題名  公開日   人数(男:女)  時間  こんな話  作者
 イタチごっこ 2013/08/31  3(2:1) 15分   ラッ娘かわいいよ。嘘々カワウソ~  りり~

A  : 女
B  : 男
C  : 男


「イタチごっこ」


A  その本っておもしろいんですか?

B  ん、僕も今初めて手に取った所だから、どうだろう

A  何を買うか決めずに、本を選ぶんですか

B  その時の気分で適当に取ってるからね

A  ふーん

B  君は何を探してるの?

A  ラッコの本を見てるんです

B  ラッコ?水族館に居るやつ?

A  かわいいんですよ、この子

B  あまり詳しくはないな

A  ラッコってごはん1日5キロも食べるんですよ

B  そんなに食べるんだ

A  しかも、8億本も毛生えてるんですよ。フサフサなんですよ

B  確かに毛むくじゃらな生き物だよな…で、君は?

A  ん?どうかしたんですか?

B  さっきから思ってはいたんだけど、改めて聞くよ

A  はい?

B  君は誰?

A  ラッコですよ

B  …それはあだ名か、何かなのかな?

A  いえラッコなんですよ、私

B  何のことを言ってるのか、サッパリわからないんだが

A  正真正銘のラッコです

B  どこからどうみても、普通の女子高生にしかみえないけど

A  大丈夫です?ちゃんと目見えてます?

B  めがねを勝手にはずすな、全く。君、初対面だよね?

A  はい、そうですけど?

B  だったらもう少し初対面らしく、距離感とか何かないの

A  何です?もっと近づけっていうんですか

B  ちょっと!逆逆!全く何なんだ、今日は厄日だな

A  こんなにいい天気なのに、厄日とか、時間の神様が泣いちゃいますよ

B  何だよその神様

A  何でしょうね、私も知りません

B  …とにかく、そのめがねを返してくれるか。それがないと全く見えん

A  仕方がないですね。それは貴方にとって大事なものなんですね

B  これがないと生きていけないからな。身体の一部みたいなものだ

A  身体に埋め込んじゃえばいいじゃないですか

B  それは視力矯正やレーシック手術とかを受ける的な意味のことかな?

A  違います。見えるようにしちゃうんですよ

B  そんなのできてたら、皆とうにしてるよ

A  私は普通のイタチから、海に出るのに苦労しましたが、なんとかやっていけてますよ

B  イタチなの?

A  だからさっきからラッコって言ってるじゃないですか

B  いや…うーんなんでもない、もはや聞くのも面倒になってきた

A  ようやく納得して頂けましたか

B  じゃあラッコ…いやラッコさん。貴方はどうしてそんな制服を着て歩いているのかな

A  そこは深く突っ込んじゃいけないところでしょ

B  突っ込んじゃダメなんだ

A  本題に入らせて頂きますけど

B  何

A  それ、頂けませんか

B  ん?これ?後で昼食にって買った分だけど

A  それがほしいんです

B  自分で買えばいいじゃない

A  それが欲しくて、ここまで追っかけてきたんですよー

B  はいはい、仕方がないな。どれが欲しいの?

A  この貝が欲しいんです

B  貝?これ貝の形したマドレーヌだよ?

A  まどれーぬ?

B  食べたことないの?

A  ウナギやエビやドジョウ…じゃなくてっと、ホタテガイやアカガイやツブガイなら食べたことが…

B  ドジョウって海にいたっけ

A  いえ、まわる寿司屋さんで

B  そこは普通なんだ…じゃああげるよ

A  ありがとうございます!よいっしょっと

B  うわ!何やってんの袋の中でぐっしゃぐしゃ、あー

A  あれ、この貝すごく脆いなーほんとに貝?

B  だからマドレーヌだって

A  いただきまーす

B  ここ本屋だって!こんな所で食べちゃだめだって…ってもう遅いか

A  ん、この爽やかで甘い…この味は?

B  オレンジピューレが入ってるって、店長さんが言ってたな。お店の名物なんだって

A  カワエビを思い出すようないい甘さですごくおいしいです

B  海じゃなくて、川なのね、そこは。喜んでもらえたなら、あげた甲斐があったよ

A  貝?さっきからそういってますけど?

B  あーうん。そういう意味で言ったわけじゃないけど、もうそれでいいよ

A  やさしいんですね

B  え?

C  それは僕も知ってるよ、あ、その本貸してくれる?

B  うわ!いつのまにこんなに近くに。あなたまで…いきなり何なんだ?

C  またやけに難解そうな本だな、文字の羅列しかないし。こんなの読み物じゃないね
   ほら、こちらの方が、写真がいっぱいで、見てて分かりやすいよ

B  あのな…俺は、自分のために、本を買いにきたんだ
   そしてあんたは誰なんだ

C  そこの彼女を引き取りにきました

B  知り合いだったのか

C  一応ね

A  何でついてきたんですか

C  お前が無用心で危なっかしいからな

B  ちょうど困ってたところなんだよ、意味分からないことばっかり言ってね

A  それ傷つくなー

C  彼女は嘘をついているからね

B  そりゃそうだ。自分がラッコとか言う女子高生が、真実であってたまるか

A  それは!……ごめんなさい

B  はあ…いいよ、許すから、早くどっかいけよ

A  うん…

C  すみませんね。うちのものが迷惑かけたみたいで。
   今、ラッコの振りをするのがどうにも好きみたいでね、手を焼いてるんだよ
   …何かお礼でも…あ、ちょうどいいや。その本貸して

B  ちょっと!お気遣いなく…って行っちゃった

A  …それを食べたかったのは、本当だから

B  店の名物で、今日最後のマドレーヌだったからね

A  最後だったんだ。ごめんなさい、それを私が食べちゃったなんてひどいね

B  いいんだよ
   ……今日な・・俺の誕生日なんだよ。ケーキって柄じゃないし、なんか甘いもんでも食べるかなって思って
   目にとまったの買っただけだからさ

A  そんな大切なものを、私…

B  だから気にしてないって、君の方が俺よりうまそうに食ってもらえただろうし
   そのマドレーヌもそっちの方が喜んでるだろうさ

A  ふふ…おもしろい人

B  俺も、最初は厄日かなって思ったけど、面白い体験が出来たよ
   今度ラッコって名乗るなら、女子高生の格好なんかしないで、
   8億本の毛が生えた着ぐるみ被って、話を振ったら信じるかもね

A  それは用意するのが大変そうですね

B  よし、いい笑顔になったな

A  え

C  お待たせしました!はい。これお礼の品だよ

B  おっと!重っ。こんな大きな本ほんとに買ったんですか!

C  自分のための、適当な本。探してたんでしょ?ならこれでいいじゃない
   誕生日プレゼント、ってことで

B  あれ?あなたがなぜ誕生日のことを

C  あー…あなたの心の中を覗き見した、とか?

B  え!

C  嘘々ーカワーウソー!そんな超能力みたいなものなんてないって

B  は?カワーウソーって?

C  あ、これちょっと自分のマイブームの言い方なんだよ、かわいいだろ?
   勘違いしないでね、別に可哀そうっていってるわけじゃないからね
   実は、さっき二人が話してたのをこっそり聞いてたんだよ
   ほんと、おどかし甲斐がある人間だな
   気をつけろよ、悪巧みな狐や狸もいるからな
   こいつにも、今後、簡単に人間へちょっかいを掛けないように、強く言い聞かせておくよ

B  はぁ…

A  今日本当に迷惑かけてごめんね
   じゃあまたね!

C  それじゃーな


B  …騒がしい奴らだったな
   で、この分厚い本は何なんだ、開けてみるか
   何だこれ「レッドリスト」?絶滅危惧種をまとめた図鑑か
   あ、ラッコも絶滅危惧種なんだ…知らなかったな
   ほんとにイタチ科の生き物なんだな
   あれ、ニホンカワウソってもう絶滅しちゃってるんだ
   主食はウナギやエビやドジョウなどだったとのことで・・ってあれ?
   なんか聞いたことある言葉の並び…まさかなー…ははは
   嘘々ーカワーウソーってな…え!?


 
 
 
 
     
 
           
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