題名 |
公開日 |
人数(男:女:不問) |
時間 |
こんな話 |
作者 |
風のシルヴィア(14)~情熱旋風~
|
2014/10/17 |
5(3:1:1) |
25分 |
俺は後悔していない。自分の人生に、決断に。
|
ニコ |
登場人物
(年齢) |
性別 |
その他 |
シルヴィア
(26) |
♀ |
主人公。
金髪碧眼の美女。
バトル大好きの元騎士。 |
ロヴェル
(30) |
♂ |
シルヴィアの元上司。
黒髪紫眼の良い男。
一体○―ウィンなんだ……? |
ジーニアス
(17) |
不問 |
『王の影』と呼ばれる英雄の一人です。
飄々とした感じでお願いします。
若々しさ、解き放つ。
|
通行人(不詳)
カミュ(42) |
♂ |
兼ね役でお願いします。
通行人は怪しい感じで。
カミュは貴族の様に上品に嫌味たらしくお願いします。 |
商人(不詳)
行商人(不詳) |
♂ |
兼ね役です。
情熱的なモブです(一応演じ分けてください)。
ノリノリでやると楽しいです。 |
「風のシルヴィア(14)~情熱旋風~」
記憶を取り戻したシルヴィアは砂漠の国でかつての仲間と出逢う。
感傷たっぷりに演(や)ってください(厨二
バトルも多少あります。
( 砂漠の国マディーン:商業都市プラシカ )
シル:暑い……。
ここが砂漠の国マディーンか。
面白い店が幾つも並んでいるが……。
商人:おりゃほ(訳:よいしょ)!!
おりゃほ(よいしょ)!!
うぅーい(どっこらしょ)!!
シル:あ…あの。
商人:らだ(訳:いらっしゃい)!!
らだどうがや(いらっしゃい、何にするね)!?
シル:???
じゃ、じゃあこれを。
商人:おいしょおホイキタ(よっしゃ、任せときな)!!
あんべえよろしゃんすぅ(これからも宜しくな)!!
シル:か…買えた……。
ん?
( 間 )( 同じ店にて:喧騒 )
商人:ダアアアラヤアアア(なんだてめえ)!?
えんずうばぁぁが(うるせえ馬鹿が)!!
ほいどぉぉぉ(乞食野郎が)!!
ロヴ:だから何なんだそりゃあ!?
わかんねえよおい!!
俺はクロウリの工芸品を売ろうとしているだけだろうが!?
商人:あぐでぇ(悪党が)!!
あぐでぇよらしゃんすゥ(寄るんじゃねえ悪党が)!!
げでげ、げでげほうじゃあ(出てけ、出てけよ)!!
ロヴ:痛ッ……えっ、しょっぱっ!?
塩って、おい!!
なん…塩撒くのやめてぇ!?
商人:さあ毎度毎度!!
マディーンが誇る星の砂だズラ!!
使えばMPが回復するだじゃあ!!
ロヴ:なんだよ、普通にしゃべれるんじゃねえか……。
あぁ……自信無くすぜ、
ほんと…。
シル:団…長……?
ロヴ:ん?
……おいおい、
その名で俺を呼ぶ女は一人しかいないが。
シル:ロヴェル団長じゃないですか!!
ロヴ:ああ、やっぱりお前か。
偶然にしちゃ出来過ぎてるな。
シル:どうして団長がここに……?
ロヴ:今の俺は商人だぜ?
そしてここは、
砂漠の国マディーンだ。
別に俺がいたって不思議じゃないだろ?
シル:私はただ…赴くがままにここへ来ました。
ロヴ:そうか、その様子じゃ、
記憶を取り戻したようだな。
良かった良かった。
シル:ええ…長い旅路でしたが……。
私は……私は……。
ロヴ:やっと自分ってやつを取り戻せたんだな。
おめでとう、
シルヴィア!!
シル:はい……!!
ロヴ:色々あったが、
やっとこれから。
だな!!
シル:私ッ!!!
そのっ、
愛していました……!!
大好きでした団長!!
ロヴ:ああ……ええっと、
無理だ。
シル:えっ。
ロヴ:おいおい。
一度途切れた紐をこよって何になる?
元通りになったつもりになるだけさ。
シル: ……。
ロヴ:新しい道って奴を、
見つけ出して歩くのは、
まあしんどい事だが、
だからって過去にすがるのは弱虫のやることだ。
シル:そう……ですよね。
軽率でした。
ロヴ:全く、楽しいもんだよ旅って奴は。
お前も人生を謳歌しているか?
シル:団長が私の為に何処まで費やしてくれたのかは知りません。
ですが貴方の御蔭で今の私が有ります。
今までありがとうございました。
ロヴ:限り無きは感謝の心、か。
何時か二人で酒でも汲み交わしたいもんだな。
シル:そうですね。
……もう行ってしまわれるのですか?
ロヴ:ああ。
俺は部下を守れず仲間を見捨てた卑怯者。
お前はアイゼフィールの為に使命を果たした英雄。
……これが一番おさまりが良い。
シル:あれ……?
おかしいです、団長。
いきなり涙が……止まらなくて。
ロヴ:( 優しく )砂漠の風に癒してもらいな。
もう俺がお前に出来る事は充分したさ。
( 間 )( 商業都市プラシカ:夢の謳歌街 )
シル:どうかしてる…私は……。
ここまで来て涙を流して……。
どうしてあの人にすがろうだなんて……。
商人:おう姐ちゃん!?
オハナ垂らして何しとるんじゃ!?
シル:えっ?
商人:ここは情熱の国マディーン!!
炎の様に滾る慕情があるなら、
ぶっ放さんかい!!
シル;お…おお?
商人:燃えんかい小娘!!
まだまだ若いみぎりじゃろうがい!!
熱ぅならんかい!!
ばいじゃああああい(訳:がんばれええい)!!
シル:お…おう…?
商人:ほれ、これこれ!!
マグマベーコンにコブラの卵に、
チクチクトマト!!
ほれほれ、
コハクパンもつけるじゃい!!
シル:あ…ありがと……う?
ですが……これで何をしろと?
商人:なんじゃいワレぃ!?
これでメシが作れるでっしゃろ???
シル:で、でも……調理場も無いし。
商人:なら貸してやるじゃい!!
作れねえなら教えてもやるんじゃ!!
男をメシで飼い慣らして幸せに成らんかい!!
シル:お金は?
商人:馬鹿こぐでね(訳:馬鹿言うな)!!
わらすがらぽしゃって何になるじゃ(子供からぼったくって何になる)!?
シル:( 躊躇い )――。
商人:はよ作らんかい!!
男の居場所ならワシ等が総出で探してやるじゃ!!
あとそこに立たれると邪魔じゃ!!
のけ、のけっ(訳:どけどけッ)!!
シル:情熱の国……ふふっ、
いえいえ……嬉し泣きです。
これくらいは御容赦下さい。
( 間 )( 砂漠の憩い場:『 激オアシス 』 )
ロヴ:ふぃぃぃぃ。
まったくよぉ。
シル:( 明るく )団長♪
ロヴ:ん?
……お前ってこんなにしつこい女だったか?
シル:ふふっ…。
よいしょっ…と。
オアシスで休憩ですか?
ロヴ:( うんざりと )商談がまとまらん。
オマケだボジョーだのとうるさい割に、
商売には手厳しい国だ。
シル:サンドイッチを作ってきました。
いかがです?
ロヴ:シルヴィア……!!
俺は嬉しいぞ、
ようやく女らしくなってくれて……!!
シル:ふふ……。
そういう貴方は、
やっと気楽になれたのですね。
ロヴ:あぁ……毒とか入って無いよな?
前に一度酷い目に逢ってるもんで。
シル:食べるのか?
食べないのか?
ロヴ:はいはい、
当然いただきまっしゃろ?
美女の施しを拒否れば男が廃るじゃい!!
シル::ふふっ、
なんなんですか、それ。
ロヴ:はは、連中の真似だ。
おい、寄越せ。
シル:はいはい。
ロヴ:( 食べながら )この国は、
世界の通り道。
誰だって不毛の砂漠を見りゃ、
踏破したくなるのが普通だが、
中には本当に挑む馬鹿が居る。
そんな個性的な奴等が世界中から集まって、
こさえた国がここさ。
シル:情熱を抱いた人が創り上げた国。
未来と希望と人生を賭けて。
ロヴ:そして道や街を整備し、
同じ穴のムジナを呼びこんだ。
……結局そんな強い奴等も何が辛かったって、
孤独が一番の絶望だったって事だ。
行商:おりゃあ!!
買えやごるぁ!!
損はさせんけえのう!!
通行:なんばいうぞきさん(訳:何言ってるんだお前)!?
わしゃあ腐った魚なんぞくいとうないんじゃ呆け!!
行商:こりゃあハモいうんじゃあほぉ!!
こんな砂漠でも生きとるくらい命張ってるんじゃ呆け!!
買ってやらんかいタコ!!
通行:うげぇ!?
なんじゃそのウニョウニョした……おえっ。
貴方、正気ですか?
行商:なんっ―――!?
……美味しいよ?
シル:ふふっ……。
良いですね、
感情をぶっ放すって。
ロヴ:ああ。
手練手管で女を口説くのも嫌いじゃないが、
ああいうので手に入れた女こそ、
本当に幸せに出来る女なんだろうな。
シル:そんな気がします。
ロヴ:終の棲家には相応しいのかもしれねえ。
負ければ終わるだけってのも気楽でいい。
シル:( 深呼吸 )……良い風です。
ロヴ: ……ああ。
そうだな。
シル:……何だか、
あの戦争の日々が遠い昔の様ですね。
ロヴ:1年あれば人間変わるさ。
仲間の噂もチラホラ聞く。
ああ、何て言ったか、
あの…ほら、
あの青い髪の伊達男。
シル:ティエラ・カプリス。
今じゃアイゼフィールの敵ですものね。
ロヴ:ああ。
お前の隊は面白い奴がたくさんいたな。
何て言ったかな?
黒髪の、
なになにっす~が口癖のガキ。
シル:( 躊躇い:※その子はもう死んでいます )――。
ロヴ:まあ良いさ。
それが応えなら勝手に想うとしよう。
シル: ……ロミオは、
運命で片づけてよい子だったのでしょうか?
ロヴ:自分で自分の絵図を描かなきゃならないのが、
大人の辛い所だが、
それが描けない奴は自殺する勇気も無いのが辛い。
シル:団長は全部思い描いているんですか?
自分のこの先の人生すらも。
ロヴ:( 乾いた笑い )ハハハ…!!
こうなったら、
こうなった成りでな。
それに、
あれだぞ、
お前は後悔なんてするな。
シル:どうして?
……ですか?
ロヴ:お前は良い女だ。
そんなお前の為に何かをしてやれたら、
そりゃあ一番判り易くて簡単な、
男の夢だって事さ。
シル: ……貴方にすがっても、
良いですか?
ロヴ: ……。
シル:私は貴方の傍にいてはいけませんか?
ロヴ:さっきも言っただろう、
夢が人生を狂わせることもあれば、
人生が夢を否定することも有る。
俺の場合は、
これ以上女のせいで人生を狂わせたくない。
シル: ……。
ロヴ:それが、
俺の決めた生き様だ。
シル:ふふっ…氷の様に冷たい信念。
やはり貴方は昔のままでしたね。
ロヴ:はは、お前の御蔭で少しは溶けたさ。
ごちそーさん。
……もう行くわ。
シル:ええ…さよなら。
( 間 )( 激オアシス:水の飛沫の音だけが聞こえ )
シル:( 溜息 )――。
通行:ふふっ、正気かいあんた?
シル:えっ?
通行:どんな仕事だろうと境遇だろうと、
最後に当てはめるピースは恋だろう?
それを恰好つけて手放して、
一体誰が幸せに成れるんだい?
シル:ふふっ、
そんな資格が無いから、
私達は何時までも苦しむのさ。
通行:やれやれ……。
隣、空いてるかい?
シル:見ての通りだ。
通行:どっこらせ……っと。
シル:どうすれば良かったと思う?
どこから間違っていたのかな。
通行:あんたがこっち側に来たいと願って、
ボコボコにされて、
最後に頼るべき男に意地を張って。
さあ、どれがいいね?
シル: ……いや、よそう。
前を向くって決めたから、
私は軽々しく命を賭けるんだ。
通行:あはははは!!
あー……おっかしぃね。
実に君らしい。
シル:あの時、
貴方は影猫と名乗っていたな。
本当に変装の上手いことだ。
通行:『あの時』は僕だけ居なかったからね。
君と出逢うのはこれで2回目って訳だ。
でも、何故だい?
シル:この国には、
貴方の冷たい心は相応しく無い。
……そんな気がしただけだ。
……それは私も団長も同じだが。
通行:ふふ……悪いけど、
記憶が戻ったのなら殺すよ?
ゼオ爺とはそういう取り決めだったものでね。
シル:優しい事だな。
その気になれば背中から心臓を貫く事も出来ただろうに。
通行:冗談!
君みたいな綺麗な人を後ろから襲うだなんて、
そぉんないやらしい真似できまっか!?
シル:御身は『王の影』、ですね?
通行:フフフフ――。
ジー:( 途中から被せる )フフフフ……!!
いかにも。
『古き国の四騎士』が一人、
『王の影』。
ジーニアス・フィール・トライダアト。
貴女を殺らせていただきます。
シル:( 微笑みながら )元エルツィ傭兵団一番隊隊長、
シルヴィア・シルフィードです。
宜しく頼みます。
ジー:さぁて……、
どこから始める?
二人ともベンチに座ったままってのも乙で良いけどさ、
僕としちゃあ、
誰も居ない所で二人っきりになりたいなぁ。
( 間 )( 刹那にして凍りつく夢広場 )
シル: ……ふう。
ジー:ん?
シル:ふんっ!!
ジー:うあっ!?
シル: ――ッ!?
へえ。
流石に速いな。
ジー:なな、何が!?
正々堂々じゃないの!?
シル:あいにく騎士と名乗ったのは遠い昔の事だ。
今の私はただの旅人さ♪
ジー: ……あぅぅ。
うぜぇ……。
シル:こう人前では十分に力を発揮出来ないだろう?
自慢の化けの皮も剥がれそうだぞ?
ジー:別に素顔を見せるのは良いけどさ、
見た奴を皆殺しにする手間がかかるからねぇ。
シル:退くつもりは無いのか?
ジー:これも役割、
生きるも死ぬも駄賃には含まれている。
シル:ならば……行くぞッ!!
ジー:( 独白 )速いな……。
随分と成長している。
蘇った記憶と、
旅をした経験。
(微笑み)……良い宝物だ。
シル:くっ!?
ジー:でももう少し、かな?
シル:二つの黒い短剣、
それがお前の獲物か!!
ジー:紹介するよ。
黒刀、
『闇』と『暗』、
君のドラゴンスレイヤーと同じくらいの、
いわくつきだ。
シル:私の事は全部お見通しという事か。
だが、私は戦えるぞ!!
私は強くなった!!
ジー:ふふっ。
良いねえ、
風の神獣に貰った宝剣か。
……お互い全力で行こうじゃないか。
シル:応とも!!
風のシルヴィアが我が大綱に問う。
血沸く龍の真言よ、
大神獣リューシオンの加護の元に具現し、
今この刃を破邪の御剣と化さん!!
ジー:貶めよ、闇。
喰みつくせ、暗。
刹那の残光に黒き憎悪を込め、
汝の血潮を紅き叫びで満たすべし……!!
シル:『風龍神の戦加護』!!
ジー:『闇喰乃斬子』。
シル:行くぞ!!
英雄!!
ジー:ふふ…何処からでも……!!
( 間 )( 商業都市プラシカ:暗い袋小路 )
ロヴ:さて、
一体俺は何処から騙されたのか。
行商:ん?
だら(訳:どうしたんだ)?
えんずうがら、けたぐったべや(面倒くさいから、絡んでくるなよ)。
ロヴ:俺にとっては大事な話だ。
確かにあんたは『完璧な行商人』だよ。
情けは人の為ならずってのを体現している。
行商:げはは!!
むなやげがするじゃあ(訳:胸がざわざわするって)!!
わぎぃな、わぎぃな(おだてんな、おだてんな)。
ロヴ:だがな、
何処にも理想郷なんて物は在りはしないのさ。
浮浪者には恵みを、
悲恋に耽る者には導きを、
正義の為に利益を否定する。
なんて聖人は特にな。
行商:じゃあ(訳:こら)!!
かだぐぜえでば(堅苦しい話は抜きにしな)!!
わでらはほぉがいでっしゃろ(俺達は同胞じゃないか)!!
ロヴ:あいにくとこの場所は、
こっちにとっても都合が良い。
行商:わっ、わわっ!?
やめれ!!
ロヴ:この狭い場所で二人きりだ。
人違いでも……誤魔化しが効くからなッ!!
行商:げひゃぁぁあ!?
ロヴ:果たしてどうかな?
あの商人もあんたも『同じ人物』。
違うかな?
行商: ……ぅぅ。
ロヴ:ではもう一刺し。
ジー:止めてください死んでしまいます。
ロヴ:ハハ、御久しい事ですね、
『王の影』、
トライダアト卿?
ジー: ……ちぇっ、
詰まらないな。
君の方は真面目に暗殺しようと思ってたのに。
ロヴ:なにゆえですかな?
ジー:君が商人に収まっている器じゃないからさ。
だってそうだろう?
元アイゼフィールの男爵殿。
ロヴ:随分と買い被られたものだ。
愚か者と看過して下されば、
下手な真似もしないものを。
ジー:まあ正直に言えば、
僕個人が君達に魅せられたってのも大きい。
君達が僕達に憧れた様にね。
ロヴ:なにが(笑)
私はそんな殊勝な人間じゃありませんよ。
此の名前も、
都合が良いので名乗っていただけの事です。
ジー:そうなのかい?
僕には君もシルヴィアも、
夢を追いかける童にしか見えなかったけど。
ロヴ:ハハッ……。
まぁ、それは置いておきましょう。
どうしますか?
殺し合いますか?
ジー:残念だけど歯が立ちそうに無いなぁ。
シルヴィア相手でさえ、
あれ程手こずっているんだ。
影の僕じゃあ尚更だよ。
ロヴ:『王の影』トライダアト。
文字通り暗殺・諜報を統括する貴方は、
自在に操れる影を3つ持っていると聞く。
ジー:その通り♪
僕の属性は『 虚 』。
何処にもいるし何処にもいない。
だから僕を殺すことは誰にもできない。
ロヴ: ……隠すなよ。
本体を殺せば影も消えるし、
その影にしたって『奥の手』が在る筈だ。
ジー: ……おやおやぁ?
英雄に興味の無い君が、
どうしてそんな事まで調べているのかな?
ロヴ: ……元エルツィ傭兵団団長、
ロヴェル・バークライツだ。
相応しい相手を召喚しな。
ジー:アハハ……うむ!!
では我が『操影陣』の妙をご覧ぜよ!!
憑・依っ!!
ロヴ: ……なっ!?
カミ: ……ふう。
ロヴ:こいつは……!!
カミ: ……ほう?
ジーニアスの小僧め、
どれほどの理由でこの私を召喚したのかと思えば、
とんだ獲物ではないか。
ロヴ:まさかあんたが出てくるとはな!!
『王の剣)』、
カミュ・レーヴ・フィーバストルテ!!
カミ:軽々しく私の名を口にするな、
裏切り者め。
ロヴ:ふふ……あんたには借りがあったな。
カミ:うぬ?
何の事だ?
ロヴ:うちの最年少の隊長の事だ。
俺が居ない間に、
随分と好き勝手に弄ってくれたらしいじゃねえか。
カミ: ……ああ、それか。
だが、あの時貴様が傍に居たとして、
結末は変わっていたのかね?
ロヴ: ……ッ!!
カミ:貴様とて数多の犠牲の上にあの地位に立ったはずだ。
正直な所、
私は貴様に一目置いていたのだぞ?
ロヴ:そりゃあ、
有り難いこって。
カミ:クフフ……!!
( 煽る )それが、
たかだか女一人の為に総てを投げ出す愚か者であったとはな。
やはり下賎の血は贖えんか。
ロヴ: ……なあ、
俺の傭兵団はどうだい?
カミ:ぬっ!!
ロヴ:あんたが引き継いだエルツィ傭兵団だよ。
原石の兵団。
皆俺にとっては家族であり、
仲間であり、
愛していた。
カミ:だが貴様はそれさえも見捨てた!!
私と何が違うというのだ!?
ロヴ:俺は後悔していない。
自分の人生に、
決断に。
カミ: ……ッ!!
義務も果たさず責任を放り投げ!!
誰も彼もに責務を押し付け、
何をいけしゃあしゃあと!!
屑の分際で私に語りかけるな!!
ロヴ:( 微笑む )あんたも大変だろうな。
英雄のままで居るってのはさ。
カミ: ……抜けぃ。
小賢しい舌は命ごと斬り捨ててくれる。
ロヴ:ああ、
いくぜっ!!
( 間 )( 激オアシス:血潮で語る少女の夢は )
シル:( 荒い息 )ハァ…ハァ…。
ふふっ……余所見ですか?
ジー: ――!?
あ…いや失礼、
向こうが面白そうだったもので、つい。
シル:斬りましたよ。
ジー:ん?
……ぐぁっ!?
シル:確かにそのスピードは圧倒的です。
私の心眼を以てしても捉える事は敵わない。
ジー: ……これは申し訳ないな。
決して飽きた訳では無かったのだけれど。
シル:貴方は暗殺者であって騎士では無い。
迷いを振り切れる時間には限りがある。
そうでしょう?
ジー:迷い……。
( 笑い )そうか、僕は迷っていたのか。
シル:それでも貴方には敵いません。
貴方が本気で来たのであれば、ね。
ジー:いやいや、君は強いよ。
自信を持って良い。
シル:私が好きならここで手を引いてください。
あるいは私達から。
ジー:ふぅむ。
( うんざりと )しかし此処で手を引くと、
あの親父がうるさいしな。
シル:大丈夫です。
きっと私達はまた出逢えます。
もっと相応しい舞台で、
全力で戦える日が来るはずです。
ジー: ……ふふ。
なんてキラキラした眼をしているんだい。
シル:くすっ。
楽しかったから、つい。
ジー:ああ…僕は何と言う事だ!!
流石は砂漠の大国マディーン。
何時の間にか麗しき蜃気楼に騙されてしまったようだ。
シル: ……お元気で。
ジーニアス殿。
ジー:君もね、
シルヴィア君。
僕をわくわくさせる素敵な旅をまだまだ続けてくれ。
じゃあねー♪
( 間 )( あの干戈の残り香は今も心に )
シル:ふう……。
つっかれたぁぁぁ!!
……オアシスで水浴びしたら、
皆に怒られるかな?
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