題名  公開日   人数(男:女:不問)  時間  こんな話  作者

 風のシルヴィア(19)~金色(こんじき)獅子(しし)

2014/12/28  6(3:2:1) 30分

私は総てを無くしてしまったことに気付いて、やっと自由になれたんだ。

 ニコ

登場人物
(年齢)
性別 その他
シルヴィア
(26)
流浪のままに必死に生きてきた女性。
優しく勇気があり、
不思議と皆が憧れてしまう存在。
ガルフォード
(32)
この話はガルフォード無双です。
主人公格なのでやりがいがあります。
カリスマ性あふれる武人。
エレナ(30)
ノバラ(79)

エレナはしとやかな聖騎士。
ノバラはコメディタッチな老婆です。
ギャップ萌え枠。

ゼオルード(226)
オノウ(28)
ゼオルードは冷酷な魔術師。
オノウは情熱的なオカマです。
色物枠。
ジェミ(28)
カミュ(42)
ジェミは心優しい猫族の長。
カミュは良い齢の性悪剣士。
比較的無難枠。
 フェンシア(108)
ポタ(11)
不問 フェンシアは蠱惑的なハーフエルフ。
ポタは元気いっぱいの猫族の少年。
お色気あざと枠。


「風のシルヴィア(19)~金色(こんじき)獅子(しし)~」




悪夢の街から生還したシルヴィアは因縁の地、クロウリで宿敵と出逢う。

登場人物が大目で年齢もバラバラですが兼ね役で頑張ってください。

メリークリスマス。





( クロウリの村:入口 )

 

シル:  ……獣の国クロウリ。

   数多(あまた)の亜人を(たば)ねた(おう)たる(けもの)

   獣王(じゅうおう)

   彼はこの地にもはやなく、

   クロウリもまた、

   滅びゆく(さだ)めなのだと聞く。

 

ジェ:やはり来たのですね、

シルヴィア。

 

シル:久しぶりだな。

ネコ族の亜人殿。

 

ジェ: ……歓迎しますよ?

   らしく振舞(ふるま)ってくれている(うち)はね。

 

シル: ……ああ。

   相変わらず、

   (みどり)(いのち)()()ちた良い村だ。

 

ポタ:ねえちゃああん!!

 

シル:お前……ポタか!?

   ははっ!!

 

ポタ:元気にしてたかい!?

   相変わらず美人だねえ!!

 

シル:こっちの台詞(せりふ)だよ、

   本当に……。

 

ポタ:んー?

 

シル:本当に……。

 

ジェ:続けてやればどうです?

   『()えて良かった』、

   『すっかり見違えた』、

と。

 

ポタ:あれれ~?

もしかして、

シルヴィア姉ちゃん、

   記憶を取り戻しちゃったのかい!?

 

シル: ……私と戦うかい?

   ジェミにもポタにも、

その資格がある。

 

ポタ:まさか!?

 

ジェ:貴女(あなた)が犯した罪は許されるものではありません。

   獣王様(じゅうおうさま)を暗殺し、

   クロウリとアイゼフィールとの戦争を(まね)いた張本人、

   シルヴィア・シルフィード。

 

シル:おかげで記憶を無くし、

さ迷い続けたが、

   確かに得る物もあったよ。

 

ジェ:ふふ……。

良い心胆(しんたん)ですね。

 

シル:私も出来る限り足掻(あが)くつもりだ、

   世界を斬り尽くしてでも生き延びてみたい。

 

ジェ:素敵ですね。

   貴女はあの頃とは、

もはや違う。

 

シル:ほう?

 

ジェ:か(よわ)(ほそ)()のあの頃ならばそうしても良かった。

   ですが今の貴女(あなた)は余りにも……。

 

シル:続けたらどうだ?

   『良い女になった』、

   『殺すには()しい』、

   とな。

 

ジェ: ……生きる覚悟を決めた女とは、

   かくも見事で妖艶(ようえん)なるものなのですね。

 

ポタ:本当に姉ちゃん変わっちゃったね、

   人間なのにガル(にぃ)そっくりだよ。

 

シル:ガル(にい)

 

ポタ:うん、そーだよ?

   ガルフォード・ガーデウス。

   『ディオールの四騎士(よんきし)』の一人さ。

 

シル: ……それは知っている、

   だが、

ガルフォードはアイゼフィールの英雄だろう?

   お前達、

亜人種の共通の敵の(はず)だ。

 

ジェ:話せば長くなりますが、

   今となってはガルフォードは、

我々の同志(どうし)なのです。

 

シル:馬鹿な……。

   (やつ)には大勢殺されたはずなのに。

 

ジェ:ええ、

   そして我々も大勢殺しました。

   だからこそ見えた光明(こうみょう)もあったのです。

 

シル: ……本当に甘くて優しい猫だ。

 

ジェ: ……。

 

シル:『灰銀(はいぎん)のジェミ』、

   そんな(さが)で生き抜いていける程、

お前達の境遇はぬるくは無い(はず)だが?

 

ジェ:解っていますとも。

   (しいた)げられた無明(むみょう)の日々を忘れるつもりはありません。

   ですが……ああ、

   ほら、会ってみたほうが早いでしょう?

 

シル:ん?

 

ジェ:感じませんか?

   英気(オーラ)がやってくるのを。

 

ガル:ぬううぅぅぅぅぉぉぉぉおおおおおおお!!

 

シル:ん?

 

ガル:でええぇぇぇいい!!

 

ポタ:わお、

   また意味も無く大木(たいぼく)()(たお)したねっ♪

 

ガル:( 荒い息 )ぜぇ……ぜぇ……!!

   ジェミ!!

待った!?

 

ジェ:いえ、

   ただ(なつ)かしき知己(ちき)がそこに。

 

ガル:オッ!?

   オオオッ!?

 

シル:なっ、

   なんだ?

 

ガル:シルヴィア!!

   お前シルヴィア・シルフィードか!?

   ウハハハハ!!!

 

シル:な、何を笑う!?

 

ガル:ああ、

   お前と再会出来た事に驚きだ!!

   あの時の()(へい)が、

   まさかこんなにも(うるわ)しく(みの)っていたとは……、

なッ!!

 

シル:なんっ!?

   ……貴様っ!!

 

ガル:何だよ釣れねえじゃねえか、

   (ちち)(ひと)つくらい大目(おおめ)に見ろって!!

   ワハハハハ!!

 

シル: ……。

   

 

ガル:( 咳払い )……うむ。

   嬉しいぞシルヴィア。

   ……良くぞ生き抜いてきてくれた。

 

シル:嬉しい……?

   だって私は……。

 

ガル:お前は立派に使命を果たした、

   それを下らぬ(いん)ぺいの為に御破算(ごはさん)にしたのは俺達だ。

   本当に()まなかった、

   シルヴィア。

 

シル:ガルフォード……。

 

ジェ:こほん。

 

ガル:あっ。

 

ポタ:正直なのも良いけどさ、

   それで傷つく亜人も居るって事、

   そろそろ学んで欲しいよね。

 

ガル:悪い、

   そんなつもりじゃなかったんだが。

 

ジェ:(はら)二物(にぶつ)がある人間よりは信頼に()る存在ですよ。

   だからこそ我々は貴方(あなた)に協力するのですから。

 

ガル:かたじけない。

   クロウリの(しゅう)よ、

   俺は必ずアイゼフィールを(ほろ)ぼし、

   お前達と俺達が共存する国を創り上げて見せよう。

 

シル: ……何だと?

 

ガル:おお、

   そうだったなシルヴィア、

   お前は知る(よし)も無かったか。

 

シル:どういうことだ!?

   何故(なぜ)貴方(あなた)祖国(そこく)楯突(たてつ)く!?

 

ガル:さて、な。

   愛想(あいそ)()きたと言えば解り(やす)いが……。

   やりたいことが出来た、

   と言えば皆が納得するか。

 

シル:違う!!

   そうではない!!

   貴方(あなた)は誇り高き『ディオールの四騎士(よんきし)』ではないか!!

 

ガル:ああん?

 

シル:300年前、

アイゼフィールを建国した四人の英雄の末裔(まつえい)

 それが貴方(あなた)(はず)だ!!

 私が(あこが)れ、

 その後塵(こうじん)に追いすがろうと、

 必死で必死で目指し続けた夢だった(はず)だ!!

 

ガル:俺は俺だ。

   お前の夢じゃない。

 

シル:黙れ!!

   貴方(あなた)は祖国を裏切ってはいけない!!

   それだけはやっちゃいけないんだっ!!

 

ポタ:姉ちゃん……。

   ガル兄に剣を向けるの?

 

シル:( 追い詰められたように )―――!!

 

ガル: ……やれやれ、

   成程(なるほど)な、

   干戈(かんか)(まじ)えて解る(こころざし)もあるか。

 

ジェ:手を貸します。

   此処(ここ)貴方(あなた)に死なれては困る。

 

ガル:このガルフォード・ガーデウスが小娘(こむすめ)膂力(りょりょく)に負けると?

   良いから黙ってろ!!

   ガキ!!

 

ジェ:しかし今の貴方(あなた)徒手(としゅ)ではないですか!?

   それに彼女の力は――。

 

ガル( 被せる )充分だ。

 

ジェ:えっ?

 

ガル:覇道(はどう)(こころざ)した時から決めていた。

   何事(なにごと)も『これしきの(こと)』!!

   如何(いか)なる苦難(くなん)造作無(ぞうさな)く渡り歩いてこその覇王(はおう)だと!!

 

シル: ――ッ!?

 

ガル:どうしたぁ!?

   遠慮は()らんぞ!!

 

シル:う……!!

   うあああぁぁぁぁ!!

 

ガル: ――ぬんっ!!

 

シル: ……ごふっ!?

   くっ……!?

   かはっ……!!

 

ガル:もう寝ろ、

   シルヴィア。

   面倒は見てやる。

 

シル:う……。

   ………。

 

ポタ:すご……。

   圧倒的だね。

 

ジェ: ……本当に貴方(あなた)獣王様(じゅうおうさま)(うり)二つです。

   磊落(らいらく)で純粋で何よりも、

   一緒に居て楽しい。

 

ガル:是非まみえてみたかったものだ、

   きっと良き友人となれたであろうにな。

 

ジェ:ええ、

   きっとそうです。

 

ガル:( 微笑み )……よっと。

 

ポタ:ガル兄、

姉ちゃんを連れて行くの?

 

ガル:ああそうだ。

   ……安心しろ、

   乱暴な真似(まね)はしないさ。

 

シル: ……。

 

 

( 間 )( はじまりの夢 )( ※回想シーン )

 

 

シル:これは……。

   夢……?

   そうだ……この夢は。

   ………この日は。

   私が最後にアイゼフィールを愛した日だ。

 

ゼオ:良くぞ来たな、

   シルヴィア・シルフィード。

 

シル:皆様の会談に招かれるとは恐縮(きょうしゅく)です。

   私に何の御用(ごよう)でしょうか?

 

フェ:まあ、

あまり良い(おもむき)では無いな。

 

カミ:何を言う、

   ()えある事だぞ?

シルヴィア・シルフィード、

   お前にしか果たせぬ使命だ。

 

シル: ……私にしか出来ぬ事、

   ですか?

 

エレ:貴女(あなた)の力で戦争を終わらせることが出来るのです。

   他でもない、

   貴女(あなた)自身の力でね。

 

シル: ……暗殺、

   ですか?

 

カミ:良い勘だな、

   騎士の誇りにかけて(まっと)うするが良い。

 

ゼオ:オーズィ陛下(へいか)勅命(ちょくめい)よ、

   逆らう事は出来ぬぞ?

 

シル:何故(なぜ)私なのです?

 

フェ:さもありなん、

そなたが美しいからよ。

 

エレ:かの者も貴女(あなた)であれば油断する事でしょう。

   好色(こうしょく)で有名ですものね。

 

カミ:クフフッ……!

女であれば人でも良いとは、

   まさに獣の王に相応(ふさわ)しき度量(どりょう)よな。

 

シル:まさか……クロウリの獣王を?

 

ゼオ:(しか)り。

   いささか難敵(なんてき)ではあるがな、

   酒と色香(いろか)(まど)わせれば落とせぬ(まと)ではあるまい?

 

シル:何故(なぜ)です!?

   戦争を終わらせると言うのなら、

   獣王は和睦(わぼく)の交渉を既に進めている(はず)

   話して解らぬ相手ではありません!!

 

カミ:フンッ!!

和睦(わぼく)とは片腹痛い!!

汚らわしい亜人共なぞ根絶やしにしてくれるわ!!

 

シル:納得できません……。

   私には……理解できません……。

 

ゼオ:(わし)を見よ、

   シルヴィア。

 

シル: ……。

 

ゼオ:クロウリを信じて何になる?

   (わし)を信じたお主が如何(いか)なる(せい)を歩んできたか、

   お主が一番解っておる事と思うがのう?

 

シル:それは……。

 

ゼオ:それでも尚、

幸福であったとうそぶくのであればそれも一興(いっきょう)

   傭兵くんだりから見事騎士の座を射止めた器量(きりょう)も見事じゃ。

 

シル:今の私があるのは貴方(あなた)御蔭(おかげ)です。

 

ゼオ:さに(あら)ず、

   (わし)()いたき事はじゃな、

   『果たして皆が、お主の様に力強く生きれるか?』

   ただそれだけよ。

 

シル: ……ッ!?

 

ゼオ:成程、

   文句を(うた)うは容易(たやす)い。

   じゃがな、

   (けが)れたこの世に(せい)を受け、

   一体どれほどの人間が栄華(えいが)(つか)める?

   どれほどの人間が無垢(むく)なまま(せい)()える事が出来る?

 

シル:それは……。

 

ゼオ:所詮相手は獣よ。

   民は亜人を蹂躙(じゅうりん)し、

蹴落とすことに夢中になる。

   よしんば和睦(わぼく)が成ったとして、

   下らぬ商争(しょうそう)や異文化に戸惑い、

(さら)なる憎悪(ぞうお)を産むだけじゃて。

 

シル:それでも、

   私は……。

 

エレ:ふふ……素敵ですわね。

   折れませんか?

 

シル: ……。

 

カミ:ならば直截(ちょくさい)に行こうではないか。

   我々は和睦(わぼく)する気など毛頭無(もうとうな)い。

 

フェ:シルヴィア、

   そなたが行かぬとあらば、

   そなたの傭兵部隊を前線へ送り込むことになる。

 

シル:エルツィ傭兵団を?

 

エレ:屈強な亜人達を相手取(あいてど)り、

   一体何人の兵士が犠牲(ぎせい)になるのかしらね。

 

シル:卑劣(ひれつ)な!!

 

エレ:存じています。

   ですが我々はきっとそうします。

 

カミ:木端(こっぱ)(ごと)きが何人死のうと知ったことでは無い。

   元より戦う事が貴様等(きさまら)の仕事なのだからな。

 

シル:私が愛した祖国はこんな()まらない国じゃなかった!!

   民達(たみたち)はのどかに暮らし、

   平和で、

   戦いを誇り、

   それでも(なお)皆が平等にあろうと努力した国だった(はず)だ!!

 

フェ:そなた達の御蔭(おかげ)でそうあれたのだ。

   決まってしまったこととはいえ、

そなたには夢を見続けて欲しかった。

 

カミ:その民の顔が(みにく)(ゆが)む行為がクロウリとの和睦(わぼく)なのだ!!

 

シル:そんなことはありません!!

 

ゼオ:どうするシルヴィア?

   己の犠牲で国一つ救えるとしたならば、

   我々は躊躇(ちゅうちょ)なくそうするぞ?

 

シル:( 涙声になりながら )私……は……。

   私は……。

 

ゼオ:(はら)を決めよ。

   『 サラ 』、

   これぞ『英雄』の末路(まつろ)相応(ふさわ)しいではないか。

 

シル:私は……こんな人生の為に……。

   アイゼフィールに今まで尽くして……。

 

エレ:もう一つ。

   この(れい)遂行(すいこう)したならば、

   機密の(ろう)えいを防ぐ為、

貴女(あなた)には記憶を失っていただきます。

 

シル: ……。

 

エレ:安心して下さい。

   それ相応(そうおう)報酬(ほうしゅう)と身の安全は我々が保証します。

 

シル:貴女達(あなたたち)の……今更(いまさら)何を信じれるというのですか?

   記憶を失ってしまえば、

   私は私でなくなってしまうと言うのに。

 

エレ: ……。

   そうね、

   その通りですわね。

 

カミ:さっさと選べ!!

   我々とて(ひま)ではないのだ!!

 

シル:良いでしょう。

   ( 少し小声で )……引き受けます、

 

ゼオ:聞こえぬな。

 

シル:私が獣王(じゅうおう)を暗殺しましょう!!

   ……その()わり条件が。

 

フェ:(なん)なりと(もう)すが良い、

   (われ)がそなたに出来る事であればなんでもしよう。

 

シル:どなたかこの場で、

私と全力で戦っては頂けませんか?

   この失われゆくシルヴィア・シルフィードの剣技(けんぎ)を、

   せめて最後にこの舞台で、

   英雄で試させてほしいのです。

 

フェ: ……そうか。

   まさかそんな褒美(ほうび)で良いのだな?

 

シル:はい。

   私はこれだけが取り柄の女でしたから。

 

カミ:( 嘲笑い )――滑稽(こっけい)だな。

   わざわざ挫折(ざせつ)を味わってから死地(しち)へと(おもむ)くか。

 

シル:それでも私は貴方達(あなたたち)と戦いたかった。

   アイゼフィールの兵士として、

   私は貴方達(あなたたち)が大好きだった。

 

エレ:ありがとう、

   シルヴィア。

   私も貴女(あなた)が大好きでした。

 

ゼオ:なれば誰が相対(あいたい)すものか。

   選ぶとなれば、

   やはりエレナ・フェンシアが無難(ぶなん)かの?

 

エレ:シルヴィアは手強(てごわ)(へい)ですわ。

   私の剣ではきっと(あと)を残してしまいます。

 

フェ:(われ)で良いか?

   シルヴィア。

   全力でとあらば、

(われ)もそなたの身体を(そこ)なってしまうと思うが?

 

シル:どなたでも構いません、

   負けても(そこ)なっても構いません。

   ただ、

   私を忘れないでください。

 

フェ: ……そうか、

   相分かった。

   存分に――。

 

ガル:( 被せる )俺がやろう。

 

エレ:ガルフォード……。

 

カミ:ガルフォード!!

   突然なんだ貴様(きさま)!!

 

ガル:俺がお前に出来る事と言えば()れくらいだからな。

 

シル:貴方(あなた)が……。

 

ガル:でな?

   お互い素手(すで)でやろうや、

   それなら死ぬこともまず無いだろう?

 

ゼオ:ほう……。

 

フェ:クク……相変(あいか)わらず熱い男よ。

   ……条件がいささか変わってはいるがな?

 

ガル:こまけぇ事はいいんだよ!!

どうだシルヴィア!?

やるか!?

 

シル:ふふっ……解って(おっしゃ)っているのですか?

   龍の血を取り込んだ私の腕力(わんりょく)を。

 

ガル:お前こそ、

大鎚(おおつい)使いの俺の力は知ってるな?

 

シル:金色(こんじき)獅子(しし)

   ガルフォード・ガーデウス。

   王の右腕、王の盾、

   王の友。

 

ガル:そうだ!!

それにお前になら、

このハンサム顔をボコボコにされるのも面白い!!

   良い土産(みやげ)になるさ。

 

シル:( 嬉しそうに )ありがとうございます。

   ……ガルフォード様。

 

ガル:ワハハハ!!

   これからお前が背負う屈辱(くつじょく)に比べたら、

   こんなもん鼻くそ並みの恩返しだろうが。

 

シル:ふっ。

   では、やりますか。

 

ガル:来いよシルヴィア!!

   手加減なんざしたらぶっ殺すぞ!?

 

シル:はい!!

殺す気で行きます!!

 

 

( 間 )( ガーデウス城:寝室 )

 

 

シル: ……。

   んっ……?

 

ガル:起きたか?

 

シル:ああ……。

   お前か。

   ……うっ!?

 

ガル:無理はするな。

   多分()の骨が折れてるだろうからな。

 

シル: ……殺さないんじゃ無かったのか?

 

ガル: ?

何の話だ?

 

シル: ……ふっ。

   いや、

   何でもない。

 

ガル:それより俺の城はどうだ?

   急ごしらえにしちゃあ無骨(ぶこつ)でかっこいいだろ?

 

シル:中からじゃ何も見えん。

 

ガル:ワハハ!!

   ま、そりゃそうか。

   後で案内してやろう。

 

シル:( 気だるげに )……誰に造らせたんだ?

 

ガル:民草(たみくさ)よ。

   亜人も人間も含めてな?

   俺の国の(たみ)に造らせた。

 

シル:もう国王気取りなのか。

   ……随分と気が早い。

 

ガル:一度決めたら後は突き進むだけだ。

   その為の努力も準備も()かりは無かった。

 

シル:血筋のくれた才能は?

 

ガル:出涸(でが)らしになるまで使い果たす。

   でもってな?

父祖(ふそ)から(もら)った力は(こしら)えたガキに受け継がせるさ。

 

シル:それは素敵だな。

   あんたは良い王様になれるよ、

   きっとな。

 

ガル:なんだぁ?

   もう熱が冷めたのか?

 

シル:頭が()えたのさ。

   ……私が愛した国も、

   愛した人も、

   もうこの世界には何もない。

   私は(すべ)てを無くしてしまったことに気付いて、

   やっと自由になれたんだ。

 

ガル:へえ。

 

シル:どう思う?

 

ガル: ……貴様(きさま)

   今はフリーか?

 

シル:フr……?

   ま、まあそうか。

   そうだな?

 

ガル: ……!!

   ( 小声で )あの野郎……!!

 

シル: ……。

 

ガル:良し。

 

シル:え?

 

ガル:俺の女になれ、

   シルヴィア。

 

シル: ……。

   は?

 

ガル:絶対幸せにする、

   約束する。

 

シル: ……お前なあ!!

 

ガル:嘘じゃねえ!!

   この国も(たみ)も全部お前のもんだ、

   お前に(すべ)てを(ささ)げる!!

   俺の全部をくれてやる!!

 

シル:睦言(むつごと)にしては悪態(あくたい)が過ぎるぞ?

   私の気持ち、

   ジェミやポタ達の気持ちはどうなる?

   考えたことがあるのか?

 

ガル:そんな事は考えたことも無い。

   俺は楽しい国を作れればそれで良いし、

   楽しい家族がそこに居てくれたら(なお)素晴らしいと思う。

   ただそれだけだ。

 

シル:論外(ろんがい)だな、

   (いつく)しみと思慮の無い社稷(しゃしょく)(なん)の未来がある?

   暴君(ぼうくん)(きざ)しが()しているぞ、

   金色(こんじき)獅子(しし)よ。

 

ガル:そんなものは後から取り入れればいい。

   俺よりそういうのが得意な奴に任せればいいんだ。

   俺は(ひと)りじゃないんだからな。

 

シル: ……なら、

   どうして私なんだよ?

 

ガル:俺にはお前しか見えないからだ。

 

シル:私は放浪者(ほうろうしゃ)だぞ!?

 

ガル:俺とて反逆者にして国王だ。

   そしてお前は、

   放浪者(ほうろうしゃ)にして英雄だ。

 

シル:えい…ゆう……。

 

ガル:エレナに勝ってきたんだろう?

   影に頼らずともお前の噂はまるで、

風の様に鳴り響いている、

   冒険の日々、苦悩の日々、

   立ち向かい続けた日々、

   それらはまるで英雄の伝記(でんき)ではないか。

 

シル:お前は……私の人生に()れたのか。

 

ガル:(ちが)――!!

   ああもう、

   めんどくせえなおい!!

 

シル:うっ!?

 

ガル:()かせろシルヴィア。

 

シル:やっ、

   嫌だッ!!

 

ガル:俺が信じられんのなら身体で教えてやる!!

   お前を女にしてから存分に愛を(そそ)いでやる!!

 

シル:()めろッ!!

   ()めてくれ!!

 

ガル:良いじゃねえか!!

   やらせろ――!!

 

オノ:( 被せる )オウリャ!!

 

ガル:うぶぉえあっ!?

 

オノ:出ていけぇ!!

 

ガル:へびゃん!?

 

オノ:( 手を叩く )(まった)く、

   信じられないわ!!

   力尽(ちからづ)くで押し倒すっていうなら、

   せめてシャワーを()びさせなさい!?

 

シル: ……えっ。

   そこ?

 

オノ:無事なのね!?

   小娘(こむすめ)!?

 

シル:な……何だ、

   このムキムキのオカマは。

 

オノ:あたしの名はオノウ!!

   新生(しんせい)クロウリの軍事大臣よ!!

 

ガル:うぐぐ……。

   ハッ!?

   ババァ!?

 

ノバ:キエエエェェェェ!!

 

ガル:いてっ!?

   おっ、おい!?

   おい()めろババァ!!

 

ノバ:乙女の仇イイィィ!!

 

ガル:解った解った!!

   俺が悪かったって!!

   ちくしょおおおぉぉぉ!!

 

ノバ:ゼェ…ゼェ……。

   情けなし、

   一国の王が強姦(ごうかん)(こころ)みるとは。

 

オノ:あっちのババァはノバラ、

   亜人の宮廷(きゅうてい)占い師よ。

 

ノバ:間一髪(かんいっぱつ)じゃな、

   シルヴィアさん。

 

シル:いえ……その、

   ありがとうございます。

   ……助かりました。

 

オノ:でもあれよね、

   第一印象がこれじゃあ先が思いやられるわよね?

 

ノバ:そうさのう、

   まあ、

   エネルギッシュな情熱は理解してもらえたかのう?

 

オノ:馬鹿ねえ、

   あれは(ただ)の性欲よ。

   何せ目の前に、

   半裸(はんら)の美女が弱っていたらねえ!!

   オホホホホ!!

 

ノバ:ブヒョヒョヒョ!!

   わ、若いって、

   ええのう!!

 

シル: ……。

 

オノ:さて、

   式はどうしようかしら?

   やっぱアイゼフィール式?

 

ノバ:今更(いまさら)のう、

   かといってクロウリ式は放送出来んしのう。

 

オノ:あらやだ!?

   激しいの!?

 

ノバ:おうおう、

   そりゃあもう、

   ケダモノ並みよ♡

 

オノ:いやん…もう♥

 

オノ&(ノバ):オホホホホホホ!!(ブヒョヒョヒョヒョ!!)

 

シル:あの……。

   式って、

   一体?

 

ノバ:ああ?

さもありなん、

そなたとガルフォードの結婚式に決まっておろうが。

 

シル:え……。

 

オノ:うふん、

お幸せに♪

 

シル:えっ!?

エエエエェェェェェェ!?




 
 
 
     
 
           
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