題名 |
公開日 |
人数(男:女:不問) |
時間 |
こんな話 |
作者 |
風のシルヴィア(26)~月光~
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2015/04/28 |
6(3:1:2) |
30分 |
運命に足掻いた貴方だからこそ、私は――。
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ニコ |
登場人物
(年齢) |
性別 |
その他 |
シルヴィア
(26) |
♀ |
見目麗しい金髪碧眼の女騎士。
龍の血が入っている為、怪力で戦好き。
作中で言及されるプーデットとは3話から続く友人関係。 |
ミシェル
(17) |
不問 |
『四騎士』という名門貴族の御曹司。
かなりの美少年で天才剣士。
ジーニアスとは親友の間柄。 |
オーズィ
(31) |
♂ |
鉄の国アイゼフィールの国王。『四騎士』の一人。
才能豊かだがゼオルードに傀儡として飼殺されてきた。
出番少な目。
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ゼオルード
(226) |
♂ |
野心溢れる同国の宰相。『四騎士』の一人。
シルヴィアとは彼女が幼少の頃に面識がある。
出番少な目。 |
ピエトロ
(45) |
♂ |
平民出から近衛長に上り詰めた忠勇と努力の人。
自分を見い出してくれた陛下の事が大好き。
※後半はジーニアスの変装なので別人格です。
演じ分けてみてください |
ジーニアス
(17) |
不問 |
『王の影』の異名を取る諜報・暗殺専門の『四騎士』。
ゼオルードの奴隷となる事で死んだミシェルを生き返らせた。
空っぽの心を道化を演じる事で隠している。 |
「風のシルヴィア(26)~月光~」
シルヴィアとミシェルは騎士の職を辞し、四面楚歌の祖国を自分達なりに救おうとする。
一方、国王オーズィと近衛長ピエトロは宰相ゼオルードの野望に気付いていた。
そして、ゼオルードは市井に潜むシルヴィアに最強の刺客を放つ。
( アイゼフィール王城:朝露のエントランス )
ピエ:では陛下……。
行って参ります故。
オー:良かろう。
近衛師団の粋を魅せてやれ。
ピエ: ……本当によろしいのですか?
陛下をこの王都に残して、
我々は一体、誰を護れると言うのですか?
オー:何故躊躇う?
武人が戦場へ赴く誉れが、それ程迄に度し難いか?
ピエ:貴方は解っている筈だ。
ゼオルード様はきっと貴方様を……いや、きっと、
私の思う限りでは他の方々も……。
オー:止めろ。
貴様の口から讒言は聞きとうない。
ピエ:どうか自棄を起こさぬように……。
例え四面楚歌の王城とは云え、
内に味方の居らぬ牙城とは云え、
陛下は陛下です。
無闇やたらに害されはしない筈――。
オー:( 被せる )行けピエトロ。
これは命だ。
ピエ:はっ……はい。
( 間 )( 王城:宰相の執務室 )
シル:( ノックの音 )――。
ゼオ:誰かな?
シル:シルヴィア・シルフィードです。
城を退去する御挨拶に伺いました。
ゼオ:おお、『サラ』か、待ち侘びたぞ?
早う入って参れ。
シル: ……失礼します、ゼオルード様。
ゼオ:( 忙しそうに )――いや、困りものよ。
ファファッ……。
末期に至っても儂を頼って来る者が絶えぬでな。
シル:それは素晴らしい。
長年国の為に仕えてきた証左ですね。
ゼオ: ……ふふ。
さて、遊ぶか。
シル:貴方はアイゼフィールの宰相です。
どうか彼等の期待に応えてやって下さい。
ゼオ:んん?
お主の友の、弟を喰い殺した張本人が此処に居るのだぞ?
遺恨を晴らさずとも良いのか?
シル:貴方が居なければ……今の私はありませんから。
ゼオ:カッ、拍子抜けじゃて。
もそっと猛ってくれるものと期待しておったのじゃがな。
シル:あの村で龍の血を下さった貴方の御蔭で、
それが例え貴方の酔狂だったとしても……。
私は此処まで生き抜いて来ることが出来たのです。
ゼオ:黙れ小娘。
悋気を放たずして何が人間か。
誰が人を名乗れるか。
シル:ふっ……私は騎士でした。
下野に降りてから貴方を殺すのが礼儀です。
ゼオ:そうかぁ……?
ならば吐露するがな。
存外、国と云う物は創り上げるより、
壊す方が労苦が多い物じゃぞ?
いや、想えば感慨深いか……。
シル:止めて見せます。
我が命を賭けて。
ゼオ:律儀者め。
それはもはや忠義では無く執着に過ぎぬと知れ。
シル:仕方無い。
それでも私はこの国が大好きなんです。
では、『時の翁』殿。
ゼオ:( 満足そうに )………おう。
儂も楽しみにしとるよ。
( 間 )( アイゼフィール市内:朝紛れの蕭々たる広間 )
ミシ:どうでしたかシルヴィアさん?
ゼオルード様との謁見は。
シル:ああミシェル。
無事に務めたよ。
ミシ:人が良いなぁ。
シル:まあな。
ミシ:本当に良かったんですか?
いくら不死身のゼオルード様でも、僕達二人掛かりなら或いは。
今後まみえる機会があるかどうかも判らないのに……。
シル:真面目が一番だよ。
ミシ:えっ?
シル:失敗しても後腐れが無い。
誰に責められる筋合も無い。
ミシ:敢えて市井の鼠と成りますか。
しかしゼオルード様の事です、
きっと追手を差し向けている筈ですが……。
シル:ああ、さっきから五月蠅いのはそれか。
ミシ:えっ!?
あっ…いや……。
シル:露払い御苦労様。
ちゃんと気を付けているよ。
ミシ:さ、流石ですねぇ。
まるで何事も無かったかのように。
シル:誰かさんの御蔭で数が減っていたからな。
ミシ:それにしても!!
白昼から骨騎士をけしかけてくるとは豪勢です。
闇夜のそれとは格段に戦闘力が落ちると言うのに。
シル:あの翁にとっては私達等、
暇潰しに過ぎないのかもな。
ミシ:片手間って事ですか?
シル:このまま攻め続ければ体力が尽きると踏んでいるのだろう。
小娘・小僧のそれと小馬鹿にしてるに決まっている。
ミシ:クスッ。
では隠れる場所が必要ですね。
シル:良い場所があるのか?
ミシ:ええ。僕達の憧れの人の家。
アイゼフィールで一番高潔で安らかな場所です。
シル:家……まさか。
ミシ:暫し別れるのは危険ですが、
渡りをつけるなら僕一人の方が良いでしょう。
シルさんは少なからず遺恨がありますし。
シル:解った。
ここで待って居るとしよう。
( 間 )( 不安に照らす紫陽が沈む刻 )
シル: ……遅い。
もう夕暮れじゃないか。
ピエ:おおぉい!!
シルヴィア殿!!
シル:ん?
ピエ:私だ!!
わ・た・し!!
シル:ピエトロ近衛長……?
ピエ:( 走り疲れて )良かったッ!!
探したんだぞ!?
シル:私を……?
それより貴方は戦地へ発った筈では?
ピエ:それが……!!
それが……くっ!!
シル:どうしたんです?
ピエ:陛下が暗殺されたのだ!!
シル:なっ!?
ピエ:私は、やはり陛下を見捨てられなんだ。
出陣の振りをして私だけが城内に忍び、
ゼオルードの動向を探っていたのだが……。
シル:どうして……陛下が……!!
ピエ:幔幕から突如現れ、
陛下に親しげに話しかけたあの少年が、
あんなにも無邪気に人の首を刈り獲るだなんて!!
一体誰が予測出来るというのだ!?
シル:少年……まさか!!
『王の影』か!!
ピエ:嗚呼、奴めはゼオルードの側に立ったのだ!!
私は烈火の如く怒り、奴原の腹をかっさばき!!
同じ様に素っ首を刈り取ってやったぞッ!?
シル: ……。
ピエ:そして肉を幾寸にも斬り刻み、踏み躙り!!
噴き出す血潮を存分に啜り!!
数多の英傑がそうするように首級を天高く掲げ!!
シル: ……貴様。
ピエ:そう!!私は叫んだのだ!!
叫んだんだよシルヴィア!!
『どうか神様、御赦し下さい!!』
『僕はこんなにも罪深き罪人です!!』
『人間が大好きなんです!!』ってさ!!
シル:ジーニアス!!
陛下に何をした!!
ピエ:見ろよ!!
この首を!!
シル:ひっ!?
ピエ:そうだッ!!
お前の大好きなプーデットちゃんの生首だよ!!
腐りかけ豚の首さッ!!
シル:あ、嗚呼ッ……!!
ピエ:そぅらっ!!
受け取れッ!!
シル:ぐっ!?
う……うああああああ!!
ピエ:ひゃひゃひゃっ!!
ひっ……ひひひっ!!
( 狂気 )――――!!!!
シル:プー……デット……!!
そんなッ……!!
プーデット……!!
ピエ:ちょっと訊きたいんだけどさ、シルヴィア。
シル:プー……!!
ピエ:( 此処から段々若々しい声になっていく)
君にとって価値のある首って、
陛下の首とこの豚の首とぉ……。
どっちぃ?
シル:( 悲しく抱きかかえている )――。
ピエ:たくさんの兵士が前線で死んでるって言うのに、
流す涙はその子豚ちゃんの為だけなのかい?
シル:プー……デット……は。
ピエ:んん~?
シル:夢ばかり追いかけて……!!
皆の為に幸せを投げ捨てて……!!
ピエ:ぶえっくしッ!!
ふがふが。
……脱ぐかこれ。
シル:それでもまだ、誰よりも優しくて、
独りで生きていく強さを持っていた……!!
ジー:んー……だから何ぃ?
シル:プーデットは!!
誰よりも幸せにならなきゃいけなかったんだぞ!?
ジー:あはっ、そうだ!!
彼から君へ、
伝言を預かってたんだ。
シル:ああ……?
ジー:『皆大好きプー』……だって(笑)
自分の為に生きれない奴なんて、
所詮こんな詰まらない言葉しか残せないよね。
シル:きっさまああぁぁぁぁ!!!
ジー:おおっと!?
……ふふっ!!
良い顔!!
シル:貴様は殺す!!
ジーニアス・フィール・トライダアト!!!
ジー:踊れ踊れ♪
どうせ間も無く皆、御仕舞なのだから♪
( 間 )( 王城:御創り手の覚悟 )
ゼオ:陛下、少々宜しいですかな?
オー:うむ、良いぞゼオルード。
とうとう反旗を露わにするのか?
ゼオ:左様。
オー:左様ってお前……。
ゼオ:貴方様には早急に王城から退去して頂く。
オー:約束はどうした?ん?
その魂魄を懸け、何が何でも国を護るのでは無かったか?
ゼオ:今更何を。我が生涯、
この恩国が為に存分に報いて来たではありませぬか。
オー:では問おう。
お前の目的とやらは何だ?
数多の犠牲の果てに夢見る理想は何だと言うのだ?
ゼオ:これはこれは……。
陛下は御聡明故、とっくに察しておるものと思っておりましたが。
オー:まあな。だが余にも解らぬ事がある。
それを成して貴様に何が在る?
お前は一体何者なのだ?
ゼオ:私は私です。
この国を愛し、ただ一つの願いの為に総てを費やす。
哀れな枯れ木に過ぎませぬ。
オー: ……皆お前に育てられたと言うのに、
何とも惨い親が居たものだ。
幹が腐ったと豪語するのであれば砕くより他は無いな。
ゼオ:儂を止めると申すか?
オーズィ・アイゼフィールよ。
オー:ああ、自分でも不思議だが。
皆が国の為に戦っている。
何も惜しくは無いな。
ゼオ:フッ……では。
……来るがいい。
( 間 )( 静かなる闇の中に一輪の灯は咲いて )
シル:はああっ!!
ジー:ふっ!!
シル:ぜえっ……ぜえっ……!!
ジー:どうだい、史上最強の『 影 』と名高い僕の動きは!?
本気を出せば君の剣なんて止まって見えるよ!!
シル:速い……!!
くっ、闇夜でなければまだ追えると言うのに。
ジー:この舞台はゼオ爺が膳立てしてくれたんだ!!
中々に優しい鬼畜じゃないか!!
シル:そうか、そういうことか!!
ぐっ!?
ジー:そうらっ!!
シル:ぐぁっ!?
ジー:ひゃひゃひゃ!!
捕まえてごらんなさーい!!
シル:ならば!!
ジー:むっ!?
……何の真似だいシルヴィア?
シル:お前を殺すくらい、素手でも訳は無い。
ジー:剣を捨て身軽になったって訳かい?
僕さぁ、一応飛び道具も持ってるんだけど?
シル:使いたければ使うが良い。
使い切るまでな。
ジー:かっくいぃぃ。
どうせ龍の血の御蔭ですぐに治るんだろうけど。
ん~~、どうしよっかな~?
シル:さあどうする!?
徒手空拳の女を前に、
むやみやたらに戯れるのが『王の影』か!!
ジー: ……全く、本当に安っぽい。
その扇情的な姿が灯りに照らされてなきゃ、
とっくに飽きて帰っちゃう所だよ。
シル:もし預けると言うのであれば、
今度はこの私が刺客になるぞ!!
ジー: ……何?
シル:友の仇だ!!
例え草の根を分けてでも貴様を探し出し、
その喉笛を噛み千切る。
必ず、何年かけてでも!!
ジー:はっ!!
……君が言うとらしく聞こえるねぇ。
そうか、成程。それは困ったな。
シル:躊躇うな。
ジー:んー?
シル:まさに私達に相応しい舞台じゃないか。
憎しみ斬るに足る舞台だ。
ジー: ……まあね。
シル:あの時見せた貴方の心は本当だった。
だからもう、私は貴方を疑いはしない。
ジー:御人好し!!
シル:さあ、どうか迷い無き切っ先を!!
私も言葉より、この想いで貴方に語りたい!!
ジー: ……ぷすー。
はいはい、解りましたよ。
もうッ!!
シル:ははっ……!!
ジー:古き国が四騎士、『王の影』!!
ジーニアス・フィール・トライダアト!!
いざ参る!!!
シル:応よ!!
獣王殺しの大罪人!!
シルヴィア・シルフィードが受けて立つぞ!!
ジー: ……。
シル: ……。
ジー: ……行くぞッ!!
シル:はあっ!!
……ぐっ!?
ジー:絶空……。
我が最速の一撃、闇すら払う音無しの剣。
汝、其の怨嗟を黒き双刃に刻むべし。
シル:なんだと……!?
音が後から衝いてきた……!?
ジー:素晴らしいねぇ。
とっさに首を護らなければ君は死んでいた。
シル:練りに練ったアサシンとしてのスキル。
貴方は一体……何処まで真面目に生きて……。
ジー:言葉は不要。
あとは殺し合うのみ。
シル:はっ!?
ジー:さあ先ずは足を奪った!!
いよいよ首を刈り獲るかッ!?
シル:首……。
首……?
ジー:行くぞシルヴィア!!
ヒュッ!!
シル:成程……こうか?
ジー:( なっ!? )
シル:さあ、獲ってみろよ。
ジーニアス。
ジー: ――ッ!?
うおおおおお!!
( 間 )( 道化の意地 )
シル:ふふっ……。
日和ったな。
ジー: ……君を相手だ。
次は腕を貰おうと思っていたが、
あそこまで綺麗な白筋を魅せられてはね。
シル:真面目が一番さ。
ジー:どうやら、そのようで。
……ぐっ!?
シル:捕らえたぞ。
ジー:痛うっ……!?
ああ、そうだな……君の勝ちだ。
シル: ……。
ジー:どうしたんだ?
早く心臓を抉り出せよ。
シル:何か、変えられたのでしょうか?
ジー:ああ?
シル:私が……私がもう少し上手くやっていれば、
色々な運命を変える事が出来たのでしょうか?
ジー:あのさあ……。
今からボコろうっていう17のガキにそんなこと言う?
シル:貴方だからこそです。
運命に足掻いた貴方だからこそ、
私は――。
ジー:じゃ、もう一刺し行きますか。
シル:え?
ジー:フンッ!!
シル:うっ!?
……そんな、何を!?
自分の腕を斬り落とすだなんて!!
ジー:僕は初めて世界に反逆したんだ!!
シル:ジーニアス……!!
ジー:とても清々しかったよ!!
独りぼっちで、アサシンとして、
何時まで経っても道具だった僕が初めて手に入れた自由!!
シル:それは何だ!?
ジー:君との決闘、さ。
シル: ――ッ!?
ジー:君の殺し方は決まっていたが、
僕はそれよりも自分の殺し方を優先したんだ。
シル: それが……貴方の命の誇りなのですね。
ジー:僕と踊ってくれるだろう?
シルヴィア。
シル:勿論です。
ジー:それでいい。
だから好きなんだよ。
シル:行くぞッ!!
ジー: ……どこからでも。
シル: ……でぇやああぁぁ!!!
ジー:( 途中から被せる )――ふっ。
( 間 )( 世界を踊り果て、少年は瞼を閉じた )
シル:ぜえっ……ぜえっ……!!
ジー:( 虫の息 )――。
ガハッ……ゴボッ……!!
シル:( 介錯をしようとしている )……ッ!!
ミシ:シルヴィアさん?
シル: ――ッ!?
ミシェル……。
ミシ:これ……は?
シル: ……済まない。
ミシ: ……ジーニアス。
ジー:ゴブッ……!!
グブッ……!!
ミシ:僕だよ。
ミシェルだよ?
シル: ……。
ジー:ミシェ…ル……?
ミシ:うん。
僕はここに居るよ?
ジー:はは……相変わらず…人形みたいだな。
ミシ:ああ、そうなんだ。
どんな顔をすれば良いのか分からないんだよ。
ジー:違ッ……ゴホッ……!!!
全く……。
ミシ:行かないでくれ、ジーニアス。
もっと君と話したい、色んな所へ行きたい。
……君とまた遊びたい。
ジー:ご…めん。
ミシ:え?
ジー:ミシェルの……騎士になりたかった……。
どんな事があっても……護り抜く……。
この命を…懸けて……。
ミシ:もう救ってもらったよ。
ジー: ……?
ミシ:ジーニアスはあの黒い森へ、
わざわざ僕を救いに来てくれたじゃないか。
それに、こうして僕を生き返らせてくれた。
こんなに良い友達、この世界に居るもんか……!!
ジー:はっ……。
ミシ:( 泣く )――。
ジー:泣くなよ。
ミシ:無理……!!
ジー:唇を……。
ミシ: ……えっ?
ジー:良いから。
弄らせろ。
ミシ:むぐっ――!?
ジー:( 吹き出して笑う )――!!
……よし…これで良い。
ミシ: ……?
ジー:これで笑顔だ。
ミシ:( 泣き笑い )――何が……!!
……ッ!?
ジー: ……。
ミシ:ジーニアス……!!
( 間 )( 素敵な少年のたった一つの宝物 )
シル:私を好きにしろ。
ミシ:何をするって言うんです?
友達だからこそ、誰が正しいのかくらい判りますよ。
シル:大人……だな。
ミシ:馬鹿なんですよ。
昔からちっとも変わらないんです。
シル:ふっ……そうか。
ミシ:彼は……コピーキャットの稀人でした。
シル:稀人……亜人だったのか?
ミシ:ええ。歴代のトライダアト家の家長は、
亜人達の中から同じようにコピーキャットを誘拐してきて、
新たな後継にするんです。
シル:たった1人の子猫のまま、この国で育って死んでいくのか。
ミシ:だけどもう、それも終わりです。
影猫は影猫でしか探せない、
トライダアトは、ようやくこの闇から解放されたんです。
シル:私にも葬ってやる資格があるかな?
ミシ: ……良いんですか?
だってそこの首は。
シル:色々あり過ぎて良く解らなくなってしまった。
ミシ:シルヴィアさん……。
シル:だけど素敵だと思う。
良い様には生きられなかったのかもしれないけど、
最後まで想いを抱いていて、こんなにも満足そうな顔をして、
……良い子だったんだと思う。
ミシ: ……?
シル:ふっ……うっ……!!
ううう……!!!
ミシ:貴女はもっと素直に自分を出した方が良い。
シル:プーデット……!!
プー……!!
プー!!!
ミシ:少し優し過ぎますよ。
お月様も僕達を笑っています。
シル:( 泣き続ける )――。
ジー: そうだよ、僕は空っぽなんかじゃ無かったんだ。
僕のただ一つの願い。
それは彼の幸せ。
只その一欠けらで良い。
それだけが僕の総てで良い。
……にゃはは。
何てことは無い、総て父さんの言う通りだったなぁ。
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