題名  公開日   人数(男:女:不問)  時間  こんな話  作者

 風のシルヴィア(28)
~終わり()く世界~

2015/05/29  7(5:1:1) 30分 『 愛していた 』。
只それだけで良い、しかと伝えよ。
 ニコ

登場人物
(年齢)
性別 その他
シルヴィア
(26)
永遠の26歳。
金髪碧眼の美女。
龍と風の属性を持つ怪力の女騎士。
ミシェル
(17)
不問 シルヴィアの元同僚で彼女に付き従う美少年。
天才剣士、名門貴族、品行方正、容姿端麗。
人気キャラ。
グレン
(29)
シルヴィアの元同僚その2。
兄貴キャラ。下品で乱暴。
嘗てシルヴィアに告白した事がある(手紙で
アッチ
(25)
グレンの部下。ソッチの兄。
お調子者の熱血漢。
兄弟揃うと『千里眼』のスキルが発動する。
ソッチ
(24)
グレンの部下。通称『アッチ・ソッチ兄弟』
お調子者の優しい青年。
二人の所属していたエルツィ傭兵団は王国の花型だった。
アノワルドゥ
(321)
不死王・リッチ・ワイトキング。
様々な異名を誇るアンデッドを総べる超常者(骸骨
通常武器では傷すらつけられない。
死霊&黒龍 圧☆倒☆的モブ。
死霊は想像し得る限りの最高に気持ち悪い演技で。
黒龍は最後の方で出てきます、力の限り叫んで下さい。



「風のシルヴィア(28)~終わり()く世界~」





シルヴィアとミシェルは最後の休息を終えエレナの家を出立する。

目指すは王城、悪の宰相ゼオルードを滅ぼす為に。

一方、四面楚歌の王都は謎のアンデッド達の襲撃を受ける。

※戦闘回です。すっごい叫ぶよ!!





( 其の名は轟く。万世に憧憬を抱かせて )( ※プロローグ )

 

グレ:シルヴィア?

   ……ああ、竜騎士シルヴィア・アルトルージュの事か。

   この国で()()を知らない奴は居ないだろうな。

 

シル:炬竜(きょりゅう)ドーラに見出され、育てられ、

英雄どもを(ほふ)り尽くした最悪の魔性(ましょう)

   何者にも縛られず、美しく、そして残忍だった。

 

ミシ:龍の力はあらゆる力を相克(そうこく)する。

   (ゆえ)只々(ただただ)強く、()が人生もそうあれかしと、

   騎士の誰もが(あこが)れた伝説の英雄。

 

 

( 間 )( 王都アイゼフィール:白昼の悪夢 )

 

 

アノ:()でよ……()でよ、(のろ)われ()よ。

   はらわだをすすれ……血潮(ちしお)こそ(われ)らが至上(しじょう)

 

死霊:( 唸る )――。

 

アッ:何だァァッチ!?

このアンデッド共、

手薄(てうす)な王都に突然湧き出しやがったッチ!!

 

ソッ:だ、駄目だァッチ!!

   剣じゃ歯が立たないッチーー!!

   ま、まさに死体が死体を呼ぶこの不始末ッチ!!

 

死霊:グフッ……グフフ。

   グヒッ。

 

グレ:ううむ…真昼間(まっぴるま)にも関わらず、この不死身っ振り……ハッ!?

   アーーッチ!!

   ソーーーッチ!!

 

アッ&ソッ:(おう)ッ!!

 

グレ:こいつらの奏者(そうじゃ)何処(どこ)かに居る(はず)だ!!

   お前()兄弟の『千里眼(せんりがん)』の力で、(なん)としても探し出せ!!

 

死霊:( 呻き声 )――。

 

アッチ&ソッチ:うおっ!?

 

グレ:オウリャア!!

 

死霊:ウギャアッ!?

 

グレ:はっやーーーーく!!

 

アッ:ムムッ……!!

アッチ?

 

ソッ:ソッチ?

 

グレ:ドッッチよッ!!?

 

アッ:アアアァァァッッチ!?

アッチだッチ、グレン隊長!!

   時計塔の屋上、呪詛(じゅそ)を吐く黒衣(こくい)のアンデッドッチ!!

 

アノ:グガガガガッッ!!

ヴァーラ・イーダ・ソウル・イーダ……。

 

ソッ:と……唱えてるッ!?

   (なに)か唱えてるッチ!?

 

グレ:(なん)禍々(まがまが)しい瘴気(しょうき)なんだ……!!

およそ名のある不死に違いないが、

   アイゼフィールにあんな怪物が(ひそ)んでいたとはな。

 

死霊:ゴオォォロォォズゥゥゥ!!!

 

アッ:隊長!!

   早くしないと街中(まちじゅう)ゾンビだらけだッチ!!

 

グレ:俺が行って叩いて来る!!

   貴様等(きさまら)此処(ここ)を死守せよ!!

 

アッチ&ソッチ:合点(がってん)だッチ!!

 

アノ:ん……?

おお……早くも()ぎつかれたか……。

   木偶共(でくども)の中にも優秀な(こま)()るらしい。

 

死霊:グヒヒ……ススッテヤル。

   ぎざまだのこぼれ落ちる内臓……桃色(ももいろ)の脳みそ……!!

 

アッ:黙リャァァアアアッチ!!

 

死霊:うびゃあっ!?

アババ…ブシュッ…ま、まだ血が出てぐる。

   おで……まだ生ぎでる?

 

アッ:おえっ、体液(たいえき)が顔に…うえ。

 

ソッ:だから(ただ)の剣じゃ意味無いッチ!!

   不死には属性付きの武器が有効ッチ!!

 

アッ:それならグレン隊長が持ってるッチ!!

   水属性の斧槍(ふそう)、シーハープーンッチ!!

 

アッ&ソッ: ……あ。

 

死霊:グヒヒヒ!!!

 

アノ:闇よりの使者、御魂(みたま)(もっ)て地に()()てよ。

   ()の罪と憎しみ、恥辱(ちじょく)汚辱(おじょく)存分(ぞんぶん)(さら)し尽くせ。

   グ……ガガガガッ。

 

ソッ:うわああああっっ!?

   だ、大地が腐っていくッチ……!!

   剣も……身体も……全部ッチ!!

 

アッ:(くそ)ッ!!

   あの高笑いのドクロ野郎、この地を(けが)すつもりッチ!?

 

アノ:(みな)死ねや。

   死者が跋扈(ばっこ)し、生者(せいじゃ)(あく)()すまで死ねや。

   (ほろ)びこそ福音也(ふくいんなり)……(うと)ましき生を捨て……。

今こそ永久(とわ)の安らぎを……。

 

グレ:おうりゃあああああぁぁぁ!!

 

アノ:( 途中から被せて )むッ!?

グオェアッ……!!

 

グレ:ひとんちの庭でなぁに呪ってやがる、

このドクロ野郎!!

 

アノ:グガガッ…!!

   随分と足の速い事だ。

   中のアンデッド共はどうした?

 

死霊:ゥ……グブブッ……!!

   おぉぉ、溺れるゥ……あ、あいづ強いぃぃ。

 

グレ:俺様の名はグレンゴル・ベルカッツィ!!

   海原(うなばら)の国ゴーランドが出自(しゅつじ)だ!!

   聞いたらとっとと冥途(めいど)に帰りなッ!!

 

アノ:()が名は不死王(ふしおう)アノワルドゥ。

   闇の穴に()み、深き叡智(えいち)を探求する者。

 

グレ:不死王(ふしおう)だと?

仮にも不死を()べる者が野心(やしん)()りつかれたか!?

 

アノ:グガガカッ……多くを語るつもりは無いが、嬉しいぞ?

此度(こたび)縁故(えんこ)(のっと)現界(げんかい)してやったが、

   ただ蹂躙(じゅうりん)するだけでは華が無いのでな。

 

グレ:属性付きの斧槍(ふそう)で八つ裂きにしても即時再生する不死性(ふしせい)……。

   流石(さすが)リッチ、次元が違うと言う事か。

 

アノ:恐れるな……若者よ。

貴様(きさま)も不死に()るか?

   (おお)いなる闇に(いだ)かれるは幸甚(こうじん)だぞ?

 

グレ:御免(ごめん)だね!!.

   あいにくと今の人生、負け続けだが嫌いじゃない。

  ……だが、一ついいか?

 

アノ:語るつもりは無いと言った。

   この身姿(みすがた)とて(むくろ)を借りた物、

   ならば仮初(かりそ)めのまま闇へと(かえ)ろう。

 

グレ:いや、そうじゃねえ。

 

アノ:ほう?

 

グレ:アンデッドに()っても、おっ()つもんは()つのか?

   だったら考えてやってもいい。

 

アノ: ……貴様(きさま)

 

グレ: ――ッていうかよぉ。

ずっと闇の中に()て、どうやって処理してんのよ?

   ぶっちゃけ辛くなぁい?

 

アノ: ……。

 

グレ:フヒヒッ。

 

アノ:(とどろ)くは雷鳴(らいめい)(きん)

   (なげ)くは刻冥(こくめい)(もん)

   茫漠(ぼうばく)たる(やみ)(はら)()よ、

   今こそ(すべ)ての業火(ごうか)を背負い()罪過(ざいか)(あがな)わん。

 

グレ:( 被せながら )――おい、冗談だって!!

   やめちくり!!

何唱(なにとな)えてんだよ、おい!?

   やーめーれ、コノオッ!!

 

アッ:なんだッチ……?

暗雲(くらくも)から……。

巨大な(あぎと)(いばら)のイカズチが……。

 

ソッ:ま、まさかあれを()の王都にぶちまける気ッチ!?

 

死霊:ウゴオォォォ!?

 

アッ&ソッ:うわっ!?

 

死霊:燃える!?身体が燃える!?

   (みな)一緒に燃えよおおぉぉよおおぉぉぉ!!

 

アッチ&ソッチ:ひいぃぃっ!?

 

ミシ:ハアッ!!

 

死霊:グヒャアッ!?

   カ、カラダ……バラバ……ボンッ!!

 

ミシ:ふん、(なん)とたわいの無い。

   手こずる事すら難しいとは。

 

アッ:おおっ!?

   (なん)と輝く美少年ッチ!!

 

ミシ:クスッ……。

お久しぶりですね、君たち。

 

ソッ:そ、その身姿(みすがた)はエルツィ傭兵団は十番隊隊長!!

   ミシェル・フォン・フィーバストルテだッチ!!

 

ミシ:二番隊のアッチ・ソッチ兄弟。

   ならば塔の上で戦っているのはグレンさんですか。

 

アッ:なんで此処(ここ)()るッチ!?

   ていうか今までどこに行ってたッチ!?

 

ミシ:君たちには知らなくてもいい事です。

   ……だけど、僕の事を覚えていてくれて有難(ありがと)う。

 

ソッ:あうあ?

 

ミシ:欲しいものは家名(かめい)なんかじゃ()かった。

   やっぱり僕は、エルツィ傭兵団に入って良かったんだ。

 

死霊:( 呻き声 )――。

 

ミシ: ――ッ!?

   来ますよ、備えて!!

 

アッ:そ、空も()ちてくるッチ!!

 

ミシ:それは大丈夫!!

   あの人を信じて!!

 

グレ:ぐ……くっそおぉぉぉ!!

   駄目だ!!

詠唱を止められねえ!!

 

アノ:グガガガ……!!

 

グレ:(くそ)()れッ!!

 

アノ:大昔(おおむかし)、フィロクシェンの街を一夜(いちや)で滅ぼした()が禁術、

   牧陽(ぼくよう)の庭に放つのも悪くない……!!

 

グレ:来る!!

 

アノ:死ねぃ虫けら(ども)!!

 

シル:()せろグレン!!

 

グレ&アノ:(なに)ッ――!?

 

シル:ハアアアァァァッッ!!!

 

アノ:ウゴオォォォ!!?

 

 

( 間 )( 颯爽登場。風のシルヴィア )

 

 

アノ:ぬぐっ……おぉぉぉぉ!?

   馬鹿め…こんな傷…こんな……!!

 

シル:( 息を荒げて )――。

()まん、遅くなった!!

 

グレ:シルヴィア!!

   来てくれると信じてたぜ!!

 

アノ:な、何故(なぜ)だ!?

   再生が効かぬッ!!

 

シル:( 疲れながら )あの髑髏(どくろ)の男、

(やつ)仕留(しと)めればこの騒動は(おさ)まるのか?

 

グレ:いや…だがどういう事だ?

   お前の斬撃は(やつ)に届いただと?

 

アノ:グアァァ……ハッ!?

   き、貴様(きさま)ッ!!

よもやその剣、龍剣(りゅうけん)か!?

 

シル:しぶとい。

 

アノ:何故(なぜ)貴様(きさま)がそれ程の獲物(えもの)を持っている!?

   現世(げんせ)に残存する武具ではあるまい!!

 

シル:ドラゴンスレイヤー!!

風の神獣リューシオン様より(たまわ)った一振(ひとふ)りだ!!

   最早(もはや)その瘴気(しょうき)は飾りに過ぎぬと知れ、不死王(ふしおう)!!

 

アノ:リューシオン……?

そうか、貴様(きさま)がシルヴィア・シルフィードか!!

   貴様(きさま)こそがゼオルードのッ!!

 

シル: ……(なに)

ゼオルードだと?

 

アノ:だが()けん!!

()が名はアノワール・ドゥ・ゴラムザード!!

   闇の神獣クラハミよりその存在を(ゆる)された、

(おお)いなるアンデッドなのだ!!

 

シル:貴様(きさま)はゼオルードの造り上げた造魔(ぞうま)か?

   ならば――。

 

アノ:( 被せて )答える必要は無い!!

 

シル:()が剣を前にしてその虚勢。

死を(いと)わぬと言うのだな?

   闇の狂者(きょうしゃ)よ。

 

アノ:ブレダ・カリス・ブードゥ・ゾルド!!

   死を(たた)えよ、やれ()てよ――!!

 

グレ:( 途中から被せて )――召喚(しょうかん)だ!!

   来るぞシルヴィア!!

 

シル:合わせろグレン!!

 

グレ:任せろッ!!

 

アノ:()でよッ!!

リビング・デッド!!

 

死霊:( 呻き声 )――!!

 

グレ:(まと)うは海神(かいじん)の一撃!!

   ()うはやっこさんの血飛沫(ちしぶき)!!

ベルカッツィー(しき)戦斧術奥義(せんぷじゅつおうぎ)!!

ネレイディード・ザンバーーー!!

 

死霊:ギョオオォアァァァ!!??

 

アノ:ぐっ、波で死骸(しがい)が混ざり合い前が見えぬ!?

   盾にも壁にもならぬ奴等(やつら)め!!

 

シル:行くぞ!!

   龍化式極限最大剣術奥義(りゅうかしききょくげんさいだいけんじゅつおうぎ)!!

 

アノ:ウオオオッ……!?

   な、なんという龍気(りゅうき)だ!!

   いかん!!

 

シル:シルフィーーン・スレイヴアアァァァ!!!

 

アノ:ぬわああああああぁぁぁ!!??

 

 

( 間 )( 颯爽失敗。風のシルヴィア )

 

 

アノ: ……お?

 

グレ: ……え?

 

シル: ……ん?

 

アッ:なんだ……アッチ。

   時計塔の上から(なに)かが飛んでいったッチ。

 

ミシ:ハアッ!!

 

死霊:グヘエェ!?

 

ミシ:ちょっと!?

   ちゃんと前を見て下さい!!

 

アッ:綺麗な流れ星だったッチー。

 

ミシ: ……ん?

   流れ星だって?   

 

ソッ:違うッチ。

   僕の眼には剣を追いかけるドラゴンに見えたッチ。

 

ミシ: ――ッ!?

シルヴィアさんのドラゴンスレイヤーだ!!

   あれが無ければゼオルード様を殺せない!!

 

アッ:へ!?

何気(なにげ)にとんでもない事言ったッチ!?

 

ミシ:教えてくれ!!

   あの剣は何処(どこ)へ飛んで行った!?

 

ソッ:嫌だッチ!!

ミシェル隊長はアイゼフィールを裏切る気だッチ!!

 

ミシ:君たちは誰の(ため)に戦う!?

 

アッ:う?

 

ミシ:自分達を信じてくれた陛下(へいか)(ため)か!?

   守らなければならない国の(ため)か!?

 

ソッ:(なに)を……。

 

ミシ:僕はシルヴィア・シルフィード(ただ)一人にこの命を(ささ)げたい!!

   今だけで良い、それだけで良いからッ!!

   だから僕に協力してくれ!!

 

アッ:むむっ!?

……ソレハアイノチカラッチ?

 

ミシ:ああそうだとも!!

   馬鹿にしたいならそうしろよ!!

   だけど僕は(あきら)めない!!

   (なに)があってもこの手で(まも)ってみせるんだ!!

 

アッ: ……弟よ。

 

ソッ:(おう)

 

ミシ:駄目……ですか?

 

アッ:アッチ?

 

ソッ:ソッチ?

 

ミシ: ……。

 

アッ:いやいや、アッチだ。

 

ソッ:いんや?

ソッチッチ。

 

ミシ:どっちなんですか!!?

 

ソッ:ニシシ……ソオォォォチ!!

   武闘殿(ぶとうでん)の方向に飛んで行ったッチ!!

   王城(おうじょう)の東にある御前試合(ごぜんじあい)の会場ッチ!!

 

アッ:あ……だけど王城(おうじょう)付近は危ないッチ。

秘蔵の甲冑達(かっちゅうたち)がひとりでに動いて、

   近づく奴等(やつら)皆殺(みなごろ)しにしてるって報告があったッチ。

 

ミシ:それでも行かなきゃ。

   出来(でき)なきゃ意味が無いんですから。

 

ソッ:頑張るッチ。

   王子様。

 

ミシ:君たちは平気ですか?

 

アッ&ソッ:任せろッチ!!

 

ミシ:クスッ……有難(ありがと)う!!

二人とも!!

 

死霊:( 呻き声 )――。

 

アッ:燃えてくるッチ!!

   スーパー愛の力に()き付けられたッチ!!

 

ソッ:僕等(ぼくら)も生きて帰って早く結婚するッチ!!

   ぼちぼちお袋も心配してるッチ!!

 

アッ:お前それ――!!

 

死霊:( 被せて )ウグオオォォォ!!

 

アッ&ソッ:ギャアアァァ!?

 

 

( 間 )( 時計塔:屋上 )

 

 

グレ:は……(はず)しやがった。

 

シル:ん?

 

グレ:『 ん 』じゃねーよ馬鹿野郎!!

   どうすんだよ!?

秘蔵の剣を放り投げちまってよお!!

 

シル:う、五月蠅(うるさ)い!!

   お前が土石流(どせきりゅう)とか出すのが悪いんだ!!

   御蔭(おかげ)で前が見えなかったじゃないか!!

 

グレ:大体(だいたい)(なん)で一撃必殺だぁ!?

   ちったぁ後先考えて行動しろよ!!

 

シル:だってかっこいいじゃん!!

   全力でドラゴン出すんだぞ、滅茶苦茶かっこいいじゃ――!!

 

アノ:( 被せて )グ……グガガガガッ!!

 

シル&グレ: ――ッ!?

 

アノ:矮小(わいしょう)猿共(さるども)め……。

   最早(もはや)(たわむ)れぬぞ!!

   寸刻(すんこく)なりとて()(きも)を冷やしてくれた()(むく)い、

   死を(もっ)(つぐな)うが()い!!

 

グレ:ぐっ、(くそ)ッ!!

 

アノ:(のろ)(のろ)え、御創(おつく)りの御手(おて)よ。

   ()しき魔犬、鋭角より来たるべし。

   ()斬刻(ざんこく)(つめ)

   ()墓碑銘(ぼひめい)刻印者(こくいんしゃ)

   ()でよ――!!

 

シル:( 被せる )たああぁぁっ!!

 

アノ:ウゴォッ!?

 

グレ: ……は?

 

アノ:え?

   ……え?

 

グレ:殴った…だと?

 

シル:でえぇやああっっ!!

 

アノ:ウギャアッ!?

   ……な、何故(なぜ)だァ!?

   何故貴様(なぜきさま)、リッチであるこの(わし)手傷(てきず)を!?

 

シル:知れた事!!

   祖国を守るは正義の心!!

   ならば無手勝(むてかつ)とて(やぶ)れる道理は無いッ!!

 

アノ:い、いや……()()からほとばしるは龍の血脈(けつみゃく)!!

   そうか、おのれゼオルードめ!!

   この(わし)ですら使い捨てるとは!!

 

シル:オラオラオラオラ(ry

 

アノ:( 被せる )アンギャアアアァァァァ!!?

 

グレ:アガガッ……!?

素手(すで)であの怪物を……!!

 

シル:( 手を叩く )――!!

どうだ!?

   ヘマは返したぞ!!

 

グレ:あ、ああ……。

   流石(さすが)は元一番隊隊長。

   シルヴィア・シルフィード…だな?

 

シル:私はこのまま王城へ行く。

   後は任せた。

 

グレ:おいおい、何処(どこ)へ行くって?

 

シル:殺さねばならぬ者が()る。

   いや、最早(もはや)ヒトと呼べるのかも疑問だが。

 

グレ:そうか、それはつまりなんだ、

俺にすら言え無い事なんだな?

 

シル:悪いな……上手く説明できないんだ。

 

グレ:あいあい。

……しっかし何かお前、随分と変わったよなぁ。

   前はあんな真似(まね)をする馬鹿じゃ無かった気がするが。

 

シル:恥も無茶も、存外(ぞんがい)(とし)を取ってからの方がやりやすい。

   なあに、まだまだこれからさ。

 

グレ:( 溜息 )――。

たったの一年で、(さと)っちゃってまあ。

 

シル:ふふん♪

 

グレ:だが、()えて言わせてもらう。

お前は相変(あいか)わらず美人だぜ、シル。

 

シル:有難(ありがと)う!!

そうだ、あの手紙、まだ私の私書箱(ししょばこ)に入っているかな?

 

グレ:お前の席ならとっくの昔に消えちまったよ。

   それどころか、エルツィ傭兵団その(もの)が消えちまった。

 

シル:そうか……だけど、

(もの)よりも忘れてないって事の方が大事なんじゃないかな?

 

グレ:ほう?

 

シル:楽しかったなぁ。

皆が()て、戦って、飲んで。

 

グレ: ……早く行きな。

   ゾンビ共は俺が始末しとくから。

……お前はお前のやりたいように生きろ。

 

シル:グレンはちっとも変わらないね。

 

グレ:うるへー。

 

アノ:グ……グガガ。

 

シル&グレ:(なに)ッ!?

 

アノ:(なん)と言う顛末(てんまつ)か……。

   この(わし)ともあろうものが……。

   グ…オオオォ……!!

 

シル:おのれ不死王(ふしおう)!!

   性懲(しょうこ)りもなくこの王都を(のろ)うつもりか!?

 

アノ: ……ゼオルードは四騎士(よんきし)の塔に()る。

   王城に()るのは影武者(かげむしゃ)、文字通り唖奴(あやつ)の影よ。

 

シル:世迷言(よまいごと)をッ!!

   呪詛(じゅそ)を吐いた()の口から出た言葉を誰が信じる!?

 

アノ:グ…カカッ……ならば悪戯(いたずら)(とき)(つい)やすが()い。

   それもまた良かろうて……どの道結末は…変わらぬのだからな。

 

グレ:こいつ…現身(うつしみ)を亡くして成仏しかかってやがる。

   もう長くないぜ。

 

アノ:しかしなぁ……。

(せがれ)を悪魔に売り渡し、永久(とこしえ)の命を得たは()いが。

   グレンとやら…貴様(きさま)の言う通りよ。

 

グレ:ああ?

 

アノ:永遠の魔術の探究と言う至上の喜び、

その永遠が永劫(えいごう)になると知ったのは随分と後の事であったが……。

   あの時は……。

よもやな。

 

シル: ……(せがれ)

   アノワール…ゴラムザード?

 

アノ:知らぬも()む無し、か。

   三百有余年(ゆうよねん)……いや、実に(なが)(とき)を生きた。

 

シル:まさか貴方(あなた)は……ゼオルードの父親なのか?

 

アノ:いや?

(わし)は最強の力を唖奴(あやつ)()れてやり、

   唖奴(あやつ)(わし)に不死を寄越した…ただ、それだけの間柄(あいだがら)よ。

 

シル:だが貴方(あなた)は息子の呼びかけに応じた。

   捨てた(はず)俗世(ぞくせ)に舞い戻り、(しかばね)の山を(きず)いた。

   ……それは何故(なぜ)ですか?

 

アノ:ふっ…お前は(たわ)けた女だな。

この汚れきった魂をすら救おうと言うのか?

   ……古今稀(ここんまれ)だぞ、それ程の女は。

 

シル:申し訳ありませんが、私はゼオルードを殺します。

   彼に何か伝えておくことは御座(ござ)いますか?

 

アノ: ……(ゆる)せとは言わぬ。

これが贖罪(しょくざい)だとも言わぬ。

だが、あの薄暗き部屋で共に魔導に(きょう)じた日々は悪くなかった。

 

シル&グレ: ……。

 

アノ:あの頃のお前は確かに人であり、正義と力を信じ……有能で。

……誰よりも気高(きだか)(はな)()り、

私の様な人間にはまるで理解の出来無(できな)かった。

   安らかな時を()れた…大切な――。

 

シル&(グレ):( 被せて )ふふふっ!!(ハハハッ!!)

 

アノ:( 溜息 )――。

   『 (あい)していた 』。

   (ただ)それだけで()い、しかと伝えよ。

 

シル:はい。

   シルヴィア・シルフィードの魂魄(こんぱく)に誓って。

 

アノ:( ふっ……。

そうか…(まこと)安息(あんそく)とは……。

お前が(そば)()たあの時間だったのだな……ゼオルードよ。 )

 

 

( 間 )( 現れるは万世を破壊い尽くす終末の悪龍 )

 

 

アッ:な、(なん)だッチ!?

   青空に戻ったと思ったら地鳴(じな)りが突然!?

 

ソッ:ワッ……ワワワアッ!?

とんでもない規模だッチ!!

   建物が全部沈んでいくッチ!!

 

シル:(なん)だ……!?

   この(おぞ)ましい瘴気(しょうき)は!!

 

グレ:真下(ました)からだ!!

来るぞ!!

 

黒龍:グウオオオォォォ!!!

 

アッ&ソッ:( 被せる )うわあっ!?

 

黒龍:ォォォオオオォォン……!!

 

アッ:ウゥオオォォァアア!?

   デ、デッケエエエエェェェ!!!

 

ソッ:真っ黒な(かたまり)が…空へ突き抜けていくッチ……!!

 

ミシ:あれは……。

古生龍(ワーム)…なのか?

   滅びた(はず)長大(ちょうだい)なる者、数多(あまた)の龍の元祖にして頂点。

 

グレ:こいつ何処(どこ)まで伸びやがるんだ!?

   王城を(はる)かに超えたぞ!!

 

シル:黒い…龍…なのか?

   これが!?

 

グレ:()いからお前は早く行け!!

   此処(ここ)は俺達に任せろッ!!

 

シル:解った!!

   死ぬなよ!?

 

グレ:へっ!!

 

黒龍:クウォォォオオオン!!

 

ミシ:(なん)醜悪(しゅうあく)禍々(まがまが)しい姿なんだ……!!

   世界を一飲(ひとの)みにするこんな怪物を呼び出して。

   ゼオルード様は…一体(なに)を……!!




 
 
 
     
 
           
inserted by FC2 system