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題名 |
公開日 |
人数(男:女) |
時間 |
こんな話 |
作者 |
三相交流 |
2013/08/08 |
3(1:2) |
10分 |
ベランダで語り合う、互いの苦悩と羨望 |
りり~ |
A : 女
B : 男
C : 女
「三相交流」
B はぁはぁ・・・暑いのに走らせんなってな・・・全く
A あら、暑いのに忙しそうですね。よっ人気者
B おいおい、それは嫌味か?本当に人気者だったら、こんなに息切らしてここに来る訳ないだろ
A まぁそうかもしれませんね。はい、お水
B おおサンキューな。ごくごくごく、あー生き返る
C 美味しそうな水飲んでるじゃん、あたしにも飲ませてよ
B お前もいたのかよ・・・何だよ暇な奴全員集合か
C 失礼ね。ちょっと昼休み中に抜け出してきただけよ。あんたみたいに外でずーっとうろうろしてるんじゃないわよ。
で?この水飲んでいい?
A いいですよ。今日のお水はミネラルゼロの身体にやさしい水素水ですよー
C あ、腎臓に良いって評判の?さすがお嬢の所の飲み物は違うねー
A ちょっと前に体調崩しちゃったことあったから、色々食べ物や飲み物に気を遣われてるんですよ。
今日は天気がいいので、私白いし紫外線のダメージ直撃なので、この日傘もセットですよ
C いいなーあたしそんなに気を使われたことないよ。うらやましいなー
A その代わり、いつも家の中ばっかりだし。週に1回だけこうやって外に出れるだけですよ
B しかもベランダだけしか出られないんだもんな、どんだけひ弱なんだよ
A これでも体調良くなってきた方なんですよー失礼しちゃうな
C それはそうと、何で全力疾走でここに来てたの?ダイエットでもしてるの?
B 違えーよ。誰がこの直射日光の下で好き好んでランニングするかってんだ。
何か知らねーけど、知らない奴と目が合ったらいきなり追っかけられたからここに逃げてきたんだよ
C 日常の刺激に飽き足らず、とうとう危ない橋を渡り切っちゃったのね。この外道っ
B 何だよそれ。違えって言ってんだろ、疲れさすな全く
A やっぱり人気者は辛いですね
B さっきから言ってるけど何それ
A 家の近くに泊まってたトラックの所に、あなたの写真がしっかり載っていましたよ
しかも触ったら幸せになるって聞きました
C あー聞いたことある!何あんたいつのまにそんな有名になってたのよ
A 映画にも出ていましたし、やっぱり私とは住んでる世界が違うんだなって思いました
B あのなぁ、何を勘違いしてるのか知らないが。それ、俺じゃないぞ
C またまたご謙遜を
B はぁ。今日追っかけられてたのはそんな理由じゃねーぞ
C じゃあ何なんなのさ
B お前らが言ってたのとぜーんぶ真反対。俺を・・・見たら不吉なんだとさ
C は?
B 石を投げてきたり、蹴り飛ばしてきたり、みんなを不愉快にさせるんだよ。
今日だって目が合った瞬間にこのザマだ、飛んで逃げてきたって訳よ
A 何でそんなこと
B 俺もさ、お前らみたいにきれいな奴だったら良かったのかもな。
少し散歩しようとしたらいつもこんな調子だから、正直外が怖いなって思い始めてる
A あなたは十分きれいですよ?
B きれいな奴がこんな扱い受けねーよ。俺もお前みたいにきれいな・・・真っ白に生まれたかったな・・・
C だああ!!男の癖に女々しい奴ね!
あんたはまだいいじゃない
どうにか誰とも合わない様に避けてれば、不吉とかも言われないで平和に暮らせるでしょ?
でも私はあんたとは違うの!私は、店の看・板・娘な訳、分かる?
B さっぱり分からない
C ほんっと低脳ね。看板娘ってことは、それだけ多くの人と接する機会が多いってことよ。
そのせいであることやないことを目の前で話をされるのは日常茶飯事なのよ
A あなたも人気者なんですね
C うん、そこの女々しい奴と比べたら人気者である自信があるわ
B あーじゃあそこまで人気者なお前に何の不満があるのかなー
C はいはい、興味ない空気がぷんぷん伝わってくる言い方だけど、話を振ってくれてありがとねー。
私はね、この魅力と美貌でたくさんの人の心を癒してきた自信があるの。
皆がかわいいかわいいって笑顔で私を褒めちぎるのよ
B キャバ嬢の自慢話かよ
C 誰がキャバ嬢よ。私は自分自身に自信があるわ、皆を虜にする力があるって自負してるわ。
・・・でも私には足りないものがあるの
A 足りないもの?何があるの?
C それは・・・私が女だからよ
B は?・・・お前まさか・・・男になりたいの?
C そうよ!男になりたかったのよ!だからあんたみたいに女々しい男見てたらほんとむかつく。
その性別よこせって感じよ。やってらんなくなるわ
A あなたはきれいでかわいくて人気者なのに・・・どうして?
C 私が女って知るとね「男だったら珍しくてラッキーだったのに、残念だね」って皆口をそろえて言うの。
自分はよくいるありふれた一般的な存在であって、別に特別ではないからちやほやされても勘違いすんなってね。
・・・別にお客さんが嫌味で言ってるって訳じゃないことも分かってるんだけどね。
店の皆も、私が男だったら嬉しかったのかなぁって思うと、何だか頭の中がぐるぐるしてきてね。
ははは・・・だめだなぁ私。こんなんじゃ嫌われちゃうね
B 馬鹿だなお前
C ・・・知ってる
B ・・・・・・あーやだやだ、たくさんの愛を受けている癖して不満たらたら言ってるし
A ちょっと何言ってるんですか
C いいのよ事実だもの
B 違えーよ。そんな馬鹿まっすぐに皆のことを考えてるお前が嫌われる訳ないだろうが阿呆。
・・・男とか女とか関係ないよ。おまえ自身の魅力でいろんな人を幸せな気持ちにさせていることにもっと自信もてよ。
・・・すごくきれいなんだからさ
C ・・・何よ、あんたも同じなのに・・・分かってないのはどっちの方よ
A お互い様ですね
C ほんとあんったに慰めれるなんて心外だわ!
・・・でもありがとね
B そうかよ
C じゃあそろそろ店戻るわ。私が店にいないとまた社長が青ざめちゃうからね
A ほんとは外に出ちゃいけないんですよね?
C こっそりばれなきゃいいのよ
B 俺はずっと外だから、感覚わかんねーな
A 自由でいいじゃないですか、うらやましいです
C 又お嬢いそうな時ここ来るね?良い?
A わぁ喜んで。又おいしいお水用意しておきますね。あ、私そろそろご飯の時間なので中戻りますね
B じゃあ俺もそろそろどっかいくか
C あ、そーだ
A どうかしましたか?
C 名前、聞いてなかった。いつまでもお嬢だと呼びづらいから教えてよ
A 私は、シロです
C わっかりやすい名前
B 犬みたい
A よく言われます
C じゃああんたは?あ、言われなくても分かるわ、クロね
B 何で分かるんだよ!
C あ、当たってたの。二人とも分かりやすいわねー
B お前はどうなんだよ
C あー私は・・・
B どうせお前も俺らと似たような名前だろ、ちゃっちゃと言えよ
C うっさいわね!・・・タマよ
A ミケじゃないんですね
C 女だから・・・せめて「玉」をつけたら男に近くなって縁起がいいかもって言って・・・
B うわ!それ、絶対お前がコンプレックス抱えた主な原因じゃん
C いいのよもう!男でも女でも、私は私!でしょ?
A ですね
B だな・・・じゃあまたな!
A はい、また
C またね
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あとがき
てまこんのテーマ「色」で応募した作品です。
毛色の異なる3匹の話。
家猫、中と外を行き来する猫、外猫の住む世界はそれぞれ違っていて、お互い悩んだり、羨ましがったり。
ベランダで家猫のシロ(白猫)が水を飲みながら日傘の下でのんびりしているところに、
子供に石を投げられ追いかけられて逃げてきたクロ(黒猫)が、ベランダに駆け込んでくるシーンから始まります。
タマ(三毛猫)は会社の看板猫で、お昼休みに抜け出してシロに会いに来てたみたいです。
シロは自身の身体の弱さに苦悩し、クロの何者にも縛られない自由奔放さ、タマの人に尽くし皆に愛される魅力に憧れる。
クロは自身の人を不愉快にさせる自分の姿に苦悩し、シロの汚れを知らない純心無垢な心と労わりの精神、
タマの大勢の人を幸せな気持ちにできる力に憧れる。
タマは自身の男に生まれなかったせいで皆を残念な気持ちにさせていることを苦悩し、
優しく丁寧な扱いを受けているシロの家庭環境と心の清さに憧れ、クロの優しさに心救われている。
それぞれお互いの背中見て、羨望し、自分の良い本質はなかなか見えない。
ある一言で、考えていた悩みがすっと消え、心が軽くなり、嬉しい気持ちになることってあるなぁと思いながら書きました。
てまこん終了後に、ほっけさん経由でほたるさんから嬉しいサプライズ絵頂きました!
自分の書いた作品から、イラストを描いてもらったことが初めてで・・・ほんとめっちゃ嬉しいですw
賞は取れなかったけど、ほんとにわくわく充実してて、楽しい時間が送れました。
シンさんといーくんも話乗って一緒にやるぜ!って言って参加してくれてすっごく嬉しかったなあ。
皆に感謝。
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