題名 |
公開日 |
人数(男:女:不問) |
時間 |
こんな話 |
作者 |
風のシルヴィア(29)
~果て無き旅路へ~
|
2015/06/09 |
5(3:1:1) |
30分 |
貴方はやっと…自由になれたのでしょう? |
ニコ |
登場人物
(年齢) |
性別 |
その他 |
ミシェル
(17) |
不問 |
翡翠色の瞳と淡い金髪が特徴の美少年。
『四騎士』と呼ばれる英雄の末裔。
天才剣士でもあり、並大抵の魔物は一人で蹴散らしてしまう。 |
アーウィン
(30) |
♂ |
魔族の血を引く黒髪紫眼の男。
かつて『エルツィ傭兵団』の団長として名を馳せた。
所謂完璧超人。兵法家としては最強クラス。 |
虚ろな鎧
(不詳) |
♀ |
鎧に魂を定着させられた傀儡の一人。
生前は居合の名手だったらしく如何なる獲物も両断する。
※カクレナと兼ね役でお願いします。 |
カクレナ
(28) |
♀ |
エルツィ傭兵団三番隊隊長。故人。
顔に傷を負った男装の麗人。隻眼。
いわゆる隠しキャラ。 |
兵士
(不詳) |
♂ |
圧倒的モブ。
そこそこの技量を持つ忠臣。
※傭兵と兼ね役でお願いします。 |
傭兵
(27) |
♂ |
回想シーンにのみ登場。
下卑た言葉遣いの割に仕事も娯楽もそつなくこなす。
つまりは齢相応の男なのだ。 |
カミュ
(42) |
♂ |
余りの凋落ぶりに満身創痍となった四騎士の一人。
ミシェルの父親であり、彼の母親を八つ裂きにした男でもある。
其の傲慢且つ利己的な性格を嫌う者も多い。 |
「風のシルヴィア(29)~果て無き旅路へ~」
シルヴィアの龍剣を回収する為、単身敵の巣食う『武闘殿』を訪れたミシェル。
中では虚ろな鎧達がアイゼフィール正規軍を憎しみに任せて殺戮していた。
彼等を止めるには最奥で待つ者を殺すしかないと諭されるが――。
※戦闘回です。すっごい叫ぶよ!!
( 武闘殿:血塗れの外郭 )
ミシ:( 荒い息遣い )ハッ…ハッ……!!
急がないと、きっと、きっとシルヴィアさんが!!
兵士:うわあああぁぁ!?
ミシ:悲鳴……!?
兵士:くそぉ!!
死んでたまるかあぁぁッ!!!
ミシ:奥の方にまだ生きている兵士が居るのか。
この惨状は見るに堪えないが…間に合うかどうか。
虚ろ:ギ…ギギ。
良くぞ来た、『王の剣』よ。
ミシ:エンプティドール!?
おのれ、神聖なる武闘殿で何を彷徨う!?
虚ろ:違うな、私はお前達を待って居たのだ。
手慰みに歯向かう者達を切り捨ててな。
ミシ:『たち』……?
虚ろ:ミシェル・フォン・フィーバストルテ。
ロヴェル・バークライツ。
ミシ:え……?
アー:酷い了見だな。
俺じゃあヒーローに成れないってのかい?
ミシ:団長…どうしてこんな所に?
アー:馬鹿な女が調子に乗り、自分の獲物を放り投げたと言う。
さて、まさか俺以外にも拾いに来る物好きがいたとはな。
ミシ:シルヴィアさんは馬鹿ではありません!!
じゅ、純粋なんです!!
アー:( 口笛 )――♪
成程、盲目とは良く言ったもんだ。
ミシ:団長だって……総てを捨てて彼女を助けたじゃないですか。
それ程の人なんですよ、シルヴィア・シルフィードは。
皆彼女が大好きなんで――。
アー:( 被せる )どいてな。
ミシ:えっ?
虚ろ:ゼイッッ!!
ミシ: ……なッ?
速――!!
アー:つぅぅ……!?
相変わらずの神速だな。
虚ろ:流石は団長。
我が重水の居合を見切るとは。
殺り甲斐がある。
ミシ:団長ですって?
この鎧もエルツィ傭兵団の一員だったって事ですか!?
アー:ああ。
お前も見知っては居る筈だが、こいつは飛び切りのだんまりでな。
古参の奴としか話をしなかった。
虚ろ:そういう事だ十番隊の。
お前に用は無い、早く行け。
ミシ: ……。
アー:やたらと永い時の中で気付くことが在る。
ミシ:え?
アー:思いの丈をぶちまけられる相手ってのは、
恋人でも親でも、親友でもない、
何時の間にかそこにいる、どこかの誰かさんだって事にな。
虚ろ:良く言う。
シルヴィア1人の為に、
我等を見捨てた輩が。
アー: ……少し失望したぞ?
大方、偽の竜騎士を造った時のノウハウで出来てんだろうが、
恨み一つで『そっち側』に堕ちたのか?
虚ろ:如何にも。
今となってはこの居合刀と鎧が私の総てだ。
立ち会ってもらわねば気が晴れぬ。
兵士:ウギャアッ!!?
虚ろ:そして、彷徨う鎧は私1人では無い。
ミシ: ……随分と兵が彼等に殺られているようです。
ここは一体一体確実に壊していきましょう。
虚ろ:成程、賢い。
それでも私は構わぬがな?
アー:いや…こいつが一番手強いだろう。
お前は雑魚を蹴散らしつつ、騒ぎの大元を断ってこい。
ミシ:大元?
操る者が居るのですか?
アー:感じないのか?
こいつはとびきり上等な糸で操られている。
感度抜群、決して切れる事の無い不可視の風の糸だ。
ミシ:そんな…可視不可能な風の力ですって……!?
そんなの……!!
アー:ここから先の決着はお前にしか出来ない事だ。
俺達と同じようにな。
ミシ: ……ええ、やらなければ行けないんですよね?
どんなに辛くても、怖くても。
僕の力で。
虚ろ:武運を祈っているぞ?
ミシェル・フォン・フィーバストルテ。
ミシ:貴方も御元気で。
三番隊隊長、三日月の騎士、
カクレナ・キリスリン。
虚ろ:ふっ。
アー:話なら後で聞いてやる。
血脈を越えていけ。
( 間 )( 武闘殿:栄光と簒奪の舞台 )
兵士:ぐ……あぁ!!
カミ:ん?
……おお、狐雨か。
装束が汚れてしまうな。
兵士:何故だ……?
カミュ・レーヴ・フィーバストルテ。
貴方は誇り高き四騎士の1人だった筈。
何故…正規軍である我々を手にかける……?
カミ:下賎の者が知る必要は無い。
とはいえ中々の練武だな、良く生きていたぞ?
兵士:ふっ……どれだけ鍛練を重ねようとも、
持って産まれた剣の才…貴方に及ぶべくもない。
『王の剣』殿。
カミ:ならば誇りを以て死ぬが良い。
陛下の御前にて死合われるこの場にて、
我が手にかかり死ねるのだからな。
兵士:外患内憂。
いよいよ此の国は終わるのか…無念だ……!!
ミシ:( 荒い息遣い )――!!
父上ッ!!
カミ: ……ふっ。
ミシ:父上……何故です!?
どうして貴方がこんな暴挙を!?
カミ:天かける黒龍に狐雨、死んだ筈の不肖の倅。
今日は良く天変する日だと思わぬか?
……狂った末路に相応しい。
兵士:ゴブッ…グジュ……!!
カミ:なんだぁ?
戯けめ、勝手やたらに死にかけおって!!
ミシ:やめて下さい!!
カミ:何を辞めろと言う?
この死に損ないを早く楽にしてやろうと言うのに。
兵士:ば…ばやぐ…ご…殺してくれぇ……!!
カミ:雨で聞こえん。
貴様はもう少し苦しんでいろ。
兵士:なっ!?
うぐっ…うあぁぁぁぁ!!?
ああぁ…痛いィ!!
( 暫く苦しんだ演技をしていてください )
カミ:それとも、この国への反逆をかね?
ミシ:今すぐ暴虐を止めて下さい!!
フィーバストルテの家名に懸けて!!
カミ:そんなものは消え失せた!!
私に残っているのはこの剣と意地だけだ!!
ミシ:貴方は…私を生贄にして…!!
母様を八つ裂きにして…!!
たくさんの人々を犠牲にして、
貴方には……そんな物しか残らなかったのですか!?
カミ:ああ、そうだとも!!
私を無能と侮り、辱めた此の国の屑共を滅ぼしてやる!!
何一つ要らぬ!!
アイゼフィールと共に滅びるが良いわッ!!
兵士:ぎっ、ぎざまぁぁぁ!!!
カミ: ――なッ!?
死ねいッ!!
兵士:ウギャアッ!?
ガフッ……おのれ…国賊……!!
カミ:ク…クフフッ……!!!
ミシ: ……?
カミ:これ…これデ静かになったッ!!
静かになったぁ!?
ヒャヒャ…わ、私に歯向かうからこうなるのだ、
馬鹿め無能め、出来損ないめがッ!!
ミシ:会話を…する事は出来ますか?
カミ:ああ~~???
薄汚い亜人が何かほざいておるぞォ?
悪魔と話す舌など持たぬなぁ?
ミシ:僕を亜人と罵る、貴方の心は何なのですか?
母様を愛した……貴方の心は何だったのですか?
カミ:貴様等親子が私を狂わせたのだ!!
我が誇り高いフィーバストルテを良くも!!
その報いは万死に値すると知れぃ!!
ミシ:全部、僕達のせいだと仰るのですね?
あの日々も、思い出も、貴方にとっては総てが重荷でしか無かったと、
そう断じるのですね!?
カミ:ああぁぁぁその通りだよぉ!?
忌まわしき記憶ごと、あの女を引き裂いてやったのだあぁぁ!!
ク…クヒャヒャヒャッ!!!
アーーーーーヒャヒャヒャヒャ!!!
ミシ:僕は人間だ!!!
カミ: ……ああぁ?
ミシ:貴方は姿形で人の価値を決めると言う!!
だけど僕は皆が好きなんだ!!
異形でも亜人でも構わない、この世界で生きる人が好きなんだ!!
カミ:クフェフェフェ……!!
地獄から持ち帰った割には、青い考えだなあぁ?
ミシ:僕は越えていく!!
御家の呪いを、貴方と言う狂おしい迄の人間を!!
カミ:ふん。
……早く構えろ。
口先だけの男に誰がついてくるものか。
ミシ:行きます!!
( 間 )( 武闘殿:嘗ての友として、主従として )
アー:そうか…お前迄死んじまったのか。
悪い事をしたな。
虚ろ:それは別に構わないのだ。
貴方は常々言っていたではないか、
配下の死を悼みはしても、悔やみはしないと。
アー:全力で戦える舞台をあつらえるのが趣味なんでね。
楽しく勝てりゃあそれに越したことは無いが、
負けたとて次に活かせりゃ文句は無いさ。
虚ろ:貴方の居ないこの一年。
我々が如何に侮られ、酷使され続けたか解っているのか?
アー:ああ。
風の便りでな。
虚ろ:シルヴィアに罪があるとは思えない。
だから…貴方にこそ死んでもらう。
アー:よっぽどタチが悪い相手さ。
俺が黙って斬られる人間じゃないって知ってるくせに、
何だってこうして立ちはだかるんだ?
虚ろ:構えてくれ、ロヴェル。
ならば、せめて、私と刃を交えてくれ。
アー:はいはい、お受けしますよ!!
どうしようもねえ馬鹿野郎が!!
( 間 )( 独白 )
兵士:誰もが未来を読み通せる訳ではない。
この人に総てを捧げて報われるかどうか。
この生き方を選んで幸せなのかどうか。
それでも人は剣を取り、我が道を行き、
見果てぬ誰かと出逢う為に旅を続ける。
( 間 )( 親愛なる死闘 )
ミシ:( 荒い息遣い )――!!
うぐっ……ああっ!!
カミ:どうした?
麗しの乙女を救う為にあの剣を求めたのではないのか?
ミシ:ドラゴンスレイヤー……!!
あの龍剣があれば!!
カミ:遠慮なく用いるが良い。
それで私をどうにかしてみせろ。
ミシ:くっ…侮るなッ!!
『飛剣陣』!!
カミ: ……ミシェルよ、この私にフィーバストルテの技は効かん。
『風の刃』は確かに鋭く迅速だが、
殺気さえ見切ればかわすのは難しいことでは無い。
ミシ:そんな…これ程までに遠いのか…!!
大陸一と謳われた父上の剣技とは…!!
カミ:天稟を絞り尽くせ。
惜しい所まで来ているではないか。
ミシ:ええ、勿論です!!
死力を尽くして貴方を倒さなければ、
此の国は救えないんだ!!
カミ:クフフッ……。
昔、一度だけ此の国を出ようとしたことが在る。
ミシ: ……?
カミ:己の剣が何処までこの世界に通じる物か。
フェンシアと同じように旅をして、他人と出逢い、
限界と言う物を知ろうと思ってな。
ミシ:そして…母様と出逢ったのですか?
カミ:いいや?
結局私は何処へも出ることは無かった。
御家を継ぐたった一人の跡取りの夢を、
誰も赦してはくれなかった。
ミシ: ……勿体無いですね。
父上の冒険の話、寝る前に聞かせて貰えたら、
どんなに貴方に憧れられたでしょうか?
カミ:何もかも無くしたが、私は私で良かったと思う。
ミシ:はい。
カミ:私は一振りの剣だ。
この境地こそ無敵、他の誰にも解るまい。
ミシ:続きをお願いします。
僕達は剣士なのですから。
カミ:応…殺し合うか。
これぞ言葉より判り易い、
誠の道義だな。
ミシ:クスッ……。
悲しいけど、やっぱり僕等は親子なんですよね。
( 間 )( 傭兵の野営地:蟲の鳴く気だるげな夜 )( ※回想シーン )
カク:さらしがきつい……。
それに暑い。
何だ、夜だと言うのにこの蒸し暑さは……。
傭兵:ややっ!?
カクレナ隊長、今日も一日、
お勤め御苦労様でやす!!
カク: ……ああ。
互いにな。
傭兵:そうだ、隊長も麓の街まで出向きやせんか?
カク:何?
傭兵:何でも抜群な娼館があるらしくて、
今、一番隊の奴等と相談してたんで、
シルヴィア隊長なんて高嶺の花が傍に居たんじゃ、
溜まりに溜まって仕方無いだろうってね。
カク: ……男所帯だ。
咎めはしないが、私は遠慮しておく。
傭兵:そりゃあまた、どうしてで?
最近危険な任務が多くて辛いし、
良い息抜きになるかと思ったんですが……。
カク:いや、良い。
それにこの醜面では女も怖がる。
傭兵:( 笑いながら )そんな事ありやせんって!!
俺達を庇って出来た名誉の傷じゃねえですかい。
カク:そんな……つもりは。
傭兵:少なくとも、あっし等よりよっぽど真面ですとも!!
あっ、そうだ、自分達と一緒じゃ気まずいっていうなら、
グレン隊長も誘おうかなって思ってたんですが――。
カク:( 途中で被せて )――放つぞ貴様。
くどいと言っているのだ。
傭兵:へ…へへへッ!!
振られちゃあしょうがないね!?
さ、どうぞ、お休み下さいやし!!
カク: ……ああ。
( 間 )( 馬鹿げた夢想を其れでも愛すると誓った日 )( ※回想シーン )
カク:ふうっ……今日も疲れたな。
こんな時はチョコでも摘まむに限る。
傭兵:( ノックの音 )――。
カク: ――うッ!?
傭兵:カクレナ隊長、おられますか?
カク:( 咳払い )――。
放って置いてくれ。
今日はもう、誰とも逢いたくないんだ。
傭兵:いや、その……じゃあドア越しで。
へへっ!!
カク: ……。
傭兵:( 咳払い )――!!
あ、あっしと隊長は同郷でやす、
獲物も同じ、信じてる神様も同じ!!
甘党なのはもっと同じだ!!
カク: ……だから何だと言う。
傭兵:実は…その、お袋から手紙が届きやして。
いきなりで申し訳ねえんですが。
カク: ……。
傭兵:どうやら『もう先が永くねえ』らしいんで。
悩みに悩んだんですが、団長にも相談しやして、
この遠征が終わったら、除隊させて頂く事になりやした!!
カク: ……そうか、御苦労だったな。
傭兵:だけど隊長!!
あっしは何にもねえ詰まらねえ男ですが、
もしもあんたがあっしと共に来てくれるなら!!
……今、この場で御覚悟を聞かせちゃくれやせんか!?
カク: ……は?
傭兵:大それてるのは解ってんだ!!
だけど他に何もいらねえ!!
あんたが一生男のままだって言うんならそれでも構わねえ!!
カク:私を…欲しいだと?
馬鹿な、シルヴィアに相手にされない腹いせだろう?
( ……私は何を言っている? )
傭兵:シルヴィア・シルフィードが何だってんだよ!?
あんたは他の誰よりも優しくて別嬪じゃねえか!!
あんたの部下で居れたのは俺の誇りだ!!
今度は俺があんたを幸せにしてやるッ!!
カク: ……私は。
傭兵:へい……!!
カク:私はロヴェル団長の理想と添い遂げる。
お前の告白は何よりも嬉しいが、
私が幸せを感じるのは、あの人の傍以外有り得ない。
傭兵:へい……へへっ、重々承知ですとも!!
だからこそ隊長は、他の誰よりも輝いて見えてやした。
おさらばで御座んす、三日月の騎士殿。
カク:ああ……。
今まで有難う、さよなら。
( 間 )( 独白 )
カク:報われないのは解っていた。
勝ち目の無いどころか、勝とうとすら思っていなかった。
只あの人に率いて貰える充足。
それさえあれば私は悦んで死ねたのに!!
……それなのにッ!!!
( 間 )( 壊れゆく人形 )
虚ろ:ギ…ギギッ……!!
ガッ……!?
アー:( 荒い息 )――!!
気が…済んだか?
虚ろ:ふっ…団長…やはり貴方は物が違う……。
私の憎しみを…何度も何度も…その刃で救い…上げて…。
アー:お前って…こんなに御喋りな奴だったんだな。
永い付き合いだが…初めて知ったよ。
虚ろ:この様になって…1つだけ良かったことが在る…。
アー: ……何だ?
虚ろ:涙を…見せずに済む……。
アー: ――ッ!?
カクレナァッ!!
虚ろ:どうか…シルヴィアを導いて……。
我々の分まで……幸福で居て……。
アー:何だって俺なんかに惚れた!?
どうして俺だったんだよ!!
虚ろ:泣かない…で……?
アー:俺は馬鹿だ……!!
目の前の気持ちに応える気さえ無かったんだ、
自分の事しか考えられなかった!!
虚ろ:それで良い……。
貴方はやっと…自由になれたのでしょう?
アー:ふざけるな!!
お前『 達 』が居ない人生に何の価値がある!?
何だってお前等は何時だってそんな御人好し共なんだよォ!!!
虚ろ:私は……貴方を応援するに決まっている。
だってこれは……私が信じた…貴方が選んだ道だもの。
どうか最後まで…貫いて……。
アー:消えるな、カクレナ!!
俺の傍に居てくれ!!
カク: ……ふっ。
おさらばです…団長。
アー:う…ああぁ!!
ああああああぁぁぁぁぁ!!!
( 泣き続ける )――!!
( 間 )( 晴れ渡る空、澄み渡る心 )
( ※戦闘シーンなのでテンポ良くお願いします )
カミ:ハアッ!!
ミシ:ヤアッ!!
カミ:ムゥ!?
……くっ!!
ミシ:まぁだ、まだぁッ!!
行きますよ、父上!!
カミ:くっ、楽しませる!!
さっさとかかって来るが良い!!
ミシ:クスッ……!!
ハアアアアアッ!!
カミ:ぐおっ!?
( 荒い息 )――!!
ふっ、血塗れの…親子喧嘩とはな……!!
ミシ:( 荒い息 )――!!
どうしました、父上、息が上がっていますよ!?
カミ:嬉しそうに……!!
親を切り刻むのがそれ程迄に楽しいか!?
ミシ:はい!!
カミ:なっ!?
ミシ:父上から稽古をつけてもらうのは久しぶりです!!
だからとっても嬉しいんです!!
カミ:こ、これは稽古では無い!!
殺し合いだ!!
ミシ:( 少し納まりながら )ハッ、ハッ……!!
……え?
カミ: ……馬鹿な。
ミシ:此れは稽古なのでしょう?
……そうでなければ、
僕が父上とまともに立ち会えるものですか。
何時だって僕は父上に敵わなかったんですから。
カミ:そうか…こうも易々と世代とは巡るのか……。
老いたものだ……。
衰えたものだな。
ミシ:参ったなぁ、本当に此れが本気なのだとしたら拍子抜けも良い所だ。
如何です?
打つ手無しなら御自慢の『飛剣陣』でも放たれてみては?
……って、殺気で見えるから意味が無いんでしたっけ、はは。
カミ:( 途中から被せて )――殺すなら早く殺せ!!
八つ裂きにされたとて文句は言わん!!
だが卑怯者には我慢がならん!!
ミシ: ……そんなに怖がらないで下さいよ。
父上。
カミ:怖がる!?この私が!?
怖がっているのは貴様だろう!?
出来損ないが意気地さえ無くして誰を護るとほざいた!!?
ミシ:ええ……!!
だからこそ僕は貴方に躊躇いを抱けないんだ!!
こんな風にッ!!
カミ:( 被せて )グオッ!?
ミシ:こんな風にッ!!
カミ:ウグッ!?
ミシ: ……こんな風にだッ!!!
カミ:あああっ……!?
ウ……ウウゥ……!!
ゴブッ………!!
ミシ:( 荒い息 )――!!
フッ…ウ…ウウゥゥ……!!
カミ:ク…クフフ……ガハッ……!!
満…足…か……?
息子よ……。
ようやく…だな。
ミシ:貴方がほんの少しでも謝ってくれたなら!!
僕達を認めてくれたなら!!
絶対に殺しはしなかったのに!!
そう決めてたのに…どうしてッ!?
カミ:私は私だ……。
己を曲げて…何とする。
ミシ:赦し合えたんですよ……?
お互いに…やろうと思えばやり直せたんです!!
カミ:誰が……亜人…血を…お前……。
ミシ:刃はそう言っていなかった!!
本当の貴方はもっと……もっと!!
カミ: ……ミシェルよ。
ミシ:( 泣き続ける )―――!!
カミ:こんな家の事は忘れろ……。
そして…他の誰に誇るでも無い……。
自分の誇れる道を行きなさい。
ミシ: ……いいえ。
僕は母様の事も…父上の事も……。
何があっても絶対に忘れません。
カミ:ふ……これを受け取るが良い。
ミシ: ……これ…は?
カミ:フィーバストルテの奥義書だ。
お前ならば…必ずや会得出来よう。
ミシ: ……はい。
我が家名に懸けて。
カミ:それから……私の剣も……。
もう…託しても良いだろうか?
ミシ:良いですとも…だから父上は何一つ心配なさらずに。
どうか安らかにお眠りください。
カミ:うむ…ではな息子よ……。
歪ながらに……ふっ。
( 間 )( 君が笑ってくれる世界が僕の総てだったから )
カミ:おお……リゼラ…まだ其処で待って居たのか。
誰に憚ると言う、共に見て廻ろうではないか。
いずれミシェルの旅をする、この広大無辺の大地を。
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