題名 |
公開日 |
人数(男:女:不問) |
時間 |
こんな話 |
作者 |
風のシルヴィア(20)~Twinkle Night~
|
2015/01/18 |
6(2:2:2) |
30分 |
誓え、シルヴィア。お前はこれから何の為に生きる?
|
ニコ |
登場人物
(年齢) |
性別 |
その他 |
シルヴィア
(26) |
♀ |
絶世の美女にして凄腕の女騎士。
凄く余裕ぶっていて迫られると弱いです。
つまりは可愛い人なのです。 |
ガルフォード
(32) |
♂ |
俺達の兄貴。
豪快で馬鹿そうでいて質実兼備な王様。
カリスマ性がみなぎる。 |
オノウ
(28) |
♂ |
糞マッチョなオカマ。
軍事大臣なのだがノリ良く面倒見も良い。
ギャグ担当。
|
ノバラ
(79) |
♀ |
亜人の老婆。
宮廷占い師。
道化役。 |
フェンシア
(108) |
不問 |
ハーフエルフ。
優雅で扇情的な鉄の国の英雄。
皮肉の中に優しさが漂う。 |
ジーニアス
(17) |
不問 |
変装・暗殺好きな英雄。
ひょうきんな性格。
出番は少な目。 |
「風のシルヴィア(20)~ TwinkleNight~」
シルヴィアさんはひょんな事から王様に気に入られ、
お嫁さんになる事を迫られました。
恋愛ファンタジーです。
( ガーデウス城:披露宴式場 )
オノ:あら忙しい!!
あら忙しい!!
ノバ:ブヒョヒョ!!
か、会場セッチィングは楽しいのう!?
シル: ……。
オノ:いいのかしら!?
テーブルはあたしが大理石から伐り出していいのかしら!?
ノバ:おうおう、
ダイナミックに仕立てにゃならんぞい!!
何せ金色の獅子、
ガルフォードと風のシルヴィアの結婚式じゃからのう!!
オノ:オラァ!!
シル:うわっ……。
オノ:良い感じに出来たッ!!
亜人と人間の共和国、
新生クロウリの門出に相応しいわ!!
シル:あのぉ……。
オノ:あれよね!?
招待状は2カ国語でいいのかしら!?
亜人共は群がって来るのかしら!?
ノバ:ブヒョヒョヒョ!!
あ、亜人はのう!?
く、食い物と相手が居ればそれでええんじゃあ!!
オノ:素敵ッ!!
相手にゾッコン!!
夜はバッ↑コン↓ね!?
ノバ:プッ……ププッ……!!
オノ:フ……フホホ……!!
オノ&(ノバ):オホホホホ!!(ブヒョヒョヒョ!!)
やぁだちょっと下品過ぎよぉもう!!
(あ、愛があるなら温め合わんとのう!!)
シル:あの。
オノ:あっ!?
そうよ!!
指輪よ指輪!!
あたし、
何かしらの猛獣から略奪してくるわね!?
ノバ:おお、そうじゃ。
儂もクマ族から蜂蜜を貰ってこにゃ。
……花婿が困るといけんでのう!?
ブヒョヒョ!!
シル:い……行ってしまった。
……どういうんだ?
ガル:おう。
シル:ひっ!?
ガル:探したぞシルヴィア。
ここに居たのか。
シル: ……ガルフォード。
ガル:女ってのは随分と気が早いなぁ、
まだ膳立ても済んでないってのに。
シル:あのオカマと老婆に無理やり連れてこられたんだ。
『花嫁は万事に於いて中心であるべし』、
とな。
ガル:お前……そこまで俺の事を思って……!!
グスッ……( 泣 )!!
シル: ……信じているぞ?
お前はそこまで愚鈍では無いとな。
ガル:ワハハ!!
まあ、そうだな……。
女心は理解できるが、
それをどうこうしてやろうとは思わん。
シル:乱暴者め。
自分さえよければそれで良いのか?
ガル:だが幸せには出来る!!
シル:( うんざりと )屁理屈を……。
ガル:具合はもう良いのか?
シル:えっ?
ガル:ほれ、
この軟膏を胸に塗っておけ。
シル:あ……。
だが私は、
龍の血の御蔭でこんな傷なんかは――。
ガル:( 被せる )バカモノ!!
シル:なっ!?
ガル:良いからつけておけ。
天馬の香油だ、
恐らく美容にも良い。
シル:まさか……。
お前が狩って来たのか?
ガル:ふふん、
俺以外に誰が天馬を仕留められる?
まあ、
良い眠気醒ましだったさ。
シル:何故だ?
何故私をそこまで大事にする?
ガル:なんだそりゃあ?
そんなの愛しているからに決まっているだろう!!
早く俺の物になれよ、
シルヴィア!!
シル:違う!!
ガル:うぇ?
シル: ……真面目に応えろ。
そうすれば話を聞いてやらんことも無い。
ガル:これは、
戦々恐々だな。
シル:ガルル。
ガル:ワハハ!!
誓いか……まぁ良かろう、
それもまた必要な儀式に相違あるまい。
シル:今の私には、
お前はただの裸の王様にしか見えない。
ガル:それはいかんな。
うむ、ならば聞け、
風の騎士よ。
シル:ああ。
ガル:その……。
お前が馬鹿垂れだからだ。
シル: ……何?
ガル:ガキのまま綺麗に馬鹿に育ち、
どうしようもなく不器用で、
わきまえぬまま偉くなり、
そして全部投げ捨てた。
シル: ……まあな。
ガル:そんな無様にも諦めず、
足掻き戸惑い、
何とか生き延びて尚!!
少しも損なわぬ麗しさを誇る……。
シル: ……。
ガル:そんなガキの様なお前がその、
なんだ……。
違うな、
ああ、
違う違う!!
そうじゃない!!
シル: ……ふっ。
ガル:初めてそなたを見た時から惚れていた!!
傷だらけの肌、
血まみれの鎧、
あの晴れ晴れとした貌、
アイゼフィールの凱旋式でそなたに出逢った時、
我が心は風のシルヴィアの虜となってしまったのだ!!
シル:( 可笑しそうに )――それで?
ガル:愛しているぞシルヴィア!!
お前の身体も生き様も、
考え方も、
俺はお前の総てが好きなのだ!!
シル: ……ありがとう。
ガル:これを以て誓いとしてはくれまいか?
俺と共に覇道を目指そう、
シルヴィア。
シル:私は今でも四騎士の皆様の事を尊敬し、
その存在は、
目指すべき在り方の一つなのだと確信しています。
ガル:うむ。
シル:ですが私は未だ、
自分の生き様に決着をつけていないのです。
目的も持たず、
夢すらも忘れ、
ただふらりと彷徨っては世を騒がせ、
居場所を探す愚か者なのです。
ガル: ……そうか。
シル:だからガルフォード・ガーデウス、
貴方の気持ちは嬉しいけれど、
私はまだ、
貴方を選ぶ訳にはいかない。
ガル:俺を選んでくれ、
シルヴィア!!
シル:何故?
ガル:お前が必要なのだ。
今お前に選んでもらえたのなら、
俺はきっとお前を幸せに出来る!!
何もかもを投げ出して、
必ずやお前を幸せにしてみせる!!
シル: ……。
ガル:本当は恐ろしいのだ。
アイゼフィールに反逆し、
何人の仲間を死なせるか判らん、
皆が最後まで付き従ってくれるとも限らん。
それでもお前が、
この場で俺と共に生きる道を選んでくれるのなら……。
俺は……。
シル:大丈夫、
そんな弱い心も含めて、
皆は貴方の味方なんだよ?
ガル: ……ふん。
これは王の在り方では無い。
俺はお前の前だから心を晒したのだ。
シル:解っているよ。
……だが、
本当に万能なだけの人間が、
万人に愛されるものなのだろうか?
ガル:何?
シル:私は自分が強いと思うし、
弱いとも思う。
だけど貴方は、
そんな私を好きだと言ってくれている。
ガル:俺は男だ。
男が弱いなど間違っている。
シル:男だから強くあらねばならぬ、か。
いや、
そうか。
ふふ……!!
アッハッハッハ!!
ガル:何を笑う!?
シル:貴方が『英雄』でさえなければ、
貴方の物になっても良かった。
……そう考えてな。
ガル:何ッ、
誠か!?
シル:だがな?
私は景品ではない。
他人宜しく賛歌や激励の添え物でも無い。
私はそれだけには成れない。
ガル:成れぬか?
シル:おう。
ガル:どうしても?
シル:堅く誓おう。
ガル: ……フフ。
相分かった。
ならばその矜持、
今宵この場で示させてやろう。
シル:え?
ガル:言ったはずだ。
お前の総てを愛していると。
シル:結婚式……いやいや!!
やらないって言ってる――!!
ガル:( 被せる )とにかく式は挙げるぞ!?
盛大に笑い、飲み!!
大いに楽しもうではないか!!
ワッハハハハハ!!!
シル:ガルフォード……。
( 間 )( 密林と夕映えの見える通路 )
シル:成程、
この城は確かに無骨だが、
獣の国に良く似合う。
あいつらしい素直な創りだ。
ノバ:おうおう、
これは花嫁殿、
城の中で迷子かえ?
シル:あっ……ええっと、
ノバラさん?
ノバ:ブヒョヒョ!!
らしくも無い名じゃろ?
とっくに枯れ果てた徒花じゃからな。
シル: ……あの。
ノバ:んん?
どうしなすった?
シル:申し訳ありません、
皆さんの気持ちは嬉しいのですが、
私は……。
ノバ:やはり、
結婚は嫌かえ?
シル: ……はい。
ノバ:ヒョッ、
ヒョッ。
ええもんじゃのう、
若いってのは。
好き勝手出来おる。
シル:( 不服 )お言葉ですが、
私はガルフォードを愛しているとは一言も。
ノバ:知っておるよ?
じゃが、
断れるのは若い者の特権じゃ。
老いを知る者は、
甘受こそが美徳と思い込むものじゃでな。
シル:解っていて……何故?
ノバ:儂はバクの亜人じゃ。
見たくもないのに、
夢見心地に色んなものが見えおる。
シル:稀人……ですね?
噂で聞いたことがあります、
亜人の中でも、
数万人に1人の割合で生まれてくる希少種だとか。
ノバ:この老いた眼には、
この国の行く末も、
お主の人生も、
総てが映っておるぞ?
シル:教えて欲しいとは思いません。
それを知って生き方を変えても、
またその先で壁に出逢う筈ですから。
ノバ:ブヒョヒョ!!
その通り、
占いなんぞに頼ってはいかん。
結局、
儂が居なくては何も出来なくなってしまうでな。
シル:ノバラさん……。
ノバ:誰も報われぬ力じゃ、
誰も要らぬ力じゃ。
要らぬのに持って産まれてきてしまった。
じゃから、
あ奴の気持ちは良く解る、
じゃから人間なんぞに協力するんじゃ。
シル:ですが……私は。
ノバ:ええ、ええ、
ただの老婆心じゃ。
儂も楽しんで道化になっとるよ。
ブヒョヒョ……。
シル: ……。
ノバ:そうそう、
オノウの奴めが、
白無垢を着せたいと言うておったぞ?
何はともあれ、
花嫁殿も成りきってみてはどうかな?
馬鹿にならねば伐り崩せぬ壁もまた、
あるものぞな?
シル:私は……。
……。
( 間 )( ガーデウス城:王の間 )
ガル:そうか、
ゼオルードめ、
とうとうそこまで狂ったか。
ジー:狂ってはいないさ。
傍目から見れば、
狂っているのは君の方だね。
ガル:カッ!!
ジーニアス、
その狂人に何を望むつもりだ?
ジー:あの男は危険過ぎる。
だけど『古き国の四騎士』と『ディオールの四騎士』、
今じゃ彼に敵う者は一人も居ない。
ガル:それでも俺がアイゼフィールに挑むことに変わりは無い。
無論、
敗北するつもりもないがな。
ジー:それは別に構わない。
彼の国を滅ぼしたとて、
君が新たな王となるなら誰も否定はしないだろう。
ガル:『王の影』が聞いて呆れる、
結局お前はどっちの味方なんだ?
ジー:アハハ、
僕の立ち位置かい?
今はこの人の側、
かな?
フェ: ……らしいぞ?
ガル:フェンシア。
フェ:久しいな。
息災であったか?
ガルフォード・ガーデウス。
ガル:『王の鍵』よ、
わざわざジーニアスの『 影 』を借りてまで何の用だ?
フェ:祖国に反逆した貴様を殺しに来た。
ガル: ……。
フェ:ククク……。
いやさ、
冗談だ。
許せよ?
ガル:どの道、
貴様等とは殺し合うのだ。
遠慮は要らんぞ?
ジー:だってさ。
どうする?
フェ:それは困るな、
殺し合いとあらば、
我には先約がある。
ガル:先約……?
ああ……。
そういう事か。
ジー:察しちゃったよ。
皆想像する事は同じなんだね。
フェ:ついては、
少しばかり騒いではくれぬか?
その方がやりやすいのでな。
ガル:お安い御用だ。
だがそれで本当に良いのか?
だってあんた達は――。
フェ:( 被せる )良い。
充分と言えば充分であろう?
遊び尽くした生であったよ。
ガル:そうか。
あんたには世話になった。
達者でな。
フェ: ……強くなれ、
ガル坊、
何時の世も、
気位と熱意を持つものが長となるのだ。
ガル:ああ。
肝に銘じるよ。
フェ:クク……。
ではな。
ガル:あっ、そうだ!!
フェンシア、
ジーニアス、
折角だから夜まで居ろよ!?
ジー:ええ~~?
僕未成年だし~?
フェ:馴れ合いか?
傷の舐めあいならば御免だが……。
それとも何か、
慶事でもあるのか?
ガル:今この城にはシルヴィアが居るんだ、
俺達結婚するんだぜ!?
ジー: ……どうせ君が強引に、
袖を引いたんだろ?
フェ:なんと剣呑な。
シルヴィア相手に力尽くとは。
ガル:うるせえ!!
ジー:君程の男が夢中になるなんて、
彼女も罪な女だよねえ。
フェ:クク……どれ、
ならば結末を見届けてから行くとするか。
お城の吟味も兼ねてとっくりと、な。
ガル:勝手にしろ、
皮肉屋聖人め。
( 間 )( 一夜限りの夢物語 )
オノ:サアァァァァァ!!
お待たせエエェェェ!!
招待客のみなさああああん!!?
結婚式を始めるわよぉぉぉ!!!
シル以外の一同:オオォォォォ!!
シル: ……こんなに。
ノバ:ブヒョヒョ、
け、結構な人数が来るものよな?
オノ:( 小声で )皆暇人なのよ。
ジー:ゴクゴク……。
ムシャムシャ。
ガブガブ。
ノバ:おやおや、坊?
酒を飲んでも平気なのかえ?
ジー:うん。
ママのミルクに飽きちゃってね。
ノバ:そうかい、そうかい。
スネを齧るよりはよっぽどええのう。
ジー:ガリガリ。
モグモグ。
ガル:俺は嬉しいぞ!!
皆!!
亜人も人間も区別は無い!!
今宵は最高の宴にしよう!!
シル以外の一同:オオオオオォォォォ!!
オノ:それでは、
仲人役の……あら?
えっ!?
ちょっ、これホント?
ガル様!?
ガル:ワハハハ!!
良いから読みあげろ!!
オノ:えーと……。
『鉄の国アイゼフィール』が誇る、
『古き国の四騎士』が一人、
フェンシア・キル・ツヴァイボルグ卿、
宜しくお願いしま~……。
フェ:うむ?
我か、
良いぞ。
シル:何ッ!?
オノ:居 た ッ !?
何なの、
何なのこのサプライズ!?
ジー: ……ほ~らね。
僕だってそこそこ偉いのに、
見向きもされないんだ。
チェッ。
オノ:あっ!?
ツヴァイボルグ卿、
ワタクシの事、
覚えておいでですか?
フェ:オノウ・フンドシオであろう?
随分とおさまりが良いではないか、
我の軍閥に居った頃はつまらぬ将であったが。
オノ:アタシッ!!
今とっても幸せなんです!!
ガル様の所でカミングアウトして人生が変わったの!!
フェ:そうか、
それは何よりだな。
オノ:フェンシア様、
ずっと好きでした!!
あたしと付き合ってください!!
ジー:おおっ!?
フェ: ……。
さて――。
オノ:流 さ れ た ッ !?
フェ:シルヴィア、
ガルフォード、
両名の幸福と健勝を願う。
ガル:ありがとよッ!!
フェンシア!!
シル: ……。
フェ:ガルフォードは、
夏の蝉が煩き頃、
バルトール・ガーデウスの嫡子として生を受けた。
ノバ:( イビキ )――。
フェ:幼き頃より才気闊達な腕白で、
腕試しと言っては、
我に何度も挑みかかって来たものよ。
オノ:いやん、
可愛い。
フェ:流石に我も飽きてきてな?
一度手酷く痛めつけてやったが、
それでも飽くことなく、
我を訪ね続けた胆力には閉口したものだ。
オノ:まあ……それって恋かしら?
ジー:絶対違うよね。
フェ:仕方が無いので、
何故戦うのかと問うてやったのだ。
するとな?
そやつはこう答えた。
『自分は王を支える杖にも、
手に取る剣にも成れぬ器だ。
ましてや盾に収まるつもりは毛頭ない、と。』
シル:自分の……在り方。
フェ:故に己を探すのだと戦場で暴れまわり、
何度も傷つき、心折れ、
その度に立ち上がり、
いつしか王自らに、
『王の右腕』と呼ばれるに至ったのだ。
ノバ: ……むにゃむにゃ。
ガルは良い子じゃ。
全部、
知っておるよ。
フェ:求道こそが、
最も迂遠なる道に違いあるまい。
ガルフォードは見事それを踏破し、
揺るがぬ意志と不屈の強さを手に入れた。
実に誇らしい事ではないか。
オノ:( 酒をすする )――あら?
でもその右腕が、
王様裏切ったらブレブレじゃないの?
ジー:愛想が尽きたからって、
男の価値が下がる訳じゃないよ。
ただどうしようも無かったんだ。
オノ:坊や……。
大人ね、
あたしと付き合う?
ジー:気が向いたらね。
フェ:今となっては敵同士だが、
まあ、そやつはそういう男だ。
選んで損は無いぞ?
シルヴィア。
シル:私は……。
フェ:以上を以て祝辞とする。
両名、
良き道を選べ。
一同:( 拍手 )――。
オノ:フェンシア様ありがと~~~!!!
ツンデレ過ぎてあたし泣いちゃった~~~!!
ビャアアアアァァァ!!
ノバ:ンガッ!?
ありゃ、ほれっ、
次は新郎新婦、
愛の誓いぞな!?
ガル:おう!!
シル: ……。
ガル:ではシルヴィアよ、
準備は良いか!?
シル:え……?
ガル:ほらっ、
前に出るぞ!?
皆が俺達を祝福してくれている!!
シル:ガ、ガルフォード!?
私は――!!
ガル:( 被せる )シルヴィア・シルフィード!!
我が生涯をそなたに捧げよう!!
夢も現も満喫した!!
そんな俺の生涯に、
唯一足りぬ者があるとすれば、
それはそなたを於いて他にあるまい!?
シル: ……私はッ!!
ガル:永久の幸福を神に誓う。
俺と結婚してくれ、
シルヴィア。
シル: ……!!
………!!
ごめんなさい!!
オノ:( 鼻をすする )――!!
……ンガ?
ジー:えっ。
フェ: ……ほう?
ノバ:ヒョッ、ヒョッ。
ガル: ……。
本当にそれで良いのだな?
シルヴィア。
シル:( 泣きながら )だって……!!
だって私ッ……!!
一人の人にこんなに愛されたことなんて無かったから、
今決めろなんて言われても解らないよ!!
ガル:( 溜息 )――。
そうか、
健気な女だな。
シル:ごめんなさい、
……ごめんなさい、
ガルフォード。
ガル:謝るな。
……実に見事な勇気ではないか、
己の不足を知るからこそ出た真心なのだろう。
シル: ……ッ!!
……うぅ!!
ガル:ならば、
俺がそなたに出来る事は一つしかあるまい。
シル:え?
ガル:誓え、
シルヴィア。
お前はこれから何の為に生きる?
シル:私は……。
ガル:ずっと後戻りの出来ぬ舞台を求めてきたのであろう?
ならば丁度良い機会ではないか。
シル:私は……!!
ガル:総てを受け入れてやる。
我が名はガルフォード・ガーデウス。
世界に覇を唱える『王の器』なのだからな。
シル: ……また、
彼の国に尽くしてみたい。
ガル: ……何処だ?
シル:鉄の国アイゼフィールに……。
私を裏切り、
私を切り捨てたあの国に。
また忠誠を尽くしてみたい。
フェ:( 指でテーブルを叩きながら )――ふっ。
ジー: ……なんとまあ。
ガル:何故そこまで鉄の国を愛するのだ?
シル:だって……あの国は私の総てなんだ……!!
城下の牧景も、
民衆の、
あの人間らしい顔も、
英雄達が築いてきた歴史も、
私が生きてきた道も、
アイゼフィールは私が愛し続けた総てなんだ!!
ガル:此度は、
貫けると思うのだな?
己の決めた道を。
シル: ……ああ。
ガル:ならば赦す。
存分に祖国に尽くすが良い。
シル: ――ッ!?
解っているのか!?
ガルフォード、
もし私がアイゼフィールに拾われたとて、
そうなれば我々は……。
ガル:うむ。
存分に殺し合おうではないか。
存分に、
誓い合ったのだからな。
シル: ……優しいね。
ガル:いいや違うな、
こりゃただの大馬鹿だ。
とんだ恥さらしだ。
シル:ふふっ。
ガル:ダハハハハ!!
ジー:アッハッハッ!!
ノバ:ブヒョヒョヒョ!!
フェ:カッカッカッ!!
うむ、
天晴れ!!
オノ:え~~。
……じゃ、
失恋式の晩餐を始めちゃってくださ~い。
ガル:うむ!!
皆存分に飲もう!!
明日は知れぬが人生ならば、
この杯を永久の絆としよう!!
一同:オオオォォォォ!!
ガル:( 豪笑 )ワハハハハハハ!!!
……皆、元気でな。
シル:なあ。
ガル:ん?
シル:( 口付け )――。
ガル: ……ッ!?
シル:ふふっ♪
このくらいはな?
ガル:好きだシルヴィアッ!!
結婚してくれ!!
シル:くどい!!
フェ: ……何とも華のある事よ。
手折って仕舞わずに良かった。
シル:アハハハハッ!!
ジー:僕たちはその日、
奇跡の様な一夜を過ごした。
何時しか終わるからこそ、
今が楽しい。
そんな当たり前の事に気付けないから、
僕達は今まで苦しんで生きてきたのだろう。
遅過ぎた時計は確実に終わりを刻み始めていた。
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