題名  公開日   人数(男:女:不問)  時間  こんな話  作者

 風のシルヴィア(32)
~夢見た老人の(ひとみ)

2015/08/28  6(3:2:1) 30分 貴方は…誰かを心の底から信じたことが在りますか?  ニコ

登場人物
(年齢)
性別 その他
シルヴィア
(26)
心優しい金髪碧眼の美女。
ゼオルードに龍の力を授けられた事により怪力を誇る。
アーウィン&ミシェルとは共に戦場を駆けまわった仲。
ミシェル
(17)
不問 剣の名門フィーバストルテ家の御曹司。
美少年ながら苦労人、怪物や幽霊になった時期もありました。
シルヴィアさんが大好きです。
ゼオルード
(226)
冷酷無比な悪の宰相。趣のある美青年。
前回まではお爺ちゃんでしたが若返ってパワーアップ!!
徹底して悪役ですがめげないで下さい。
アーウィン
(30)
シルヴィアの元上司にしてダンディーな黒髪紫眼の紳士。
魔族の村出身だが決して捻くれてはいない。あと強い。
出番控えめ&解説役です。
エレナ
(30)
桃色の髪をした麗しき女将軍。
色々な意味で癒しだが戦闘狂の一面もある。
シルヴィアとは色々あって姉妹の様な関係。
オーズィ
(31)
鉄の国アイゼフィール国王にして残念なイケメン。
変な事ばかり言うお子様だけど根は良い人です。陛下ッ!!
出番少なくてごめんね!!



「風のシルヴィア(32)~夢見た老人の(ひとみ)~」





諸悪の根源ゼオルードは周囲の生命を吸い取り無敵の存在となる。

其れでも尚挑み続けるアーウィンとミシェルだったが力の差は歴然だった。

一方、シルヴィアは眠る少年を護る為に木漏れ日の中で途方に暮れていた。


※戦闘回です!!すっごい叫ぶよ!!





( 四騎士の塔頂上:対峙する二極 )

 

ゼオ:この感じは随分と久しいな。

   ……五体の節々(ふしぶし)が動くとはこういう事か。

 

アー:(奴は不死身にして無敵だ…永く持つとは思えんが……。

あいつの為だ、()じる訳にもいかん。)

 

ミシ:(ゼオルード様の本質は魔術師……。

ならば一切の詠唱を(ゆる)さず、白兵戦(はくへいせん)に持ち込み続ければ……あるいは。)

 

ゼオ:フッ…貴様等(きさまら)如きの浅知恵なぞ、

最早(もはや)滑稽(こっけい)を通り越して(あわ)れですらあるな。

 

アー&ミシ: ――ッ!?

 

ゼオ:たわけめ、生者(せいじゃ)であれば行動しながら物を考えろと言うのだ。

 

アー:あーあ。見た目の(とし)はシルと同じくらいなんだが……。

   確かに七賢人(しちけんじん)に等しい魔力、まさに世界を滅ぼす殺気か!!

 

ミシ:来る!?

 

アー:いや、既に奴の術中(じゅっちゅう)だ!!

   足元を見ろ!!

 

ミシ:こ、()れは魔方陣!?

   何時(いつ)()にッ!?

 

ゼオ:フハハッ!!

()ずは足を奪う、基本だな!!

 

アー:(くそ)ッ!?

   魔力が吸い取られる、おいミシェル!!

 

ミシ:はいっ!?

 

アー:挑むなら早くしろ!!

   援護はしてやる!!

 

ゼオ:成程、魔族の血を引く貴様(きさま)には覿面(てきめん)か?

   黒騎士(くろきし)ロヴェルよ。

 

ミシ:くっ、信じますよ、団長!?

 

アー:貰わねば困る!!

   一蓮托生(いちれんたくしょう)だ、()いから行け!!

 

ミシ:ハアッ!!

 

ゼオ:むっ!?

   ……フフッ。

 

ミシ:恐れる反面、憧れも抱いていました……!!

   偉大なる大鎌(たいけん)、デスペナルティを駆る貴方(あなた)の武勇!!

   今こそ僕に魅せて欲しい!!

 

ゼオ:(おう)、いつぞやの子倅(こせがれ)が随分と()を放つようになった!!

   ()のゼオルードが、貴様(きさま)を王剣(おうけん)の跡取りに相応(ふさわ)しいと認めてやろう!!

 

ミシ:ぐっ……!?

地の底から湧き出るような殺意の一撃。

   大振りの癖に(なん)て自在で無駄が無い動きなんだ!!

 

ゼオ:もう終わりか?

 

ミシ: ――ッ!?

 

ゼオ:ならば()の素っ首、命ごと刈り取ってやろう。

 

ミシ:『飛剣刃(ひけんじん)!!』

 

ゼオ:うぐっ!?

 

ミシ:( 荒い息 )――!!

 

ゼオ: ……ふっ、(あい)も変わらず()い技だな。

 

ミシ:ええ、()の程度では死なないのでしょう!?

   解っていますってば!!

 

アー:呪われた()()の杯(さかずき)よ、

悪逆(あくぎゃく)斬鬼(ざんき)に満ちた()汚泥(おでい)の中に、

   (ただ)の一滴でも良い、人としての価値が在るのなら。

 

ゼオ: ……おおっ!?

 

アー:()が友の為に費やそう。

   何処(どこ)にも無い幸福を目指した愚者(ぐしゃ)の一撃。

 

ゼオ:()いぞぉ?受けてやる。

   ハレとケを踏まえた多重詠唱なぞ久方振(ひさかたぶ)りだ!!

 

アー:されど()が生は、誇りと希望に満ちていた!!

 

ミシ:魔方陣を(えぐ)り裂いていく……!!

   途轍(とてつ)もない魔力だ!!

 

アー:自己犠牲、自己犠牲、自己犠牲……ハッ!!

   どいつもこいつも下らねえ!!

 

ミシ:()れが黒騎士(くろきし)ロヴェル……僕達の団長の(まこと)(ちから)なのか!?

 

アー:俺は俺の為に力を振るう!!

   それが仲間の為であって、何がいけねえってんだ!!

   ええっ!?(とき)の翁(おきな)様よォ!!

 

ゼオ:()れが貴様(きさま)辿(たど)りついた境地か!!

   ()かろう熱き男よ、()の俺が貴様(きさま)の『 (あく) 』を(にな)ってやろう!!

 

アー:テメェは『 (あく) 』そのものだろうがぁぁ!!

 

ゼオ:フハハハハッ!!!

 

 

( 間 )( アイゼフィール市街:和花なる街路樹の下で )

 

 

シル:何処(どこ)にも無い栄光を求めて、

私は何処迄(どこまで)も歩いて行かなければいけないのだろう。

   ()の先に何があっても、どうしたって受け入れて、辛い、楽しいと(うそぶ)いて。

   ……(ただ)、きっと苦難の果てには在る(はず)だ。

   そうでなければ……()の世界で、こんなにも人が生きていける訳が無い。

 

エレ:シルヴィア・シルフィード?

 

シル: ……エレナ・サースティ。

 

エレ:木漏れ日に(やす)らう貴女(あなた)はとても素敵だけれど、

今は他に()すべきことがあるのでしょう?

 

シル: ……。

 

オー:ゴフッ、ゴフッ!?

   ……おっす!!

   おらオーズィ・アイゼフィール!!

 

シル: ……陛下。

 

オー:黒龍(こくりゅう)の討伐御苦労!!

我等も我等で、中々に楽しい乱稚気(らんちき)であったぞ!?

 

シル: ……ふっ。

   その(よう)ですね。

 

エレ:その子は確か……。

 

シル:はい。疲れて眠っては()ますが、()の子は私の護らねばならぬ者。

   プーデットを失っては、私は誰にも顔向けが出来ません。

 

エレ:そうなの……。

(いま)だに事態の全貌(ぜんぼう)は把握出来ませんが、()れは(いくさ)の常(つね)ですもの。

   首魁(しゅかい)に近づけただけで()しとしますか。

 

シル:貴女(あなた)は…相変(あいか)わらず(いくさ)(むし)ですか?

 

エレ:うふふふっ…!!

祖国の為に()が身を懸ける。

   ()れを(なじ)られる()われは()りませんが、()えて否定もしないわよ?

 

シル:御察(おさっ)しの通り、ゼオルードは四騎士(よんきし)の塔の最上(さいじょう)です。

   ですが、魔窟(まくつ)の中で()の子を放って置く訳にもいかず……。

 

エレ:その言葉を辿(たど)れば、誰かがプーデットちゃんを護れれば自分も()ける。

   そういう事ですね?

 

シル:はい。

 

オー:うぉっほん!!

……シルヴィアよぅ、何かもっとこう、易々(やすやす)と頼め。

   なんせ此処(ここ)()るのは『ディオールの四騎士(よんきし)』なのだぞぉ~?

 

シル:だって……陛下は既に満身創痍(まんしんそうい)じゃないです――。

 

オー:( 途中から被せて )ゴフッ、ゴフッ、オグァッ!?

   え、エレナ、傷開いてないかッ、これッ!?

 

エレ:当然です。

   瀕死の状態から無理矢理蘇生させたのですから。

   突然魂が抜け出ても不思議ではありません。

 

オー:ぬ……ぬぅ……!?

   三十路(みそじ)の癖に(なん)大人気(おとなげ)()――!!

 

エレ:( 途中から被せて )ぶち殺すわよ?

 

オー: ……おめがぷっぷどぅー♪

 

シル:あははっ…陛下、お気持ちだけで充分です。

   どうか無理はなさらずに。

 

オー:ふん…()の国の主が信望に値せぬと言うのであれば、

試してみるか、シルヴィアよ?

 

シル:え?

 

オー:暗君(あんくん)の一撃が(おご)龍姫(りゅうき)に届くや(いな)や。

   さぁどうかな?

今の()阿呆(あほう)な程に自信家(じしんか)だぞ?

 

シル:慢心って……尚更(なおさら)駄目じゃないですか。

 

オー:誇りも自信も保てぬ(せい)(なん)の価値があると言う?

   夢やつばらに託し一体誰の栄光だ?

 

シル: ……ですが。

 

オー:良いから()に託せと言う。

   子供一人護れずに誰が王なぞ名乗るものか。

 

シル:(なん)だか……陛下は随分と変わりましたね。

   今の陛下は、夢を魅せてくれる少年の瞳をしています。

 

エレ:()の人は『やる時はやる人』です。

   それが出来ぬ時は、自ら死ぬ程度の度量もあります。

 

オー:それでも(なお)問題があるとすれば、

それは貴様(きさま)心根(こころね)の話だな。

 

シル: ……。

 

オー:ん~~?

 

エレ:自らの信念が、

ボロボロと崩れていくのが怖いですか?

 

シル: ……はい。

   いとも容易(たやす)く揺れ動いている自分が(ゆる)せません。

 

エレ:幾ら取り繕おうとも、人は(つちか)った総算(そうさん)からは逃げられません。

   ……ですがそれは、

裏を返せばどんな生き方も(ゆる)されると言う事にはならなくて?

 

シル:それは詭弁(きべん)だ!!

   覚悟を無くした者の(みじ)めさなら、貴女(あなた)も解っているでしょう!?

 

エレ: ……貴女(あなた)(とし)を取れば解るわ。

   時を振り返って残っていた物は、私が私で()ったという『 (みち) 』だけ。

夢の残骸(ざんがい)も希望の(のこ)()も関係ない。

   ()るのは(ただ)、自分が今何を為すべきかを教えてくれる道だけだった。

 

シル:私が今……選ぶべき…道?

 

エレ:夢を駆けてきたのでしょう?

   『騎士としての誇りを(まっと)うする。』なら、

それが答えで構わないじゃない。

 

オー:あー…なんだ、シルヴィアよ。

 

シル: ……?

 

オー:お前は(なに)(そこ)なわれてはいない。

   ならば無敵だ。

   堂々と己の生を誇って行け。

 

シル:本当に……貴方(あなた)に託しても良いのですね?

 

オー:きかーぬ!!

   くどすぎるのも考え物だぞ!?

   少しは悩まずに生きろと言うのだ、たわーけ!!

 

シル:( 大きく息を吸って )――!!

では思いっきり甘えます、陛下!!

 

オー:ああ、それで良い。

   大人が大人を頼って何が悪いものか。

 

エレ:目的地まで送りましょう。

   空間転移なら多少は使えます。

 

シル:『(とき)(おきな)』の直伝(じきでん)ですか?

 

エレ:いいえ、私は私。

影響は受けるにせよ編み出すのは私自身です。

   だから。

 

シル: ……?

 

エレ:うふふっ…あの人に(とら)われ過ぎては駄目よ?

シルヴィア。

 

シル:は、はい。

 

エレ:では陛下。

 

オー:うん。

   行ってらっしゃい、二人とも。

   元気に帰ってこいよー?

 

 

( 間 )( 絶対者に足掻く者 )

 

 

アー:うっ…ぐはっ……うぐっ!?

   ……ウガァ!!

 

ゼオ:俊敏と魔力が更に上がるか。

   魔族の本性(ほんしょう)が出て来たな……。

 

ミシ:( 荒い息 )――!!

   ま……まだだ…。

   まだ……!!

 

ゼオ:( 嬉しそうに )此方(こちら)此方(こちら)で。

 

ミシ:グルオオオォォ!!!

 

ゼオ:ハッ、『かまいたちの(けもの)』か!!

   半身半獣(はんしんはんじゅう)出来損(できそこ)ない!!

   ()れがお前の奥の手か、ミシェル!?

 

ミシ:良いんだ…もう元に戻れなくても。

 

ゼオ:俺を殺す気なら早い方が良いぞ!?

   何せ楽しめ無くなっては油断すら億劫(おっくう)になるのでな!!

 

ミシ:シルヴィアさん…僕に勇気を分けて下さい!!

   飛剣陣(ひけんじん)……飍牙(ひゅうが)!!

 

ゼオ:むっ!?

   ……()れは。

 

アー:奴に傷が……ミシェルの攻撃が届いたのか!?

 

ミシ:()竜剣(りゅうけん)…僕に龍の因子は無いけれど、

   ()がフィーバストルテに流れる剣の血ならばッ!!

 

ゼオ:『サラ』のドラゴンスレイヤーと『カミュ』の剣の二刀流(にとうりゅう)か!!

   ()いぞ、素晴らしい!!

   型染(かたぞ)みた王剣が、化けようと思えば化けれるではないか!!

   フハハハハッ!!!

 

アー:そうか…幾らゼオルードが死を巻き戻すとは言え、それはあくまで一つの命。

   本当に奴を殺す(すべ)()るとすれば……。

奴が巻き戻した時間を超える『 (とき) 』の致命傷を与えるか――。

 

ミシ:行きます!!

 

ゼオ:来い小童(こわっぱ)ッ!!

 

アー:一撃で幾重(いくえ)にも命を奪う、『 (ことわり) 』を外れた攻撃しかない!!

 

ミシ:( 荒い息 )――!!

   ぐっ…うぅ……!!

 

ゼオ:どうした、命が(こぼ)れておるぞ!?

   如何(いか)貴様(きさま)でも伝説の竜剣は持て(あま)すか!?

 

ミシ:それでも……()の命で(みんな)が助かるならッ!!

   僕は何にも()しくは無いんだ!!!

 

アー:あの天賦(てんぷ)の才は命を賭けて其処(そこ)に至ったか!!

   剣の極地(きょくち)、剣士ならば誰もが憧れる、死の先にある『 (せい) 』を与える存在!!

 

ミシ:ガフッ……!?

   後少しなんだ…あと……少しだけ……!!

   ()の身よ、持ってくれ!!

 

アー:(おお)いなる『剣聖(けんせい)』に!!

 

ミシ:うおおおおっ!!

 

ゼオ: ――ッ!?

 

 

( 間 )( 誰かに抱き締めて欲しかった、僕の事を好きだと言ってくれる誰かに )

 

 

ゼオ: ……。

 

ミシ:( 荒い息 )――。

( 血を吐く )――!?

 

ゼオ:(なん)だ、その(ざま)は?

 

ミシ: ……ゴボッ。

 

アー:ミシェル!?

   ……ゼオルード、貴様(きさま)!!

 

ゼオ:安心しろ、こやつ最後の最後で己が身を守りおった。

 

アー:何……!?

 

ゼオ:(まった)興醒(きょうざ)めよ。

どうせ死ぬなら最後まで振り絞れば良い物を。

 

ミシ:笑え……ば…良い。

 

ゼオ: ……うん?

 

ミシ:『 僕 』…は…()だ。

   死にたく…無い…。

 

ゼオ:ほう?

   英雄ともあろうものが、自己犠牲の否定か?

 

ミシ:そうさ……だって……。

   死んだら…もう…シルさんに逢えないから……。

 

アー:シルヴィアだと?

 

ミシ:あの人は…僕に生きる悦びを教えてくれた…。

   例え世界中の人が僕を非難しても……シルさんだけは僕を(ゆる)してくれる。

   そんな人は…僕には母様(かあさま)しか()なかった…だから。

 

ゼオ:()のゼオルードを殺す機会をみすみす逃しただと!?

   笑わせるな孺子(じゅし)!!

   ()の世に善人(ぜんにん)など一人として()らぬ!!

人に(すが)()の心が既に(あく)だと何故(なぜ)気づかぬのか!?

 

ミシ:貴方(あなた)は…誰かを心の底から信じたことが()りますか?

 

ゼオ:(なに)

 

ミシ:まるで仔犬の様に尻尾を振って甘えても…。

   泉の(よう)に優しく抱き締めてくれて…そよ風の(よう)に優しい匂いのする……。

 

ゼオ: ……。

 

ミシ:そんな人に出逢えた奇蹟(きせき)がどれだけ嬉しかったか……。

   貴方(あなた)に解りますか?

 

ゼオ:解りたくも無い。

   俺の歩んできた道は孤独と孤高で満ちていた。

   貴様(きさま)の言葉が胸に響く(はず)も無い。

 

ミシ:クスッ……。

   僕は、生きてみたくなったんです。

   ()土壇場(どたんば)で…命が惜しくなったんです。

 

アー:お前……!!

 

ミシ:あーあ…でも……。

   こんなに無様(ぶざま)()るのなら…僕は……。

生き返らなければ良かったのかなぁ……?

 

アー:そんなことは無い、そんなことは無いさ!!

 

ミシ:団…長……?

 

アー:俺だってお前の味方だ!!

   誰も死ねだなんて言わねえよ、何処(どこ)までも生き延びれば良いじゃねえか!?

 

ミシ:()い…の?

 

アー:当たり前だ!!

お前はお前なんだぞ!?ミシェル!!

 

ミシ:クスッ…嬉しいなぁ……。

   ……希望と光に満ちている、こんなにも広い空だ。

   彼女と一緒に…()(ゆる)された世界を見ていたい……。

 

ゼオ:フッ…茶番(ちゃばん)其処迄(そこまで)か?

 

アー:ゼオルード!?

 

ゼオ:英雄には英雄に相応(ふさわ)しい末路(まつろ)があろう?

   ではやはり、お前は此処(ここ)で死ね……!!

 

アー:ぐっ、させるかあぁッ!!

 

ミシ:また……貴女(あなた)に逢いたかったなぁ……。

   シルヴィア・シルフィード。

 

シル:ああ、私もだよ。

   ミシェル・フォン・フィーバストルテ。

 

 

( 間 )( 竜騎士見参 )

 

 

シル:ふっ。

 

ゼオ:な、何ッ!?

 

シル:ハアアァァッ!!

 

ゼオ:うごぉあッ!?

 

シル: ……エレナ様、ミシェルの負傷(ふしょう)を。

 

エレ:心得ました。

   貴女(あなた)は敵の動きを止めなさい。

 

シル:いいえ。

   最早(もはや)『アレ』は殺します。

   あの(おぞ)ましい姿には反吐(へど)が出る。

 

ゼオ:ば、馬鹿な……!?

   素手(すで)で俺の命を削っただと!?

 

アー:シルヴィア!!

 

シル: ……団長。

   ()の悪党が何故(なぜ)若返り、

我々の前に立ちはだかっているのかは存じません。

   ですが――。

 

アー: ……?

 

シル:もう大丈夫です。

   絶対に!!

もう誰も殺させやしませんから!!

 

アー:ああ……。

   お前となら安心だよ。

 

シル:ふふっ。

   私だってそうですとも。

 

アー:()い流れじゃねえか。

聖騎士エレナ様も応援に来てくれたし、なぁ?

 

エレ:己の信じる道を行きなさい。

   これで貴方(あなた)も自由、(なに)も縛る物は無いのでしょう?

 

アー:お見通しか…だがな、そいつが縛りだってのはちょいと違う。

   俺はちょいとばかり人間を()てるのが好きなだけさ。

 

エレ: ……そう。

 

ミシ:( 寝息 )――。

 

アー:受け取るぜ?ミシェル。

   俺が渡して悪いな。

 

ミシ:うぅん……。

   うぅ……。

 

アー:ふっ……。

ほらよ、シルヴィア。

   今度は無くするな?

 

シル: ……()の剣には、思いの(ほか)たくさんの想いが込められている(よう)ですね。

 

アー:まるでお前みたいだな。

   じゃじゃ(うま)だが寂しがり屋で、(なん)だかんだで手元に戻ってきやがる。

 

シル:ええっと……私って()の前、振られましたよね?

 

アー&シル: ……。

 

ゼオ:フ…フフッ……!!

 

アー&シル: ――!?

 

ゼオ:やはり()の世は面白いな。

   ()れで無敵だと思った途端に、

老いた姿の方がマシだったと思えてくる。

 

シル:貴方(あなた)(ただ)全盛期(ぜんせいき)の過去に戻ったに過ぎない。

   だが私達は『 (いま) 』を生きて強くなって来た。

   そんな事で、どうして己が他人に勝ると(おご)ることが出来るのだ?

 

ゼオ:ふっ、たかが村娘(むらむすめ)が…歌うではないか……。

 

シル:もう終わりにしたい。

   これ以上心の血を流し続ける貴方(あなた)を、見続けたくない。

 

ゼオ: ……お前と、もし違った形で出逢っていたなら。

   せめて200年前で良い…もしお前と俺が出逢っていたなら。

   俺は……。

 

シル:駄目だ。

   もう私達は此処(ここ)まで来てしまった。

   ……だったら殺し合うしかないじゃないか。

 

ゼオ: ……そうか。

   ああ、そうだな。

   フッ、所詮お前達とは育ちが違うらしい。

 

アー:どういうつもりだ?

   ()()に及んで悔恨(かいこん)だと?

 

ゼオ: ……後一人、俺は死人を生き返らせることが出来る。

 

シル: ……え?

 

ゼオ:あの姿では耐えきれなかったが、()の若返った肉体ならば……。

   史上如何(いか)なる英雄でも生き返らせることが出来るだろう。

 

アー:こいつ…(なに)をしでかすつもりだ!?

 

ゼオ:もう遅い。

   (なに)もかもがもう遅いのだ!!

 

エレ:そう……。

   貴方(あなた)はそれだけの為に、そんな事の為に今まで生きて来たのですね。

 

ゼオ: ……今まで()まなかったな。

   エレナ。

 

エレ: ……。

 

ゼオ:ムンッ!!

 

シル:なっ、足場(あしば)に魔方陣が……!!

一瞬で!?

 

ゼオ:ウオオオォォォ!!!

 

アー:またしても詠唱破棄か、しかも今度は足止めじゃねえ!!

   ()れは――!!

 

ゼオ:( 途中から被せて )生き延びて魅せろ人間どもォ!!

   俺の()(ざま)が見たければなァ!?

 

シル:(なん)だ…あれは……!!

 

エレ:隕石(いんせき)……。

   ()四騎士(よんきし)の塔を…私達(ごと)

 

ゼオ:フハハハハッ……!!!

 

アー:(くそ)ッ、空間転移で消えやがった!?

俺達も引くぞ、シル!!

 

シル:は、はいッ!!

   エレナ様!?

 

エレ:大丈夫、()の子は護ります。

   だけど……貴方(あなた)はそんなにも孤独だったのですね。

   どうして解ってあげられなかったのだろう……?

   どうして……貴方(あなた)がこんなになるまで……ゼオルード様。




 
 
 
     
 
           
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