題名  公開日  人数(男:女:不問)  時間  こんな話  作者

風のシルヴィア(13)~英雄会議~

2014/10/03  5(3:1:1) 25分 所詮は人間の素体にメッキを塗っただけの紛い物ではないか。我等の末席に加える価値も無い。  ニコ

登場人物
(年齢)
性別 その他
ゼオルード
(226)
『王の学書』。
美髯(びぜん)の老人。
リーダー的存在。
フェンシア
(108)
不問

『王の鍵』。
中性的なハーフエルフ。
飄々とした皮肉屋。

カミュ
(42)

『王の(つるぎ)』。
天才剣士と言う名の屑親父。
甲高い声且つ気に障る感じでお願いします。

エレナ
(30)
『王の杖』。
癒し手の聖騎士。
皆の母ちゃん。
ガルフォード
(32)
『王の右腕』。
カリスマ性あふれる武人。
野心も実力も備えた新進気鋭。


「風のシルヴィア(13)~英雄会議~」



軍事会議と言う名の世間話。

物語も後半と言う事もありプロローグです。

重要人物たちの偉そうな雰囲気を醸し出してください。






( 王都アイゼフィール:白き円卓 )

 

ゼオ:では各々方、

   揃われたかの?

   ぼちぼち会議を始めるが。

 

フェ:フェンシア・キル・ツヴァイボルグ。

   『王の鍵』、

   異存はない。

 

カミ:カミュ・レーヴ・フィーバストルテ。

   『王の(つるぎ)』として参加いたす。

 

ガル:ガルフォード・ガーデウス。

   南の総司令官。

   『王の右腕』として参加する。

 

エレ:エレナ・サースティ。

『王の杖』としてこの部屋を閉ざします。

 

ゼオ:おお、良き結界じゃ。

   腕を上げたものよな。

 

エレ:さて、本日の口火(くちび)はどなたが切るのかしら?

 

ゼオ:ふむ。

では我等『アイゼフィールの八騎士(はちきし)』の代表として、

この『王の学書』、

ゼオルード・ヴァロ・ゴラムザードから進言(しんげん)いたす。

 

カミ:我らが主席(しゅせき)にして最翁(さいおう)の言葉、

(つつし)んで拝聴つかまつる。

 

ガル:ちょい待ち。

 

カミ:なにっ!?

 

フェ:ククッ……。

   何用かな?

   『王の盾』ガーデウス(きょう)

 

エレ:( 溜息 )――。

 

ガル:どうせまた下らねえ禁術の予算請求だろうがよ、

   その金はまず、

俺達前線組の兵站(へいたん)確保に(まわ)すのが先なんじゃねえか?

 

ゼオ:おお、そうであったなガルフォードよ。

   クロウリ方面は獣王を無くし、

今となっては烏合(うごう)(しゅう)

   快進撃はさぞや痛快であろうな?

 

ガル:解っているなら話は早い。

ゼオ爺よ、

俺は軍人だ。

()(ひら)いた道を整備するのは仕事じゃねえ。

 

エレ:過分(かぶん)に資金が掛かるのはやむを得ないでしょうね。

   少なくとも国土(こくど)を増やしているだけ有意義ではあります。

 

フェ:おう、

   これは耳が痛いな。

 

ゼオ:戦線の拡大による情報・補給の遅滞は如何(いかん)ともし(がた)かろうが、

   なればこそ我が禁術の開発が急務なのだ。

 

ガル:確かにあんたの禁術とやらは便利だ。

   兵どもを一瞬のうちに転送したり、

遠くから脳みそに伝言を伝えたり。

 

フェ:我もあやかりたいものだ。

   魔術の素養などと言うものに耽溺(たんでき)すれば、

   さぞや惑いのない生を謳歌(おうか)出来るのであろうな?

 

エレ:あらあら、

これも耳が痛いですわね。

 

ガル:だがそんなものは俺達には必要ねえんだ。

   戦いに勝利するのはあくまで兵士達、

   それがたった一人の英雄の力であって良い訳がねえ。

 

カミ:ガルフォード・ガーデウス!!

   貴様四騎士(よんきし)の身でありながら、

有象無象(うぞうむぞう)の兵士達を気遣うつもりか!?

   黄金の獅子の血統が聞いて呆れるわッ!!

 

ガル:ハッ!!

フィーバストルテ(きょう)

   そんなあんたは自分の部下達を掌握(しょうあく)出来ているのか?

 

カミ:何だと……!?

 

ガル:今まで(ろく)な戦争に参加してこなかったあんただ。

エルツィ傭兵団3000人を引き継いだ所で、

何をどうこう出来るとも思わんが……。

それは果たして経験不足と言うだけで済まされるものかな?

 

フェ:ククッ…言ってやるな金色(こんじき)の。

   この男、剣士としては大陸一(たいりくいち)だが、

(うつわ)(せま)さも大陸一(たいりくいち)でな、

   故に傭兵風情(ようへいふぜい)(あなど)られておるのよ。

 

カミ:( 出来れば机を叩いて )――フェンシアッ!!

   貴様とてベルホストを相手取っておきながら決戦を控えおって!!

   一体誰のおかげで先代ベルホスト王を始末出来たと思っておるのだ!?

 

フェ:(せがれ)御蔭(おかげ)であろうが。

   たわけめ。

 

カミ:フィーバストルテの御蔭(おかげ)だ!!

   有り難く思え!!

 

エレ:あらあら。

   わたくしの結界で密事(みつじ)が漏れる心配はありませんけれど、

いささか声が大きいですわよ?

   カミュ様。

 

カミ:黙れエレナ!!

   女如(おんなごと)きに指図をされる程、

落ちぶれてはおらぬわ!!

 

フェ:やれやれ……。

いつから我を呼び捨てに出来る程老けたのだ?

   昔はあれ程素直で美しい(わらべ)であったものを……。

 

ゼオ:ふふ…まさしくのう。

   時の流れとは残酷極まりない。

 

カミ:私とて我が子を犠牲にして得た物があんな(こま)では、

父祖(ふそ)に示しがつかぬ!!

   ガルフォード!!

   エルツィ傭兵団など貴様にくれてやるわ!!

 

ガル:人は(こま)じゃねえ。

   ……が、言った所で解らんだろうし、

あいにくと兵隊なら足りているしな。

   フェンシア殿は如何か?

 

フェ:たかだか3000ではなぁ。

   肝心要(かんじんかなめ)のロヴェルとシルヴィアを欠いては華も無い。

   ふむ……これまで通り、

西の海の海賊退治を行わせるのが妥当ではないか?

 

カミ:ならば逐一文句(ちくいちもんく)を言うな!!

   せいぜい海岸線を護ってやるわ!!

 

エレ:ふふ……ロヴェルにシルヴィア。

   我々ディオールの四騎士(よんきし)にとっては懐かしい名前ですわね、

   ガルフォード?

 

ガル:ああ。

奴等には策のためとはいえ気の毒な事をした。

   どちらも健在ならばひとかどの将軍になっていただろうに。

 

ゼオ:お主の言う、

貴重な兵士とやらを損なわぬ為に尊き者が犠牲になる。

   これもまたアイゼフィールの在り方ではないか?

 

カミ:何が尊いものか、

   所詮は平民出(へいみんで)有象無象(うぞうむぞう)ではありませぬか。

 

ガル:ロヴェルの将器(しょうき)はあんたの遥か上を行っていた。

   ディオールの四騎士(よんきし)にしてアイゼフィール建国の()

   ロヴェル・カトレイドの名に相応(ふさわ)しい男だったよ。

 

エレ:そして見かけ以上に情熱的で仲間思いの方でしたわ。

   記憶を失ったシルヴィアを逃がす為、

自らの地位も名誉も捨てられたのですから。

 

フェ:我等の中でその様な真似が出来る(やから)が居ろうか?

   眷属(けんぞく)(おさ)の地位を(かさ)()て、

息子を死地(しち)へ送る者はいようともな。

 

カミ: ……何?

 

フェ:ククッ……久々に腕試しをしてやろうか?

   カミュ坊や?

 

カミ:(けが)れたハーフエルフの分際(ぶんざい)で……!!

   八つ裂きにしてくれるわ……!!

 

ガル:おいおい……。

   楽しそうだな、

俺も混ぜろよ!!

 

エレナ:( 溜息 )――。

もはや様式美(ようしきび)ですわね。

 

ゼオ:フハハ……!!

   若さとは良き物よな。

   この枯れ果てた老骨(ろうこつ)には、

そのような気概(きがい)も残って居らぬわ。

 

エレ:そういえば東のマディーンとの(いくさ)ですが。

 

ガル:おっ。

 

フェ:ほう、砂漠の大国(たいこく)か。

 

ゼオ:一番の懸案(けあん)じゃの。

首尾(しゅび)はどうじゃ?

 

エレ:ええ。

   予想以上の戦果(せんか)を挙げています。

 

ガル:マジかよ。

   俺も戦いてえな。

 

エレ:竜騎士シルヴィア。

   ジーニアス様の影とゼオルード様の禁術、

   わたくしの魔力を込めて産み出された最強の兵士。

 

カミ:ふん、

所詮は人間の素体にメッキを塗っただけの(まが)い物ではないか。

   我等の末席に加える価値も無い。

 

ゼオ:ああ?

ワシの魔術に齟齬(そご)があると申すのか?

   小童(こわっぱ)

 

カミ:あっ……い、いえ……。

   決してその様な事は。

 

ゼオ:いにしえの騎士が舞い戻り、

まさしく竜神(りゅうじん)の如き災禍(さいか)を招くのだ。

   敵にとって、

これに(まさ)る恐怖はあるまい?

 

カミ:た…確かに…。

 

エレ:味方の士気(しき)もいやがおうにも上がりますわね。

   何せ彼女が生きているとすれば500歳は確実ですもの。

   伝説と呼ぶに相応(ふさわ)しい英雄です。

 

ゼオ:南のクロウリにはガルフォード、

   北のベルホストにはフェンシア、

   西の海賊島(かいぞくじま)にはカミュ、

   そして東のマディーンにはエレナとシルヴィア。

   ……これで盤石(ばんじゃく)と言う物よ。

 

カミ:うん?

そういえば陛下とジーニアスは如何(いかが)した?

   遅参にしては遅すぎるが。

 

ガル:オーズィ陛下なら城下(じょうか)娼婦(しょうふ)としっぽりしてる頃だろ。

   何時(いつ)もの事じゃねえか。

 

エレ:国土(こくど)を侵略されない限り眼が()めませんわね、

   あれは。

 

ゼオ:(嬉しそうに)少々、

甘やかして育て過ぎたわい。

   『王の学書』失格じゃの。

 

フェ:ジーニアスはマディーンの間諜(かんちょう)に向かっている(はず)だ。

   奴から報告があったではないか。

 

カミ:私には何も来ておらん!!

 

フェ:そうかそうか…ククッ、

判り易いな。

友の一件で遺恨(いこん)がある故に、か。

 

カミ:ぬっ……!!

   二年前の事をまだ恨んでおるのか!?

   『 影 』の分際(ぶんざい)で心が在る振り等!!

 

エレ:たったの二年……ですわ。

 

ゼオ:まあ待て。

若き世代が国を動かしていく様こそが正常なる在り方よ。

   されど、犠牲もまた国事には違いあるまい?

 

ガル:はん!!

   自己犠牲も行き過ぎれば滑稽(こっけい)だぜ!!

   いっとくが、俺は国の為に死んでも、

家の為には死なねえからな!!

   

ゼオ:ほう……勇ましき武人(ぶじん)に育ったのう。

ガーデウス家が羨ましいわい。

   呪われた血筋と呼ばれた我がゴラムザード家には、

ついぞ跡取りが出来なんだ。

 

フェ:お主はヒトの身でありながら(なが)く生き過ぎだ。

   (よわい)226歳を数えては蓄えた知識も腐り果てるぞ?

   

エレ:あら、

   もうそれ程になりますの?

   フェンシア様といいゼオルード様といい、

   見た目よりずっと若くて(うらや)ましいですわ。

 

ガル:お前ももう三十路(みそじ)だもんなぁ。

 

エレ:ふふっ…殺しますよ?

 

ガル:ばっ……まだまだ綺麗だって言おうとしたんだよ!!

   勝手にしやがれ!!

 

ゼオ:やれやれ。

我等はアイゼフィールの八騎士(はちきし)ではないか。

 

フェ:如何(いか)にも。

   ま、我等以外はいささか若過ぎるがな。

 

ゼオ:同志たればこそ、

我が子を失った悲しみを少しは()んでやれ。

   父である前に、

英雄であることを選んだこの男の気持ちをな。

 

カミ:ゼオルード様……!!

   有り難き…お言葉です。

 

ゼオ:うむ、

   さて――。

 

ガル:( 被せる )兵站確保(へいたんかくほ)からな。

 

カミ:ガルフォード!!

   貴様!!

 

フェ:ふぁぁ……馴れ合いも気が済んだ。

   我は帰っても良いか?

 

エレ:あら?

そろそろお茶を持って来ようと思ってましたのに。

 

フェ:お主は良いなぁ、エレナ。

   時代は東を向いている上に、

竜騎士と言う玩具(がんぐ)も『王の影』も手に入れた。

   円卓会議など億劫(おっくう)で仕方なかろう?

 

エレ:そのジーニアス様からの報告ですわ。

   シルヴィア・シルフィードもマディーンに赴いているそうです。

 

フェ:おお、竜の小娘か。

   我も逢うたぞ?

   どうやら記憶を取り戻したようだな。

 

エレ:ふふ……。

   そして()しくも、

   ロヴェル・バークライツもマディーンにいるそうですわ。

 

フェ:これは興味深い。

我も今少し横着(おうちゃく)を決め込み、

   東へ(おもむ)いてみるか。

 

エレ:フェンシア様?

ベルホストと事を構えないのはそれ相応の理由がおありなのでしょうが、

ハーフエルフである貴方だからこそ、

責務を全うする義務があるのではないですか?

 

フェ:これはエレナらしくもない。

   数多(あまた)の血を流せと直截(ちょくさい)に申すのか?

 

エレ:いいえ?

人ならざる者なればこそ、

   人として振る舞わねば皆は離れていきます。

   わたくし達は血の御蔭(おかげ)で今の立場に居られるのですから。

 

フェ:殊勝(しゅしょう)な心がけよ。

   どこぞの戦好きの様に、

己の力一つでのし上がったと慢心してはおらぬか。

 

ガル:聞こえたぞこら。

   俺は慢心してもいねえし一人でもねえ!!

 

エレ:あら?

   では何ですの?

 

ガル:確かにガーデウス家は侵略と守護を任ぜられた『王の右腕』だ。

   だが俺は、

部下達と共に覇道を突き進む。

 

ゼオ:うん?

何と申した?

 

カミ:覇道だと?

   貴様、王にとって代わろうとでも言うのか?

 

ガル:王が今のままならな。

   俺の方がもっと上手くやれると思ったら考えるさ。

 

ゼオ:若造!!

踏みしだいた敵の(しかばね)を後にしてそれをほざくか?

   守れなんだ民を前にしてそれを貫けるか?

 

ガル:部下だけじゃねえ、

戦った敵も護るべき民も皆俺の(かて)だ。

俺は何一つ無駄にしねえ。

 

カミ:むっ……!!

 

フェ:ほう。

 

ゼオ:フハハ……!!

   わしもお主も生まれる時代を間違うたのう、

   300年前に生まれておれば聖魔戦争とやらに参加して、

   永劫(えいごう)の命を手に入れることが出来たであろうに。

 

フェ: ……さて。

   我も戦地へ戻るとするか。

   さっさと閣議(かくぎ)へ通して、

予算を廻しておけよ?

 

エレ:フェンシア様……。

 

フェ:絵図通りに動くのは(しゃく)だがエレナの言う通りだ。

   我も我なりの戦を貫くとしよう。

 

ガル:俺ももう行くぜ?

   (はら)(うち)は見せた、

   後はゼオ(じい)が上手くやってくれるだろ?

 

エレ:ガルフォード……。

 

ガル:まあ、

人間(とし)を取るって事は変わるって事よ。

   昔はあいつと一緒に遊ぶのも楽しかったが……。

   へへっ、じゃあな。

 

カミ:ではゴラムザード卿、

   私も職務があります故。

 

ゼオ:ほう、お主(まで)もが小童(こわっぱ)めに触発されたか?

 

カミ:( 躊躇い )―――我等の生き場所は王城にあらず。

   中の事は貴方様にお任せします。

 

ゼオ:今月中にケリをつけよ。

   兵も金も廻してやる、

   無能の烙印(らくいん)はその身でそそぎ落とせ。

 

カミ:承り、ました。

 

エレ:ふふっ……。

殿方は良いですわね、

(とし)を取れば取る程()()まされていくのですから。

 

ゼオ:お主もマディーンへ(おもむ)くが良い。

   解って()ろう?

   このゼオルードに任せておけば万事(ばんじ)上手くいくと。

 

エレ:皆貴方にとっては孫の様な者ですものね。

   信じていますわ、

   ゼオルード様。

 

ゼオ:はて?

   女とは(とし)を取る程黒く濁っていくものじゃったかのう?

 

エレ:ふふっ……わたくしはただ、

皆様の健勝(けんしょう)を祈るばかりです。

 

ゼオ:子が産めぬ身体だからと言って独り身を決め込むな。

   その愛を一人の男に注いでやれ。

 

エレ: ……わたくしも、

もう行きますわね?

   シルヴィアの様子も気がかりですし。

 

ゼオ:どちらのシルヴィアじゃ?

 

エレ:勿論、

両方ですわ。

   ……それでは。

 

ゼオ: ……ふふ。

   面白くなってきたわい、

   まっこと、

長生きはするものじゃのう。




 
 
 
     
 
           
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