるものなんだな。
( 間 )( 海賊島:名前を付け忘れられた闇 )
ラウ:おい、爺ぃ。
ヴェ:( 虫の息 )ヒュー…ヒュー…。
ああ…なんだおめぇ。
まだ生きてやがったのか。
ラウ:俺の台詞だよ糞爺ぃ。
よっこらせっと。
…とっととクタバレってんだ。
ヴェ:おめぇ何で逢いに来たんだ?
ラウ:シルヴィアって女にボコられてな。
つまり差し金はあの女さ。
ヴェ:ああ…なんでぇ。
そういう事かよ。
ラウ:何であんたは丸くなっちまったのかねえ。
昔のあんたは冷酷で残忍だった。
だからこそ皆あんたに付いてきたのによ。
ヴェ:仕方ねえ事さ。
……息子が出来ちまったんでな。
ラウ:あんたから貰えるもんは全部貰ったからな。
せめて看取ってやるよ。
ヴェ:ハッハ…ああ、
御蔭であの世でも…良い航海が出来そうだぜ……。
ラウ:元気でな。
偉大なるマーソルド・ヴェイン。
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