題名 |
公開日 |
人数(男:女:不問) |
時間 |
こんな話 |
作者 |
風のシルヴィア(27)
~黒冥石~
|
2015/05/18 |
6(3:2:1) |
30分 |
払うものを払えば望みを叶えてくれる。それだけは確かな奴だった。
|
ニコ |
登場人物
(年齢) |
性別 |
その他 |
シルヴィア
(26) |
♀ |
龍の血を引く金髪碧眼の麗しき女騎士。
戦闘好きながら母性と優しさ、気高さも併せ持つ。
レベルは大体話数+年齢くらい。強い(確信 |
エレナ
(30) |
♀ |
聖騎士の名を冠する大人びた美女。
普段は決して乱雑になる事は無いが戦自体は大好き。
昔シルヴィアと殺し合った。 |
ミシェル
(17) |
不問 |
名門貴族の美少年。
剣術の天才で今はシルヴィアの仲間となっている。
真面目且つ誠実。癒し。
|
アーウィン
(30) |
♂ |
黒髪紫眼の凄腕の剣士。
シルヴィアの元上司で彼女に好かれている。
皮肉屋だが部下想いで内外問わず人望は厚い。 |
ピエトロ
(30) |
♂ |
※回想にのみ登場。
何の取り柄も無いが努力の人。
現在は陛下の忠臣。 |
オーズィ
(31) |
♂ |
アイゼフィール国王にして四騎士と呼ばれる英雄の一人。
複雑怪奇な人間だが誰よりも皆を愛していた。
すっごい出番あるよ!!頑張って!! |
「風のシルヴィア(27)~黒冥石~」
死闘の果て、シルヴィアは四騎士の一人ジーニアスを倒す。
闇夜の中。野心の宰相ゼオルードの放つアンデットをかわすため逃げ込むは嘗ての敵、
同じく四騎士の一人、聖騎士エレナの家であった。
( 『エレナの家』:夜。跪くは星屑の髪をした )
シル:プーデット……どうして。
エレ:お優しい事ね。
何時まで夜風に当たっているつもりかしら?
シル:エレナ様。
エレ:シルヴィア・シルフィード。
友の弔いならば、戦が終わってからになさい。
シル:いえ……ですが。
エレ:今出来る事、それはほんの少しでも休んで好機を待つ事。
……違いますか?
シル:こうしてエレナ様の家に匿ってもらうのみならず、
プーデットとジーニアスの葬儀までして頂いて……。
感謝の仕様もありません。
エレ:それが私の務めですから。
ましてや手負いの窮鳥とあらば、
尚更看過出来ません事よ?
シル:ふっ……。
エレ:なあに?
シル:だって、そうじゃないですか。
貴女も私も戦争が大好きで、
かつては殺し合った仲だと言うのに、
今ではこうして互いの平穏を願っているのですから。
エレ:それは今更じゃないの、シルヴィア?
それが騎士と言うもので、
ましてや私は四騎士の一人なのだから。
シル:私は貴女を知っている。
聖騎士エレナ・サースティ。
恋人を護る為に子供を産めない身体になって、
母と呼んでくれた子を失い、盟友に裏切られ、
今更何を気取り続けるのですか?
エレ:例え薄氷の上でも良い。
私はほんの少しでも自分らしさを保ち続けて、
舞台に上がり続けて、
誰かに魅て貰えればそれだけで幸せなのよ。
シル:それが騎士の誇り……ですか?
エレ:いいえ?
強いて言うなら女の意地ね。
シル:女の…意地……。
エレ:シルヴィアもあの子を見習いなさいな。
シル:ミシェルを……?
ミシ:( 寝息 )――。
エレ:あの子は自分が何を為すべきか知っている。
他ならぬ貴女の幸せの為に。
シル:私も解っていて利用しています。
私の騎士道の為に。
エレ:それで良いのよ。
それを悪辣と呼ぶ人も居れば、
友誼と呼ぶ人もまた居るわ。
シル:ふふっ。
オー:ヘルプミー。
アー:ちょいと邪魔しますよ。
シル&エレ: ――ッ!?
( 間 )( エレナの家:月下の邂逅 )
エレ: ……あら。
シル:ええっ!?
オー:むっ!?
アー:おおっ!!?
奇遇だな、シルヴィア。
シル:団長!?
何故茂みから!?
アー:すまんがエレナに用があってな、
マディーンから突っ走ってきたんだ。
オー:助けてムーミン。
エレ:どういう事ですの、陛下?
オー:ゼオルードに城を追い出されたの。
エレ:( 溜息 )――。
情けない事。
とうとう何もかも良い様にされるのね。
オー:だってあいつ死なないじゃん。
チートだよチート。
アー:本当に陛下なのですか?
オー:ロヴェル!!
いやぁ遠路はるばる御苦労!!
今はアーウィンと名乗って居るのだったか?
アー:影猫では無いのですね?
オー:どころか、国王でも無いな。
今の余は落ち武者・落伍者の類だろうよ。
アー:証拠を。
オー:( 咳払い )――。
オッペケポッポコ、ペケポッポー♪
アー:ああ、本物ですな。
オー:ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ。
面白い、この場に集うは皆負け犬という訳か!!
おい!!起きろミシェル!!
ミシ:んぎゃっ!?
……えっ!?
えっ、えっ???
オー:おいっす!!
元気か紅顔の!?
ミシ:陛下……団長……?
これは……?
アー:驚くのは俺の方だ。
行方不明の筈の元同僚が、どうしてここに居る?
ミシ: ……それは。
シル:どうやら、少し話を詰める必要がありそうですね。
( 間 )( 夜想:思惑を吐露する一同 )
アー:成程な。
プーデットを救う為にアイゼフィールへやって来たが、
どうやら手遅れだった訳か。
オー:そうか……ジーニアスめが死んだか。
如何に反旗を翻したとはいえ莫逆の友、
最早あの笑顔が見れぬとはな。
シル: ……。
ミシ:皆さん思う所はあるでしょうけど、
力を合わせてゼオルード様を倒しませんか?
エレ:あら、それは横暴ではなくて?
何処まで私に御願いをするつもりなの?
ミシ:だってエレナ様も陛下も団長も!!
皆あの人に恨みがあるんじゃないですか!?
オー:そうは言ってもなぁ……。
ミシ:そうに決まってます!!
オー: ……余はやるだけの事をした。
後はこのまま愛人と、
見知らぬ国へ亡命行脚と洒落込むのも悪くない。
アー:俺もだ。
仇を討つなんて気概は生きる為に取っておくさ。
此処に来たのはあくまでプーデットの情報を得る為だからな。
ミシ:自分の都合で動くって言うんですか!?
亡国の瀬戸際なんですよ!?
アー:誰の国だ?
少なくとももう、俺の国じゃあ無い。
エレ:そういう事ね。
踏み躙られる国土を前に私がすべきこと。
それは詰まらない内輪揉めではない、
せめて国と共に滅ぶことでしょう?
ミシ: ……僕はアイゼフィールも、ディオールの迷宮も、エルジュ教も、
色んな歴史と文化をこの国で学びました!!
この国でご飯を食べてきたんです!!
オー:余が赦す。
今後は自由に生きろ。
ミシ:だけどッ!!
オー:友が呉れた命を無下にするのか?
誰の物でも無い、お前の命が此処に在るのではないのか?
アー:金の稼ぎ方なら教えてやるぜ?
何、そんなに難しいことじゃ無いさ。
ミシ: ――ッ!!
皆勝手です!!
好き勝手大人ぶって!!
シル:ミシェル。
人を説得するには、自分の生き様を認めて貰わなければいけないんだ。
其れは歳の差とか、善悪とかじゃなくて、
どうしようもないくらい純粋で、
誉れ高い心じゃなくてはいけないんだよ。
ミシ:だって、これ程の人達で一緒に挑めば……きっと上手く行くんですよ?
シル:道を違うのが人さ。
私はお前が傍に居れば、それだけで戦っていけるから。
ミシ:シルヴィアさん……。
シル:素敵な心だと思う。
私なんかの為に総てを捨ててついて来てくれるんだ、
こんなに嬉しい事は無いよ。
ミシ:なんッ……!?
もうっ!!
泣いちゃいますからね!!?
シル:ははっ!!
アー: ……ふん。
オー:何とも羨ましい限りだな。
エレ:うふふ……。
皆で遊んだあの時を思い出しますわね。
オー:ああ。
お前と、ガルフォードと、
共に挑んだディオールの廃墟。
エレ:最奥に在った物。
今でも覚えていますか?
オー:いや………忘れたな。
エレ:そうでしょうね。
昔の貴方は誰よりも優しくて、魅力的で、
何にでも成れる可能性に満ちていた。
オー:そんな顔をするなよ。
俺が『これ』で良かったんだから。
エレ:では残された私達は?
貴方と共に覇道を貫く、私達が夢見た未来は何処へ消えてしまったの?
オー: ……ッ!?
うるせえっ!!
エレ:やれやれですわね。
オー:おい、ミシェル!!
シルヴィアを貸せ!!
ミシ:ふえっ?
オー:お前はエレナ叔母さんの相手をして差し上げろ!!
余は美女と月見と洒落込む!!
シル: ???
はあ……私と……ですか?
オー:行くぞ龍輝石の!!
これは勅命である!!
アー:感心しませんなぁ。
麗しき花を愛でずして尚、何時そこに在る月を選ぶとは。
オー:黙れ黒騎士!!
あんまり茶化すと放送出来ん事するからな!!
アー: ……だ、そうだ。
付き合ってやれ、シル。
シル:団長がそう仰るのであれば。
オー:わっしょおおぉぉぉい!!
よっしゃ!!
行くべシルヴィア!!
シル:ふふっ……。
はいはい。
オー:モハハハハ!!
エレ:馬鹿ねぇ……。
……本当に馬鹿なんだから。
( 間 )( 吐露するはいにしえの記憶 )
シル:それで?
私に何の御用件なのですか?
可愛い国王様。
オー:ん~?
……さて、何だったかな。
シル:宰相殿と対峙為さったそうですね。
オー:ゼオルードか……。
あれは時を巻き戻し、空間を自在に移動する。
不死身の魔人とは良く言ったものだ。
シル:それでも貴方は独りで戦った。
勝てぬ戦と知りながら尚。
オー:せめて一太刀、な。
我が人生を誇りたかったのだ。
シル:誰だって同じようなものですよ。
立ち向かう事に意味があるんですから。
オー: ……そなた達の味方になると言う話、
聴いてやらん事も無い。
シル: ……。
オー:不服か?
アイゼフィール建国の祖、
ロヴェル・アイゼフィールから連綿と受け継がれし、
我が闇の魔術と鎌術は。
シル:巷での貴方は、宰相に踊らされ放蕩に耽る暗君との噂でした。
しかしそれと同時に、史上稀にみる王器と才覚を持った、
救国の祖に成るに違いないとの見方もあったのです。
オー: ……ふっ。
シル:私は陛下を信じます。
どうか力と成ってください。
オー:今から話すことを、
そなたの腹蔵に要れてくれると言うのであればな。
( 間 )( 15年前、王都アイゼフィール )( ※回想シーン )
( ※このシーンのオーズィとエレナは若々しくお願いします )
オー:フンフンフフーン♪
良い世界、良い世界♪
今度はあいつ等とどんな冒険をしよっかな~♪
エレ:陛下。
オー:おー。どうしたエレナ?
またディオールに繰り出すか!?
エレ:いえ、暫く王都を留守にすることになりました。
海賊達の略奪が目に余るとの仰せなので。
オー:えー。
ガルフォードは?
エレ:アドリス川のヘビ退治へと向かいましたわ。
野蛮な亜人共を懲らしめてやると、大層な意気込みでね。
オー:皆巣立っていくなぁ。
ゆくゆくはフェンシアの様に司令官になるのであろうが。
エレ: ……血筋に何の意味が在ろうか?
風が吹けば人は歩き出すのか?
それとも踏み留まるのか?
雨が降れば花はしなだれるのか?
それとも尚咲き誇るのか?
オー:エルジュの教えか。
エレ:総ては汝の意思なり。
永遠の夢も、諦観も。
人はこんなにも自由ではないか。
なればこそ汝、自由を謳歌すべし。
オー:お前達は自分の意思で戦場へ発つと、
そう嘯くのだな?
エレ:それが私達です。
貫いていれば何時しか、
血塗れの剣も綺麗だと褒めて頂ける筈です。
オー:( 溜息 )――やっぱりお前は歪んでいるよ。
いや……歪ませ『られた』って方が正しいか。
エレ:貴方は何時まで子供で在り続けるのかしら?
オーズィ・アイゼフィール?
オー:冒険は好きだ。
だけど争いは……嫌いだ。
エレ:可愛いのね。
余り女の子を泣かせては駄目ですよ?
オー:今度デートしてくれッ!!
エレ:うふふ……では陛下?
ごきげんよう。
オー: ……つまらん!!
ええい、何か面白いことは無いのかあぁぁ!?
ピエ:う……うぅ……!!
オー:むっ!?
ピエ: ……ごほっ、ごほっ!!
オー:おい、お前。
行き倒れるなら郊外にしろ。
城下で死なれては人心が離れるではないか。
ピエ:ふっ……。
身なりの良いお坊ちゃんは……言う事が違うねえ。
オー:おろ?
おろろ?
ピエ:何だよ?
オー:その剣!!
そう言うお前は冒険者か?
ピエ:ああ、闇の呪いを解く旅を続けていてな。
だが……ようやくそれも終われるらしい。
精も根も尽き果てたよ。
オー:宜しい!!
ならば余……俺とパーティを組むのだッ!!
ピエ: ……何だそりゃあ?
鉄の国アイゼフィールは希望と出逢いの国だと聞いたが、
何て良い笑顔をしやがるんだ。
オー:ふむ、先ずは腹ごしらえと呪いの爛れの手当からか。
お、食料と薬草を手に入れるミッションが加えられたぞ~?
化石鳥の卵なら一石二鳥なのだがそれには馬が居るな。
やはり立場上泥棒はいかんし、そうなると鞍と鐙から――。
ピエ:( 途中から被せる )おい、おい!!
オー:なんだ?
ピエ:俺は呪いを受けてるって事以外何一つ取り得が無い。
それでも俺を選ぶってのか?
オー:冒険者なのだろう?
ピエ:ああ、そうさ!!
オー:勇気があれば其れで良い。
楽しくやって行こうじゃないか。
ピエ:坊主……名は?
オー:ロヴェル。
ピエ: ……俺の名はピエトロだ。
宜しくな、坊主。
( 間 )( 思わず語った。其の心を理解して欲しくて )
ミシ:ちょっと待ってください。
陛下が戦争嫌いですって?
これだけ恨みを買っておいて今更!?
アー:そこを宰相殿に付け込まれ、骨抜きにされちまった、と。
良くある話だな。
エレ:陛下が変わってしまった当時、
私なりに陛下の事を調べてみたの。
これは憶測に過ぎないのだけれど、大体は正しい筈よ?
アー:その時期にピエトロ近衛長が抜擢されたってのが怪しい。
おおかたゼオルードの子飼いか何かなんだろう?
エレ:うふふ……外れよアーウィン?
総ては自業自得ね。
あの人は私達の留守中に途轍もない過ちを犯してしまった。
ミシ:ゼオルード様が裏で糸を引いて無い事があったんですか?
エレ:彼は……ピエトロは只の冒険者だったの。
それも一介の、本当に何にも無い人だった。
アー:あれが?
御前試合でやり合ったことも有る。
あれを凡人と呼ぶなら、およそ名のつく英雄はゴミ同然だぜ?
エレ:陛下は素性を隠し、ピエトロと独りの冒険者として付き合った。
それは夢の続き……。
あの人にとって何よりも楽しかった冒険と探検の日々。
ミシ:15年前……陛下が僕より年下だった時ですね。
アー:ピエトロは闇の呪いを受けていた、と言ったな?
だったら死の病と同義だが。
エレ:その通り。
嘗て、自分の家族を救う為に自らを闇の神獣に差し出したのよ。
不治の呪いは心も身体も蝕んで、とうとう家族にも見捨てられた。
それが、陛下に必要とされて嬉しかったのでしょうね。
だから………ふふっ。
ミシ:何です?
エレ:いいえ?
こんな話を貴方に、ましてや他人に話すだなんて、
とうとう終わりが近いのだと思って。
アー:続けろよ。
終わりかどうかにするのは俺達だ。
エレ:そうね。
此処まで来たのですものね。
貴方達には知る権利がある。
……続けるわよ?
( 間 )( 英雄として、国王として )( ※回想シーン )
ピエ:なあロヴェル、こいつは酒場の親父に聞いた確かな話なんだが。
オー: ……また冒険の話か?
ピエ:応よ!!
城下の裏路地に『闇の穴』がぽっかり空いたらしいぜ?
オー:闇の穴?
ピエ:闇の神獣クラハミの創ったダンジョンだよ!!
あいつは期間限定で俺達冒険者を誘っては、
無闇に惨殺したり、願いの為に代価を支払わせるのが大好きなのさ!!
オー:まるで見知った様に言う。
それが事実だとして、俺達が敵う相手だと思うのか?
ピエ:俺はクラハミに逢った事がある。
払うものを払えば望みを叶えてくれる、
それだけは確かな奴だった。
オー:お前は何を支払ったんだ?
ピエ:んん?
……でっへへへ。
オー:言いたく無いならそれで良い。
何時も酔うたびに話す家族の話、
大体想像はつくしな。
ピエ:どうだい乗るだろ!?
ロヴェルさんよォ!?
オー:冒険か……。
何時までも夢を見るのが自由なら、
諦める自由も此処にあるんじゃないか?
ピエ:ああ?
オー:お前と一緒に居るのは楽しかったが、
俺もそろそろ現実に戻らないと。
……皆が戦ってるんだ。
ピエ:俺は仲間じゃないってのかよ!?
オー: ――ッ!?
ピエ:楽しかったんだよ!!
何でも出来て、かっこ良くてよ!!
まるで勇者みたいに俺を導いてくれたお前が大好きだったんだ!!
オー:ピエトロ……。
ピエ:可笑しいだろぉ……こんなおっさんがよ。
お前みたいなガキに縋って、
願いを叶えようって言うんだからよ。
オー:何が望みだ?
俺に出来る事なら……いや、
俺が何とかしてやる。
ピエ:この身体を蝕む呪いを解きたいんだ。
そうしたら、また家族を迎えに行ける。
俺みたいな屑底に嵌った人間でも、
希望を持って生きていける……そんな気がするんだよ。
オー: ……解った。
だけどこれで最後にしような?
俺達の冒険も、こうして利用し合う関係も。
ピエ:ああ……きっとそうだな。
何だか夢みたいな日々だったぜ。
オー:俺もさ。
楽しかった。
ピエ:じゃ、とっとと行くとしようぜ?
俺の王子様よぅ!!
オー:ふっ……。
ハハハッ!!
( 間 )( エレナの家:華趣に染まる庭園 )
シル:それで……どうなったのですか?
オー:結局、闇の神獣に逢ったのは俺だけだった。
まあそんな気はしてたさ。
奴は途中で倒れて、そのまま動かなくなった。
シル:まさか……。
オー:大体が悪魔の親玉との取引だ。
呪いを解くだけでも相応の物を取られただろうに、
ましてや、人ひとりを生き返らせるなんてな。
シル:教えて下さい!!
貴方は何を支払ったのですか!?
オー:夢……さ。
シル:夢?
オー:ずっと夢を見続ける事。
子供のままに振る舞い、為政からは悉く逃れ、
戦いの際は決して全力を出せぬ呪いをかけられた。
シル: ……馬鹿なんじゃないですか?
オー:ん~~?
シル:たった一人を救う為に才能を投げ出して!!
たくさんの羨望と憧憬を踏み躙って!!
国王としての務めを放棄して!!
何でそんな馬鹿な事をしてしまったんですか!?
オー: ……さあ?
本当に無様過ぎて、自分でも良く解らんな。
シル:どうして……!!
どうして……!!!
オー:泣いてくれるのか?
シル:私が貴方だったら、絶対に自殺します。
だってそんな生き方、
何が面白いっていうんですか?
オー:いや、面白いよ?
シル:え?
オー:御蔭で此の上無い親友を得ることが出来たし、
こうやって美女に泣いて貰えるんだからな。
シル: ……ッ!?
勝手にして下さい!!
オー:ふぃ~……初めて他人に話したな。
ちょいと楽になったぞ。
シル:陛下はもう……自由になってください。
オー:おおっ!?
奇特な事だな、シルヴィア。
無償の御奉仕か?
シル:貴方の優しさと、心の痛みを教えてもらえました。
私はもう、それだけで満足です。
オー:ついでだ、胸を貸せ。
シル:はいはい。
幾らでもどうぞ?
オー: ………!!
……くっ!!
ううぅ…うぅぅ……!!!
シル:よしよし。
オー:うあああぁぁ……!!!
シル:大丈夫ですよ、陛下。
この国は絶対私が護ってみせます。
( 間 )( 血刃の理由 )
エレ:私はあの人を迎え入れる為に戦場へ発ったのではない。
……あの人が戦場へ赴かなくても良い様に、
ずっと戦い続けて来たのかもしれないわね。
|