題名  公開日   人数(男:女)  時間  こんな話  作者

風のシルヴィア(11)~ライアー・タウン~

2014/09/23  4(2:2) 25分

暴力の街だからこそ、暴力じゃ解決できない街なのさ。

 ニコ

登場人物
(年齢)
性別 その他

シルヴィア
(26)

主人公の美女です。
めちゃ凄腕のボディガードでナイフの使い手です。
あまり出番有りません。

アシュレア
(20)

イケメン男娼です。
ほれた相手に尽くすタイプです。
せ…切ねえ…。

ゼウス
(27)

天才ゲイ術家です。
嘘ですバイです。
一言で言えば天衣無縫タイプ。

暴漢&変態
(不詳)

モブなので出番少な目です。
奇特な方お願いします。
変態役、良いと思います。



「風のシルヴィア(11)~ライアー・タウン~」



シルヴィアさんが迷い込んだとある犯罪都市での一幕です。

陰々滅々とした雰囲気ですがそこで生きる人々の日常を書きました。

http://voicexlol.blog.fc2.com/blog-entry-114.html

詳しくは上記URL(LOLチャンネル<管理人:レンガさん>)をご覧ください。




( ライアータウン:キツネ雨の出逢い )

 

 

アシ:うん、

   うん解ってる。

   俺の心は何時だって君だけの物さ。

 

シル:酷い雨だな…生ゴミと死体の臭いでむせかえる。

 

アシ:そんなこと言ってぇ、

   俺の裸を見て触ればすぐに(ゆる)しちゃう癖に。

 

シル: ……もう行くか。

   なんとも黒々(くろぐろ)とした街だが居心地は良い。

   気兼ねなく悪党から金をむしりとれるしな。

 

アシ:オッケー♪

   じゃあまた今度逢おうね?

   あ・い・し・て・る。

 

シル:( 溜息 )――。

 

アシ:( 溜息 )――。

 

シル&アシ:ライアー・タウンか。

 

シル&アシ: ―――んっ?

 

アシ:わお……。

   綺麗なお姉ちゃん。

 

シル:なんだい男娼(だんしょう)

   あいにく金なら持ってないが?

 

アシ:それどころか浮浪者みたいだね。

   どうだい?

   仕事を紹介してやろうか?

 

シル:要らん。

   ……とも言えんか。

 

アシ:決まりぃ!!

   上前(うわまえ)は2割で良いからね。

 

シル:正義の味方って仕事はあるか?

 

アシ:ん?

 

シル:ここは悪党の街なんだろ?

   だったら困ってる人を助けて金を貰うのが良い。

 

アシ: ……漫画の読み過ぎじゃない?

   大体あんた銃使えるの?

 

シル:獲物か…ふむ。

これでは不足か?

 

アシ:そんなチンケなナイフじゃ、

チンポ一本切り取れねえよ。

 

シル: ……そうだろうか?

 

アシ:ま、夢を見る分には誰しも自由だ。

好きに野垂れ死になぁ。

 

シル:ヒュッ!!

 

アシ: ……うっ!?

 

シル:その首筋を掻っ切るには充分だと思うが?

 

アシ:は…速いですね。

   お姉さん……。

 

シル:ふふっ……ま、良いだろう。

   大人げなかったな、

   許してくれ。

 

アシ: ……。

 

シル:( 去りながら )良い雨だなぁ、

   打たれるなら雨が良い。

   何もかも流れ落ちてしまえばいいのに。

 

アシ:なあ、

   行くアテがあるのかよ?

 

シル:無かろうとなあ、

()の街に捨て猫を拾える聖人が居るとは思えん。

 

アシ:用心棒なら幾らでも紹介してやるよ。

   簡単なお仕事さ。

   邪魔しに来るやつを(かた)(ぱし)からぶっ殺せば良いんだ。

 

シル:護る相手にもよる。

 

アシ:俺のツレを護って欲しい。

    Cの13番地、

『ギーガー』ってアパートに住んでるんだ。

 

シル:恋人って……。

   お前男だろ、

   お前が護れよ。

 

アシ:ふっふっふ♪

   俺の恋人はこの街の人間全員さ。

   ついてようがついて無かろうが俺は相手にしなきゃいけない。

   そんなツイてない男に甲斐性(かいしょう)があるとでも?

 

シル:愛してるのか?

 

アシ:この街で一番好きなんだ。

 

シル:その連れの名前は?

 

アシ:ゼウス。

 

シル:ゼウスか。

   お前は?

 

アシ:アシュレア。

 

シル:私はシルヴィアだ。

   確かに引き受けたよ。

 

 

( 間 )( ギーガーのアパート:『512号室』 )

 

 

ゼウ:違うな…こうじゃねえ。

   もっと…そうだ、

   嗚呼…いいぜ、

   とろけそうな体液がそそるじゃねえか。

 

シル:おい。

 

ゼウ: ……ああ!?

 

シル:ゼウスか?

 

ゼウ: ……うるせぇよ!!

   ったく。

   おめえがまわされてる絵でも描いてやろうか!?

   くそっ…( ぶつぶつ )。

 

シル:用心棒に(やと)われに来たんだ。

   アシュレアの頼みでな。

 

ゼウ:あっそ、

   ふーん。

   じゃあそこで立ってな。

 

シル:別段期待はしていないが、

金は幾ら払える?

 

ゼウ:そこの手提げ袋の札束を全部やるよ。

   一日の稼ぎとしちゃあ破格だろう?

 

シル:( 溜息 )――。

   不満は無いがもう少し吟味(ぎんみ)はしないのか?

   ドアが開けっ放しの癖に、

私の顔もろくに見て無いじゃないか。

 

ゼウ:男はミテクレ、

   女はウチヅラ、

   ていうか声が良ければそれでよし。

 

シル:どうして命を狙われてる?

 

ゼウ:ちょぃと絡まないでくれねえか?

   いや、別に良いけどよ、

   程々に話しかけろよ、

絵描いてるんだからよぉ。

   常識ねえのかよ…。

 

シル:その絵は何だ?

 

ゼウ: ……この街の抽象画。

   煙草と子宮と血の大地にそそりたつ巨大なマツタケ。

 

シル: ……売れるのか?

 

ゼウ:お前さんを雇った金がこれ一枚分の稼ぎだ。

   俺がモテモテで良かったな。

 

シル:上手いのに勿体(もったい)ないな。

   もっと綺麗な絵を描けばいいのに。

 

ゼウ:こういうのが需要有るのが此の街さ。

   才能で食ってる俺は皆に優しく出来るが、

   群れなきゃなんにもできない連中はそんな俺を妬んでる。

   頼むぜ本当。

 

シル:せいぜい護ってやるよ。

 

ゼウ:ああ、それともう一つ。

 

シル:うん?

 

ゼウ:俺は女に触られるのが死ぬ程むかつくんだ。

   もしも俺に触ったらおめぇ、

   本当に殺しちまうからな。

 

シル:( 溜息 )――。

ぜいぜい気を付けるさ。

 

 

( 間 )( 512号室:魂を売るゼウス・シュトラウス )

 

 

暴漢:クソがあああぁぁ!!

   殺してやるッッ!!

   殺してやるぞゼウスッ!!

 

シル:黙れって。

 

暴漢:おぐぇあっ……!?

  はっ、放せええぇぇぇ!!

 

シル:おい、ゼウス、

   こいつはどうする?

 

ゼウ:邪魔だ。

   死んでもらえ。

 

暴漢:ぜっ、ゼウスッ!!

   てめぇがボスに依頼された肖像画を届けた途端に俺はこの様だ!!

 

ゼウ:ひでえ面だな。

   自慢のボスにおしおきされたか?

 

暴漢:誰が商売敵のゲリリーノ一家のボスとサカってる絵を描けって言った!?

   こっ、殺してやるっ!!

 

シル: ……は?

 

ゼウ:人類皆兄弟。

   男は皆、穴兄弟。

   ばきゅーん♪( ※茶化して言ってます )

 

暴漢:うわあああん!!

 

ゼウ:ひゃははははは!!

 

暴漢:ぢぐじょ~~~!!

 

シル:お前……もう行っていいぞ。

   気の毒に……。

 

暴漢:うう…ぐすっ。

 

ゼウ:良い絵だったろぉ?

   正直に言えって。

 

暴漢:ああ…笑えたよ。

   だけどもう笑えないんだろうな、

   今日から俺は野良犬だ。

 

シル:この金をやるよ。

   少しでも永く生き延びてくれ。

 

暴漢:あ…ありがとう……!!

   あんた……良い人だなぁ。

 

シル:余所者(よそもの)だからな。

 

ゼウ:くだらねえ。

   金を持っていようが無かろうが、

此の街じゃ野良犬は死ぬしかねえんだよ。

   餌をやるのは馬鹿のやる事だ。

 

暴漢:( 遠くから )

なっ、なんだお前等!!

   放せっ!!

   この金は俺のだぞ!?

   お、おいやめろ!!

   ひぎっ、

   やめてくれ助けてくれ

   ひぃぃぃ……!!

 

シル:( 途中から被せる )それなら馬鹿で良い。

   誰も見向きもしないなら私だけでも見つめてやる。

   それだけでいい。

 

ゼウ:ハンッ!!

アシュレアにそっくりだな。

 

 

( 間 )( ライアータウン:ドブと夕餉の匂い )

 

 

アシ: ……ん?

 

シル:おかえり。

 

アシ:ただいま。

何か変わったことは?

 

シル:4人殺して1人逃がしてやった。

   それくらいだな。

 

アシ:ゼウスは?

 

シル:定時だからと酒を飲んでるよ。

   売春婦を買えたら最高だってぼやいていたが。

 

アシ:ああダメダメ、

   この間それをやって女をバラバラに切り刻んだんだ。

   あいつは両刀だけど女にはトラウマしかないみたいでさ。

 

シル:( 溜息 )――おや?

   この街に来てから溜息が止まらないな。

 

アシ:ほらっ、

これやるから元気出せって。

 

シル: ……饅頭(まんじゅう)?

 

アシ:『 ハッセンハンテン 』って饅頭屋さ。

   ジュ~シ~で美味いんだぜ?

 

シル:何か嫌な予感がするが……。

   優しいんだな。

   アシュレア。

 

アシ:さっき店の店主が生ゴミに生脚(なまあし)入れてたけどさ、

   あれって丸焼きにしたらきっと美味いと思うんだよね。

 

シル: ……( 溜息 )。

 

ゼウ:よお、

   帰ってきたならそう言えよ。

 

アシ:ようゼウス。

ただいま。

 

ゼウ:飯食うか?

   ヒック。

 

アシ:出来てるのか?

 

ゼウ: ……俺達みたいに?

 

アシ:ったく―――。

   俺が適当に作ってやるよ。

 

ゼウ:ひひっ……!!

シルヴィアはどうするよ?

 

シル:何処(どこ)か休める所は無いだろうか?

 

アシ:ここにいれば良いだろ?

   一緒の方が楽しいぜ?

 

シル:何かの拍子にそこの獣に触れたらどうする?

   折角護ってやったのに殺したくは無い。

 

ゼウ:ガルルル!!

   気をつけろ、

   俺様はレクター博士だ!!

   シチューにして喰っちまうぞ!?

 

シル:まともに、とは言わんが、

   何時(いつ)か楽しく生きれる日が来るといいな。

 

ゼウ: ……へっ。

 

アシ:わお…。

   辛辣(しんらつ)

 

ゼウ:思いっきり仕事をして思いっきり休む。

   それが楽しいって事じゃねえのか?

 

シル:そうか、

   そうだったな。

 

ゼウ:答えなんざ何処(どこ)にだってありはしねえよ。

   技法も知識も人間の感情の前じゃゴミ屑みてえなもんだ。

   思いっきりぶっ放せれば俺は何もいらねえんだよ。

 

シル: ……そうか。

 

アシ:まっすぐ行って左の突き当たりに悪趣味なモーテルがあるぜ。

   豚の頭を被った(じじい)と太ったババアが()()りしてるんだ。

   畑からお経が聞こえるんだぜ?

 

シル:なんでもありだな……。

   まぁ、せいぜい楽しんでくるとするさ。

   ありがとう。

 

 

( 間 )( 512号室:真心を売るアシュレア・レイン )

 

 

アシ:稼いだかい?

   ゼウス。

 

ゼウ:おお…ヒック。

金になるかは解らねえけど真面目に描いてたぜ。

   マスをかいてる暇も無かった。

 

アシ:俺もさ。

   マスをかいてる暇も無かった。

 

アシ&ゼウ:( 笑い )――。

 

ゼウ: ……何時(いつ)か二人で旅行に行こうぜ。

   そしたら抱いてやるよ。

 

アシ:いや、

   俺そういうのは良いから。

   ゼウスとはプラトニックな関係で居たいんだ。

 

ゼウ:旅行に行きてぇんだよぉ。

   独りじゃ寂しいからお前と一緒に行くんだよぉ。

   ……さもなきゃずっとこの街で独りぼっちだ。

 

アシ:暇な時があるのか?

 

ゼウ:いいえー?

   無いですよー。

 

アシ:無駄な時間を過ごしてる?

 

ゼウ:人生に無駄な事なんざ何一つねえよ。

   ただ一つ無駄な事があるとすれば、

   自分が無駄だったと思った事実が、

そのまま無駄になるんだろうな。

 

アシ:酔っ払いに哲学こかれてもな。

   ……さ、メシにしようぜ。

 

ゼウ:ガルル、

   俺はお前を喰いたい。

 

アシ: ……洒落(しゃれ)にならないからやめてくれる?

 

ゼウ:ヘヘッ。

 

アシ:ほんと、

俺が居ないとゼウスは駄目だなぁ。

   ……それは俺も同じだけどさ。

 

 

( 間 )( ライアータウン:油溜まりに浮かぶ朝日 )

 

 

アシ:おはようシルヴィア。

   よく眠れたかい?

 

シル:( 欠伸 )それなりに。

   やはり変態だらけだな、

   この街は。

 

アシ:それはどうもありがとう。

   じゃあ今日も頼むよ?

 

シル:もう仕事に行くのか?

 

アシ:仕事ついでに色々あるのさ、

   一応主夫(しゅふ)なんでね。

 

シル:そっちはスラム街だぞ?

 

アシ:繁華街の方がモテるように見えるだろ?

   違うんだよねぇ。

   (さび)れた所に咲く一輪の花だから売れるんだよ。

 

シル: ……ゼウスは?

 

アシ:徹夜で絵を描いてたよ。

   ゲロで薬も酒も全部流してカリカリカリカリ……。

 

シル:何を描いていたんだ?

 

アシ:この世の(すべ)て、さ。

   だから最後には良く解らない絵になるんだ。

 

シル:もしそんなものを本当に()きあげてしまったら、

   何の未練も無く死ねるんだろうな。

 

アシ: ……じゃ、

   行ってきまーっす。

 

シル:ああ。

   饅頭(まんじゅう)美味しかったよ、

   ありがとう。

 

 

( 間 )( ライアータウン:スラム街の餌場 )

 

 

変態:ハァ…ハァ…。

 ねっ、ねえ、

   き…君は売り物かい?

 

アシ:ん~?

   おじさんのお財布次第かな~?

 

変態:い、幾らだい?

 

アシ:半分。

 

変態:は…半分も!?

   お、大きく出たねぇ……。

 

アシ:おじさんのおっきぃのに比べたら大したことないでしょ?

 

変態:ぼ…僕にお金が無かったら、

ど、どうする?

 

アシ:それでも半分くれるなら良いよ?

 

変態:ぶっ、ブヒヒッ!!

じゃ、じゃあ、

こ、これで……、

   た、足りるかなぁ?

 

アシ:へえ……。

   これって、

ママからのお小遣い?

 

変態:だ…駄目だよね…ぼ…僕…(くさ)いし。

   で、でも……。

き、君、とっても可愛いから……。

   僕……僕……( 泣く )。

 

アシ: ……( 鼻で嗤う )。

 

変態:今まで誰からも愛されたことなんてない……!!

   僕なんて死んだ方が良いんだ……!!

 

アシ:良いよ。

 

変態:( 泣き止む )――えっ!?

ほ、本当かい!?

 

アシ:気持ちよくしてあげる。

 

変態:ど、何処(どこ)まで出来るの?

   な、殴っても良い?

 

アシ:顔以外なら。

   あとちゃんと着けてよね。

 

変態:( 半ギレ )――な、なんでだよぉ!?

ぼ、僕達、

   お、男同士だろ!?

 

アシ:くすっ♪

俺さぁ、

実はついて無いんだよね。

 

 

( 間 )( 512号室:二人きりの時間? )

 

 

ゼウ:よう立ちんぼ。

 

シル: ……なんだい引きこもり?

 

ゼウ:ちょいとモデルにならねえか?

 

シル: ……ああ!?

 

ゼウ:金なら別に払う。

   良いからそこに立ってみろよ。

 

シル:綺麗な物を描くのは美学に反するんじゃなかったのか?

 

ゼウ:時計を見てみな?

 

シル: ……あ。

 

ゼウ:定時だ。

 

シル: ……。

 

ゼウ:暇潰しに付き合ってくれよぅ。

 

シル:暇潰しにされるような女じゃない。

 

ゼウ:じゃあ本気です。

   本気で貴女を()きたいのです。

 

シル:( 笑い )――。

   何時(いつ)か本当に刺されるよ?

   お前。

 

ゼウ:止められねえものは仕方がないさ。

   ナニがおっ勃つのを誰が止められるね?

 

シル: ……言っておくが、

脱がんからな?

 

ゼウ:良いよ。

   そのままでも充分綺麗だ。

 

 

( 間 )( 綺麗な人は陽だまりにこそ )

 

 

ゼウ:ふうむ、

   ドミナントは白で決まりなんだが、

いまいちバタ臭ぇな。

 

シル: ……。

 

ゼウ:ハッチングで決めてみるか~?

   いやいやボカすだろうなここは。

   しかし綺麗なもんだねぇ……。

 

シル: ……。

 

ゼウ:おお……この上腕筋(じょうわんきん)の美しさよ。

   ガラス細工のひび割れに興奮するのは何年ぶりだ?

   もって生まれた人生に経験が(つら)なり……( 呟く )。

 

シル: ……な、なあ、

どうしてアシュレアに身体を売らせるんだ?

 

ゼウ:おい!!

   動くなって。

 

シル:あ、ああ。

   ……済まない。

 

ゼウ: ……別に強制はしてねえよ?

 

シル: ……恋人なんだろ?

   お前は曲がりなりにも金持ちなのに。

 

ゼウ:あいつなりに価値が欲しいんだろうさ。

 

シル:価値……?

 

ゼウ:自分で稼いだ金で飯を喰うってのは勿論(もちろん)

   誰かに必要とされてるって価値が欲しいんだろうさ。

 

シル:全部お前次第じゃないか。

 

ゼウ: ……。

 

シル:二人は何時(いつ)か幸せに成れるんだよな?

 

ゼウ: ……。

 

 

( 間 )( 闇の住人は仄暗き狭間で )

 

 

変態:はぁ…はぁ…。

   はぁ…はぁ……。

 

アシ: ……どいてくれる?

もう気が済んだだろ?

 

変態:ぶふぇっ……!?

   う、うん。

   ご、ごめんよ?

 

アシ:痛てて……。

ったく、

   おじさん煙草(たばこ)持ってる?

 

変態:あ、飴ならあるよ?

 

アシ:じゃあ自分の吸うわ。

   ……おじさんもキメる?

 

変態:ご、ごめんよ。

   ママに叱られるから――。

 

アシ:あっそ。

   ( 喫煙 )―――。

 

変態:か、可愛いねアシュレアちゃん。

   ぼ、僕のお嫁さんになってよ。

 

アシ: ……考えとく。

 

変態:ぼ、僕本気だよ!?

   ママは厳しいから、

きっとアシュレアちゃんを嫌うだろうから、

別のおうちを用意してあげるね?

 

アシ: ……ん?

   これ……こいつの財布か?

 

変態:た、たまに遊びに行ってあげるからね?

   い、一杯玩具(おもちゃ)を持ってるんだ。

   い、一緒に遊ぼうね?

 

アシ: ……。

 

変態:ど、どうしたの…?

 

アシ:半分、

   って言ったよね?

 

変態:そ、相場だっただろ…?

   な、何だよその眼…。

   止めてよ……怖いよ……。

 

 

( 間 )( ライアータウン:夢の終り )

 

 

シル:おかえり。

 

アシ:ただいま。

 

シル: ……血の匂いがするな。

 

アシ:ケチな豚を一匹ぶっ殺しただけさ。

 

シル:そうか。

 

アシ: ( 溜息 )――。

 

シル:ふふっ。

 

アシ:もう良いよシルヴィア。

   結局のところ俺達はどうしようもなく(ゆが)んでいて、

   ここはあんたの居る場所じゃないんだ。

 

シル:どうしようもない悪夢だからこそ、

悪夢の中でしか生きられない住人も居るって事だな。

 

アシ:暴力の街だからこそ、

暴力じゃ解決できない街なのさ。

 

シル:ライアー・タウン。

 

アシ:地獄の街さ。

 

シル:どうして迷い込んでしまったのか解らないが、

御蔭(おかげ)で気付けたよ。

   私はまだ壊れていなかったって。

 

アシ:ふふっ……あんたは行きなよ。

   俺達の分まで。

 

シル:幸せにな。

   遠い旅の空から何時(いつ)だって願っているよ。

 

アシ:くすっ…俺だってそうさ。

 

 

( 間 )( 夢の続き )

 

 

ゼウ:ん……( 欠伸 )。

 

アシ:起きた?

   随分幸せそうに寝てたね。

 

ゼウ: ……何だよ、

   被写体は何処行ったんだ?

 

アシ:逃がしてあげたよ。

   この街には勿体無かったからさ。

 

ゼウ:っか~~~~!!

まだ描きかけだったのにあの(アマ)

   ( 舌打ち )――これじゃゴミ箱行きだな。

 

アシ:素敵な絵じゃないか。

   とっても綺麗なのに……。

 

ゼウ:まだあいつの気持ちを入れてない。

 

アシ:シルヴィアの気持ち?

 

ゼウ:これじゃ俺の主観に過ぎねえ、

   ただの物質だ、

   心の込もってねえ絵なんざ糞だ!!

 

アシ:なあゼウス。

その絵、

捨てるなら俺にくれよ?

 

ゼウ:本気かよ?

   ただの小綺麗な肖像画だぜ?

 

アシ:うん。

   ただ綺麗だから好きなんだ。

 

ゼウ:違う女で描いてやるよ。

   要するに売春婦じゃねえのが良いんだろう?

   こんな出来損ないの絵なんざ今すぐ――――。

 

アシ:( 被せる )お願い!!

   シルヴィアの絵が好きなんだ!!

   ……きっと思った以上に大事にし続けると思うから。

 

ゼウ: ……これがねえ。

ま、

   ガキの玩具(おもちゃ)には丁度良いか。

 

アシ:ありがとう。

   ……良いなあこれ。

   何処(どこ)にも行けなくてもさ、

   この絵と一緒に居たら何処(どこ)までも遠くに行ける様な気がする。

 

ゼウ: ……なあ、

今度旅行に行こうぜ?

   この街から抜け出して、

   二人で何処(どこ)か遠い所によぉ。

 

アシ: ……うん、

   考えとくよ。




 
 
 
     
 
           
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