題名  公開日   人数(男:女)  時間  こんな話  作者
 お前を殺して私も死ぬ  2013/08/08  3(2:1) 15分   現実なのか、空虚な次元の話なのか  りり~

A綾乃(あやの)  : 女
B優(すぐる)    : 男
C均(ひとし)    : 男


「お前を殺して私も死ぬ」


A  これでよしっと

B  ん?何これバーベキューでもするの?

A  それもいいんだけどねーそれよりももっといいことするんだ

B  へー…って。え、何で窓にガムテープ貼ってるの。今日、天気予報台風くるとか言ってたっけな

A  今週はずっと快晴だよ

B  じゃあ何やってるのかな君は

A  二人で最高なハッピーエンドを作るためには、重要なことなんだって

B  ハッピーエンド?

A  このままだとノーマルエンドかバッドエンドになっちゃうんだよ。だから準備してるの

B  何のこといってるのかさっぱりなんだが。とりあえずその片手に持ってる液体は何かな

A  これ、着火の時にかけるとすぐ火が着くんだって

B  いやいやちょーっとだけ落ち着こうか、ほらそのマッチも手から離そうか

A  えーなんで

B  なんでもいいから。はい、離して。…んっと、何か君は僕に不満があるとか何かなのかな

A  ううん、何もないよ。だからするの

B  意味わかんないよ、その説明は…

A  これができたらね、ずっと二人で一緒にいられるんだよ?
   …急がなきゃ、後であいつが来て、あなたを連れてっちゃうの
   そんなの嫌なんだもん

B  だから何の話してるんだか…

C  すみませーん

A  ほら来た

B  え、誰?

A  ルート分岐

C  あれ、鍵、開いてますね。入りますよー

B  あ、今そっちに行きますねー

A  行っちゃだめ!


ドカーン


C  ちっ。後ちょっとで直撃だったんですけどね。
   気絶させるだけのつもりでしたが、今の威力だと、当たってたら足ぶっ飛んじゃってたかもな、あはははは

B  え…

A  動かないで

C  おや、こんなところにいたんですね。お嬢さん。探しましたよ

A  1年半ぶりかしらね

C  もうそんなに経ちましたかね
   とりあえず…お嬢さんを1年半も閉じ込めた、その犯人を私に渡してくれますかね

B  閉じ込めた?何の話だよ

C  んー?とぼけるのも大概にしてくださいね。大丈夫です、すぐ終わります

A  動くな


リボルバーカチャ音


C  …何の冗談ですか、お嬢さん

B  おい…!なんでそんな物騒なもの持ってんだよ!やめろよ

A  本気よ。あんたがこの人を連れて行くって言うなら…お前を殺して私も死ぬ

B  は?馬鹿!何言ってるんだよ?正気か

A  こっちの方がマシなのよ。こうするしかないんだもん

B  ちょっと、な?落ち着こう?何いきなり思いつめてんだよ、な?

C  彼女は本気ですね。変に刺激したら、私の頭は見事に木っ端微塵ですね

B  お前も何でそんな冷静なんだよ!…おいおい、こんなことして誰が幸せになれるんだよ
   何なんだよ…何か理由があるんだろ!

A  だって…だって

B  何だよ、はっきり言えよ!

A  こいつが生きていると…あなた達二人でハッピーエンドになっちゃうんだよ!

B  …は!どういうこと、それ

C  確かに。私は女性より、殿方を好むのは、事実ですが

B  ぅえ!そうなの!

A  私があなたを連れ出さず、1年半隠れないで生活してたらね
   私そっちのけになって、仲良くなっちゃうんだよ!いろんな意味で!
   そんな未来、絶対おかしいじゃん
   それを止めるために今こうしてるの!

B  あー…だからといって、何も僕に一切説明せず、1年半の間、日光もろくに当たらないこの部屋で
   僕を拘束していた君もおかしいよ…大体そのよく分からない妄想はどこから沸いてきたんだ
   君は予言者か何かなのか?馬鹿らしい


ボサッ本が落ちる


C  ん?何ですかこの本。

A  こいつがハッピーになるくらいだったら、私達二人でバーベキューしながら一緒に眠った方が幸せになれるって思ったんだよ

B  それバーベキューじゃなくて、ただの練炭自殺だよね?どこが幸せなんだよ!
  そして、そこには全く僕の意思は存在していないんだが

C  ほうこれがあなたのスペックですか…意外と結構良い方なんですね
  お嬢さんのいう未来があっても、おかしくはない、か

B  そっちはそっちで何納得してるんだよ、こんな危機的状況だっていうのに

C  いや…ね?これを拾いましてね

B  何ですかそれ?ん…?「こうりゃくぼん」って?

A  そこに全部書いてあるのよ!私達がこれからどうなって、どんな終末を迎えるかがね!

B  …はは、何冗談言ってんの?それは、よくあるゲームの攻略本のことだろ?僕達とは全く関係ない話だ

C  年齢21歳、性別男、偏差値70、スポーツ万能、性格は比較的温和な方
   姉が二人いており、末っ子のため家庭内ではかなり甘やかされて育つ
   多くの人を救う医者に憧れて、医学部合格を目指し一心不乱に勉強をする
   センター試験前日に、机の上から落とした消しゴムを拾ってくれた女子同級生に惚れて、その場で告白
   OKの返事をもらい、初めての経験で有頂天になるも、3時間後に親友に浮気されたことが発覚
   浮気というよりも「その消しゴム好き?」「はい好きですけど?」
   という一連の会話を告白だと勘違いしていたことが原因ではあるが
   そのことが精神的ショックとなり、部屋に一日中こもってしまったため、センター試験を受けずに挫折する
   ふと外に出て、人生の路頭に迷いうつろな目をしつつ徘徊している所にお嬢さんが現れ
   一方的に一目ぼれされるところからこの話は始まる

B  え……なんで僕のそんな詳しい個人情報知ってるんだよ

C  登場人物紹介の欄に書いていますね。他にもお嬢さんと私や、その他のモブキャラの紹介まで書いてありますよ

B  嘘だろ、現実的にありえないだろ、それ

C  これからのルートの進み方次第で、最後にたどり着くエンディングまで書いていますね

A  今まさに、ここがルート分岐の山場なんだから、ちょっと静かにしててくれる?

B  もし、万が一、それが未来のことを書いた本なんだとしてもだな…ここでこいつを殺して、君が死んだとしたら
   君はハッピーになれないだろ?

C  もしここでお嬢さんが私を殺して、その後ルート進行していくと…この本によると
   結果的に、お嬢さんを拉致した犯人として、警察に誤解されてあなたが撃ち殺されることになる。
   お嬢さんだけが生き残る、バッドエンド6「遺された者」になりますね
   あーちなみに、お嬢さんが今選ぼうとしてるエンディングはノーマルエンド1「踏んだり蹴ったり」ですね
   私を殺した後、お嬢さんが自害して、あなたは一人生き残り、警察に捕まり留置されて生涯を終える。
   こちらの方が、一応、あなたは生き残るわけですからまだマシな方かな、と考えたんですね

A  そうよ。だから、私はこっちを選んでるの。分かった?あなたは大人しく、ただ見守ってたらいいのよ

B  いやいやバッドとかノーマルとか区別してる基準がわかんないし。
   もし本通りだとしても…こっちのルート行ったら僕は生き残っても…お前死ぬんだぞ!

A  そんなこと分かってるわよ!何度もその本熟読したんだから、全ルート把握済みよ

B  ここは現実だぞ!その本は……そうだ。何か僕たちを混乱させようとする誰かがつくったんだろきっと

A  そうね。でも、あなたが今発言した台詞、全部本に書いてあった通りだわ

B  そんな…でも、でも!

A  これでおわりよ

C  ちょっと待ってください

A  何?命乞いでもする気?

C  この攻略本なんですが…どうやら私が見るところ…完全な内容ではないみたいですね

A  何を馬鹿げたことを。根拠でもあるの

C  どんなゲームでも、発売してすぐ出る攻略本には、情報が少ないものです
   ほら、これを見て下さい。まだ完全なるルートが書かれていないまま、伏せられている箇所がたくさんあるみたいですよ

A  …つまり何が言いたいの?

C  この本は、完全攻略版ではないってことですよ

B  …でも、それはあくまでゲームの話だけだよね。こういう状況で何そんなくだらないことを

A  あなたは黙ってて

B  ひっ、分かったからそれをこっちに向けないでくれ

A  あんたの考えが正しいとすると…この「今」進んでいる現実を、どうすれば未来が変えれるっていうの?

C  私がそれを言ってもいいんですか

A  特別に許可してあげるわ

C  ふむ、わかりました。
   お嬢様?ゲームというものはですね。全員がハッピーエンド・・・いやゲームらしくトゥルーエンドといいましょうか
   最初からゲームの構成上、そのルートに入る分岐には、すぐには行けないものなんですよ
   プレイヤーが色々な壁を乗り越え、傷つき、救われ、もがき描いた上で得られる真のエンディングということになります

A  真のエンディング…ね。ふん?つづけてみて

C  つまり、私が言いたいことはですね…
   お嬢様が夢見ている最高のトゥルーエンドに向かうためには、全ルート制覇!これが必須だと考えています

B  おーい。それはゲームの中だけの話だよー…って話聴いてる?

C  お嬢様の目指す地点は、この攻略本に書いてあるような
   …表面上にきれいに見えているルートだけを選んでばかりでは、全く話にならないんですよ

A  …じゃあ具体的には、どうすればいいの?

C  恐れ入りますが…
   この本に書かれていないエンディングを見つけ出し、端からつぶしていくということが一番手っ取り早いと確信しています

A  詰め将棋をしていくというわけね
   ふーん…ということは…今とるべき行動がようやくわかったわ
   こういうことね

B  え!

A  全ルートで触れられていない、唯一無二のルート

B  ちょちょちょちょっと…二人とも何こっちを見て…一体何が何だか

C  大丈夫です。これで何度も周回すれば、トゥルーエンドにいけますよ

B  そんな笑顔でいわれる状況じゃないよ
   周回って、ここ現実だよ?1回っきりの世界だよ?二人とも戻ってきて…ね?

A  ふふっ、今回は何エンドかしら。本に書かれていないからワクワクするわね

C  大丈夫、すぐ楽にしてあげますから

B  最悪のバッドエンドかも…


 
     
 
           
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