題名  公開日   人数(男:女:不問)  時間  こんな話  作者

 風のシルヴィア(20)~Twinkle(ツインクル) Night(ナイト)

2015/01/18  6(2:2:2) 30分

誓え、シルヴィア。お前はこれから何の為に生きる?

 ニコ

登場人物
(年齢)
性別 その他
シルヴィア
(26)
絶世の美女にして凄腕の女騎士。
凄く余裕ぶっていて迫られると弱いです。
つまりは可愛い人なのです。
ガルフォード
(32)
俺達の兄貴。
豪快で馬鹿そうでいて質実兼備な王様。
カリスマ性がみなぎる。
オノウ
(28)

糞マッチョなオカマ。
軍事大臣なのだがノリ良く面倒見も良い。
ギャグ担当。

ノバラ
(79)
亜人の老婆。
宮廷占い師。
道化役。
フェンシア
(108)
不問 ハーフエルフ。
優雅で扇情的な鉄の国の英雄。
皮肉の中に優しさが漂う。
ジーニアス
(17)
不問 変装・暗殺好きな英雄。
ひょうきんな性格。
出番は少な目。


「風のシルヴィア(20)~ Twinkle(ツインクル)Night(ナイト)~」




シルヴィアさんはひょんな事から王様に気に入られ、

お嫁さんになる事を迫られました。

恋愛ファンタジーです。





( ガーデウス城:披露宴式場 )

 

オノ:あら忙しい!!

   あら忙しい!!

 

ノバ:ブヒョヒョ!!

   か、会場セッチィングは楽しいのう!?

 

シル: ……。

 

オノ:いいのかしら!?

   テーブルはあたしが大理石から()り出していいのかしら!?

 

ノバ:おうおう、

   ダイナミックに仕立(した)てにゃならんぞい!!

   何せ金色(こんじき)獅子(しし)

ガルフォードと風のシルヴィアの結婚式じゃからのう!!

 

オノ:オラァ!!

 

シル:うわっ……。

 

オノ:良い感じに出来たッ!!

亜人と人間の共和国、

新生(しんせい)クロウリの門出(かどで)相応(ふさわ)しいわ!!

 

シル:あのぉ……。

 

オノ:あれよね!?

   招待状は2カ国語でいいのかしら!?

   亜人共は(むら)がって来るのかしら!?

 

ノバ:ブヒョヒョヒョ!!

   あ、亜人はのう!?

   く、食い物と相手が()ればそれでええんじゃあ!!

 

オノ:素敵ッ!!

   相手にゾッコン!!

   夜はバッ↑コン↓ね!?

 

ノバ:プッ……ププッ……!!

 

オノ:フ……フホホ……!!

 

オノ&(ノバ):オホホホホ!!(ブヒョヒョヒョ!!)

       やぁだちょっと下品過(げひんす)ぎよぉもう!!

(あ、愛があるなら(あたた)()わんとのう!!)

 

シル:あの。

 

オノ:あっ!?

   そうよ!!

指輪よ指輪!!

   あたし、

何かしらの猛獣から略奪してくるわね!?

 

ノバ:おお、そうじゃ。

   (わし)もクマ(ぞく)から蜂蜜(はちみつ)(もら)ってこにゃ。

   ……花婿が困るといけんでのう!?

   ブヒョヒョ!!

 

シル:い……行ってしまった。

   ……どういうんだ?

 

ガル:おう。

 

シル:ひっ!?

 

ガル:探したぞシルヴィア。

   ここに()たのか。

 

シル: ……ガルフォード。

 

ガル:女ってのは随分と気が早いなぁ、

   まだ膳立(ぜんだ)ても()んでないってのに。

 

シル:あのオカマと老婆(ろうば)に無理やり連れてこられたんだ。

   『花嫁は万事(ばんじ)()いて中心であるべし』、

   とな。

 

ガル:お前……そこまで俺の事を思って……!!

   グスッ……( 泣 )!!

 

シル: ……信じているぞ?

   お前はそこまで愚鈍(ぐどん)では無いとな。

 

ガル:ワハハ!!

   まあ、そうだな……。

   女心(おんなごころ)は理解できるが、

それをどうこうしてやろうとは思わん。

 

シル:乱暴者(らんぼうもの)め。

   自分さえよければそれで良いのか?

 

ガル:だが幸せには出来る!!

 

シル:( うんざりと )屁理屈(へりくつ)を……。

 

ガル:具合はもう良いのか?

 

シル:えっ?

 

ガル:ほれ、

   この軟膏(なんこう)を胸に()っておけ。

 

シル:あ……。

   だが私は、

   龍の血の御蔭(おかげ)でこんな傷なんかは――。

 

ガル:( 被せる )バカモノ!!

 

シル:なっ!?

 

ガル:良いからつけておけ。

   天馬(てんま)香油(こうゆ)だ、

   (おそ)らく美容(びよう)にも良い。

 

シル:まさか……。

お前が()って来たのか?

 

ガル:ふふん、

俺以外に誰が天馬(てんま)仕留(しと)められる?

   まあ、

良い眠気醒(ねむけざ)ましだったさ。

 

シル:何故(なぜ)だ?

   何故(なぜ)私をそこまで大事(だいじ)にする?

 

ガル:なんだそりゃあ?

   そんなの愛しているからに決まっているだろう!!

   早く俺の物になれよ、

   シルヴィア!!

 

シル:違う!!

 

ガル:うぇ?

 

シル: ……真面目(まじめ)に応えろ。

   そうすれば話を聞いてやらんことも無い。

 

ガル:これは、

戦々恐々(せんせんきょうきょう)だな。

 

シル:ガルル。

 

ガル:ワハハ!!

(ちか)いか……まぁ良かろう、

   それもまた必要な儀式(ぎしき)相違(そうい)あるまい。

 

シル:今の私には、

お前はただの(はだか)の王様にしか見えない。

 

ガル:それはいかんな。

   うむ、ならば聞け、

風の騎士よ。

 

シル:ああ。

 

ガル:その……。

お前が馬鹿垂(ばかた)れだからだ。

 

シル: ……何?

 

ガル:ガキのまま綺麗に馬鹿に(そだ)ち、

   どうしようもなく不器用(ぶきよう)で、

わきまえぬまま(えら)くなり、

そして全部投げ捨てた。

 

シル: ……まあな。

 

ガル:そんな無様(ぶざま)にも(あきら)めず、

   足掻(あが)戸惑(とまど)い、

   (なん)とか生き延びて(なお)!!

少しも(そこ)なわぬ(うるわ)しさを(ほこ)る……。

 

シル: ……。

 

ガル:そんなガキの様なお前がその、

   なんだ……。

   違うな、

   ああ、

   違う違う!!

   そうじゃない!!

 

シル: ……ふっ。

 

ガル:初めてそなたを見た時から()れていた!!

   傷だらけの肌、

   血まみれの(よろい)

   あの()()れとした(ぼう)

   アイゼフィールの凱旋式(がいせんしき)でそなたに出逢(であ)った時、

   我が心は風のシルヴィアの(とりこ)となってしまったのだ!!

 

シル:( 可笑しそうに )――それで?

 

ガル:愛しているぞシルヴィア!!

   お前の身体も生き(ざま)も、

考え方も、

   俺はお前の(すべ)てが好きなのだ!!

 

シル: ……ありがとう。

 

ガル:これを(もっ)て誓いとしてはくれまいか?

   俺と共に覇道(はどう)を目指そう、

   シルヴィア。

 

シル:私は今でも四騎士(よんきし)の皆様の事を尊敬し、

   その存在は、

目指すべき()(かた)の一つなのだと確信しています。

 

ガル:うむ。

 

シル:ですが私は(いま)だ、

自分の()(ざま)に決着をつけていないのです。

   目的も持たず、

   夢すらも忘れ、

   ただふらりと彷徨(さまよ)っては()(さわ)がせ、

   居場所を探す(おろ)(もの)なのです。

 

ガル: ……そうか。

 

シル:だからガルフォード・ガーデウス、

   貴方(あなた)の気持ちは嬉しいけれど、

   私はまだ、

貴方(あなた)を選ぶ(わけ)にはいかない。

 

ガル:俺を選んでくれ、

   シルヴィア!!

 

シル:何故(なぜ)

 

ガル:お前が必要なのだ。

今お前に選んでもらえたのなら、

   俺はきっとお前を幸せに出来る!!

   (なに)もかもを投げ出して、

必ずやお前を幸せにしてみせる!!

 

シル: ……。

 

ガル:本当は恐ろしいのだ。

   アイゼフィールに反逆(はんぎゃく)し、

   何人の仲間を死なせるか判らん、

   皆が最後まで付き従ってくれるとも限らん。

   それでもお前が、

   この場で俺と共に生きる道を選んでくれるのなら……。

   俺は……。

 

シル:大丈夫、

   そんな弱い心も含めて、

   皆は貴方(あなた)の味方なんだよ?

 

ガル: ……ふん。

これは王の()(かた)では無い。

   俺はお前の前だから心を(さら)したのだ。

 

シル:解っているよ。

   ……だが、

   本当に万能(ばんのう)なだけの人間が、

万人(ばんにん)に愛されるものなのだろうか?

 

ガル:何?

 

シル:私は自分が強いと思うし、

   弱いとも思う。

   だけど貴方(あなた)は、

そんな私を好きだと言ってくれている。

 

ガル:俺は男だ。

   男が弱いなど間違っている。

 

シル:男だから強くあらねばならぬ、か。

   いや、

   そうか。

   ふふ……!!

   アッハッハッハ!!

 

ガル:何を笑う!?

 

シル:貴方(あなた)が『英雄』でさえなければ、

   貴方(あなた)の物になっても良かった。

   ……そう考えてな。

 

ガル:(なに)ッ、

   (まこと)か!?

 

シル:だがな?

   私は景品(けいひん)ではない。

   他人宜(たにんよろ)しく賛歌(さんか)激励(げきれい)()(もの)でも無い。

   私はそれだけには成れない。

 

ガル:成れぬか?

 

シル:おう。

 

ガル:どうしても?

 

シル:(かた)(ちか)おう。

 

ガル: ……フフ。

相分(あいわ)かった。

   ならばその矜持(きょうじ)

   今宵(こよい)この場で示させてやろう。

 

シル:え?

 

ガル:言ったはずだ。

   お前の(すべ)てを愛していると。

 

シル:結婚式……いやいや!!

   やらないって言ってる――!!

 

ガル:( 被せる )とにかく式は挙げるぞ!?

   盛大(せいだい)に笑い、飲み!!

(おお)いに楽しもうではないか!!

   ワッハハハハハ!!!

 

シル:ガルフォード……。

 

 

( 間 )( 密林と夕映えの見える通路 )

 

 

シル:成程、

   この城は確かに無骨(ぶこつ)だが、

(けもの)の国に良く似合う。

   あいつらしい素直な(つく)りだ。

 

ノバ:おうおう、

   これは花嫁殿(はなよめどの)

   城の中で迷子かえ?

 

シル:あっ……ええっと、

ノバラさん?

 

ノバ:ブヒョヒョ!!

   らしくも無い名じゃろ?

   とっくに枯れ果てた徒花(あだばな)じゃからな。

 

シル: ……あの。

 

ノバ:んん?

どうしなすった?

 

シル:申し訳ありません、

   皆さんの気持ちは嬉しいのですが、

   私は……。

 

ノバ:やはり、

結婚は(いや)かえ?

 

シル: ……はい。

 

ノバ:ヒョッ、

ヒョッ。

ええもんじゃのう、

   若いってのは。

   好き勝手出来(でき)おる。

 

シル:( 不服 )お言葉ですが、

   私はガルフォードを愛しているとは一言(ひとこと)も。

 

ノバ:知っておるよ?

   じゃが、

   断れるのは若い者の特権(とっけん)じゃ。

   ()いを知る者は、

甘受(かんじゅ)こそが美徳(びとく)と思い込むものじゃでな。

 

シル:解っていて……何故(なぜ)

 

ノバ:(わし)はバクの亜人じゃ。

   見たくもないのに、

   夢見心地(ゆめみごこち)に色んなものが見えおる。

 

シル:稀人(まれびと)……ですね?

   (うわさ)で聞いたことがあります、

亜人の中でも、

数万人に1人の割合で生まれてくる希少種(きしょうしゅ)だとか。

 

ノバ:この老いた(まなこ)には、

   この国の行く(すえ)も、

   お(ぬし)の人生も、

   (すべ)てが(うつ)っておるぞ?

 

シル:教えて欲しいとは思いません。

   それを知って生き方を変えても、

   またその先で壁に出逢(であ)(はず)ですから。

 

ノバ:ブヒョヒョ!!

   その通り、

   占いなんぞに頼ってはいかん。

   結局、

(わし)が居なくては何も出来なくなってしまうでな。

 

シル:ノバラさん……。

 

ノバ:誰も(むく)われぬ力じゃ、

   誰も()らぬ力じゃ。

()らぬのに持って産まれてきてしまった。

   じゃから、

   あ(やつ)の気持ちは良く解る、

   じゃから人間なんぞに協力するんじゃ。

 

シル:ですが……私は。

 

ノバ:ええ、ええ、

   ただの老婆心(ろうばしん)じゃ。

   (わし)も楽しんで道化(どうけ)になっとるよ。

   ブヒョヒョ……。

 

シル: ……。

 

ノバ:そうそう、

   オノウの(やつ)めが、

白無垢(しろむく)を着せたいと言うておったぞ?

   何はともあれ、

   花嫁殿(はなよめどの)も成りきってみてはどうかな?

   馬鹿にならねば()(くず)せぬ(かべ)もまた、

   あるものぞな?

 

シル:私は……。

   ……。

 

 

( 間 )( ガーデウス城:王の間 )

 

 

ガル:そうか、

ゼオルードめ、

とうとうそこまで狂ったか。

 

ジー:狂ってはいないさ。

   傍目(はため)から見れば、

   狂っているのは君の方だね。

 

ガル:カッ!!

ジーニアス、

   その狂人に何を望むつもりだ?

 

ジー:あの男は危険過ぎる。

だけど『古き国の四騎士(よんきし)』と『ディオールの四騎士(よんきし)』、

今じゃ彼に(かな)う者は一人も居ない。

 

ガル:それでも俺がアイゼフィールに(いど)むことに変わりは無い。

   無論(むろん)

敗北するつもりもないがな。

 

ジー:それは別に構わない。

   彼の国を(ほろ)ぼしたとて、

   君が新たな王となるなら誰も否定はしないだろう。

 

ガル:『王の影』が聞いて呆れる、

   結局お前はどっちの味方なんだ?

 

ジー:アハハ、

   僕の立ち位置かい?

今はこの人の(がわ)

   かな?

 

フェ: ……らしいぞ?

 

ガル:フェンシア。

 

フェ:(ひさ)しいな。

息災(そくさい)であったか?

   ガルフォード・ガーデウス。

 

ガル:『王の鍵』よ、

わざわざジーニアスの『 影 』を借りてまで何の用だ?

 

フェ:祖国に反逆した貴様(きさま)を殺しに来た。

 

ガル: ……。

 

フェ:ククク……。

   いやさ、

   冗談だ。

   許せよ?

 

ガル:どの道、

貴様等(きさまら)とは殺し合うのだ。

   遠慮は要らんぞ?

 

ジー:だってさ。

   どうする?

 

フェ:それは困るな、

   殺し合いとあらば、

(われ)には先約(せんやく)がある。

 

ガル:先約……?

   ああ……。

   そういう事か。

 

ジー:(さっ)しちゃったよ。

   (みんな)想像する事は同じなんだね。

 

フェ:ついては、

少しばかり騒いではくれぬか?

   その方がやりやすいのでな。

 

ガル:お安い御用(ごよう)だ。

だがそれで本当に良いのか?

   だってあんた達は――。

 

フェ:( 被せる )良い。

   充分と言えば充分であろう?

   遊び尽くした(せい)であったよ。

 

ガル:そうか。

あんたには世話になった。

   達者(たっしゃ)でな。

 

フェ: ……強くなれ、

   ガル(ぼう)

   何時(いつ)()も、

気位(きぐらい)熱意(ねつい)を持つものが(おさ)となるのだ。

 

ガル:ああ。

(きも)(めい)じるよ。

 

フェ:クク……。

ではな。

 

ガル:あっ、そうだ!!

   フェンシア、

   ジーニアス、

   折角(せっかく)だから夜まで()ろよ!?

 

ジー:ええ~~?

   僕未成年(みせいねん)だし~?

 

フェ:()()いか?

   傷の()めあいならば御免(ごめん)だが……。

それとも何か、

慶事(けいじ)でもあるのか?

 

ガル:今この城にはシルヴィアが居るんだ、

   俺達結婚するんだぜ!?

 

ジー: ……どうせ君が強引(ごういん)に、

(そで)()いたんだろ?

 

フェ:なんと剣呑(けんのん)な。

   シルヴィア相手に力尽(ちからづ)くとは。

 

ガル:うるせえ!!

 

ジー:君程(きみほど)の男が夢中になるなんて、

   彼女も(つみ)(おんな)だよねえ。

 

フェ:クク……どれ、

   ならば結末を見届けてから行くとするか。

   お城の吟味(ぎんみ)も兼ねてとっくりと、な。

 

ガル:勝手にしろ、

   皮肉屋聖人(ひにくやせいじん)め。

 

 

( 間 )( 一夜限りの夢物語 )

 

 

オノ:サアァァァァァ!!

   お待たせエエェェェ!!

   招待客のみなさああああん!!?

   結婚式を始めるわよぉぉぉ!!!

 

シル以外の一同:オオォォォォ!!

 

シル: ……こんなに。

 

ノバ:ブヒョヒョ、

   け、結構な人数が来るものよな?

 

オノ:( 小声で )(みんな)暇人(ひまじん)なのよ。

 

ジー:ゴクゴク……。

   ムシャムシャ。

   ガブガブ。

 

ノバ:おやおや、(ぼん)

   酒を飲んでも平気なのかえ?

 

ジー:うん。

ママのミルクに飽きちゃってね。

 

ノバ:そうかい、そうかい。

   スネを(かじ)るよりはよっぽどええのう。

 

ジー:ガリガリ。

   モグモグ。

 

ガル:俺は嬉しいぞ!!

   皆!!

   亜人も人間も区別は無い!!

   今宵(こよい)は最高の(うたげ)にしよう!!

 

シル以外の一同:オオオオオォォォォ!!

 

オノ:それでは、

   仲人役(なこうどやく)の……あら?

   えっ!?

   ちょっ、これホント?

   ガル様!?

 

ガル:ワハハハ!!

   ()いから読みあげろ!!

 

オノ:えーと……。

『鉄の国アイゼフィール』が誇る、

『古き国の四騎士(よんきし)』が一人、

フェンシア・キル・ツヴァイボルグ(きょう)

   宜しくお願いしま~……。

 

フェ:うむ?

   (われ)か、

   良いぞ。

 

シル:何ッ!?

 

オノ:居 た ッ !?

   何なの、

何なのこのサプライズ!?

 

ジー: ……ほ~らね。

   僕だってそこそこ(えら)いのに、

見向(みむ)きもされないんだ。

   チェッ。

 

オノ:あっ!?

   ツヴァイボルグ(きょう)

   ワタクシの事、

覚えておいでですか?

 

フェ:オノウ・フンドシオであろう?

   随分とおさまりが良いではないか、

   (われ)軍閥(ぐんばつ)()った頃はつまらぬ(しょう)であったが。

 

オノ:アタシッ!!

   今とっても幸せなんです!!

   ガル様の所でカミングアウトして人生が変わったの!!

   

フェ:そうか、

   それは何よりだな。

 

オノ:フェンシア様、

ずっと好きでした!!

あたしと付き合ってください!!

 

ジー:おおっ!?

 

フェ: ……。

さて――。

 

オノ:流 さ れ た ッ !?

 

フェ:シルヴィア、

   ガルフォード、

   両名(りょうめい)の幸福と健勝を願う。

 

ガル:ありがとよッ!!

   フェンシア!!

 

シル: ……。

 

フェ:ガルフォードは、

   夏の(せみ)(うるさ)(ころ)

バルトール・ガーデウスの嫡子(ちゃくし)として(せい)を受けた。

 

ノバ:( イビキ )――。

 

フェ:幼き頃より才気闊達(さいきかったつ)腕白(わんぱく)で、

   腕試(うでだめ)しと言っては、

(われ)に何度も(いど)みかかって来たものよ。

 

オノ:いやん、

   可愛い。

 

フェ:流石(さすが)(われ)も飽きてきてな?

   一度手酷(てひど)(いた)めつけてやったが、

   それでも()くことなく、

(われ)(たず)ね続けた胆力(たんりょく)には閉口(へいこう)したものだ。

 

オノ:まあ……それって(こい)かしら?

 

ジー:絶対違うよね。

 

フェ:仕方が無いので、

何故(なぜ)戦うのかと問うてやったのだ。

   するとな?

そやつはこう答えた。

   『自分は王を(ささ)える(つえ)にも、

手に取る剣にも()れぬ(うつわ)だ。

    ましてや盾に(おさ)まるつもりは毛頭(もうとう)ない、と。』

 

シル:自分の……()り方。

 

フェ:(ゆえ)(おのれ)を探すのだと戦場(せんじょう)(あば)れまわり、

   何度も傷つき、心折(こころお)れ、

   その(たび)に立ち上がり、

   いつしか王自(おうみずか)らに、

『王の右腕』と呼ばれるに至ったのだ。

 

ノバ: ……むにゃむにゃ。

ガルは良い子じゃ。

   全部、

知っておるよ。

 

フェ:求道(きゅうどう)こそが、

(もっと)迂遠(うえん)なる道に違いあるまい。

   ガルフォードは見事それを踏破(とうは)し、

   揺るがぬ意志と不屈(ふくつ)の強さを手に入れた。

   (じつ)(ほこ)らしい事ではないか。

 

オノ:( 酒をすする )――あら?

でもその右腕が、

王様裏切ったらブレブレじゃないの?

 

ジー:愛想(あいそ)が尽きたからって、

男の価値が下がる訳じゃないよ。

   ただどうしようも無かったんだ。

 

オノ:坊や……。

   大人ね、

   あたしと付き合う?

 

ジー:気が向いたらね。

 

フェ:今となっては敵同士だが、

   まあ、そやつはそういう男だ。

   選んで(そん)は無いぞ?

   シルヴィア。

 

シル:私は……。

 

フェ:以上を(もっ)祝辞(しゅくじ)とする。

   両名(りょうめい)

良き道を選べ。

 

一同:( 拍手 )――。

 

オノ:フェンシア様ありがと~~~!!!

   ツンデレ過ぎてあたし泣いちゃった~~~!!

   ビャアアアアァァァ!!

 

ノバ:ンガッ!?

ありゃ、ほれっ、

   次は新郎新婦(しんろうしんぷ)

   愛の(ちか)いぞな!?

 

ガル:おう!!

 

シル: ……。

 

ガル:ではシルヴィアよ、

   準備は良いか!?

 

シル:え……?

 

ガル:ほらっ、

   前に出るぞ!?

   皆が俺達を祝福してくれている!!

 

シル:ガ、ガルフォード!?

   私は――!!

 

ガル:( 被せる )シルヴィア・シルフィード!!

   ()生涯(しょうがい)をそなたに(ささ)げよう!!

   夢も(うつつ)も満喫した!!

   そんな俺の生涯に、

唯一(ゆいいつ)足りぬ者があるとすれば、

それはそなたを()いて他にあるまい!?

 

シル: ……私はッ!!

 

ガル:永久(とわ)の幸福(しあわせ)(かみ)(ちか)う。

俺と結婚してくれ、

   シルヴィア。

 

シル: ……!!

   ………!!

   ごめんなさい!!

 

オノ:( 鼻をすする )――!!

……ンガ?

 

ジー:えっ。

 

フェ: ……ほう?

 

ノバ:ヒョッ、ヒョッ。

 

ガル: ……。

   本当にそれで良いのだな?

   シルヴィア。

 

シル:( 泣きながら )だって……!!

   だって私ッ……!!

   一人の人にこんなに愛されたことなんて無かったから、

   今決(いまき)めろなんて言われても解らないよ!!

 

ガル:( 溜息 )――。

   そうか、

   健気(けなげ)な女だな。

 

シル:ごめんなさい、

   ……ごめんなさい、

   ガルフォード。

 

ガル:(あやま)るな。

   ……(じつ)見事(みごと)な勇気ではないか、

   (おのれ)の不足を知るからこそ出た真心(まごころ)なのだろう。

 

シル: ……ッ!!

   ……うぅ!!

 

ガル:ならば、

   俺がそなたに出来(でき)(こと)は一つしかあるまい。

 

シル:え?

 

ガル:(ちか)え、

   シルヴィア。

   お前はこれから何の為に生きる?

 

シル:私は……。

 

ガル:ずっと後戻(あともど)りの出来ぬ舞台を求めてきたのであろう?

   ならば丁度良い機会ではないか。

 

シル:私は……!!

 

ガル:(すべ)てを受け入れてやる。

   ()()はガルフォード・ガーデウス。

   世界に()(とな)える『王の(うつわ)』なのだからな。

 

シル: ……また、

   ()(くに)()くしてみたい。

 

ガル: ……何処(どこ)だ?

 

シル:鉄の国アイゼフィールに……。

   私を裏切り、

   私を切り捨てたあの国に。

   また忠誠(ちゅうせい)()くしてみたい。

 

フェ:( 指でテーブルを叩きながら )――ふっ。

 

ジー: ……なんとまあ。

 

ガル:何故(なぜ)そこまで鉄の国を愛するのだ?

 

シル:だって……あの国は私の(すべ)てなんだ……!!

   城下(じょうか)牧景(ぼっけい)も、

   民衆(みんしゅう)の、

あの人間らしい顔も、

英雄達が築いてきた歴史も、

私が生きてきた道も、

   アイゼフィールは私が愛し続けた(すべ)てなんだ!!

 

ガル:此度(こたび)は、

   (つらぬ)けると思うのだな?

   (おのれ)の決めた道を。

 

シル: ……ああ。

 

ガル:ならば(ゆる)す。

   存分に祖国に()くすが良い。

 

シル: ――ッ!?

解っているのか!?

   ガルフォード、

   もし私がアイゼフィールに拾われたとて、

   そうなれば我々は……。

 

ガル:うむ。

存分(ぞんぶん)に殺し合おうではないか。

   存分(ぞんぶん)に、

   (ちか)()ったのだからな。

 

シル: ……優しいね。

 

ガル:いいや違うな、

   こりゃただの大馬鹿(おおばか)だ。

   とんだ(はじ)さらしだ。

 

シル:ふふっ。

 

ガル:ダハハハハ!!

 

ジー:アッハッハッ!!

 

ノバ:ブヒョヒョヒョ!!

 

フェ:カッカッカッ!!

   うむ、

   天晴(あっぱ)れ!!

 

オノ:え~~。

   ……じゃ、

   失恋式(しつれんしき)晩餐(ばんさん)を始めちゃってくださ~い。

 

ガル:うむ!!

(みな)存分(ぞんぶん)に飲もう!!

   明日は知れぬが人生ならば、

   この(さかずき)永久(とわ)(きずな)としよう!!

 

一同:オオオォォォォ!!

 

ガル:( 豪笑 )ワハハハハハハ!!!

……(みんな)、元気でな。

 

シル:なあ。

 

ガル:ん?

 

シル:( 口付け )――。

 

ガル: ……ッ!?

 

シル:ふふっ♪

   このくらいはな?

 

ガル:好きだシルヴィアッ!!

   結婚してくれ!!

 

シル:くどい!!

 

フェ: ……何とも(はな)のある事よ。

   手折(たお)って仕舞(しま)わずに良かった。

 

シル:アハハハハッ!!

 

ジー:僕たちはその日、

奇跡(きせき)(よう)一夜(いちや)を過ごした。

   何時(いつ)しか終わるからこそ、

   今が楽しい。

   そんな当たり前の事に気付けないから、

   僕達は今まで苦しんで生きてきたのだろう。

   遅過(おそす)ぎた時計は確実に終わりを(きざ)(はじ)めていた。




 
 
 
     
 
           
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