題名 |
公開日 |
人数(男:女:不問) |
時間 |
こんな話 |
作者 |
風のシルヴィア(23)~風の凪いだ日~
|
2015/02/24 |
6(4:2) |
30分 |
……俺の名前が言えますか?カミュ団長。
|
ニコ |
登場人物
(年齢) |
性別 |
その他 |
シルヴィア(26)
リゼラ(25) |
♀ |
シルヴィアは気高くも優しい女騎士です。
リゼラは慈愛に満ち溢れた美人妻。
ミシェルの母親で故人です。 |
ミシェル
(17) |
♀ |
ミシェルは心優しい美少年です。
故人でしたが友人の御蔭で生き返りました。
カミュの息子です。 |
カミュ
(42) |
♂ |
高慢な貴族で剣の天才。
『王の剣』の異名を取る英雄。
※兼ねは無いですが一番難しいです。
|
騎士(18)
常連(27) |
♂ |
騎士は理想に燃える若者です。
世間知らずなヘタレです。
常連はただの飲んだくれです。 |
兵士(23)
主人(36) |
♂ |
兵士は騎士を見守る従者にして兄貴的な存在です。
主人は豪快な酒場のマスターです。
※おなじみ出番控えめ枠 |
傭兵(29)
ゼオルード(226) |
♂ |
傭兵はシルヴィアの元同僚で現実的なイケメンです。
ゼオルードは威厳と野心に満ちた宰相です。
老人ですが現役の武人でもあります。 |
※その他、亜人はやりたい方がやってください。
殆どモンスターです。( 騎士の人以外で )
「風のシルヴィア(23)~風の凪いだ日~」
アイゼフィールが敵の猛攻に晒される中、
とうとうシルヴィアさんが祖国へ還ります。
皆さんお待ちかね屑親父の回です。
( アイゼフィール近郊:そよ風薫る田舎道 )
ミシ:シルヴィアさん?
シル:あっ!?
ああ……。
ミシ:どうしたんですか?
疲れたのなら、
せめて木陰でも探しましょうよ?
シル:いや、その……。
いまいち実感が湧かなくてな。
ミシ:僕が生き返った事が、
ですか?
シル:だってお前は、
確かに私がこの手で……。
ミシ:ああ。
後ろめたいんですね?
あの時、僕の首を刎ねた事がそんなにも。
シル: ……済まなかった。
ミシ:気にしないで下さい。
黒き森で魔獣と化していた僕は、
この世の総てを憎悪して死んだけれど。
シル: ……。
ミシ:( 深呼吸 )――。
シル:ミシェル。
ミシ:今となってはこの青葉の匂いも、
シルヴィアさんの匂いも、
全部健やかで大好きです。
シル: ……言うべきことは、
たくさん在る筈なのに、
何も言葉に出来ないんだ。
ミシ:彷徨い続けたのはお互い様じゃないですか。
黒き針葉の孤独なる森、
欠片の散らばる茫漠の世界、
どちらも言い訳には充分ですよ。
シル:私を……。
赦してくれるのか?
ミシ:( 溜息 )――。
此方へ。
シルヴィアさん。
シル: ……。
――ッ!?
ミシ:どうか忘れないで下さい。
僕は貴女に救われたんです。
……そして僕は、貴女の永久の味方です。
シル:ミシェル……。
ミシ:それともこうやって、
ただ抱きとめるだけでは伝わりませんか?
シル:いや……ふふっ。
ミシ:クスッ。
シル:何時の間にか男の腕になっていて、
驚いたよ。
ミシ:ただいま。
シルヴィアさん。
シル:おかえり。
ミシェル。
( 間 )( 砂塵逆巻く戦場:『アイゼフィール』 対 『新生クロウリ』 )
騎士:ゼエッ……ゼエッ……!!
亜人:グフフ……!!
騎士:まだだ!!
祖国の為に、アイゼフィールの為に!!
必ずやこの戦に勝利をもたらす!!
カミ:( ※ぶつぶつと呟いてください )嗚呼……。
何だ、この規律も誉れも無い野蛮な戦は?
鉄の国アイゼフィールの名が聞いて呆れる。
……一体誰が指揮を執っているのだ?
兵士:ぐっ!?
主!!主はいずこぞッ!?
……くそっ、見失っちまった!!
カミ:いや……?
そうだ、思い出したぞ?
この戦場の指揮者は私だ。
亜人共と結託した、
ガルフォードの代替としてこの私が――。
騎士:( 被せる )行くぞ亜人共!!
ハアッ!!
亜人:グルルル……!!
グオオオッ!!
カミ: ……だが、何故だ?
此処が私の戦場だと言う気がしないのは。
兵士:クソッ!!
退け貴様等ッ!!
砂塵で敵も味方も判りやしねえ!!
カミ:クフフ…それも……。
思案の無駄、か。
傭兵:布陣が綻んでいる……!!
屈強な亜人を相手に、
混戦となっては勝ち目など無いと言うのに!!
カミ:南の生え抜きは、
総てガルフォードが持っていきよった。
私の元に残っているのは、没落貴族とその隷奴、
そして野蛮な傭兵共しかおらぬのだ。
兵士:何なんだこの戦は!?
さっさと何をすれば良いか命を下せッ!!
うちの司令官は何をやってるんだ!?
カミ:いや……ならば私が……?
だがそれでは……むう……。
やはりそれは早計だ……。
( 独りでぶつぶつと呟く )――。
( 間 )( 塗れ行く大地、染まり行く空 )
騎士:ゼエッ……ゼエッ……!!
亜人:( 咀嚼 )――!!
ガフッ!!
ガフッッ!!
騎士:わ、我こそはセレスタイト家が家長!!
ソラーナ・セレスタイト也!!
いざ尋常に立ち会えッ!!
亜人:グル……!?
グフフ……!!
騎士:う、うわあッ!?
こ、こいつ、
人間を喰ってる!?
亜人:グオオオォォッッ!!
騎士:ひいいぃぃ―――!?
カミ:( 被せる )ムンッ!!
亜人:グギャアッ!?
騎士: ………ッ!!
……え?
カミ:下らん。
手こずる事すら難しい。
騎士:おお!?
た、助かりました!!
カミュ様!!『王の剣』よ!!
カミ:腰抜けめが。
騎士: ……は?
カミ:( ぶつぶつと )やはりこれでは勝てぬ。
そもそも何故、
下賎な者を護るために、
この私の高貴なる剣を振るう必要がある?
このフィーバストルテの剣を。
騎士:カミュ様!!
カミ: ……何だ?
何か進言でもあるのかね?
騎士:自分は決して、
腰抜け等では!!
カミ:そうか。
では無能だな。
騎士:何ですと!?
カミ:亜人如きに遅れを取り、
将自らに剣を取らせるとは、
騎士の風上にも置けぬではないか?
騎士:ぐっ……!!
カミ:使えぬのであれば、
せめて意地を見たかったが、
成程、セレスタイト家の零落も頷ける。
騎士:貴公は……!!
この戦場でかつての仲間と殺し合い死んでいく配下の事を、
考えたことがあるのですか!?
カミ:ほざくなっ!!
何故この私が貴様等の斟酌までする必要がある!?
駒は黙って戦を続けろ!!
騎士:もう……たくさんだ。
折角勇気を出して出陣してきたのに……。
こんなのは……あんまりだ。
カミ: ……待て。
何処へ行くつもりだ?
騎士:此処じゃない所へ。
そうだ、家が良い。
……我が家に帰るんだ。
カミ:敵前逃亡だと……!?
信じられん、
貴様それでも騎士か!?
騎士:五月蠅いッ!!
カミ:むっ!?
騎士: ……成程、
私は浅はかな人間です。
ですが、なればこそ、
貴公には良き将で居て欲しかった。
カミ:何ッ!?
私の差配が気に喰わぬと言うのか!?
騎士:せめて最後の時は愛すべき者の傍に居てやりたい。
貴公にとっては只の『御家』でしょうが、
私には、そこには心から信じられる家族が居るのですから。
カミ: ……ッ!?
クッ…クフフ……!!
何を……何を貴様は……!!
騎士:残念です。
……貴公にも、
かつては豊かな家庭が在ったでしょうに。
貴公はそれを、自らの手で――。
カミ:( 被せる )黙れえええっッ!!
騎士: ……なッ!?
……ゴフッ!!
何…を……!?
兵士:見つけた、主よッ!!
……主?
( 剣を落とす )……馬鹿な。
騎士:ゴボッ……!!
………。
カミ:ハアッ…ハアッ……!!
傭兵:団長……。
あんた、気が……。
カミ:ええい、
黙れ黙れッ!!!
兵士: ……四騎士殿。
カミ:何を突っ立っておる!?
この無能どもがッ!!
さっさと敵陣へ斬りかからぬか!!
兵士:御暇を願います。
カミ: ――ッ!?
馬鹿を言うな!!
兵士:自分はこれから、
主の訃報を奥方に御伝えせねばなりません。
カミ:私がこの戦の主なのだぞ!?
その私に逆らうのか!?
兵士:今しがたあんたが斬り殺した騎士様は、
俺の主君にして友だった。
カミ:それがどうした!?
貴様が躊躇う理由にはなるまい!?
兵士:此の方の命ならば……!!
俺は喜んで従っただろう……!!
喜んで死んだだろう……!!
だが……あんたは決して俺の主じゃない……!!
カミ:いいやッ!!
私に従え!!
私こそが主なのだ!!
兵士:( 溜息 )――。
やれやれ。
名前ばかりで、所詮はこんなものか。
カミ:なっ!?
何ッ……!?
兵士:あばよ。
カミ:貴様ッ!!
ぐっ……!?
ええい放せッ!!
傭兵: ……俺の名前が言えますか?
カミュ団長。
カミ:何だ貴様は!?
何処の馬の骨だ!?
傭兵:( 苦笑 )――。
やはり存じませんか。
俺はあんたが率いる、
エルツィ傭兵団の隊長ですよ。
カミ:だから何だと言うのだ!?
何時死ぬとも知れぬ傭兵風情が、
賢しらに!!
傭兵:ロヴェル団長は、
俺達の一人々々を理解しようとしてくれた。
俺達がどれだけ幼くて野蛮でも、
只の駒だとは一欠けらも思わずに接してくれた。
カミ:あの反逆者にこの私が劣ると言うのか!?
傭兵如きが四騎士である私に苦言だと!?
恥を知れッ!!
傭兵: ……眼が醒めました。
カミ:ああッ!?
傭兵:エルツィ傭兵団3000騎。
主を見失ったが故、
戦場から離脱させて頂く。
カミ:何だと!?
お、おい待てッ!?
待てと言うに!!
……ッ!?
この奴ばらめがあぁぁ!!!
( 間 )( 落日の王都:アイゼフィール )
シル:嗚呼……!!
アイゼフィールだ!!
王都アイゼフィールだ!!
ミシ:ええ……。
とうとう此処まで来たのですね。
シル:見ろ!!あのそそり立つ王城!!
歴代四騎士のレリーフ!!遥かなる凱旋門!!
総て私達が守り抜いて来たものだ!!
ミシ:良かったですねシルヴィアさん。
僕も嬉しいです。
シル:さてどうする?
早速傭兵からやり直すのも手だが、
何だか勿体無い気もするなぁ。
ミシ:アハハ……。
その……出来れば。
……何処かで休みたいのですが。
シル:え?
……あっ!?
おいっ、どうした!?
ミシ:いえ、お構いなく。
二足で歩くのは久しぶりだったので、
ちょっと疲れてしまいました。
シル:お前らしくも無い……。
前ばかり見ていたから、
気づいてあげられなかった。
ミシ:クスッ……。
だけど、この方が都合が良いです。
シル:何故だ?
ミシ:正体を知られて困るのは、
お互い様でしょう?
シル: ……むう。
ミシ:そういうものです。
シル:むうぅぅぅ……!!
ミシ:( 棒読み )あー。
風が気持ちいいなー。
シル:良しッ!!
飲むぞミシェル!!
ミシ:ええっ!?
まだ黄昏時ですよ?
シル:遠慮しなくても良いさ!!
人間死ぬ時は死ぬし、
生き延びる時もまた然り!!
明日の事は明日考えれば良いのさ!!
ミシ:ううん……。
シル:それとも、
私の酒が飲めないのか?
ミシ: ……やれやれ。
シルヴィアさんと居ると、
凄く真面目な不良になりそうな気がします。
シル:アハハッ……!!
つい楽しくてさ。
迷惑をかけるね、ミシェル。
ミシ:滅相も無い。
何処までも御伴しますとも。
シル:覚えているか?
私達の馴染の店。
ミシ:勿論です。
冒険者の集う酒場。
皆の思い出の店、ですね?
( 間 )( 王都老舗:『『ディオールのラビリンス』亭 』 )
主人:へいらっしゃい!!
ようこそ!!
『ディオールのラビリンス』亭へ!!
シル:主人!!
蜂蜜酒をくれ!!
主人:ハイよ!!
坊やは何にするね!?
ミシ:かあぁぁのじょぉぉぉ!!
と、
おーなーじーもーのーをー!!
主人:了解、了解ッ!!
フードを被った謎の女と煤けたお子様、
ご来店ェェエン!!!
シル:悪いなァ!!
不足分は上乗せするよぉ!!
主人:ウハハハ!!
堅い事は言いっこ無しだ!!
好きなだけ飲んでいきな!!
シル:此のテーブルで良いかなーー!?
誰か取ってるかーー!?
主人:好きに座りなぁ!!
文句言う奴は俺がぶっ飛ばしてやるよ!!
ウハハハ!!
シル:ふふっ。
相変わらず、
気取らぬ良い店だ。
ミシ:ええっと、
メニュー――。
主人:( 被せる )へいおまちッ!!
( グラスを置く )――蜂蜜酒!!
ミシ:う……!?
常連:おい!!
マスター!!
こっちもだ!!
主人:はいよぉ!!
ただいまぁ!!
シル:さぁて、
何に乾杯する?
ミシ:で、では。
コホン……この店の名に。
シル:『ディオールのラビリンス』に?
ミシ:ええ。
それこそはまさに大昔、
土の神獣タイタニシアが創り出した迷宮の名です。
……違いますか?
シル:ふっ……。
そこで冒険者をやっていた3人の子供に、
竜騎士シルヴィアが出逢って、
何時しか『ディオールの四騎士』と呼ばれるようになった。
ミシ:そして僕達の祖先、
『古き国の四騎士』との戦いを経て、
古き国はアイゼフィールへと生まれ変わる。
シル:ディオールの四騎士、
暗闇のロヴェルが王となり、
古き国の御姫様と結ばれる形でな。
ミシ:シルヴィアさんは、
伝説の竜騎士に憧れたから、
アイゼフィールへ来たのですよね?
シル:まあなぁ。
最初は空っぽだったが、
何だかんだで楽しい毎日だったよ。
ミシ:ではやはり、
総ての始まりである其の御名に。
シル:( 感心 )――♪
全く、大した切れ味だよ。
ミシ:せーのっ!!
シル&ミシ:乾杯ッ!!
( 間 )( 満員御礼☆大盛況 )
常連:おい!!
何だよぉ、
その様はよぉ!?
傭兵:うるせえなぁ……ヒック!!
放っといてくれよぉ……。
シル:ん?
常連:ひでえ負け戦だって聞いたけどよぉ、
まだ全部終わった訳じゃ無いだろうがい?
傭兵:お前は良いよなぁ。
こうやって酒に酔って、
文句を言ってりゃあ、
総てが終わっちまってるんだからよぉー。
シル:この声は……。
ミシ: ?
どうかしましたか?
シル:いや……。
主人:まあまあ、
そう荒れなさんな。
今夜はツケといてやるからよ?
傭兵:ヒック……!!
昔は良かったよぉ……!!
ロヴェル団長もシルヴィアも居て、
ミシェルに、ロミオに、
ティオに、それからそれから――。
常連:( 被せる )わぁってるって!!
お前よぉ、誇っていいぜ?
全盛期のエルツィ傭兵団ってのは、
そりゃあもうな、アイゼフィールの花形だったからよぉ!!
傭兵:ヒック……!!
俺は可笑しいと思ったんだよぉ。
2年前にミシェルが突然消えて、
1年前に団長もシルヴィアも消えて、
寄ってたかって俺達を捨て駒にしやがって!!
主人:( 溜息 )――確かに、皆揃ってたらなぁ。
亜人なんかに遅れを取りはしなかっただろうなぁ。
傭兵:ケッ!!
それが解散しちまったら世話も無ぇやい!!
シル: ……ッ!?
ミシ:止しましょう、シルヴィアさん。
僕等が素性を明かしても、
混乱させるだけです。
シル:あ、ああ……。
常連:ところでよぉ、
無能なカミュ様の代わりに司令官になった男、
お前知ってっか?
傭兵:知るかよぉ……ヒック!!
今更そんなの、
……興味も無ぇや。
主人:ああそれな!!
ゼオルード様が拾ってきた、
無銘の騎士だって聞くぜ?
なんでも、『 龍 』と『 同化 』の二重属性の遣い手だって。
常連:見た目はマディーンで戦死した、
竜騎士シルヴィアにそっくりだってよ。
傭兵:竜騎士……?
シルヴィア……?
う……!!
( 慟哭 )うおおぉぉぉぉ……!!!
常連:ああ?
……ああ、はいはい。
『シルヴィア』ねぇ。
主人:こりゃひでえや、
( 飲む )――ウエップ。
……相当深い傷みてぇだな。
ミシ: ……。
あっ!?
シル:おい。
傭兵:うるせえっ!!
放っといてくれ!!
シル:泣くなよ、
グレン。
傭兵:気安く呼ぶんじゃねえッ!!
俺は泣く子も黙るエルツィ傭兵団隊長!!
グレンゴル・ベルカッツィ様だ!!
シル:私だよグレン。
シルヴィア・シルフィードだよ。
傭兵: ……へ?
主人:こ、こりゃあ……!?
忘れる訳も無ぇ!!
その目の醒めるような金髪碧眼の女っぷりは!!
傭兵:う、嘘……。
だろ……?
シル:嘘じゃない。
私は確かにここに居るよ?
傭兵: ―――ッ!?!?!?
( 気絶 )――!!
常連:お、おおおいっ!?
主人:い、いやッ!?
確かにそうだ!!
あんたはシルヴィア・シルフィードだ!!
シル:ふふっ。
存外気づかれないもので、
驚いたよ。
主人:だが何故だ!?
あんたは獣王殺しの大罪で、
処刑された筈じゃ……!!
シル:総て話すさ。
だから其方の情報も全部教えてくれ。
ミシ:( 溜息 )――。
仕方が無いなぁ、あの人も。
本当に真っ直ぐで、綺麗なんだから。
( 間 )( 王城:錆びついた牢獄 )( ※カミュの夢の中です )
カミ:う…うぅ……。
何故…この私が……。
こんな汚らわしい牢獄なんぞに……。
ミシ:父上?
カミ: ……ッ!?
ミシェル!?
ミシ:傍に行っても……。
いいですか……?
カミ:や、止めろッ!?
私に近寄るなッ!!
ミシ:散々僕を利用しておいて……。
良い父親ですね。
カミ:確かにお前は死んだのだッ!!
私はジーニアスの持ち帰った、
其の生首を見たのだぞッ!?
ミシ: ……クスッ。
カミ:ヒッ!?
リゼ:貴方?
カミ:リ、リゼラ……!?
リゼ:そうよ?
貴方の妻のリゼラよ?
カミ:う……うわあぁぁぁ!!?
消えろ!!
消えてくれッ!!
リゼ:どうして私を殺してしまったの?
あんなに愛していたのに。
カミ:おっ、お前が亜人の血を引いていたからだッ!!
お前が素性を隠していたのが悪いのだッ!!
リゼ:私を抱いて……。
ミシェルを創って……。
それでも貴方は私を愛せなかったの?
カミ:当たり前だ!!
汚らわしい亜人共め!!
ミシ:コロスゾ?
オマエ。
カミ:ううっ!?
リゼ:貴方?
カミ:くっ、来るなあぁぁ……!!
もう止めてくれえぇぇ……!!
( 泣く )……ククッ!!
ウッ…ウウウッ……!!
リゼ:愛してるわ。
貴方。
カミ: ……ッ!?
戯れ言を言うなッ!!
リゼ:胸に手を当ててみて?
……貴方が本当に欲しかったものは、
そんな空っぽのお家だったの?
カミ:黙れ黙れッ!!
貴様等亜人の言う事なぞ聞く耳は持たん!!
リゼ:それでも良いわ。
せめて貴方の思い出に残れたのなら、
私はそれだけで嬉しい。
カミ: ……何故だ?
私はお前を殺した男だぞ!?
そんな私に何を諭すつもりだ!?
リゼ:何も?
ただ安らかでいて欲しいだけ。
カミ: ……リゼラ。
リゼ:貴方は何時も何かに脅かされて、
焦りっぱなしで、
良く人を馬鹿にしたけれど。
カミ:止めろ……!!
リゼ:そういう人が居ても良いんじゃないかしら?
だあって、こんなに広い世界ですもの。
だからきっと大丈夫よ。
カミ:もう止めてくれ……!!
リゼ:貴方のそう言う所が可愛らしくて、
私はお金なんかよりも、もっと素敵な、
貴方の笑顔が大好きでした。
カミ:私は……本当は解っていたんだ。
お前がそう言う女だという事を。
リゼ:御免なさい。
貴方は私が思うよりもずっと、
独りぼっちだったのね。
……もう少し上手くやってあげれば良かった。
カミ:私をッ!!
どうかこの私をッ!!
リゼ:ええ、赦すわ?
こんな私を拾って下さったのですもの。
……貴方と過ごすことが出来て、
私は心から幸せでした。
カミ:( 泣く )――うぅぅ!!
……ううぅぅ!!
リゼ:さよなら。
貴方。
カミ:待ってくれ!!
リゼラッ!!
ミシ: ……母様がお前を赦しても、
僕は絶対に赦さない。
カミ:ミシェルッ!?
ミシェル、私は――!!
ミシ:( 被せる )聴きたくも無い!!
……お前は最低の四騎士だ。
せいぜい誇りある末路を迎えるが良い。
カミ:ま、待ってくれ、
行かないでくれ、
リゼラ!!ミシェル!!
待て……!!待ってくれ……!!
( 間 )( 朝露の滴る闇の中で )
カミ:( ぶつぶつ )ってくれ……。
私を…… てくれ……。
………。
ゼオ:おい。
起きよ、カミュ。
カミ:う……。
ゼオ:起きぬか。
カミュ・レーヴ・フィーバストルテ。
カミ:ゼオルード…様……?
ゼオ:事の顛末は聞いておる。
お主には端から期待はしておらなんだが……。
哀れよ。
此処まで無様に敗れるとはな。
カミ:私は……。
我がフィーバストルテは、
どうなるのですか?
ゼオ:これで仕舞じゃ。
お主の代で1000年の栄光も、
儚く散りおったわ。
カミ:ならば殺して頂きたい。
味方の虜囚と成るは恥辱。
ゼオ:フハハハッ……!!
成程な、いざとなれば、
『風の刃』で如何様なりともなったであろうに。
……腐っても四騎士か。
カミ:フィーバストルテの当主として、
せめて誇りある死を賜りたい。
ゼオ:気に入ったぞ。
お主、儂と共に来ぬか?
カミ:は?
ゼオ:其の剣の腕が惜しい。
儂と共に新たな国を、
創造しようではないか。
カミ:まさか…貴方は……。
アイゼフィールに反旗を……?
ゼオ:いや、然にあらず。
かつて古き国がアイゼフィールへと変貌したように、
歪を元に戻したい。
ただそれだけの事よ。
カミ:ですが……。
私は……。
ゼオ:選べ小童。
このまま無能の烙印を押され、
歴史に埋もれ行くか……。
それとも誇り高き英雄として伝承に名を残すか。
……どちらが良い!?
カミ:私は……。
………。
|