題名 |
公開日 |
人数(男:女:不問) |
時間 |
こんな話 |
作者 |
風のシルヴィア(35)
~我が名はサラ・シルフィード~
|
2015/12/03 |
10(6:3:1) |
30分 |
私はシルヴィアじゃない、サラ・シルフィードなんだ!! |
ニコ |
登場人物
(年齢) |
性別 |
その他 |
サラ
(26)
|
♀ |
今までシルヴィアと名乗って居た本作の主人公。
雄々しく、心優しく成長した放浪の騎士。
大人びた雰囲気だが実の所少女のままの心を持つ。
厳しさと優しさを併せ持つ金髪の良い女。
アーウィンとは傭兵時代からの永い付き合い。
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アーウィン
(30)
|
♂ |
サラの元上司で魔族の血を引くさすらいの商人。
サラと同じくして最終決戦に馳せ参じる。 |
シルヴィア
(262)
|
♀ |
悪名高き竜騎士にして四騎士と云われる英雄の一人。
故人だったがゼオルードの禁術によって蘇った。
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ゼオルード
(226)
|
♂ |
偉大なる大魔導師にして若返ったアイゼフィールの宰相。
総てを裏切り国家に反逆した諸悪の根源。
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オーズィ
(31)
|
♂ |
アイゼフィール国王。
飄々軽薄なようで芯の通った賢君。
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ピエトロ
(45)
|
♂ |
アイゼフィール近衛長。
冒険者の身分から取り立ててくれたオーズィに忠節を誓う。 |
エレナ
(30) |
♀ |
アイゼフィールの重鎮にして心優しき女将軍。
養子を失い喪に付していたがサラに心動かされる。
出番少な目。 |
ミシェル(17)
兵卒(22) |
不問 |
サラに懸想する見目麗しき天才剣士。
兵卒と兼ね役でお願いします。
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隊長
(46) |
♂ |
ピエトロにライバル心を燃やす名も知れぬ隊長。
面倒見が良く皆に好かれていた。
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古参
(45) |
♂ |
長年アイゼフィールに尽くしてきたベテランの兵士。
オーズィを息子の様に想っている節がある。
|
「風のシルヴィア(35)~我が名はサラ・シルフィード~」
伝説の竜騎士は復活し、鉄の国アイゼフィールに最後の試練が降りかかる。
シルヴィアは国王オーズィの安否を確かめるべく広場へと急行するが、
彼女は自身が憧れ名を騙った相手が其処に居るとは知る由も無かった。
( 王都アイゼフィール:黄昏に滲む混迷 )
兵卒:( 荒い息 )ハッ、ハッ……!!
た、隊長!!一体どちらへ!?
隊長:( 荒い息 )――陛下の御許(おんもと)だ!!
物見から報告が入ってな、自ら獅子奮迅の働きをなさっているらしい!!
兵卒:ハアッ!?
隊長:ど、どうした!?
兵卒:嘘だ!!
オーズィ陛下と言えば暗愚の骨頂、
慕われこそすれ活躍出来る訳が無い!!
隊長:ああ……そう…思うのか。
確かに此の惨状だ、無理もないが。
兵卒:今は一刻も早く民衆の避難を完了させるべきです!!
事態が掴めないのなら、せめて最小の被害に抑える、それこそが――。
隊長:( 途中から被せて優しく )お前はそうすれば良い。
兵卒: ……はいぃ?
隊長:行けよ。正しいと思ったならそうするべきだ。
兵卒:ちょ、ちょっと……なんで…そこまで……。
隊長:知るか!!
たかが古参の兵では何の力にもなれぬかも知れんがな!?
ピエトロだけにいい気にさせるものかよ!!
古参:おう。
兵卒:うっ!?
古参:生き残れたら良いなあ、お前達も。
兵卒:何なんだ……どれもこれも、見知った顔が集い始めて、
まるで夕暮れに照らされ帰る童の様に…どうして……?
隊長:次代は貴様等に託す!!
俺達は今こそ気勢を上げる為に生きて来たのだ!!
ワハハハッ!!
( 間 )( 王都アイゼフィール:拓け切ってしまった広間 )
ピエ:ウグッツ、グオァッ!!?
シル:ほう、良く受ける。
流石は近衛の鑑といった所か?
ピエ:この剛腕は……!!
まるで腕の肉を削ぎ落されていくかのようだ……!!
オー:喰らえィ!!
グレイブ・ディガー!!
シル:おっ!?
……これまた良い鎌捌きだ。
しかしそのスタンス、300年経ても変わらんのか……。
オー:速い……只の白兵でさえこれだ、
これに更に竜騎士のスキルとやらが加わればッ……!!
隊長:おおぉぉうりゃああっ!!
隙ありィ……ありゃッ!?
シル:隙なぞ無い、貴様の技量に合わせただけだ。
隊長:ギャアッ!?
……あ痛痛。
ピエ:お前は……!!
いや、お前達は!!
古参:フッ、苦戦ですかな?
ピエトロ近衛長殿。
隊長:ヌッフゥ……おっしゃ!!
陛下の御前でこれ以上の恥はかけんわい!!
オー:止めるんだ、お前達が敵う相手じゃない!!
相手は竜騎士、『シルヴィア』なんだぞ!?
古参:何ですと?
……ほう成程、あれが『伝説の四騎士』ですか。
ピエ:隣の若いのはゼオルードだ。
四騎士の長が、嘗ての四騎士の長を良い様に使っているんだよ。
隊長:あれがゼオルード様……?
いや、見れば在りし日の肖像そのものだが……まさか。
ゼオ: ……ふっ。
そうか、随分と声望だけは広く使っていると見える。
シル:おい、ゼオ、数が増えたが総て敵で良いんだな?
ゼオ:俺達は世界の敵だ。
味方を創るとすれば、此れ以降の話になるのだろうな。
シル:よろしい!!
ならば現世の兵共に、此処に我ありと知らしめるか!!
オー: ――ッ、来るぞお前達!!
早く逃げるんだ!!
隊長:承服しかねる!!
オー:何ッ!?
古参:我々も馬鹿な仕事をしているものだと自覚はありますよ?
所が、幾ら他人に掣肘されようと、
己を覆す道理が見つからんのです。
オー:其れは……此の国の為に尽くしてくれるって事で良いのか?
俺の治世なんぞ、暴君の其れと何一つ変わらなかった。
戦と謀ばかりで、お前達には何時も血ばかりを見させて。
隊長:ヌハハッ、此処まで来て何を謙遜なさる!!
皆貴方の為に集ったのですぞ!?
古参:良い戦にしましょう。
敵(かな)わずとも何処まで行けるか、試してみるのも悪くない。
ピエ:あぁ……良い歳こいたオッサン共が気張りやがって。
隊長&古参:貴様が言うな!!
オー:だが……俺は。
まだ肚心を決めたばかりで、何も!!
ピエ:陛下。
オー:何だよッ!?
ピエ:もう宜しいではないですか。
オー:何が!?
ピエ:此の人の為に命を捧げたい。
そういう物を貴方様は生まれつき持っていた。
だからこそ我等は此処に集ったのです、後はもう、どうでも宜しい。
古参:嗚呼なんたる愚直か、
未だ騎士道が足りんとあらば、今後私が教授してやりたい所ですが。
隊長:ムフフン!!
亡国の危機を救ったのです、盛大な勝祝いを期待させてもらいますぞ!?
オー:そうか……ふっ、そうだな。
……うん、皆の命を分けて貰うぞ!!
隊長&古参&ピエ:無論!!
( 間 )( どれだけ傷ついても、どれだけ悼んでも )
シル: ……やはり騎士とは良い物だな。
誇りも惑いも全部あやふやにして、無理に『 善 』と為すか。
ゼオ:やり直したいのか?
今ならば間に合う筈だが。
シル:いや、行こう。
何せ此れは私の決めた道。
茨にせよ踏破せねば此の世に生まれた価値が無い。
ゼオ:それも良かろう……ん?
ほう、では見せて貰おうか、いにしえの竜騎士の力とやらを!!
ピエ: ――ッ!?
皆備えろォ!!
オー:此の怖気は何だ…大気中の熱と邪気が失われていく……!!
あの女、まさか謳に聞くアレをやるつもりなのか!?
シル:ふっ、行くぞカス共。
暴塵に吹き荒べ……!!
( 間 )( 業火蹂躙 )( ※出来れば炎のSE )
オー:な…何だと……!?
馬鹿な、焦土を更に煉獄と化すとは……!!
古参:う……ぐっ……!!
隊長:ごあっ……!!
シル:カロロ……!!
……グフゥ。
オー:龍の息吹を吐く女が居るのかッ!?
ゼオ:一人……いや、無用か。
ピエ:行けるッ……!!
貰ったッ…何!?
シル:愚かだな若僧、誰の首筋に刃を立てる?
ピエ:ぐっ、此の硬度は龍の鱗!?
龍鱗の護り、自律して生えてくるのか!?
オー:ピエトロッ!?
いかん!!
シル:しかし良い子だ、割り咲くなら元気な子が良い。
ピエ:死――……。
アー:( 途中から被せて )させるかあァッッ!!!
ゼオ:むっ!?
( 間 )( 其の男の翼は闇夜の如く、其娘の金糸は星の如く )
シル:ほう、大した力量だ。
咄嗟にいなさねば両断されていたぞ?
アー:ぎっ……クアアァァッ!?
なんッつー馬鹿力だ、腕がへし折れるぞ!?
ピエ:す、すまん、助かる!!
バークライツ卿!!
シル:おい、こいつは何者だ?
見た所魔族のようだが?
ゼオ:待ちわびたぞ……!!
遂に来たか黒騎士、サラ!!
シル:サラぁ?
サラ:無事ですか、団長!?
アー:加勢しろシル!!
俺じゃ持たん!!
サラ:は、はい!!
ですが此れは……!!
シル:らしくもない…むせかえる血錆と爬虫の匂い……。
シル…『ヴィア』? ……そうか。
アー: ……シル以上の剛腕に其の美貌、否定はしないが、
最後の敵さんがアンタだとは、やはり信じたくなかったな。
サラ:ゼオルードがジーニアスの影で蘇らせた3人。
ミシェル、プーデット……嗚呼そんな!!
ゼオ:フハハッ、歓喜に打ち震えたか!?
お前が焦がれた伝説の竜騎士が此処に居るのだぞ!?
後生が在るなら存分に聴くが良い!!
サラ:ゼオルード……あなたはそこまで歪んで……!!
ゼオ:俺は貴様等の夢を汲んでやっただけの事だ!!
さあ、何を話す!?どうする!?
サラ、お前はシルヴィアに何をしでかすつもりだ!?
サラ: ……何も。
オー:ハアッ!?
おい、援軍!!
アー:いや……少しだけ、続けさせてやって下さい。
サラ:一つだけお聞かせください……シルヴィア様。
シル:一つ位なら。
サラ:貴女は、貴女の意思で一体何を為そうと言うのですか?
シル:お前も竜の血を受けたと言うなら解っているだろう?
此の湧き続ける殺意と敵意、何処まで行っても人では無い。
……心が無い、心が無いと云われ続けても血塗れに、
仲間の為にと尽くしてきたのに、其れなのに……!!
だから私は!!!
サラ:私は其処まで歪じゃない!!
シル: ……。
サラ:貴女も、貴女の傍で嗤う其処な老人も、
結局は一人で居続けるのが怖かっただけじゃないか!!
他人の心が欲しいなら、どうして自分を大事にしなかった!?
ゼオ:ハッ、俺は貴様等を何一つ裏切っちゃいない!!
好きな事をし、好きに言わせ、
尚其れを愛でてやるのが親愛だ、違うか!?
サラ:それでも……貴方達には本当に好きな人が居た筈だ、
心から安らげる憩いの場所が、信じられる友が!!
ゼオ: ……ッ!?
シル:ああ、そういう者も確かに居たかもしれん。
だが、それがどうした?
サラ:だったら、何故その人たちが居なくなって、
只其れだけで御仕舞に出来るんだ!?
受けた恩や優しさを、自分も他人に施せるって、
どうして自分自身を信じられなかったんだ!!
アー:シル……。
サラ:私は歌う、今なら誰をも護れる騎士に成れると、
今まで生きてきて良かったと!!
私はシルヴィアじゃない、サラ・シルフィードなんだ!!
シル:( 優しげに )お前には理解出来ぬさ。
小娘は小娘のまま、何も判らぬままに死んで行け。
サラ:いにしえの大英雄よ、私は貴女が好きだ!!
こんな形で殺し合える筈が無い!!
アー: ……いや、この女は此処で殺す。
サラ:団長!?
アー:気づいている筈だな?
シル、この英雄様は獲物を呉れれば呉れるだけ勢いづく。
もしも世界に解き放ったら其れこそ止められん。
サラ:いえ、救います。
私は…こんなにも怒りと悲しみに満ちた真紅の瞳を知りませんから。
シル:フッ、アッハハハハッ!!
一同: ――ッ!?
シル:嗤わせるなよ下郎!!
貴様如きの舌鋒で私がどうにか出来るとでも!?
500年程遅いぞ…此の凝り固まった脳髄を蕩かすにはな。
オー: ……だろうな。
正義が培う物ならば、悪もまた育むものだ。
世界を憎悪し、其れを良かれと決め込んだ人間に何を言っても。
サラ:それでも、私は!!
アー:止めてやれ、シル。
竜騎士とは本来、飼い主の巣に入り込んだ英雄を殺し続けるのが生業だ、
下らない幻想を抱いていたのはお前の方なんだよ。
サラ:それでも……目の前に居るこの人は……!!
エレ:それでも救うに足りる哀れな小人に見える。
……違いますか、シルヴィア?
オー:エ、エレナ、無事だったのか!?
ミシ:( 疲れ切って )ハアッ…ハアッ……!!
最終決戦…間に合いました……よね?
まだ、僕は戦えますから。
サラ:ミシェル、私はこの人とは戦えない、
その理由が無いんだ。
ミシ:クスッ……あーあ。
それでは、僕が貴女を守らなければいけませんね。
サラ:え?
ミシ:色々ゴチャゴチャしている様ですが、此処から先は男の子の仕事です!!
何も知らない腕白なりに、貴女の露を払いますとも!!
サラ: ……そうだね、大人になったね、ミシェル。
私も負けては居れないね。
ゼオ: ……何とも壮観だな。
死んだ者も去った者も居たが、こうして四騎士が揃うとは。
シル:お前は……アナスタシア・サースティの眷属か?
それに貴様の剣はフィーバストルテの!!
良いぞ、今日は何と言う悦びに満ちた日だ!!
ピエ:ぐっ……!?
何処までも覇気が収まらんのか、此の怪物め!!
エレ:お逢い出来て光栄ですわ、アルトルージュ卿。
早速一つ提案があるのだけれど。
シル:何かな、桃色の髪の麗人殿?
エレ:私達にゼオルード様を貸して頂けないかしら?
一同:ハアッ!?
オー:ま、待て待てエレナ!!
ようやく一同が会し、反撃の兆しが見えたのだぞ!?
みすみす戦力を分散させてどうするのだ!?
エレ:ですが、此方のシルヴィアは竜騎士殿とは戦えぬと述べています。
そして其れは向こうも本意では無い筈。
シル:成程、確かに此処まで膳立てされて撫で斬りでは面白くも無い。
だが良いのかゼオ、そこな小娘、中々どうして策士の様だが?
ゼオ:それがお前の選択ならばな。
むしろどう足掻くのか興味が在る、心の折れた聖騎士が恐竜にどう挑むのか。
エレ:うふっ……決まりですわね。
では私とミシェル様、そしてシルヴィアはゼオルード様と。
ゼオ:おう、これは華が在って良いな、
シル、サラを殺してしまっても文句を言うなよ?
シル:言わん。
もしかしてお前、私を分別の無い我儘娘だと思っていないか?
ゼオ: ……だと聞いていたがな。
シル:ああッ!?
ゼオ:( 溜息 )――。
空間使いが2人居るのだ、次元を変えるぞエレナ。
エレ:ええ、私達を内包した完全なる別の世界へ。
次に出てくるときは決着がついた後になりますね。
ミシ:頑張れそうですか、シルさん?
サラ:ああ……全く、こんな時まで気を遣わせては隊長の名が廃るな。
生きて帰って来られたら美味い酒を驕るよ、ミシェル。
ミシ:やったッ♪
アー:おっしゃ、張り切ろうぜオッサン達!!
ピエ:どうにも、魔族と手を組む事になろうとは……。
事態も此処に極まれり、か。
アー:そんなに嫌がりなさんな。
只の傭兵からフーテンに成り下がり、おまけに翼が生えただけじゃねえか。
オー:ヒャッ、ヒャッ♪
男爵の位を鼻にかけていたのは何処のどいつだったかな?
アー:うっ!?
ピエ:良い人生ではないか。
愛の為に誇りを捨てる……私には取り戻せぬ夢だ。
オー:人間素直が一番!!
女のために生きるそなたこそ我が国の誇りだ、誇れ誇れ!!
アー: ……ちょっと、泣きそうです。
サラ:では団長!!
私、行ってきますので!!
アー:ああ!!
どれだけ勝ち目がないと判っていても、お前は俺に戦う勇気を呉れる!!
只それだけで充分さ!!
( 間 )( 星宮:希絶入り交じる望遠の世界 )
ゼオ:さて、こんなものか。
宇宙……とでも言うのだったか?
我等の創った世界は。
エレ:そうですわね、永遠に摩耗と再生が繰り広げられる、
天上の星宮。
空の果て、煌めく漆黒。
サラ:綺麗だ……満天。
遠くから眺めているだけで満足な気がしていたのに。
辿り着いた先はもっと遠大だったのか。
ミシ:さあって、と!!
始めるなら早くしますか!!
人間、楽しい事を考えて生きていた方が楽しいですもんね!!
ゼオ:フッ……俺は既に忌み事か?
ミシ:ええ!!
貴方は心を突き詰め過ぎた、誰に止められる事も無く。
此の星空とは似ても似つかぬ醜い存在です。
ゼオ:そうだな、そしてお前は無事にヒトの姿に戻れた。
子供とは実に希望に満ちた生き物だな。
ミシ: ……もう、お前には絆され無い!!
サラ:ゼオルード……。
ゼオ:お前も俺に憤怒を覚えるか?
サラ:いえ……永い付き合いですからね。
ゼオ:俺は確かに孤独だが、だからこそ戦い抜かなければならなかった。
数多の犠牲を払い、夢を叶え、こうして御前達の前に立つ……。
何も後悔は無い。やれるだけの事はやったさ。
サラ:貴方は……何度その手で愛しい人の頬を撫でて、
寂しい顔で去って行ったのですか?
ゼオ:仕方が無い……俺はこんな生き方しか出来なかった。
人は俺を万能だと言うが、俺にも出来ぬ事はあったのになぁ。
エレ:その歪んだ人生が終わる時が来たのです。
嬉しいでしょう?
ゼオ:フッ……。
いや、もう少し足掻くとしようか。
……四騎士の長の名に懸けて!!
エレ:貴方には、もう……!!
其の二つ名は名乗らせない!!
ゼオ:貴様等如きが何をほざくか!!
此の俺に対してッ!!
ミシ:ぐっ……!?
何て魔力だ、瘴気で前が見えない!!
サラ:皮膚が焼け爛れて行く……!?
これ程の憎悪を抱いて、只何も言わずに……?
いや、そんな事はさせない!!
ゼオ:殺す気で来い餓鬼ども!!
時の翁!!不死身の魔人!!
そして古き国の四騎士が一人!!
ゼオルード・ヴァロ・ゴラムザードが受けて立つぞ!!
サラ:私は……此の人に勝ちたい!!
( 間 )( 煉獄:暴惹舞刃 )
ピエ:うぅ……馬鹿な!?
シル:ゴガッ…!!
ゴブッ、グジュッ……!!
オー:な、なんだ…こいつ、己の口を、己の拳で砕いて……!?
シル:グフゥ……フフッ……!!
隊長:う……うぅ……!!
たははっ……少し、寝過ごしましたかな?
オー: ――ッ!?
古参:我ながら情けない、たかが…あれしきの炎で意識を失うとは……!!
ピエ:喋るなお前達!!
其の火傷で何が出来るか!?
隊長:今更惜しい命でも無いわい!!
……それに、ようやく身体もこなれてきた所だ。
古参:右に同じく。
それに、あやつだけは赦せん。
シル:ふふっ、アハハッ!!
( 舌なめずり )――!!
ゆ・る・せ・ん?
ククッ!!
アー:もう傷が治って……!?
そうか、シルの其れとは訳が違うという事か。
古参:良くも俺達の国を……!!
悪逆の龍姫め、断罪をもって知らしめてくれる!!
シル:ん~…良し、此のくらいかな?
隊長:何だ……奴は何を狙っとる!?
ブレスでも無い、魔法でも無い、一体何を――。
シル:( 途中から被せて全力で )ふんッ!!
古参:何ッ……ぐおっ!?
ピエ:くっ、これは、歯を投げ当てて!?
まさか……!!
アー:何て事を……考えやがる……!!
隊長:グルル…ウガアァァ!!!
シル:アハハハッ♪
良い様だなぁ、おい。
アー:竜牙兵!!
それが貴様の真骨頂か、竜騎士!!
シル:さて、化け物の産んだ龍属性の蛭子。
如何にして処方する?歴戦の勇者共よ。
古参:ウグ…ウオオォォ……!!!
オー:お前等、しっかりしろ!!
隊長:グルル……!!
グゥオォォ!!
オー:うおっ!?
ピエ:陛下!?
オー:大事無い……!!
だが……俺は。
古参:ギガッ、ググッ、へ…い…か……!!
オー:俺は……!!
古参:ぐっ、面目ない……!!
後は頼みます……!!
オー:俺は貴様を赦さんぞ!!
シルヴィア・アルトルージュ!!
シル:おっ!!
オー:ハアアッッ!!
シル:ぐっ!?
オー:貴様が存在しなければ!!
シル:何をほざくか!!
あの男の野望、止められなかったのは何処のどいつだ!?
オー:ぐおっ!?
……う、ぐっ!!
ピエ:陛下、御自重下さい!!
如何な貴方とは云え、その大剣を受けるには膂力が!!
オー:黙れ!!
……確かにそうだ。
なまじ才があるのも考え物よ、俺は皆に甘えてばかりで、
ぬるま湯に浸かり国が育つのを良しとしてきた。
シル:惰弱者め!!
ならば此のまま断ち斬れろ!!
オー:ぐ…が……!!
……ウオオオッッ!!
シル:な、何ッ!?
ピエ:あの一撃を……跳ね返しただと!?
オー:其れでも……其れでも俺は!!
隊長:グルルッ……ギャバッ!?
オー:俺にはッ!!
古参:グオオッッ……ゴファッ!?
オー: ……詫びはせんぞ。
お前達は俺の友だ、ならば必ずや報いよう……!!
ゆめ、決して砕かれぬ王道を此処に誓う……!!
隊長:その様な御言葉が…ふっ、要らぬ程の主従でありたかった。
……部下達を頼みます。
オー:任せろ。
負わずして何が王か。
古参:おお、陛下をくびきなすった呪いが消えていくのが見えます。
惜しい生だ、ようやくこれからだと言う時に。
オー:良く寝てくれ。
俺も何時か、美味い酒を持ってそっちへ行くよ。
隊長&古参:それは……楽しみですなぁ。
( 間 )( 我が祖国の為に!! )
シル:意気込みだけで此の私に勝てると思うか?
オー:最強であるというのも考え物だな。
わざわざ他人を強化せねば、己の無聊すら慰め切れんのか。
シル:アハハァ……!!
まあ、こんな小細工にも飽きてきた所だ。
いよいよもって進めぬとあらばぶち殺そうかと思うていたが、
存外化けるものではないか。
オー:枷を解いてくれた皆の為に戦う。
そして俺は勇者じゃない、国王なんだ!!
アー:良くぞ言ったッ!!
それでこそ鉄の国の主だ!!
ピエ:御伴つかまつるッ!!
シル:( 微笑 )――。
良い、解った、全部まとめて掛かってこい!!
アー&オー&ピエ:行くぞッ、シルヴィア!!
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