題名 |
公開日 |
人数(男:女:不問) |
時間 |
こんな話 |
作者 |
風のシルヴィア(17)~終わる筈だった物語~
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2014/11/30 |
5(2:2:1) |
25分 |
あの子は救われたがっていた!!
今あの子が必要としているのは……。
私なんだ……!!
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ニコ |
登場人物
(年齢) |
性別 |
その他 |
シルヴィア
(26) |
♀ |
強くて優しい皆の主人公(?)
戦好きですが決して野蛮ではありません。
良い女なのです。 |
ミルケット
(17) |
不問 |
主人公(!?)
出番も多く演じ分けも大変ですが頑張ってください。
やりがいはあります。 |
エレナ
(30) |
♀ |
麗しの女司令官(30)
敵役でミルケットの後見人。
叫ぶシーン大目です。
|
アーウィン(30)
ジーニアス(17) |
♂ |
アーウィン:ベテランの傭兵(商人)
ジーニアス:明るくひょうきんな英雄(ガキ)
※出番少ないので兼ね役をお奨めします。
アーウィンは最後にナレーションもお願いします。 |
ゼオルード
(226) |
♂ |
堂々とした老魔術師にして大英雄(鬼畜)。
恐竜の様な雰囲気の大柄なお爺ちゃんです。
長台詞大目なのでテンポ良くお願いします。 |
「風のシルヴィア(17)~終わる筈だった物語~」
何者でも無いままに生きて、何者でも無いまま消えていく人間。
そういうのを描きたかったのです。
そういう話です。
( ゴミ溜め:汚水のほとり )( ※回想シーン )
ミル:雨……打ちひしがれる。
……。
ただ痛く…冷たく……。
だけど後悔すらも洗い流してくれるような……。
……。
ゼオ:( 小声で呟くように )何じゃこの臭い…。
鬱陶しい……。
まぁったく…世も末じゃ……。
ミル:声……?
誰かが近づいてくる……。
ゼオ:おぉ……!?
生きておったか!!
祝着、
祝着。
間に合わなんだ、
では話にならぬでな。
ミル:( 今にも死にそうな演技で )
……誰だ?
ゼオ:お主に詮索する暇等無かろうて。
だが、そうさな、
敢えて述べるとするならば、
皆からは時の翁と呼ばれておる。
ミル: ……ガキが餓え死ぬ様を高みの見物か。
偉そうな爺さんだ。
ゼオ:フハハ……言葉通りよ。
国ではそれ相応の地位におるのでな。
ミル:ゴホッ…!!
ゴホッ……!!
ゼオ:時にお主、
己の生を何と心得る?
ミル: ……ゴホッ。
このままゴミ溜めで餓え死ぬだけの俺に、
どうしてそんな事を考える必要がある……?
ゼオ:施しや説法をする為にここへ来た訳ではない。
儂とて時は惜しいでな、
端的に言わせてもらうが――。
ミル: ……。
ゼオ:お主、
英雄に成ってはみぬか?
ミル: ……はぁ?
ゼオ:なに、
即席者ではあるがな。
やはりそれにはお主の血筋が必要なのよ。
ミル:俺の血?
ゼオ:応ともさ、
お主の『同化』の特性は、
他者の心に己の心を投影する。
……そうじゃな、
判り易く言えば奴隷は奴隷らしく、
英雄は英雄らしくあれと心に刻みつける術じゃな。
ミル: ……ッ!!
ゼオ:ふむ、
これ以上老いぼれに口説かれても詰まらぬか。
……エレナ。
エレ:はい。
ゼオ:ジーニアス。
ジー:やあっ♪
ミル:あんた達……。
何時の間に……。
ジー:君さぁ、
野垂れ死にするくらいなら僕たちの仲間に成りなよ。
どうせ死ぬんだろう?
受かれば英雄、
詰んじゃえば、
ちょっと苦しんで死ぬだけなんだしさ。
ミル:仲……間……?
ジー:おっ、
そこに反応するとは……。
やはり餓えていらっしゃる?
エレ:私達と共に来ては下さりませんか?
ミルケット君。
ミル:う……うぅ……。
エレ:私達と共にある限り、
決して私達は貴方を見捨てません。
だって家族になるのですから。
ミル:家族……。
こんな俺が……。
呪われた家で生まれ、
最後まで恨まれ続けたこの俺が、
そんな幸せ……。
ジー:掴めるさ。
自分からそういうのを手放す馬鹿も居るけどさ、
結局マジメに生きていれば、
皆が君を大事にしてくれるようになるよ。
ミル: ……。
エレ:わたくしの養子になってくれても構いませんのよ?
何せわたくしは『ディオールの四騎士』ですもの、
貴方にもそれ相応の暮らしをさせてあげられます。
ミル:どうして……おかしいじゃないか。
俺はここで終わる筈だった。
こんな出来過ぎた話で……。
最後に俺を迷わせるなよ……!!
エレ: ……貴方が必要なのです。
ミル: ……?
エレ:言葉を信じられないのなら何でもします。
だから貴方を救わせてください、
それだけで私も救われるから。
ミル:俺を……愛してくれるのか?
エレ:神に誓います。
私の傍に居てください。
……貴方を愛し続けます。
ミル: ……ぁさん。
エレ:はい?
ミル:母さんって、
呼んでも良いですか?
エレ:お母……さん?
ミル:条件はそれだけで良い、
……本当にそれだけで良いんだ。
( 間 )( 独白 )
ミル:何故俺が選ばれたのかは知らない、
だけど俺は英雄となった。
戦場で殺し合い、
その後で母さんと呼ぶ人と暮らし、
また殺し合って。
そして俺は……その時を迎えたんだ。
( 間 )( 白砂の決戦地:『サシャ』 )( ※:出来れば剣劇・喧騒のSE )
シル:はあ…はあ……!!
ミル:ガアッ!!
シル: ―――ッ!?
殺られるッ!?
アー:シルヴィア!!
ミル:グアアアァァァ!!
アー:グアッ……!!
シル:そんな……貴方が庇うだなんて!!
何故ッ!?
アー:この傷でお前が助かるのなら採算が取れる……!!
用が出来たら呼ぶからよ、
それまでせいぜい息を整えておけ!!
シル:アーウィン……!!
ミル:グァァァ!!
アー:ハッ……行くぞ竜騎士!!
傭兵だからと侮るな?
経験ならば『偽者』の貴様とは格が違うぜ!!
ミル:グゥゥ……!!
アー:この決戦で総てが決まる……!!
お前達にかき乱されたマディーン大戦も、
俺の人生も、
総てがここで決着するんだ!!
シル:アーウィン……。
やはりそうだったのですね。
貴方にとって、
栄光の無い人生とは――。
エレ:( 被せる )では貴女にとっての救いとは何なのかしら?
シルヴィア。
シル:エレナ……!!
エレ:あの時貴女は言ったわね?
総ての行いは自分の為だと、
だから全力で戦える、
と。
シル:ふっ、
この間隙を見逃すとは侮られたものだ。
エレ:待っていてあげたのよ。
貴女の息が整う迄ね。
シル:それはお優しい事だ。
だが、
あいにくと無駄話に付き合うつもりは……無い!!
エレ:素晴らしいわっ!!
なら戦いながらでも良いからお聞きなさい?
シル:何だッ!?
エレ: ……私達は決して負けない。
シル:これは……光魔法の詠唱破棄……!!
あぐっ!?
エレ:貴女は夢をそらんじて、
私は運命に操られ、
あの子は絶望の中に居た。
シル:くぅっ……!!
戯れ言を!!
エレ:あの子と私は同じ者よ。
自由を手に入れようと足掻き諦め、
そのままの人生を歩んできた。
だから憎いの、
貴女とプーデットが。
シル:何だとッ!?
エレ:隙が。
シル:ぐあっ!?
エレ:くすっ。
……詰まらない女。
貴女の描いた軌跡に何の意味があって?
こうやって届かぬ刃を無様に振るうだけじゃない。
シル:( 呟く )く……。
したんだ……。
エレ:なぁに?
何なのかしら?
シル:プーデットと約束したんだ!!
ミルケットを助けるって!!
エレ:助ける?
……あの子が不幸だとでも言うつもり?
シル:貴女はあの子の母だと言ったな。
だったら、
だからこそ言えない事もあったんだ!!
エレ:解った風に……!!
私達に口出ししないで!!
たった一夜を過ごしただけで理解者の振りをしないで!!
シル:あの子は救われたがっていた!!
今あの子が必要としているのは……。
私なんだ……!!
エレ:ズダボロの癖に良く言うわね、
自分の姿を見てみるといいわ。
シル:( 荒い息 )ハア…ハア……!!
……ッ!?
エレ:醜いつぎはぎだらけ、
今度は顔に消えない痕を残してあげる。
シル:ミルケットはもっと傷ついている!!
1人の人間すら救えずに何が女だ!!
どうして人間を名乗れるっていうんだ!!
エレ:何……傷が……!!
内側から滲み出して……!?
シル:私はこんな身体でも人間を名乗っていたい!!
アーウィンだってそうだ!!
かつての貴女も……!!
そうだった筈だ!!
エレ:成程……龍の血の御蔭ね?
怒りをそのまま力に変える、
龍真言とやらだったかしら?
シル:行くぞ!!
エレナ!!
エレ: ……本当に後悔しているというの?
ミルケット……。
私は……。
( 間 )( エレナの家:居間 )( ※回想シーン )
ミル:母さん。
エレ: ……。
ミル:母さん!!
エレ:えっ?
あっ、ああ。
そうでしたわね。
ミル: ……。
エレ:そんな顔をしないで?
わたくしも色々と考え事があるのですから。
ミル:考えって何さ?
エレ:マディーンとの戦の事ですわ。
ミル:どうして戦争する事になったの?
エレ:我々の力を見せつける為です。
ミル:それだけ?
大義とかは?
エレ:名分などは後から付ければ良いのです。
国とは本来そこに在るだけで敵を作るものですから。
戦わない国は健全ではありません。
ミル: ……俺も行かなきゃいけないんだよね?
エレ:そうねミルケット。
貴方は竜騎士として兵達を鼓舞する指揮官にならなくてはね。
ミル: ……。
エレ:貴方の今までと何が違うのかしら?
ミル:どうして自分を偽るのさ。
エレ: ……。
ミル:俺は母さんが好きだ。
だから俺の前では素直になってよ、
じゃなきゃ家族だなんて言えないじゃないか。
エレ:本当の家族にしたって、
本当の事を言えるとは限らないわ。
私だって若いころは母様に随分と反発したけどね、
心の底では――。
ミル: ……。
エレ:ふふっ…そうね、
そういう意味では、
私達は本当の家族なのかも知れないわね。
ミル:これ……あげるよ。
エレ:えっ。
……指輪?
ミル:木の神獣フェルディアースの加護がついてるんだ。
それがあれば傷が早く治るって話だよ?
エレ: ……どうして?
ミル:誰だって自分の母親が傷つくのは見たくないだろ?
ましてや母さんは誇り高き四騎士なんだから。
エレ:私は……。
……いいえ?
ありがとう。
ミルケット。
ミル:へへっ♪
ゼオ:おう、
これは間が悪かったかの?
ミル:うわぉっ!?
エレ:御機嫌よう。
ゼオルード様。
ゼオ:空間転移も考え物じゃて。
さりとてこの老骨では、
歩き回るのも労苦でな。
ミル: ……そんな事無いさ。
『父さん』。
ゼオ:フッ…フハハ……!!
まあお主には儂の魔力もいささか注いでおる故、
やぶさかでも無いがな、
このゼオルードを相手に『 父 』とは滑稽じゃのう。
ミル:良いんだ、
俺は皆を愛することにしたんだ。
まるで今までの俺とは別人さ。
ゼオ:左様か。
では儂は、
これからお主の母とやらと小難しい話をするでな、
巻き込まれたくなくば、
早々に立ち去るが吉じゃぞ?
ミル:そうだな。
ガキはガキらしく、
ガキと遊ぶとするよ。
エレ:ミルケット。
ミル:ん?
エレ:気を付けてね。
ミル:ああ。
解ったよ母さん。
( 間 )( 王都アイゼフィール:屋根上の情景 )( ※回想シーン )
ミル:あ~がりっ♪
また俺の勝ちだな♪
ジー:かあ~~~!!
どうにも強いねぇ、
このゲームとミルとの相性が良いのかなぁ?
ミル:硝子の国の雅なカードゲームだろ?
ジーニアスにしては小洒落てるじゃないか。
ジー:僕にしては何だって?
ボコるよ?
龍化してない君なんて只のガキなんだからさ。
ミル:へへっ♪
いいさ、
それも悪くない。
ジー:死にたいのか?
ミル:いいや?
それも悪くないなって、
只そう思っただけさ。
ジー:身勝手な奴。
豊かになった途端死んでも良いだなんてさ、
君に幾らのお金が注がれたか解っているのかい?
ミル:だってこんな景色を見てたらさ。
……城下町の屋根の上でさ、
のどかにゲームをして、
父さんに母さんも居て、
わざと負けてくれる友達も居て、
俺はもうそれだけでさ……!!
ジー: ……。
あいつに似てるよね、君。
ミル:あいつって誰だよ?
ジー:運命に振り回された可哀想な子。
ミル:ああ……。
ジー:何て言えばいいんだっけ?
こういう時は。
……そうだ、
君に武運が有ることを祈っているよ。
ミル:ははっ!!
ジーニアスって、
誰かの振りをしていないと本当に駄目だよな。
ジー:それもまた~人生~♪
……なんてね。
僕の素顔を知った者は皆死ぬのさ。
だからこれだって他の誰かの顔なんだ。
ミル:何時か俺の魅力で、
お前の本当の顔って奴を覗かせてやるよ。
ジー:オマエ男色家かよぉ!?
まあ別にいいけど。
ミル:約束する。
ジー:期待している。
ミル:行ってくる。
ジー:行ってらっしゃい。
まあ、
僕もついていくんだけどさ。
情熱の国マディーン。
( 間 )( 決戦:白砂を紅く染めて )
ミル:グオォォォ!!
アー:ハアッ!!
ミル:グウゥ……!!
アー:へへっ……!!
良いのかねえ、
俺なんかにかかりっきりでよぅ……!!
ミル: ……!?
アー:周りを見てみな?
元々英雄頼みのアイゼフィール軍だ、
ならば戦局も覆って已む無し、
だろう?
ミル:グゥゥ……!!
アー:母さんとやらも苦戦しているようだぜ?
どうする竜騎士!?
ミル: ……ッ!?
エレ:ハァ……ハァ……!!
シル:ハァ……ハァ…!!
どうしたエレナ!!
『ディオールの四騎士』が小娘相手に足止めかッ!?
エレ:強くなったわね……!!
シルヴィア……!!
龍化や風の神剣等ではない、
その意思の強さこそが私に死を覚悟させる!!
シル: ……もう止して下さい、
私達はこうなってしまったのです。
ならば最後まで『らしく』振舞いましょう。
エレ:ふふっ……。
戸惑う貴女はとても素敵ですよ?
結局、
私達は惹かれあったまま殺し合うのですね。
シル: ……本当に残念です。
もしも貴女と違った形で出逢っていたなら……!!
きっと私達は……!!
きっと……!!
エレ: ……そうね。
さようなら、
シルヴィア・シルフィード。
シル: ……さらばです。
エレナ・サースティ。
エレ: ……。
シル: ……。
シル&エレ:ハアアアァァッ!!
エレ:( 独白 )……ふふっ。
ちょっぴり遅かったわね。
まあ、
この子に殺られるのなら……それも……また。
ミル:グオオオオッ!!
( 間 )( 何処かの闇 )( ※回想シーン )
ミル:何だい父さん?
こんな所へ呼び出して。
ゼオ:おぉミルケット、
待っておったぞ?
ミル:悪いけど時間なら無いよ?
これからカミュさんに剣術を教わるんだ。
いけ好かない人だけどさ、
腕は確かだし、
ちゃんと教えてくれるからね。
ゼオ:結構、
結構。
良き心掛けじゃな。
ミル:へへっ♪
ゼオ: ……ところでお主、
殺し合いは嫌いか?
ミル:えっ?
ゼオ:エレナから聞いたぞ?
どうにも情に溺れ、
在り方を損なってしまったようじゃな。
ミル:殺しが好きな人間なんているのかよ?
そんなのは殺人鬼だ。
ゼオ:応とも、
我等は殺人鬼に相違無い。
もっとも、
格別の力を持った悪鬼羅刹じゃがな。
ミル:えっ?
ゼオ:だからこそ我等は英雄なのだ。
違うか?
ミル: ……。
ゼオ:応えよミルケット。
弱き者、
惑う者に誰が惹かれる?
誰が金を払い国土を託す?
ミル:それは……。
ゼオ:血肉を貪り目玉を抉れ、
母親の前で赤子を噛み殺せ、
倅の前で親を血祭りに上げろ、
その狂気こそが民の求める強者の在り方なのだ。
ミル:そんなッ……!!
俺はそんな人間になんかなりたくない!!
ゼオ:解らぬか、
ふふ……まあ解らんでも無い。
ミル:どうしたんだよ父さん!?
狂ったのか!?
ゼオ:ところでお主、
兄が居るそうじゃな?
ミル: ……。
ゼオ:名はプーデットと言ったか。
良く理解し、
良く愛嬌を振りまく子幸せな男だと聞く。
ミル:ああ、
俺は兄さんに憧れて旅に出たんだ。
ゼオ:ならば兄と弟、
同じく流浪の道を歩んだ生に、
何故これ程の差がついたか解るか?
ミル:それは……。
ゼオ:片や皆から愛される幸福者、
片やゴミ溜めで死ぬ筈だった取るに足らぬ落伍者。
……何故かのう?
ミル:何が言いたいんだ?
ゼオ:お主は兄の代わりに歪を背負い、
兄の不幸を避ける為だけに創られた贄よ。
故に光も当たらぬ闇の世界で生きてきた。
ミル: ……止めてくれ。
ゼオ:兄と違い身体を穢し、
他人を殺し、
無様に悪辣に生き抜いて来た糞餓鬼がお主よ。
何も変わらぬ、
( 笑い )運命のせいにしたところで空しいだけじゃて。
……お主は自ら間違いを選び続けて来た出来損ないなのだからな!!
ミル: ……うっ!?
うぷっ……!!
( 嘔吐 )――うげぇぇぇぇ!!
ゼオ:用はこれで仕舞じゃ。
家族とあらば、
夢から醒まさせてやらねば哀れでのう。
ミル:( 泣く )うっ…うぅ…。
ゼオ:後は好きに生きるが良い、
出来損ないに描ける未来があるのならな。
ミル:( 泣きながら )ひっく…ひっく…!!
俺は……!!
俺はどうすればいい……!?
ゼオ: ……ああ?
ミル:教えてくれ……!!
こんな俺はこれから先どうやって生きていけばいいんだ……!?
ゼオ:フハハハ……!!
何、下らぬ事よ。
ミル:答えを!!
ゼオ:素晴らしきこの世界を謳歌せよ。
英雄とやらに成り下がり、
殺し合いを楽しめれば今まで通りに暮らせる事じゃろうて。
……のう?
『息子』よ。
ミル: ……それで赦されるなら、
幸せに成れるとしたなら……。
俺は……。
( 間 )( 貫かれたものは )
ミル:グゥゥ……!!
エレ: ……ミル…ケット?
ミル:ゴファッ……!!
エレ:ミルケット……!?
嫌……嫌アアァァァ!!
シル:馬鹿な……。
ミル:ゲハッ!!
ゴフッ、ゴフッ……!!
ゴボッ……!!
エレ:そんなっ!!
どうして私を庇ったりなんてしたの!?
どうしてぇッ!?
ミル:母……さん……。
だか……ら。
エレ:そんなものは建前でしょう!?
私に子供が出来る筈無いじゃない!!
ミル:いいや……。
母さんは……紛れも無く……俺の。
エレ:違うわよ……!!
何処の世界に子供を戦場へ連れ出す母親が居るの!?
ミル:だけど俺の為に泣いてくれてる……。
それだけで良い……。
俺の為に泣いてくれた人は……。
この世界で貴女だけだった。
エレ:嫌よ……!!
こんな結末……!!
そうだ、
治癒してあげる!!
まだ遅くは無い、
私は聖騎士なのだから!!
ミル: ……へへっ。
エレ:傷が治らない!?
ミルケット!!
貴方!!
シル:治癒を……拒んでいるのか?
ミル: ……これで良いんだ。
……もう充分だよ母さん、
俺には勿体無いくらいの幸せだったさ。
エレ: ……。
シル: ……お前とプーは良く似ているよ。
ただ少し、
選び方が下手だっただけなんだ。
ミル:ありがとう……シルヴィアさん。
あーぁ……。
くっそぉ……。
あんたの隣に居たかったのになぁ。
シル:( 微笑み )――そうだな。
ミル:ああ……そうだ。
兄さんに言っといてくれよ。
兄さんの代わりになれたのなら嬉しいって。
シル:えっ?
ミル:あの時そう言えなかったのが……。
本当に最低だった。
シル: ……解った。
確かに伝えて――。
ゼオ:( 被せる )おお、
間に合うたか!!
シル:何ッ!?
エレ:ゼオルード様!?
どうしてここに!?
ゼオ:治癒を拒むとあらば致し方あるまい、
ならば息子よ、
我が血肉として生きてはくれまいか?
シル:くっ、
結界か!?
ここから出せ!!
エレ:ゼオルード様!!
止めて!!
ゼオ:退け。
エレ:あぐっ!?
ゼオ:お主は使えん。
そこになおり、
我等の顛末を見届け、
性根を直すがよい。
エレ:くっ!?
結界ですって!!
そんな……ミルケット!!
ミル:ふっ……。
そういう事か、
『お父さん』。
ゼオ:左様。
儂にはどうしてもお主の力が必要なのだ。
要らぬのならばくれい。
ミル:どうせ野垂れ死ぬ筈だった身だ。
あんた達から貰ったものは全部返していくさ。
ゼオ:済まぬな……息子よ。
決して無碍にはせぬぞ?
カアアッ……!!
( 咀嚼の演技 )―――!!
ミル:グァッ…!!
シル:ひっ!?
エレ:うっ……うぅ……!!
やめてぇ……!!
もうやめて下さい……!!
ゼオルード様ぁ……!!
ゼオ:( 咀嚼の演技 )――。
ミル: ……。
シル:ゼオ……ルードッ……!!
貴様アァァァァ!!
アー:それはさながら悪夢だった。
英雄が英雄を喰らう、
その凍てつく光景は俺達の戦意を奪い、
決戦の場を失ったマディーンとアイゼフィールは、
程なくして和睦を結び、
俺達の戦争は終わりを告げた。
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