題名 |
公開日 |
人数(男:女:不問) |
時間 |
こんな話 |
作者 |
風のシルヴィア(33)
~Dragon Knight~
|
2015/10/09 |
5(3:1:1) |
30分 |
……只其れだけを生き甲斐に此処まで来た。……此処まで来てしまった。 |
ニコ |
登場人物
(年齢) |
性別 |
その他 |
シルヴィア
(262) |
♀ |
古の大英雄。竜騎士。『ディオールの四騎士』。
彼女は誰よりも傲岸で怪力無双の騎士であったが、
半竜の其の魔性は数多の英雄すらも惹きつけたと言う。
※何時ものシルヴィアさんとは違う人です。 |
ゼオルード(226)
&
老人 |
♂ |
アイゼフィール宰相。魔法鎌士。『古き国の四騎士』。
数千人分の命を吸い取り若返った青年。
シルヴィアを生き返らせる為に策略を巡らせた。
※老人と兼ね役でお願いします。 |
オーズィ
(31) |
♂ |
鉄の国アイゼフィール国王。残念なイケメン。
道化を甘んじて受け入れる度量と確かな技量を併せ持つ賢君。
昔々、ピエトロの為に呪いを受けて全力を出せない身体になった。 |
ピエトロ
(45) |
♂ |
鉄の国の近衛長。英雄並みの腕を持つ騎士。
嘗ては一介の浮浪者に過ぎなかったが、オーズィの影響で成長する。
其の忠勇と実力、過保護っぷりは鉄の国全土に知れ渡っている。 |
プーデット
(21) |
不問 |
子豚系アイドル。シルヴィアの親友。
人並み以上の感受性を持ち、誰かに何かを訴える実力も在るが、
其れはきっと、只ひたすらに真心から出た言葉だからなのだろう。 |
「風のシルヴィア(33)~ DragonKnight~」
四騎士の塔の頂上にてシルヴィア一行にボコられたゼオルードは起死回生の一手を放つ。
一方塔の真下は不死族・造魔の類が跋扈する王都アイゼフィール。
国王オーズィはシルヴィアの友を庇護しながら彼女からの朗報を待って居た。
( 王都アイゼフィール:永い白昼も蔭り行く中で )
オー:さて、シルヴィアが託した此の小僧。
一体どう守ったものか……。
プー:( 寝息 )スピー……スピー……。
んん……もう食べられないプー……。
プヒヒッ!!
オー:存外真の安らぎとは、
重荷を背負った時に気付くものやも知れぬな。
ピエ:陛下……?
オー:んんッ!?
ピエ:陛下……陛下ァ……!!
オー: ……お前、ピエトロか?
ピエ:良くぞぉ、良くぞ御無事で……!!
オー:無事ではぬぁああい!!
ピエ: ――ッ!?
オー:見ろ、実は色々あったのだ!!
先程までバッキバキだったのだぞ、骨バッキバキ!?
ピエ:ならば尚更帰還して良かった!!
オー:ぬぁにぃ~?
ピエ:だってそうでしょう!?
陛下の御傍を離れて、
私はどうして『近衛長』を名乗って居られるのですか!?
オー:故に一人だけ命に背き、前線から戻ってきたのか?
ハッ、全く大した律義者だぞ、それは!!
ピエ:好きに仰るが良い!!
15年前に貴方から頂いた此の命、
黒冥石の名の元に、必ずや武功を遺して御覧に入れます!!
オー:随分と昔の話ではないか。
土壇場ついでに忘れて仕舞え。
ピエ:私は嘗て……家族を救う為に不治の病を背負い。
そして貴方様に……自らの死を無かった事にして頂いた。
オー:そうだったかな?
ピエ:故に私は永久(とわ)の臣下なのです。
ですが、取り柄の無い私に出来る事と言えば、
陛下の御身を護る事しか無いではないですか。
オー: ……。
ピエ:決して友誼の為ではない、
この忠誠こそが……私の!!
オー:おこがましいわッ!!
ピエ: ……ッ!?
オー:驕るなよ、ピエトロ・クラウーダ!?
余はアイゼフィール王国国王、オーズィ・アイゼフィールなるぞ!?
貴様如き賎しい身分のオチョンピトゥに―――あ痛たッ……!!
ピエ:陛下ッ!?
オー:全く、今のお前なら一人で『闇の穴』に挑むことも可能だろうに。
俺自身がお前の呪いになってしまうだなんて、思いもしなかったよ。
ピエ:はぁ……ならば私は何と幸福な呪縛者なのでしょうか。
オー:あんだってぇ?
今何と仰いましたか?
ピエ:どうせ人間など100年は生きられぬのです。
それが早々に生き甲斐を見出せた、ならば。
惚れた男の呪詛に塗れて死ぬのも悪くない。
オー:抜かせ、ドМが。
ピエ:今後とも。
御歴々についていける様、精進して参ります。
オー:( 溜息 )――良かろう。
ならば貫いて魅せるが良い。
誇り高き冒険者め。
ピエ:ハッ!!
我が身命に誓って!!
( 間 )( 独白:過ぎ行く時を騙り、過ぎた夢に語りかける者 )
ゼオ:聞こえるか、友よ……?
応とも、連戦続きの連敗続きで、些か蕭々としては居るが、じきに良くなるさ……。
見よ、総てを破壊するあの烙印を。
フッ…フハハハッ…!!!
( 間 )( 王都アイゼフィール:目覚めし者はいにしえの )
プー:プー……。
声が……するプー。
オー:おっ。
ピエ:そういえば……そこな童は何者なのですか?
オー:ああ、シルヴィアの輩だとよ。
余程大事な小僧らしい。
ピエ:はあ……???
プー:世界を滅ぼす力……闇の龍姫。
オー:竜…騎?
プー:其は火怨。其は力。
驕り高ぶる怪物の長は天地を呑み込み……。
やがて己が身すらも喰らい尽くすだろう。
ピエ:なんだ、突然……。
これは託宣…なのか……?
オー:此の言霊……まさか。
プー:彼の者は悪辣の君。
彼の者は古の獣。
彼の者は……英雄殺しの英雄。
ピエ:肌が粟立つ……!!
こやつめ、一体何を担がされている!?
オー:止めろ。
恐らく宣告者を斬って納まる段ではあるまい。
……それに。
ピエ:如何なさいました!?
オー:空が……落ちてくるな。
ピエ:空と……なっ!?
隕石だとッ!?
此処を目指しているのか!?
オー:あんな馬鹿げた禁術を発動出来るのはゼオルードくらいのものだが。
そうか……シルヴィアはしくじったか。
ピエ:おのれ、アイゼフィール王国の宰相を名乗っておきながら!!
由緒ある『四騎士の塔』ごと我々を一掃するつもりか!?
オー:守護方陣は敷けるか?
ピエトロ。
ピエ:無論です!!
ですがあれ程の質量……耐えきれるかどうか。
オー:何とか生き延びよう。
事の顛末を見届けるまでは死んでも死にきれん。
ピエ:陛下の御身は何が何でも御護りします!!
我が命に替えてもッ!!
オー: ……命、命と五月蠅い奴だなぁ。
お前が此処で死んだら、今後一体誰が俺を守るのだ?
ピエ:へ、陛下……!!
オー:2人で行こう。
プー:もう遅い……。
やがてその魔性は、世界の隅々に傷痕を遺すだろう。
13の禁を犯し、嘗て皇子すら虜にしたその瞳で、
此の箱庭の世界を破壊し続けるのだろう。
ピエ:こやつ――!!?
オー:( 被せて )良いから備えんか、たわけッ!!
ピエ:ぐっ!?
プー:彼の者の名は……。
ピエ:ヌゥオオォォッ!!?
( 間 )( ※回想シーン )( 13年前:龍封樹 )
シル:永い摩耗の中で……。
一体私は何の為に生き続けたのだろう?
老人:是非とも伺いたいものだ。
お主の生き様は知ってはいても、死に様迄知る者はそうは居るまい?
シル:いや…だからこそ、其の答えは出さずに終えたのだ。
せめて『 人 』として、出した瞬間に名乗れなくなる言葉を呑み込んで。
老人:故に誰も寄りつかぬ大樹の洞で死に絶えたと?
カッ、竜騎士ともあろう者が詰まらぬ末路よな。
シル:人の生として、此れは余りにも永過ぎたのだ……。
飽き足りた血の匂い、欺瞞に満ちた下らぬ世界……。
私の紅い眼には、最早汚い者しか、汚物しか見えなくなった……だから。
老人:フハハッ……どれだけ生きようが根は人か。
所詮、世の理からは誰も逃れられぬらしい。
シル:何とも無様だが、だからこそ映える者も在る。
老人:ほう?
シル:私は何一つ損なわずに死んでいった。
我が名はシルヴィア・アルトルージュ。
史上無敵にして、世界最強の騎士だ。
老人:誰もそれを否定はせぬさ。
だからこうして赴いたのであろうが?
儂は……どうしてもお主に逢いたくてのう。
シル:忘れ去られてしまえば……それはそれで嬉しかったが。
誰かに必要とされれば応じねばならぬ。
魂となって迄求められるのは……億劫だなぁ。
老人:ふふ…良いぞ?
中々に素直になって来たではないか。
そう、所詮我等は同じ者よ。
シル:同じか…そうだな、永き者よ。
ならば好で答えてやろう。
此の先達者に何を問う?
( 間 )( 崩壊した王都:埃舞う灰色の世界 )
オー:むんっ!!
……ゲホッ、ゲホッ…生きておるかー?
ピエトロー?
ピエ:ええ……ですが……。
ふっ、ふふふっ……!!!
オー:ああん……?
ああ、笑うしかないな。
目の前のあの2人。
ピエ:時を経て尚解る事もある。
あの煌々たる龍気。
星色の髪に血の様な真紅の瞳。
オー:迸る瘴気と伝来の大鎌、
瑞々しい黒髪に涼やかな風情。
ああ、あの爺様め、肖像通りの美男じゃないか。
ピエ:古い獣……悪い冗談だ。
あれが若返った時の翁の切り札か。
オー:鉄の国の騎士として、誰もが憧れた伝説の英雄。
ゼオ:眼は醒めたか、龍輝石の主よ。
シル:此処は……何処だ?
ゼオ:王都アイゼフィール。
300年前、お前が尽くした国だ。
シル:此れが……?
酷い有様だ……瓦礫だらけで、何も残って居らぬじゃないか。
ゼオ:お前を生き返らせる為に随分と犠牲にした。
本当に……永く尊い犠牲の果てだった。
シル: ……うん?
……お前は同じか?
冥府で私に話しかけてきたあの『若僧』と。
ゼオ:若造……?
フッ、我が名はゼオルード・ヴァロ・ゴラムザード。
1000年の血を受け継ぐ『古き国の四騎士』が長だ。
シル:同じだと言え。
下らん言い廻しは好きじゃない。
ゼオ:そうか、ならば直截に聞こう。
シル:( 背伸び )――。
伺おう、『時の翁』殿?
ゼオ:シルヴィア、此の俺の生き様をどう思う?
シル: ……んん?
どう、とは?
ゼオ:此の姿で、此の光景にお前を呼び出し、
一体お前は俺をどう思うのか。
……只其れだけを生き甲斐に此処まで来た。
……此処まで来てしまった。
シル:お前、余程の馬鹿か?
ゼオ:何を今更、俺なぞとっくの昔に壊れ者よ。
その昔、龍封樹で散々に語り聞かせたではないか。
シル:歪み過ぎだろう?
『四騎士』ともあろうものが、問い一つで国を滅ぼすとは。
ゼオ:その『四騎士』も粗方が消え去った。
俺が壊した、何もかも、そして残る総ても間も無く終わるだろう。
……俺の手には、もはや何一つ残って居らんのだ。
シル:成程病んでいる。
……此れは報いてやらねば哀れだなぁ?
ゼオ:どうか望みを叶えて欲しい。
俺は……お前の瞳にどう映る?
シル:フッ、私に懸想した迄は良い。
私は最上の女だからな、其れは赦そう。
……だがな?
ゼオ:何だ?
シル:只それだけだと言うのが気に入った!!
俗物ならば私の力を利用し、世界を征服するだのとのたまうだろう?
そんな詰まらぬ男なら即座に殺してやったものを、お前は!!
恋い焦がれ、
あまつさえ死んだ女一人を生き返らせる為に此処まで犠牲にしたってぇ?
アハハッ、アーハッハッハッ!!!
ゼオ:( 笑い声の途中から被せて )……そうか…可笑しいか。
有り難い…其の言葉だけで此のゼオルード。
只、其れだけで……!!
シル:ククッ……でぇ?
此れからどうする?
私を口説いて良い様にするつもりかい?
ゼオ:お前程の女だ。
端から御しきれるとは思っていない。
シル:賢明だな。
ゼオ:だが竜騎士よ。
赦されるならお前の夢についていきたい。
改めて、深い闇の底でお前が抱いた大望を聞かせて貰おう。
シル: ……そうだな。
生前の私は誰かに己を見て貰う為に戦って来た。
……ならば。
ゼオ:真逆を貫くと?
嘗ての伝説、『英雄殺し』の名のままに。
シル:ああ。
今度は私がお前達を見てやろう。
私を相手取り、お前達がどれ程醜く足掻くのか。
私はそれらを吟味する為に、此の世界を好き勝手に殺し廻るとするよ。
プー:プーーーー!!
シル&ゼオ:んっ?
プー:プゥオォォォ!!!
オー:おぎゃああぁぁ!?
待たんかい、小僧ッ!!
ピエ:陛下、御自愛下さい!!
スリップダメージが半端無いです!!
オー:えっ!?
熱ッ、え、熱いええぇぇ!!?
止まって子豚ちゃぁぁん!!!
プー:させないプーーー!!
オー:ジュウワアァァァ!?
身体が擦り千切れるうぅぅぅ!!!
ピエ:陛下アァァァ!!?
シル: ……何だ、この馬鹿どもは。
ゼオ:ああ、嗤いながら殺し合うに足る者達だ。
……つまりは俺達の敵だな。
プー:僕の名前はプーデット・サンシャイン!!
夢に向かって邁進中だプー!!
ピエ:我が名はピエトロ・クラウーダ!!
鉄の国アイゼフィールの誇り高き近衛長なり!!
オー: ……うん、はい。
ゼオ:ふふっ、貴方は名乗らぬのですかな?
満身創痍の戦の主殿?
オー:えー。
ピエ:陛下、どうか御安心召されよ!!
此の私が御守りして差し上げる!!
さあさあ、御存分に口上を!!
オー:ぴゃーい……。
ええっ、と…オーズィ、っす。
竜騎士シルヴィア・アルトルージュ殿とお見受けするが、如何に?
シル:ああ、相違無い。
晴れて此の度(たび)蘇った。
オー:ならば何故祖国に仇成す?
ロヴェル・カトレイドの末孫として、
此れは看過出来ぬ反逆だ。
シル:お前は……そうか、あいつの!!
300年前だぞ、それは!!
オー: ……酷い話じゃないか。
『ディオールの四騎士』……最早バラバラだが。
最後の最後で貴女迄が私を裏切ると言う。
我が父祖と共に夢見る冒険をした彼の竜騎士殿が。
シル:お前達がそれを言うのか?
……やはりあの男の子孫だな。
オー:何?
ゼオ:ふっ。
シル:私はな?
別段お前達が憎いわけでも殺す義務がある訳でも無いよ?
ピエ:ならば今からでも遅くは無い!!
操られていると言うのであれば、此の奏者を倒せば済む事!!
シル: ……『 ヒト 』とはな?
ピエ:うっ!?
シル:誰もが悪しき所と良き所を持っていて、互いに其れを認め合える存在だ。
だが何時の間にか、天秤が傾いたままに動かぬ己の心に気付いた時、
その時は、誠心誠意を以て相手を破壊せずには居られなくなる、
実に空しい生き物なんだよ。
ピエ:何と……悲しい眼をなさるのだ。
シル:ピエトロと言ったか。
私がお前達の敵となるのはそれ程迄に悪い事なのかい?
ピエ:責を問うつもりはない!!
だが私は嘗て、一介の冒険者として『ディオールの四騎士』に焦がれた!!
何も持たぬ浮浪の少年少女に、竜騎士である貴女が出逢い、
土の神獣のラビリンスを攻略し……古き国と戦い……やがては!!
シル:確かに『私達』はアイゼフィールを創ったさ。
皆が夢見る理想郷、語れば安いが、何とも幸福な日々だった。
ああ……確かにあの頃はそうだったな。
ピエ:止めてくれ……それ以上は、貴女の口からは聞きたくない。
シル:では、これにて話は終わりだな。
プー:プー!!
オー&ピエ: ――ッ!?
シル:そうだな、元気な坊や、まだ坊やが残って居たな?
プー:お姉さんは、『シルヴィア』さんって知ってるプー?
シル:いいや……知らないな。
一体誰の事だ?
ゼオ:13年前、お前の血を受け入れた『サラ』と言う名の子娘だ。
それが何の因果か、お前の名を騙り俺を大層煩わせてくれた。
シル:私の血を……不幸な女だな。
プー:シルさんは、何度も何度も、後悔して傷ついても、
絶対に自分の夢を諦めなかったプー。
シル:夢の為……か。
夢とは何かな?
プー:『竜騎士シルヴィアみたいな大英雄に成る事』……って言ってたけど、
多分本当は違うと思うプー。
ゼオ:ほう、ならば何だ?
早々に舞台を降りれば死なずに済む輩も居った物を、あのたわけめ。
プー:ううん……君、あのお爺ちゃんプヨネ?
ゼオ:ああ。
これから此の女と共に、世界を滅ぼそうしている男だ。
プー:もし、旅のお空で僕と出逢う事が在ったら、
その時は僕の料理を御馳走してあげるプー。
ゼオ: ……話を聞いていたのか?
その時とは、お前の言う『シルヴィア』が死んだ世界と言う意味だぞ?
プー:それでも僕は料理を作るプー。
貴方が世界を壊すなら、僕は此の世界に人がいる限り料理を作り続けるプー。
ゼオ:ぬっ……!?
プー:それくらい良いでしょ?
ゼオ:馬鹿の一つ覚えか?
プー:プップップー♪
解りやすい方が、楽しいでしょ?
ゼオ:( 溜息 )――。
プーデット、と言ったな?
プー:何プ?
ゼオ:世界はお前が思うよりも余程醜い。
女を抱く時、愛液と体液に溺れる吐き気と同じ様に、
お前はサラの様に、生き続ける限り世界から傷つけられることだろう。
お前達は、そういう類の人間だ。
プー:プー……そうなのプー?
ゼオ:だが、決して挫折だけはするな。
オー&ピエ: ……?
ゼオ:お前は人として生きろ!!
俺が総ての憎しみを背負ってやる、だから絶対に夢を諦めるな!!
お前は力の限り、此の世界で生き抜いて魅せろ!!
プー: ……!!
オー:ゼオルード……。
ピエ:『古き国の四騎士』……か。
プー: ……お爺ちゃん変だプー。
悪い人なのに、優しいプー?
ゼオ: ……勘違いするな。
お前の様な子豚には、愛玩程度の認識しか持てぬだけの事だ。
プー:プー???
ゼオ:とっとと失せろと言ったのだ!!
プー:プエッ!?
シル: ……坊や、私達に施すと言ってもね?
私達は人を殺すことを悦楽とし、あまつさえ其の『 才 』をすら持った、
実に悲しくて寂しがり屋の度し難い集団なんだよ?
プー:でも、僕は皆が好きなんだプー!!
シルさんも、アーウィンさんも、ミシェル君も!!
ジーニアス君も、王様もお爺ちゃんもお姉さんも!!
皆大好きプーー!!!
ゼオ: ――ッ!?
オー:何と、まぁ……。
シル:ああ……そうかい。
じゃあもう行きなさい?
此れ以上は我儘だって、気付いているのでしょう?
プー:うん、でも……。
シル:でも?
プー:遠くから最後まで見てるプー。
……だって!!
誰かが観てあげなきゃ……可哀想だプー。
シル:ふふっ……良い子だね。
さよなら、プーデット。
プー:バイバイプー。
綺麗な竜騎士さん。
( 間 )( そして、決戦の火蓋は斬って落とされ )
オー:さぁて、それでは死合うとするかぁ。
ゼオ:クァッ…!!
折角若返ったと言うのに、下らぬ問答で肩が凝ったわ。
ピエ:とんだ若造も居たものだ、四騎士を相手にあれ程の不届きとは。
ふっ、唖奴こそが騎士に成れば良いものを。
シル:んっ。
ゼオ:ん?
シル:私の得物だよ。
素手のままに奴等を嬲るのは哀れだろう?
ゼオ:ああ……此の俺の膨大な魔空間ですら圧迫されたのだ。
あれ程の大剣、竜騎士がどう手繰るのか興味深いな。
ピエ:まさか、あれを此の目で見れるのか!?
それもシルヴィア・アルトルージュ自らの手で!!
ゼオ:『解呪空間』。
……そら、持って行けぃ。
シル:おおっ!?
これこれっ♪
フフフッ……!!
オー:『英雄喰らい』。
およそ英雄と名のつく対象に対し特攻。
竜騎士シルヴィアの代名詞にして、世界有数の超重大剣か。
シル:ああっ……此の血錆と腐った臓物の匂い……!!
腕の筋肉を怒張させる無骨な逞しさ!!
たまらないぃぃぃ……あっ、おい、甲冑はどうした!?
ゼオ: ……済まんが、お前を生き返らせる為の触媒に使わせて貰った。
云わば鎧が骨代わり、ジーニアスの影が肉代わりと言った所か。
シル: ……そうか。
此の薄着では気分が乗らんが。
ゼオ:防御力は変わっていない、どころか動きやすくなっている筈だが?
それに……良くも言う。
シル:ああ?
ゼオ:その隠しきれぬ殺気の事だ。
歪んだ悦びと渇望で大気すら凍てつく様だぞ?
シル: ……フッ、フフフッ!!
アッハハハハハッッ!!!
オー&ピエ:うっ!?
シル:やめだ、もう止められん!!
何が騎士だ、何が夢だ!!
あいつの血族だろうがもう知ったことでは無い!!
私はお前達を殺したくて仕方が無いんだよ!!
其れが此の私なんだッ!!
オー:あれが本性……か。
まさしく伝説の通りだな。
ピエ:そして其のけたたましさの、何と美しい事か。
残酷すぎる程に…そう、あの様にはまるで、
殺されたくなる様だ。
オー:ほう、らしくもない。
俺を守るのではなかったか?
ピエ:いえ、敢えて問いますが。
……本当に守って欲しいので?
オー:要らぬ。
だって生き延びると決めたじゃないか。
全力で、俺達二人で。
ピエ:フッ、フフッ……!!
オー:ん~?
ピエ:いや、御立派に成られた!!
此れで存分に戦える!!
ゼオ:覚悟は出来たか?
此方は既に万全だが。
シル:グルルル……!!!
グウゥオオォォアアァァッッ!!!
オー:行くぞ、ピエトロ!!
ピエ:ハッ!!
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