題名 |
公開日 |
人数(男:女:不問) |
時間 |
こんな話 |
作者 |
風のシルヴィア(25)~最後の四騎士~
|
2015/04/13 |
6(4:1:1) |
30分 |
千載一遇。二度とはやらんぞ?
|
ニコ |
登場人物
(年齢) |
性別 |
その他 |
シルヴィア
(26) |
♀ |
金髪碧眼の麗しき女騎士。
数々の冒険を経て英雄を滅ぼす程の力を得た。
優しくも気高い性格。 |
ミシェル
(17) |
不問 |
鉄の国が誇る四騎士の一人。
将来を嘱望されていたが作中では一度死んでいる。
生き返った後はシルヴィアの友であることを誓った。 |
オーズィ
(31) |
♂ |
鉄の国アイゼフィールの王にして最後の四騎士。
決して無能ではないが世捨て人の様に振る舞う。
その為に他の四騎士からは愛想を尽かされている。
|
ゼオルード
(226) |
♂ |
圧倒的な魔力を持つ宰相にして四騎士の一人。
野心露わな危険人物。その性格は冷酷無比にして尊大。
出番少な目。 |
ピエトロ
(45) |
♂ |
鉄の国の近衛長。
忠勤な人物で公平に物を見る。
が、国王に対しては些か過保護の気がある。 |
近衛
(不詳) |
♂ |
モブ。出番少な目。 |
「風のシルヴィア(25)~最後の四騎士~」
シルヴィアとミシェルは酒場で鉄の国アイゼフィールの現状を知った。
一方、余にも名高い『暗君』であるオーズィは二人の接近を知り覚悟を決める。
一触即発の中、シルヴィアは己にしか出来ない事を悟る。
( アイゼフィール王城:厳かなる玉座 )
オー:( 独白 )世界はまるで、砕け散った硝子の様だ。
麗しい玉壁程価値は無く、手に入れ難い欠片程危うい。
だからこそ……余は足掻く者に憧れるのか。
ピエ:陛下。
オ: ( 何か呟いている )――。
ピエ:陛下!!
オー:おお……どうしたピエトロ?
我が忠実なる近衛長よ。
ピエ:喫緊時故、
我が近衛師団をクロウリ方面に向けよ。
との、ゼオルード閣下の仰せですが。
オー:王都を空にしてまでか?
ふむ……事態はそれ程までに深刻か。
ピエ:何を今更……ガルフォードの率いる亜人軍は、
先の大戦で、カミュ様率いる南方軍を圧倒したではありませんか。
オー:カミュ、か。
奴には哀れな事をした。
やはり『王の剣』は、鞘に収めて置いてやれば良かったのだ。
ピエ:まるで空言の様に……!!
貴方と同じ四騎士ならば、
やはり何処かが欠けていたのでありましょうな!!
オー:ううむ。諫言痛み入る。
が、やはりそれ程の大事は本人の口から述べさせるとしよう。
ピエ:は?
オー:出て来いと言ったのだ。
ゼオルードよ。
ゼオ:フハハ……御見事!!
ピエ: ……ッ!?
ゼオ:良くぞ見破られた。
素晴らしき御慧眼ですな。
ピエ:ゼオルード……様……!?
何時の間に!?
オー:たちが悪い。
何時から覗いていたのだ?
ゼオ:陛下の御心がさざ波立つと言うのであれば、
陰ながら御見守りするのが、宰相の務めにござる。
さあ、忌憚なく述べられよ。
オー: ……。
フェンシアの居らぬ世界とは、
つくづく空しい物だと思ってな。
ピエ:なっ、未だその様な事を!?
この状況を理解していなさるのか!?
ゼオ:左様にござるぞ?
『王の鍵』の名誉の戦死を、
国家滅亡の遠因と辱めるおつもりですかな?
オー:滅亡か。
吹いてしまえば何のことは無い。
我が鉄の国アイゼフィールは、ここまで脆弱な国だったのだな。
ピエ:なればこそ、早急に手を打たねばならぬのです!!
貴方は国王ではありませんか!!
オー:おおそうか、指示であったな。
ピエ:そうですとも!!
ゼオ:お任せ願えますかな?
オー:うむ。
一任しよう。
ピエ:陛下!!
オー:ピエトロよ、余には将器が無い。
何せ一度たりとも戦場に立ったことが無いのだからな。
ピエ:しかし……私は。
オー:鬼手が欲しいのであれば、
ゼオルードに放ってもらえ。
ゼオ:ふっ……流石は暗君。
良く弁えていなさる。
オー:余は傀儡で良い。
……が、代わりに勝利をもたらせよ?
この国を終わらせることは許さぬ。
ゼオ:無論にございます。
我が魂魄の総てを懸け、アイゼフィールに再光を。
オー: ……ふむ。
( 間 )( 凶報続きの急報 )
近衛:( 息を荒げて駆けつける )―――!!
もっ、申し上げます!!
オー:おー。
良き報せであろうな?
近衛:えっ!?
オー:これ以上の凶報は要らんぞ?
余を興じさせるのだ。
近衛:はっ、い、いえ……その。
ピエ:憚るでない!!
在りのままを申せ。
近衛:ハッ!!
『獣王殺し』のシルヴィア・シルフィード、
『王の剣』、ミシェル・フォン・フィーバストルテ卿。
行方不明になっていた両名が只今帰還しました。
ゼオ: ……ほう、二人揃ってか?
これはまた、剣呑じゃな。
オー:うん?
帰還と言う事は、
再びアイゼフィールに仕えると言う事か?
近衛:あっ、い、いえ、そこまでは測りかねますが……。
是非陛下にお逢いしたいと。
オー:どう見る、ゼオルード?
余はどう在るべきだ?
ゼオ:無碍には出来ますまい?
両名共にこの国の『大事』を知っている人物。
良からぬ醜聞を流されては事ですからな。
ピエ:シルヴィアは先の大戦の引き金を引いた女です。
その様な輩を陛下に逢わせる訳にはいきません。
近衛:し、しかし……!!
既に城門の前で一悶着あったらしく……。
ピエ:ならば尚更だ!!
近衛:いいっ!?
オー:いや、構わんぞ?
何せ宰相殿が丁重にもてなせと仰せなのだ。
存外、この窮状を打破するきっかけになるやも知れぬしな。
ピエ:何故です、ゼオルード様?
我々の知らぬ何かを、あの二人は知っていると言うのですか!?
ゼオ:貴様には過ぎたる話じゃて。
それでも尚、陛下の身を案じるのであれば、
自慢の近衛を潜ませておけ。
奴原が信用出来ぬのは確かな事だ。
ピエ: ……良いでしょう。
ならば最上の備えで陛下の御身を御守りします。
おい!!
近衛:ハッ!!
了解であります!!
オー:いや、要らぬ。
近衛:了解です!!
って、ええっ!?
オー:お前達も下がれ。
ピエトロ、ゼオルード。
ピエ:しかし……!!
ゼオ:宜しいのですかな?
いずれも百戦練磨、ましてや『刺客』とあらば、
これ程の手練れは居りますまい?
オー:良い。
余とて四騎士の末裔だ。
己の身は己で守る。
ゼオ:フハハ……!!
これは勇ましいですなぁ、陛下。
白昼の悪夢から、ようやく御目覚めの様だ。
オー:其の方等の腕の中が、余りにも心地良くてな。
ゼオ:ファファファ……何の何の。
流石にこの枯れ枝には、些か重い揺り籠でしたぞ?
オー:失って判ることも在る。
良き母親代わりであったが、
やはり子供は自律せねばな。
ピエ:陛下……。
御立派になられて……!!
ゼオ: ……フッ。
( 間 )( 王城:陽光と緑に包まれた城門前 )
ピエ:近衛長ピエトロ・クラウーダだ。
その方等を陛下の元まで案内しよう。
ミシ:お久しぶりです。
ピエトロ殿。
ピエ:ミシェル殿、貴卿が今まで何をしていたか問うつもりは無い。
だが騎士として、今この国で何を為すべきか解っていような?
ミシ:勿論です。
父が堕とした家名はこの手で立て直します。
ピエ:ならば良いのだ。
ミシ:宜しくお願いします。
ピエ:うむ、ではついて参れ。
シル: ……。
ピエ:良いか?
くれぐれも粗相の無い様にな?
シル:( 小声で )まさか……そんな……。
どうしてガルフォードが……フェンシア様が……。
近衛:おい!!
聴いているのか、女!?
シル:粗相とは……何だ?
近衛:何ぃ?
貴様、ピエトロ隊長に楯突くと言うのか!?
シル:言ってみろ。
このシルヴィア・シルフィードが、
陛下の御前で何をしでかすと思ったのだ?
近衛:うっ……!?
シル:言えよ……!!
ピエ:何と言う殺気だ……獣王を殺ったというのも頷ける……。
ミシ:クスッ……。
今の彼女は、きっと私よりも遥かに強いですよ?
ピエ:ミシェル殿……。
この者は果たして信用できるのか?
ミシ:我が家名に賭けて。
何、敵わぬとは言え、
いざと言う時は私も止めに入ります故に。
ピエ:そうか。
ミシェル殿がそう仰るのであれば。
近衛:うう……こ、これは……!!
大変な事になったぞ……!!
( 間 )( 忠義を裏切られた戦乙女は )
オー:良くぞ参ったな。
シルヴィア、ミシェル。
ミシ:御久しゅう御座います、陛下。
シル:拝謁に賜り……恐悦に存じます。
オー:良い。
両名、好きに崩せよ?
シル:では……。
オーズィ・アイゼフィール陛下。
オー:うむ、どうした?
シルヴィア・シルフィード。
シル:私の事を……覚えておいでですか?
オー:その美貌を誰が忘れる者か。
そなたの前ではエレナも霞むぞ。
シル:貴方はこの私に、剣を授けて下さいました。
オー:騎士の叙勲式、……か。
まさか、あの様な結末に至るとは思いもせなんだがなぁ。
シル:では……私のこの一年は?
さまよい続けた私の一年は御存知ですか?
オー:無論だ。
この世はまさに、
面白き話こそ地に満てるべきなのだ。
シル: ――ッ!?
オー:密命により獣王を暗殺し、その事実を秘匿する為に記憶を消され、
そのまま『処分』される筈が……。
『誰ぞ』の手引きで抜け出したのであったな?
シル:そうです……!!
私が失ったものは記憶だけではありません!!
地位や友や、たくさんの大事な物をすり減らして、
此処まで生き延びてきたのです!!
オー:『風のシルヴィア』、鉄の国アイゼフィールを一周し、
王道楽土に帰還する、か。
庭も整わぬ内から御苦労な事だ。
シル:ならば問いたい……!!
オー:何かな?
シル:私がそこまでして尽くしてきたアイゼフィールは、
何故これ程の窮状に晒されなければ成らないのか!?
ミシ:シルヴィアさん!!
シル:応えろ!!
貴方は王として手を打ったのか!?
祖国の為に尽くしたのかッ!?
オー:こらこら。
余を誰と心得居る?
シル:貴方は……国王ではないですか!!
オー:違うな。
余はこの国の傍観者だ。
シル: ……何?
オー:意に沿わぬか。
ならば直截に……余は暗君だ、
とでも言えば気が済むかね?
シル:だから何だ。
オー:この国は、まっこと面白き国だぞ?
見ていて飽きぬ。
シル:質問に答えろ……!!
オー:国土は深淵にして雄渾也。
掘れば財が溢れ出し、挑めば宿敵が待って居る。
遍く英雄達は、民を良く守り、慕われ、
500年の伝統と文化は――。
シル:( 途中から被せる )――ッ!!!
ミシ:シルヴィアさん!?
……どうか陛下、抗弁を!!
偽りでも良い!!
どうかシルヴィア・シルフィードに慈悲の言葉を!!
オー:ふっ……罪人に何を語ると言うのだ?
ミシ:陛下!?
オー:成程、その憤怒はまさに道理だ。
さあ、その剣を振り下ろせ!!
貴様にはその資格がある!!
シル: ―――ッ!?
うおおおぉぉぉぉ!!
ミシ:陛下ッ!!?
( 間 )( 其れは落涙か、騎士の誇りか )
オー: ……。
シル:( 荒い息から途中で泣き出す )
フッ……!!
フウッ……!!
ウウウウゥゥ……!!
オー:何故だ……。
シル:( 泣き続ける )――。
オー:何故逸らせた?
ミシ:玉座が……。
シル:私は……!!
私は………!!!
オー:千載一遇。
二度とはやらんぞ?
シル:わたくしとて……この様な狼藉……!!
二度とは……二度とは……!!
オー:( 溜息 )――。
女が涙で語る時、男に非があるのは自明だが。
……そなたから流れ出る其れは、
まるで瑠璃の様だな。
シル:申し訳……ありません……!!
陛下ッ……!!
オー:そうか、余りの麗しさ故失念していた。
シル:( 泣き続ける )――。
オー:シルヴィア・シルフィードとは、
忠勇無比の、騎士の鑑であったな。
( 間 )( 夜の王城:貴賓室 )
ミシ:( ノックの音 )。
シル:誰だ?
ミシ:僕です。
眠れないので少し話しませんか?
シル:入ってこい。
私も考え事をしていた。
ミシ:お邪魔しまぁす。
……泣いてたんですか?
シル:何だか良く解らないがそうらしい。
ミシ:大丈夫ですか?
シル: ……さあな。
ミシ:う……うわー。
良い部屋ですねー。
陛下の御配慮に感謝しなきゃー。
シル:しかし、妙な成り行きになったものだ。
ミル:陛下の近衛を拝命したのが不服ですか?
いえ、確かに乱暴な儀礼でしたが。
シル:違う、そうじゃない。
私のこの一年を顧みていた。
ミル:ああ……( 励ますように )何を今更ッ!!
羨ましい限りじゃ無いですか。
冒険、冒険、冒険の日々。
シルヴィア・シルフィードは既に絵本の人です。
シル: ……たくさん殺してきたんだ。
赦しを乞い、迷って、また舞い戻って来て。
馬鹿みたいだ。
ミシ:馬鹿にされるのが嫌で生きてきた訳じゃ無いでしょう?
シル:そうだな。
負けず嫌いだが、そこまで小さくは無いと思う。
ミシ:自分を褒めてあげて下さい。
シルヴィアさんは勇気を出してここまで来たんですから。
偉いですよ。
シル:こんなに迷いっ放しの私がか?
ミシ:誰だって同じようなものです。
シル:はっ……!!
ようやく仲間が出来た気がするよ。
ミシ:えっ?
シル:私は心の何処かで、夢を叶える為には独りで戦い続けなきゃいけない。
……そういう呪いを己に課していたんだ。
ミシ: ……。
シル:きっと、自分に厳し過ぎたんだな。
ミシ:クスッ……。
シルヴィアさんの夢って、
結局何だったんですか?
シル:さあ?
ただがむしゃらに走って、走って……。
とどのつまりは、私はただの女だったのかもしれないな。
ミシ:良いじゃないですか、女でも騎士でも。
それでもシルヴィアさんの味方は、
この世界にたくさん居るんですから。
シル:そうかなぁ?
ミシ:そうですよ!!
シル: ……陛下にはああ言ったが、
記憶を無くして良かった。
ミシ:どうして?
……ですか?
シル:御蔭で人に縋ることを覚えた。
……皆の事をもっと知りたいと思えた。
ミシ:成程。
僕達は……誰かと話をする為に生きているのかも知れませんね。
シル:きっとそうだよ。
どれだけ齢を取っても、人と関わる事を辞めてしまったら、
それはもう人じゃ無いんだな。
ミシ:シルヴィアさんは綺麗ですよ!!
シル:『 まだ 』、だろ?
ミシ:そんなこと無いですってば!!
シル:お前もまだ子供だなぁ。
ミシ:もうッ!!
すぐ忘れちゃうんだからなあ。
シル:ふふっ……。
さて、これからどうする?
我がアイゼフィールは風前の灯だが。
ミシ:( 溜息 )――足掻くなら何とします?
外は四面楚歌、
内には最凶の宰相が一人。
シル:犠牲は少ない方が良い。
ミシ:では……やはりそうする事にするんですね?
シル:あの男が考えている事は、きっと人間のそれじゃない。
国が亡びるにしても、その夢だけは絶対に叶えさせやしない。
( 間 )( 陛下☆出撃 )
オー:( 小さく )ふんふんふんふふーん♪
ミシ:( 被せて )何か聞こえませんか?
シル:ん?
これは……誰かが近づいてくる……。
オー:( 段々大きく )ぬぅぅぅおぉぉぉぉぉ!!
ミシ:嫌な……予感が。
オー:( 勢い良く扉を開けて )――しゅわっちッ!!
シルヴィア!!
酒飲もうぞ!?
シル:なっ!?
ミシ:陛下!?
オー:( 酔っ払い )ヒック……!!
なんだバカヤローこのやろー。
ミシ:お止め下さい陛下!!
シルヴィアさんも居るんですよ!?
オー:んあ~?
いや、そういえば……。
そもそも何でお前がここに居るのだ?
ミシ:あっ。
い、いえ……その。
オー:あーーーー!!
お前等そういう仲かよお!?
ミシ:違いますってば!!
シル:あのぅ……。
オー:ん?……ヒック!?
どうしたシルヴィア?
シル:いえ、それは此方の台詞なのですが……。
ミシ:とほほ……。
ばれちゃいましたか。
実は、これが陛下の素なんです。
シル:そんな……!!
オー:ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ!!
まあ、良いではないか!!
酌でもせい、シルヴィア。
パアアッとやろうぞ!?
ピエ: 陛下アアアァァァ!?
お休み前のミルクの時間ですぞおおお!?
オー:むっ!?
いかん!!
近衛:陛下!!
こんな所にいらしたのですか!!
シル:こんな所とは何だ!!
ずけずけと貴様等!!
ミシ:シルヴィアさん!!
そこじゃないです!!
シル:ヒック……。
ミシ:えっ!?
あっ……お酒。
オー:ひゃっ、ひゃっ。
行ける口ではないかシルヴィアよぉ。
愉快♪愉快♪
ピエ:いけませぬ陛下!!
寝る前の飲酒は睡眠を浅くしますぞ!?
近衛:もういい!!
このお酒は私が個人的に処分します!!
オー&シル&ピエ:たわけっ!!
近衛:ぷぎゃっ!?
オー:一度飲んだからにはとことん酔うのだ!!
( 謳う様に )夢日頃一夜の出逢いこそ万物の至宝なり。
いわんや酒に酔い、女に溺れ、
汝酔狂を極めつつ、
星を愛する童であれ!!
ミシ:良く噛まずに言えますね……。
オー:エルジュ神、最高ォォォ!!
シル:おい、ヒック……!!
一介の近衛よ。
近衛:えっ?
ふぁっ……ふぁい。
シル:お前は陛下の本質が斯様なものだと知った上で尚、
陛下に忠誠を誓えるのか?
近衛:それは……微妙ですが。
オー:おいっ。
近衛:可愛い人だと思います。
だって、妖怪爺と英雄達と、口うるさい世話係に囲まれて、
それでも馬鹿を演じているのですから。
シル:うむ、実にそうだな。
見ていて飽きぬぞ?
オー:うーわ。
ミシ:クスッ。
ピエ: ……あっ!?
陛下、こんな時に言うのも何ですが、
私共が留守の間、くれぐれも深酒はなさらぬように、
くれぐれも休肝日を作り、適度な睡眠を――。
オー:( 被せて )解っている。
平民出の割に真面目な奴だ。
ピエ:その私に近衛長を下さったのです。
貴方様の酔狂も中々でしたぞ?
オー:余のこれはフェンシアの真似事だ。
それにお前を信任したのは、
それがアイゼフィールの法だからだ。
ピエ:ならば祖国に感謝をしなければ。
何も持たぬ此の身には、
まるで過ぎたる栄誉でした。
オー:止めんか。
今生の別れでもあるまいに。
ピエ:いえ……ふふっ。
世話が焼けましたかな?
ミシ:ピエトロ殿……。
オー:あー……もう良い、白けた。
今宵は黙って部屋に帰るとしよう。
シル:陛下。
オー:うん?
シル:やはり私は近衛を辞退します。
近衛:なっ!?
陛下の御厚意なのですぞ!?
ピエ:我等と前線に立つのが嫌なのであれば、
それ相応の配慮はしてやるが?
シル:いえ。
きっと私にしか出来ない事があって、
誰にも理解されなくても、やらなければならない事が在る。
その事に気付いたんです。
オー:やれやれ……そなたらしい。
あくまで貫くは貴き刃、か。
ミシ:僕はシルヴィアさんについていきます。
だから此処でお別れですね、陛下。
オー:ふふん。
友誼の為か、愛の為かは知らぬが、
嘗ての物言わぬ人形が、
随分と人間らしくなったことだな。
ミシ:それは陛下だって同じでしょう?
オー:まだまだ、足掻き足りぬぞ。
この世の総てを見尽くすまでは死ねぬわ。
ミシ:クスッ……。
シル:では陛下、我が生き様を御了承下さい。
オー:うむ、赦す。
存分に我を張るが良い。
シル:有り難き幸せ。
オー:ところで。
シル:はっ。
オー:今宵程度は客人として遇されろよ?
長旅の疲れ等とは言わぬ。
そなたの祖国は紛れも無く此処なのだからな。
シル: ……貴方は名君です。
最後の四騎士に出逢えて……。
この国に仕えることが出来て……。
私は幸せでした。
オー:ふむ……最後の四騎士、か。
……果たしてそれで済めば良いがな。
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