題名  公開日   人数(男:女:不問)  時間  こんな話  作者

 風のシルヴィア(35)
()()はサラ・シルフィード~

2015/12/03  10(6:3:1) 30分 私はシルヴィアじゃない、サラ・シルフィードなんだ!!  ニコ

登場人物
(年齢)
性別 その他

サラ
(26)

今までシルヴィアと名乗って居た本作の主人公。
雄々しく、心優しく成長した放浪の騎士。
大人びた雰囲気だが実の所少女のままの心を持つ。
厳しさと優しさを併せ持つ金髪の良い女。
アーウィンとは傭兵時代からの永い付き合い。

アーウィン
(30)

サラの元上司で魔族の血を引くさすらいの商人。
サラと同じくして最終決戦に馳せ参じる。

シルヴィア
(262)

悪名高き竜騎士にして四騎士と云われる英雄の一人。
故人だったがゼオルードの禁術によって蘇った。

ゼオルード
(226)

偉大なる大魔導師にして若返ったアイゼフィールの宰相。
総てを裏切り国家に反逆した諸悪の根源。

オーズィ
(31)

アイゼフィール国王。
飄々軽薄なようで芯の通った賢君。

ピエトロ
(45)

アイゼフィール近衛長。
冒険者の身分から取り立ててくれたオーズィに忠節を誓う。
エレナ
(30)
アイゼフィールの重鎮にして心優しき女将軍。
養子を失い喪に付していたがサラに心動かされる。
出番少な目。
 ミシェル(17)
兵卒(22)
不問

サラに懸想する見目麗しき天才剣士。
兵卒と兼ね役でお願いします。

 隊長
(46)

ピエトロにライバル心を燃やす名も知れぬ隊長。
面倒見が良く皆に好かれていた。

 古参
(45)

長年アイゼフィールに尽くしてきたベテランの兵士。
オーズィを息子の様に想っている節がある。




「風のシルヴィア(35)~()()はサラ・シルフィード~」





伝説の竜騎士は復活し、鉄の国アイゼフィールに最後の試練が降りかかる。

シルヴィアは国王オーズィの安否を確かめるべく広場へと急行するが、

彼女は自身が憧れ名を騙った相手が其処に居るとは知る由も無かった。






( 王都アイゼフィール:黄昏に滲む混迷 )

 

兵卒:( 荒い息 )ハッ、ハッ……!!

   た、隊長!!一体どちらへ!?

 

隊長:( 荒い息 )――陛下の御許(おんもと)だ!!

   物見(ものみ)から報告が入ってな、自ら獅子奮迅(ししふんじん)(はたら)きをなさっているらしい!!

 

兵卒:ハアッ!?

 

隊長:ど、どうした!?

 

兵卒:嘘だ!!

   オーズィ陛下と言えば暗愚(あんぐ)骨頂(こっちょう)

(した)われこそすれ活躍出来る訳が無い!!

 

隊長:ああ……そう…思うのか。

   確かに()惨状(さんじょう)だ、無理もないが。

 

兵卒:今は一刻も早く民衆の避難を完了させるべきです!!

   事態が(つか)めないのなら、せめて最小の被害に抑える、それこそが――。

 

隊長:( 途中から被せて優しく )お前はそうすれば良い。

 

兵卒: ……はいぃ?

 

隊長:行けよ。正しいと思ったならそうするべきだ。

 

兵卒:ちょ、ちょっと……なんで…そこまで……。

 

隊長:知るか!!

   たかが古参(こさん)の兵では(なん)の力にもなれぬかも知れんがな!?

   ピエトロだけにいい気にさせるものかよ!!

 

古参:おう。

 

兵卒:うっ!?

 

古参:生き残れたら良いなあ、お前達も。

 

兵卒:(なん)なんだ……どれもこれも、見知った顔が(つど)い始めて、

   まるで夕暮れに照らされ帰る(わらべ)(よう)に…どうして……?

 

隊長:次代(じだい)貴様等(きさまら)に託す!!

   俺達は今こそ気勢(きぜい)を上げる為に生きて来たのだ!!

   ワハハハッ!!

 

 

( 間 )( 王都アイゼフィール:拓け切ってしまった広間 )

 

 

ピエ:ウグッツ、グオァッ!!?

 

シル:ほう、()く受ける。

   流石(さすが)近衛(このえ)(かがみ)といった所か?

 

ピエ:この剛腕(ごうわん)は……!!

   まるで腕の肉を()ぎ落されていくかのようだ……!!

 

オー:喰らえィ!!

   グレイブ・ディガー!!

 

シル:おっ!?

   ……これまた良い鎌捌(かまさば)きだ。

   しかしそのスタンス、300年経ても変わらんのか……。

 

オー:速い……(ただ)白兵(はくへい)でさえこれだ、

   これに更に竜騎士のスキルとやらが加わればッ……!!

 

隊長:おおぉぉうりゃああっ!!

   (すき)ありィ……ありゃッ!?

 

シル:(すき)なぞ無い、貴様(きさま)の技量に合わせただけだ。

 

隊長:ギャアッ!?

   ……あ痛痛。

 

ピエ:お前は……!!

   いや、お前達は!!

 

古参:フッ、苦戦ですかな?

   ピエトロ近衛長殿(このえちょうどの)

 

隊長:ヌッフゥ……おっしゃ!!

   陛下の御前(おんまえ)でこれ以上の恥はかけんわい!!

 

オー:()めるんだ、お前達が(かな)う相手じゃない!!

   相手は竜騎士、『シルヴィア』なんだぞ!?

 

古参:(なん)ですと?

……ほう成程、あれが『伝説の四騎士(よんきし)』ですか。

 

ピエ:隣の若いのはゼオルードだ。

   四騎士(よんきし)(おさ)が、(かつ)ての四騎士(よんきし)(おさ)()(よう)に使っているんだよ。

 

隊長:あれがゼオルード様……?

   いや、見れば()りし日の肖像(しょうぞう)そのものだが……まさか。

 

ゼオ: ……ふっ。

   そうか、随分と声望(せいぼう)だけは広く使っていると見える。

 

シル:おい、ゼオ、数が増えたが(すべ)て敵で()いんだな?

 

ゼオ:俺達は世界の敵だ。

   味方を創るとすれば、()れ以降の話になるのだろうな。

 

シル:よろしい!!

ならば現世(げんせ)兵共(つわものども)に、此処(ここ)(われ)ありと知らしめるか!!

 

オー: ――ッ、来るぞお前達!!

   早く逃げるんだ!!

 

隊長:承服(しょうふく)しかねる!!

 

オー:何ッ!?

 

古参:我々も馬鹿な仕事をしているものだと自覚はありますよ?

   所が、幾ら他人に掣肘(せいちゅう)されようと、

己を(くつがえ)す道理が見つからんのです。

 

オー:()れは……()の国の為に尽くしてくれるって事で()いのか?

   俺の治世(ちせい)なんぞ、暴君(ぼうくん)()れと何一つ変わらなかった。

   (いくさ)(はかりごと)ばかりで、お前達には何時(いつ)も血ばかりを見させて。

 

隊長:ヌハハッ、此処(ここ)まで来て何を謙遜(けんそん)なさる!!

   皆貴方(あなた)の為に(つど)ったのですぞ!?

 

古参:()(いくさ)にしましょう。

   敵(かな)わずとも何処(どこ)まで行けるか、試してみるのも悪くない。

 

ピエ:あぁ……()(とし)こいたオッサン共が気張(きば)りやがって。

 

隊長&古参:貴様(きさま)が言うな!!

 

オー:だが……俺は。

   まだ肚心(ふくしん)を決めたばかりで、何も!!

 

ピエ:陛下。

 

オー:(なん)だよッ!?

 

ピエ:もう宜しいではないですか。

 

オー:何が!?

 

ピエ:()の人の為に命を捧げたい。

   そういう物を貴方様(あなたさま)は生まれつき持っていた。

   だからこそ我等(われら)此処(ここ)(つど)ったのです、後はもう、どうでも宜しい。

 

古参:嗚呼なんたる愚直(ぐちょく)か、

(いま)だ騎士道が足りんとあらば、今後私が教授してやりたい所ですが。

 

隊長:ムフフン!!

亡国(ぼうこく)の危機を救ったのです、盛大な(いくさ)祝いを期待させてもらいますぞ!?

 

オー:そうか……ふっ、そうだな。

   ……うん、(みな)の命を分けて貰うぞ!!

 

隊長&古参&ピエ:無論(むろん)!!

 

 

( 間 )( どれだけ傷ついても、どれだけ悼んでも )

 

 

シル: ……やはり騎士とは良い物だな。

   誇りも(まど)いも全部あやふやにして、無理に『 (ぜん) 』と為すか。

 

ゼオ:やり直したいのか?

   今ならば間に合う(はず)だが。

 

シル:いや、行こう。

   (なん)()れは私の決めた道。

(いばら)にせよ踏破せねば()の世に生まれた価値が無い。

 

ゼオ:それも良かろう……ん?

   ほう、では見せて貰おうか、いにしえの竜騎士の力とやらを!!

 

ピエ: ――ッ!?

   皆備えろォ!!

 

オー:()怖気(おぞけ)(なん)だ…大気中の熱と邪気(じゃき)が失われていく……!!

   あの女、まさか(うた)に聞くアレをやるつもりなのか!?

 

シル:ふっ、行くぞカス共。

   暴塵(ぼうじん)に吹き(すさ)べ……!!

 

 

( 間 )( 業火蹂躙 )( ※出来れば炎のSE )

 

 

オー:な…(なん)だと……!?

馬鹿な、焦土(しょうど)を更に煉獄(れんごく)()すとは……!!

 

古参:う……ぐっ……!!

 

隊長:ごあっ……!!

 

シル:カロロ……!!

   ……グフゥ。

 

オー:龍の息吹(ブレス)を吐く女が居るのかッ!?

 

ゼオ:一人……いや、無用か。

 

ピエ:行けるッ……!!

   貰ったッ…何!?

 

シル:愚かだな若僧、誰の首筋に(やいば)を立てる?

 

ピエ:ぐっ、()の硬度は龍の(うろこ)!?

龍鱗(りゅうりん)の護り、自律して生えてくるのか!?

 

オー:ピエトロッ!?

   いかん!!

 

シル:しかし良い子だ、()()くなら元気な子が良い。

 

ピエ:死――……。

 

アー:( 途中から被せて )させるかあァッッ!!!

 

ゼオ:むっ!?

 

 

( 間 )( 其の男の翼は闇夜の如く、其娘の金糸は星の如く )

 

 

シル:ほう、(たい)した力量(りきりょう)だ。

   咄嗟(とっさ)にいなさねば両断されていたぞ?

 

アー:ぎっ……クアアァァッ!?

   なんッつー馬鹿力(ばかぢから)だ、腕がへし折れるぞ!?

 

ピエ:す、すまん、助かる!!

   バークライツ(きょう)!!

 

シル:おい、こいつは何者だ?

   見た所魔族のようだが?

 

ゼオ:待ちわびたぞ……!!

遂に来たか黒騎士、サラ!!

 

シル:サラぁ?

 

サラ:無事ですか、団長!?

 

アー:加勢しろシル!!

   俺じゃ()たん!!

 

サラ:は、はい!!

   ですが()れは……!!

 

シル:らしくもない…むせかえる血錆(ちさび)爬虫(はちゅう)の匂い……。

   シル…『ヴィア』? ……そうか。

   

アー: ……シル以上の剛腕に()美貌(びぼう)、否定はしないが、

   最後の(てき)さんがアンタだとは、やはり信じたくなかったな。

 

サラ:ゼオルードがジーニアスの影で(よみがえ)らせた3人。

   ミシェル、プーデット……嗚呼そんな!!

 

ゼオ:フハハッ、歓喜に打ち震えたか!?

お前が焦がれた伝説の竜騎士が此処(ここ)()るのだぞ!?

   後生(ごしょう)()るなら存分に聴くが良い!!

 

サラ:ゼオルード……あなたはそこまで(ゆが)んで……!!

 

ゼオ:俺は貴様等(きさまら)の夢を()んでやっただけの事だ!!

   さあ、何を話す!?どうする!?

   サラ、お前はシルヴィアに何をしでかすつもりだ!?

 

サラ: ……何も。

 

オー:ハアッ!?

   おい、援軍!!

 

アー:いや……少しだけ、続けさせてやって下さい。

 

サラ:一つだけお聞かせください……シルヴィア様。

 

シル:一つ(くらい)なら。

 

サラ:貴女(あなた)は、貴女(あなた)の意思で一体何を()そうと言うのですか?

 

シル:お前も竜の血を受けたと言うなら解っているだろう?

   ()()き続ける殺意と敵意、何処(どこ)まで行っても人では無い。

……心が無い、心が無いと()われ続けても血塗(ちまみ)れに、

   仲間の為にと尽くしてきたのに、()れなのに……!!

   だから私は!!!

 

サラ:私は其処(そこ)まで(いびつ)じゃない!!

 

シル: ……。

 

サラ:貴女(あなた)も、貴女(あなた)(そば)(わら)其処(そこ)な老人も、

結局は一人で居続けるのが怖かっただけじゃないか!!

   他人の心が欲しいなら、どうして自分を大事にしなかった!?

 

ゼオ:ハッ、俺は貴様等(きさまら)を何一つ裏切っちゃいない!!

好きな事をし、好きに言わせ、

(なお)()れを()でてやるのが親愛(しんあい)だ、違うか!?

 

サラ:それでも……貴方達(あなたたち)には本当に好きな人が()(はず)だ、

   心から安らげる(いこ)いの場所が、信じられる友が!!

 

ゼオ: ……ッ!?

 

シル:ああ、そういう者も確かに()たかもしれん。

だが、それがどうした?

 

サラ:だったら、何故(なぜ)その人たちが()なくなって、

(ただ)()れだけで御仕舞(おしまい)に出来るんだ!?

   受けた恩や優しさを、自分も他人に(ほどこ)せるって、

どうして自分自身を信じられなかったんだ!!

 

アー:シル……。

 

サラ:私は歌う、今なら誰をも護れる騎士に()れると、

今まで生きてきて()かったと!!

   私はシルヴィアじゃない、サラ・シルフィードなんだ!!

 

シル:( 優しげに )お前には理解出来ぬさ。

   小娘は小娘のまま、何も判らぬままに死んで行け。

 

サラ:いにしえの大英雄よ、私は貴女(あなた)が好きだ!!

こんな形で殺し合える(はず)が無い!!

 

アー: ……いや、この女は此処(ここ)で殺す。

 

サラ:団長!?

 

アー:気づいている(はず)だな?

   シル、この英雄様は獲物を()れれば()れるだけ勢いづく。

   もしも世界に解き放ったら()れこそ()められん。

 

サラ:いえ、救います。

   私は…こんなにも怒りと悲しみに満ちた真紅(しんく)(ひとみ)を知りませんから。

 

シル:フッ、アッハハハハッ!!

 

一同: ――ッ!?

 

シル:(わら)わせるなよ下郎(げろう)!!

   貴様如(きさまごと)きの舌鋒(ぜっぽう)で私がどうにか出来るとでも!?

   500年程遅いぞ…()の凝り固まった脳髄(のうずい)()かすにはな。

 

オー: ……だろうな。

   正義が(つちか)う物ならば、悪もまた(はぐく)むものだ。

   世界を憎悪(ぞうお)し、()れを()かれと決め込んだ人間に何を言っても。

 

サラ:それでも、私は!!

 

アー:()めてやれ、シル。

   竜騎士とは本来、飼い主の巣に入り込んだ英雄を殺し続けるのが生業(なりわい)だ、

   下らない幻想を(いだ)いていたのはお前の方なんだよ。

 

サラ:それでも……目の前に()るこの人は……!!

 

エレ:それでも救うに足りる(あわ)れな小人(こびと)に見える。

   ……違いますか、シルヴィア?

 

オー:エ、エレナ、無事だったのか!?

 

ミシ:( 疲れ切って )ハアッ…ハアッ……!!

最終決戦…間に合いました……よね?

   まだ、僕は戦えますから。

 

サラ:ミシェル、私はこの人とは戦えない、

   その理由が無いんだ。

 

ミシ:クスッ……あーあ。

   それでは、僕が貴女(あなた)を守らなければいけませんね。

 

サラ:え?

 

ミシ:色々ゴチャゴチャしている(よう)ですが、此処(ここ)から先は男の子の仕事です!!

   何も知らない腕白(わんぱく)なりに、貴女(あなた)(つゆ)(はら)いますとも!!

 

サラ: ……そうだね、大人(おとな)になったね、ミシェル。

   私も負けては()れないね。

 

ゼオ: ……(なん)とも壮観だな。

   死んだ者も去った者も居たが、こうして四騎士(よんきし)(そろ)うとは。

 

シル:お前は……アナスタシア・サースティの眷属(けんぞく)か?

   それに貴様(きさま)の剣はフィーバストルテの!!

   良いぞ、今日は(なん)と言う(よろこ)びに満ちた日だ!!

 

ピエ:ぐっ……!?

   何処(どこ)までも覇気(はき)が収まらんのか、()の怪物め!!

 

エレ:お逢い出来て光栄ですわ、アルトルージュ(きょう)

   早速一つ提案があるのだけれど。

 

シル:何かな、桃色の髪の麗人殿(れいじんどの)

 

エレ:私達にゼオルード様を貸して頂けないかしら?

 

一同:ハアッ!?

 

オー:ま、待て待てエレナ!!

   ようやく一同が(かい)し、反撃の(きざ)しが見えたのだぞ!?

   みすみす戦力を分散させてどうするのだ!?

 

エレ:ですが、此方(こちら)のシルヴィアは竜騎士殿とは戦えぬと述べています。

   そして()れは向こうも本意では無い(はず)

 

シル:成程、確かに此処(ここ)まで膳立(ぜんだ)てされて()()りでは面白くも無い。

   だが()いのかゼオ、そこな小娘(こむすめ)中々(なかなか)どうして策士(さくし)(よう)だが?

 

ゼオ:それがお前の選択ならばな。

   むしろどう足掻(あが)くのか興味が()る、心の折れた聖騎士が恐竜にどう(いど)むのか。

 

エレ:うふっ……決まりですわね。

   では私とミシェル様、そしてシルヴィアはゼオルード様と。

 

ゼオ:おう、これは(はな)()って()いな、

   シル、サラを殺してしまっても文句を言うなよ?

 

シル:言わん。

   もしかしてお前、私を分別(ふんべつ)の無い我儘娘(わがままむすめ)だと思っていないか?

 

ゼオ: ……だと聞いていたがな。

 

シル:ああッ!?

 

ゼオ:( 溜息 )――。

空間使(つか)いが2人()るのだ、次元を変えるぞエレナ。

 

エレ:ええ、私達を内包(ないほう)した完全なる別の世界へ。

   次に出てくるときは決着がついた後になりますね。

 

ミシ:頑張れそうですか、シルさん?

 

サラ:ああ……全く、こんな時まで気を遣わせては隊長の名が(すた)るな。

   生きて帰って来られたら美味(うま)い酒を(おご)るよ、ミシェル。

 

ミシ:やったッ♪

 

アー:おっしゃ、張り切ろうぜオッサン達!!

 

ピエ:どうにも、魔族と手を組む事になろうとは……。

事態も此処(ここ)に極まれり、か。

 

アー:そんなに嫌がりなさんな。

   (ただ)の傭兵からフーテンに()り下がり、おまけに翼が生えただけじゃねえか。

 

オー:ヒャッ、ヒャッ♪

男爵(だんしゃく)(くらい)を鼻にかけていたのは何処(どこ)のどいつだったかな?

 

アー:うっ!?

 

ピエ:()い人生ではないか。

   愛の為に誇りを捨てる……私には取り戻せぬ夢だ。

 

オー:人間素直が一番!!

   女のために生きるそなたこそ()(くに)の誇りだ、誇れ誇れ!!

 

アー: ……ちょっと、泣きそうです。

 

サラ:では団長!!

私、行ってきますので!!

 

アー:ああ!!

どれだけ勝ち目がないと判っていても、お前は俺に戦う勇気を()れる!!

(ただ)それだけで充分さ!!

 

 

( 間 )( 星宮:希絶入り交じる望遠の世界 )

 

 

ゼオ:さて、こんなものか。

宇宙……とでも言うのだったか?

   我等(われら)の創った世界は。

 

エレ:そうですわね、永遠に摩耗と再生が繰り広げられる、

天上(てんじょう)星宮(せいきゅう)

   空の果て、(きら)めく漆黒(しっこく)

 

サラ:綺麗だ……満天(まんてん)

遠くから眺めているだけで満足な気がしていたのに。

   辿(たど)り着いた先はもっと遠大(えんだい)だったのか。

 

ミシ:さあって、と!!

   始めるなら早くしますか!!

   人間、楽しい事を考えて生きていた方が楽しいですもんね!!

 

ゼオ:フッ……俺は既に()(ごと)か?

 

ミシ:ええ!!

   貴方(あなた)は心を突き詰め過ぎた、誰に()められる事も無く。

   ()の星空とは似ても似つかぬ(みにく)い存在です。

 

ゼオ:そうだな、そしてお前は無事にヒトの姿に戻れた。

   子供とは実に希望に満ちた生き物だな。

 

ミシ: ……もう、お前には(ほだ)され()い!!

 

サラ:ゼオルード……。

 

ゼオ:お前も俺に憤怒(ふんぬ)を覚えるか?

 

サラ:いえ……(なが)い付き合いですからね。

 

ゼオ:俺は確かに孤独だが、だからこそ戦い抜かなければならなかった。

   数多(あまた)犠牲(ぎせい)を払い、夢を叶え、こうして御前達の前に立つ……。

   何も後悔は無い。やれるだけの事はやったさ。

 

サラ:貴方(あなた)は……何度その手で愛しい人の頬を撫でて、

寂しい顔で去って行ったのですか?

 

ゼオ:仕方が無い……俺はこんな生き方しか出来なかった。

   人は俺を万能だと言うが、俺にも出来ぬ事はあったのになぁ。

 

エレ:その(ゆが)んだ人生が終わる時が来たのです。

   嬉しいでしょう?

 

ゼオ:フッ……。

   いや、もう少し足掻(あが)くとしようか。

……四騎士(よんきし)(おさ)()()けて!!

 

エレ:貴方(あなた)には、もう……!!

   ()の二つ()は名乗らせない!!

 

ゼオ:貴様等(きさまら)(ごと)きが何をほざくか!!

   ()の俺に対してッ!!

 

ミシ:ぐっ……!?

(なん)て魔力だ、瘴気(しょうき)で前が見えない!!

 

サラ:皮膚が焼け(ただ)れて行く……!?

これ程の憎悪を(いだ)いて、(ただ)何も言わずに……?

   いや、そんな事はさせない!!

 

ゼオ:殺す気で来い餓鬼(がき)ども!!

   (とき)(おきな)!!不死身(ふじみ)魔人(まじん)!!

   そして古き国の四騎士(よんきし)が一人!!

   ゼオルード・ヴァロ・ゴラムザードが受けて立つぞ!!

 

サラ:私は……()の人に勝ちたい!!

 

 

( 間 )( 煉獄:暴惹舞刃 )

 

 

ピエ:うぅ……馬鹿な!?

 

シル:ゴガッ…!!

   ゴブッ、グジュッ……!!

 

オー:な、なんだ…こいつ、己の口を、己の拳で砕いて……!?

 

シル:グフゥ……フフッ……!!

 

隊長:う……うぅ……!!

   たははっ……少し、寝過ごしましたかな?

 

オー: ――ッ!?

 

古参:我ながら情けない、たかが…あれしきの炎で意識を失うとは……!!

 

ピエ:(しゃべ)るなお前達!!

   ()火傷(やけど)で何が出来るか!?

 

隊長:今更()しい命でも無いわい!!

   ……それに、ようやく身体もこなれてきた所だ。

 

古参:右に同じく。

   それに、あやつだけは(ゆる)せん。

 

シル:ふふっ、アハハッ!!

   ( 舌なめずり )――!!

   ゆ・る・せ・ん?

   ククッ!!

 

アー:もう傷が治って……!?

そうか、シルの()れとは訳が違うという事か。

 

古参:良くも俺達の国を……!!

   悪逆の龍姫(りゅうき)め、断罪(だんざい)をもって知らしめてくれる!!

 

シル:ん~…良し、()のくらいかな?

 

隊長:(なん)だ……奴は(なに)を狙っとる!?

   ブレスでも無い、魔法でも無い、一体何を――。

 

シル:( 途中から被せて全力で )ふんッ!!

 

古参:何ッ……ぐおっ!?

 

ピエ:くっ、これは、歯を投げ当てて!?

   まさか……!!

 

アー:(なん)て事を……考えやがる……!!

 

隊長:グルル…ウガアァァ!!!

 

シル:アハハハッ♪

   ()(さま)だなぁ、おい。

 

アー:竜牙兵(ドラゴン・トゥース・ウォリアー)!!

   それが貴様(きさま)真骨頂(しんこっちょう)か、竜騎士!!

 

シル:さて、化け物の産んだ龍属性の蛭子(ひるこ)

   如何(いか)にして処方(しょほう)する?歴戦の勇者共よ。

 

古参:ウグ…ウオオォォ……!!!

 

オー:お前等(まえら)、しっかりしろ!!

 

隊長:グルル……!!

   グゥオォォ!!

 

オー:うおっ!?

 

ピエ:陛下!?

 

オー:大事無(だいじな)い……!!

   だが……俺は。

 

古参:ギガッ、ググッ、へ…い…か……!!

 

オー:俺は……!!

 

古参:ぐっ、面目(めんぼく)ない……!!

   後は頼みます……!!

 

オー:俺は貴様(きさま)(ゆる)さんぞ!!

   シルヴィア・アルトルージュ!!

 

シル:おっ!!

 

オー:ハアアッッ!!

 

シル:ぐっ!?

 

オー:貴様(きさま)が存在しなければ!!

 

シル:何をほざくか!!

   あの男の野望(やぼう)()められなかったのは何処(どこ)のどいつだ!?

 

オー:ぐおっ!?

   ……う、ぐっ!!

 

ピエ:陛下、御自重(ごじちょう)下さい!!

   如何(いか)貴方(あなた)とは()え、その大剣(たいけん)を受けるには膂力(りょりょく)が!!

 

オー:黙れ!!

   ……確かにそうだ。

   なまじ才があるのも考え物よ、俺は皆に甘えてばかりで、

   ぬるま湯に浸かり国が育つのを良しとしてきた。

 

シル:惰弱者(だじゃくもの)め!!

ならば()のまま()()れろ!!

 

オー:ぐ…が……!!

……ウオオオッッ!!

 

シル:な、何ッ!?

 

ピエ:あの一撃を……跳ね返しただと!?

 

オー:()れでも……()れでも俺は!!

 

隊長:グルルッ……ギャバッ!?

 

オー:俺にはッ!!

 

古参:グオオッッ……ゴファッ!?

 

オー: ……()びはせんぞ。

   お前達は俺の友だ、ならば必ずや報いよう……!!

   ゆめ、決して砕かれぬ王道を此処(ここ)に誓う……!!

 

隊長:その(よう)御言葉(おことば)が…ふっ、要らぬ程の主従(しゅじゅう)でありたかった。

   ……部下達を頼みます。

 

オー:任せろ。

   ()わずして何が王か。

 

古参:おお、陛下をくびきなすった(のろ)いが消えていくのが見えます。

   ()しい(せい)だ、ようやくこれからだと言う時に。

 

オー:良く寝てくれ。

   俺も何時(いつ)か、美味(うま)い酒を持ってそっちへ行くよ。

 

隊長&古参:それは……楽しみですなぁ。

 

 

( 間 )( 我が祖国の為に!! )

 

 

シル:意気込(いきご)みだけで()の私に勝てると思うか?

 

オー:最強であるというのも考え物だな。

   わざわざ他人を強化せねば、己の無聊(ぶりょう)すら(なぐさ)め切れんのか。

 

シル:アハハァ……!!

   まあ、こんな小細工(こざいく)にも飽きてきた所だ。

   いよいよもって進めぬとあらばぶち殺そうかと思うていたが、

   存外()けるものではないか。

 

オー:(かせ)()いてくれた皆の為に戦う。

   そして俺は勇者じゃない、国王(こくおう)なんだ!!

 

アー:()くぞ言ったッ!!

   それでこそ鉄の国の(あるじ)だ!!

 

ピエ:御伴(おとも)つかまつるッ!!

 

シル:( 微笑 )――。

()い、解った、全部まとめて掛かってこい!!

 

アー&オー&ピエ:行くぞッ、シルヴィア!!




 
 
 
     
 
           
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