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題名 |
公開日 |
人数(男:女) |
時間 |
こんな話 |
作者 |
信じるものは救われる |
2013/08/31 |
3(1:1:1) |
20分 |
神だって少しは肩の力抜きたいよね |
りり~ |
A : 女
B : 男
C : 不問
「信じるものは救われる」
B はぁはぁ…随分歩いたな。
ここが噂の祠か
A なんか洞窟のすっごい奥の方まで来たねー帰り大丈夫かな?
B お、見てみろよ!壁の岩の表面がきれいに研磨されてて、装飾も細かく繊細に細工がされてるな。
とても千年以上前に作られたものとは思えないよ
A ほんとだーきれいだね。ほら!上の方も見てみてよ。
天窓があるよ。 こんな洞窟でも外から暖かい光が射しこんでるよ。すごいなー
B よいしょっと。この椅子に座って昔の人は祈りを捧げていたのかな
A じゃあ、試しにお祈りしてみようかしら
B それじゃ、俺も
A ……6億円当たりますように
B 何その欲望まみれのお祈り
A いいじゃない?これも一応ちゃんとしたお祈りでしょ。まぁ言ってみたかっただけだけどねー
B おいおい適当に祈られる方はたまったもんじゃないなそれは
A じゃあ君はどうするの
B そうだなーあるにはあるんだけど、祈ってもなぁ?…わかんねーや、パッと浮かばねーわ
A 何それ。何でもいいのよ?あれしたいこうなりたいとかないのー?
B うーん、なんだろうね。祈るも何も。結局は自分自身の行動力のなさが原因だしなー
今更どうしたいと言われてもなー?
A つまんない奴
B おいおいそこまで言われる程なのかよ
A だって夢がない奴って、何かさ。かっこよくないじゃん
B ないとはいってないだろ!!ただ
A ただ?
B …祈られて願いを完全に叶えられる訳じゃないのに、祈られる方の気持ちってどうなんだろうって思うからさ
辛くなったり、しんどくならないのかなって
A はー?神様でしょ?そんなの楽勝でしょ?っていうかそれが仕事なんだから
B まぁな…そんなもんなのかな
C じゃあ、少しの間君が代わってくれるかな
B ん…?誰だ
A ん?ここには私達しか居ないよ?どうかした?
B そうだよな…いや気のせいか
C 気のせいじゃないよ。ここにいるよ。さあ奥においで
B うわっと何だ
A え?どこにいくのよ、いきなしどうしたの?
C ちょっと先に奥の方を見てくるから、ここで待っといて
A ん?うんわかったよ。気をつけてね
B え?口が勝手に動いて…何で?え?え?
C はいはい、黙ってついてくる
B 手荒い歓迎っぷりだな…何が目的だ
C おやおや、この非現実的動作を受けたにしては…ふん?思ったより冷静な人間ですね。ここは私の部屋ですよ
B 何だよ、神の使いがきたと思ったらここは悪魔の巣窟でしたってオチか
C 人聞きの悪い。「神」も「悪魔」も人間が勝手につけた偶像の象徴でしょう?
どのように考えるのかはあなたの勝手ですが
この清潔な部屋を見て、後者の負のイメージを与えたのだとしたのなら、私も精進しなければいけませんね
B まぁ確かにおどろおどろしい雰囲気は感じないが、それすらもまやかしの可能性があるからな
そりゃ警戒するさ
C そうですね。それは正しい判断だと思います
B で、そろそろ正体を明かしてくれてもいいんじゃない?
C はー仕方無いな。でも何も見えないのは不安だろうからね、よいしょっと
B 本の山の中に隠れてたのかよ。もっと空中からフワッと浮かび上がって幻想的に現れるとかじゃないのか
C それ、漫画の読みすぎじゃないですか?
B はっ。しかも、子供(ガキ)かよ
C 所詮は器ですから、見た目はどうだっていいんですよ。省エネで動きやすくて申し分のない性能ですよ
B 省エネって…随分庶民的な発想だな。
人間を超えたお前らみたいな奴らにとっては地球がどうなったって特に問題ないんじゃないのか
C ふむ。どんな印象を持たれているのかは本で色々学んではいますが、それこそ神それぞれ、じゃないですか?
B 神それぞれ?
C 人それぞれと言った方が伝わりやすいですかね
善意や悪意は皆同様に持ち合わせていますから、それをどう使うかは個々次第ですよ
B ふーんそこらへんは人間と一緒なんだな
C で。先ほども申し出をしましたが、代わってくれないかい
B あ?
C ちょっとだけでいいんだよーたまには力抜きたいんだよ
B あのなー。神様が愚痴を吐いてどーすんのさ
C 神様とか言うなー勝手に僕にそんな名前つけんなー
B おもちゃせがんで泣いてる子供じゃないんだからさ、みっともない
とりあえずその名前が嫌なら、あんたのことどう呼べばいいんだ
C えーっとね。どうせならー人間っぽい名前がいいな…そうだ「三神」って呼んでくれ!
B そりゃいっきに人間らしくなったもんだな
C だって、ほら。そこに書いてたんだもん
B え?あ、壁に文字が書かれているのか。えっと何々
「君は 夏のきらめく太陽。キラキラしてて眩しくて手が届かない人。
見つめているだけで 私の胸は たんぽぽの綿毛のようにふわふわ高く舞い上がる。
この気持ちを早く伝えたいな。 大好きだよ。 サクラより」
…うぇ、なにこれ激甘ポエムか?頭悪い文章すぎる
C それが人の願いだよ。それは最近届いた願いなんだけど、他にも壁中にいっぱい埋まっているよ
B 「あのプッチンできないプリンが嫌いなんで、全てプッチンプリンに変えてください。お願いします」
…はぁ?他にも…。
「この前テストの点数90点しか取れませんでした。100点取らせてって頼んだのに、神様の馬鹿」
…完全に愚痴じゃん。
「おじいちゃんが目を覚まさないんです。神様お願いです。起こしてください」
…うわあ…日常の些細な願いから、切実な願いまで色々あるな。
まぁ、半分以上が愚痴めいたものばっかりだけど
C 今の人間は、自分の想いを吐露する所がないんだろうね。
昔は近所同士で問題を解決して話し合う機会があったんだろうけど
そういうのもだんだん少なくなってきてるからね。
そのツケが、ぜーんぶこっちに回ってくるって訳
B はぁ。じゃあ、お前が言わんとしていることは…
そーいう「人」の願いを受け止めることがしんどくなってきたなーって思ったら
ちょうど手頃な所に俺が現れたから、その仕事を代わってくれないか?ってことなのか
C 理解が早くて助かるね。
それに加えて、君はこちら側に対して同情を示してくれていたからな。半分の理由はそこにあるね
B 半分?じゃあもう半分は?
C もう半分は…ごくん。サクラちゃんに告白する
B ……は?
C もうあの願いのせいで、僕は夜も眠れないのだー乙女センサーがキュンキュンしすぎなんだよー
B はー。お前は本当に神なのか?顔真っ赤にしてじたばたしてんじゃないわ、神が
C いや僕は今日から三神だよ、全く早く覚えてくれたまえ
B きりっとまじめな顔して言っても、何か格好つかねーな、おい
C 僕はさーいつも悩みを受け止めている側なんだからさ、たまにはいいだろ?悩ませてくれよー
B はぁー…つまり感化されて、恋しちゃったってことかい、あんたは
C 恋?嗚呼これが「恋」なんだね!
なんて甘美な響きと心地具合なんだ、ずっとこの渦に溶け込んでいたいくらいだ
B そのまま溶けこんでて問題ないんじゃないの?じゃあ失礼するか
C ちょおーっと待て!話は終わってないじゃないか。代わってくれるのかい、ないのかい?
B 別に代わらなくたって、特に俺には関係ないでしょうが。神の遊びごとに付き合ってらんないよ
C いやいや待てよ、落ち着いて考えるんだ
ここで君が僕を見捨てたなら、この壁一面に書かれている願いは全く解決しないまま、
宙に浮かんだまま残存するんだぞ。
それは大変可哀そうな自体になるのだよ?
B それは…多分時間が解決してくれるんじゃない…俺には関係ないことだ
C 時間があと少ししかない人間だっているんだよ?ほら、さっきのおじいちゃんへの願いだって、その内の1つだよ
B …はー…ったく。なんでこんなことに俺が巻き込まれなきゃいけないんだ。
何も言い返せないだろ…それ言われたら
C じゃあ最後に聞かせて頂くよ。しつこくしすぎは、こちら側への印象を悪くしちゃうことになっちゃうだろうからね。
元は僕のわがままだしね。…少しの間だけ僕と代わってくれますか?
B ………分かったよ
C ありがとう。君ならそう言ってくれると信じてたよ
B で、どれくらいの間交代してたらいいんだ。できれば1年とか区切り付いてる方がいいんだが
C そんなに長い時間をもらうなんてとんでもない。人間の寿命は短いんだからそんなにはもらえないさ。
まあ、1時間あれば事足りるさ。ちゃんと君らしく振舞うし、身体を「返す」までばれないようにするよ
B 1時間?それっぽっちでいいのか。まーそれなら、お前のこと信じて貸してやるぜ
C じゃあ、早速代わるよ
B あ、うん。ってうわああ
C 上出来だね。うまく代われてる
B 痛てて、やっぱ姿は子供のままかよ
C じゃあ行ってくる、あ、離れてても僕と君の考えは通じ合って聞こえてるから安心してね
B ちょっと!本当に1時間でいいのか?さっきのサクラって子どこにいるのか見当ついてるのかよ
C あぁ大丈夫だよ、そこにいるから
B は?それどういうこと
C 待ちに待った愛しのサクラちゃんとご対面かー、緊張してきた、手汗出てきた、トイレ行っておこうかな
B ちょっと待て
C 何だよ気分盛り上がってきている所なのに
B お前…まさか、あのサクラに言うつもりなのか?
C うんそうだよ。何で?
B あのなー…確かにあいつはサクラって名前だよ?
でもな、サクラっていう名前はよくあるありきたりな名前であって、お前の求めてるサクラとは違うと思うぞ
C もうサクラってだけで価値があるんだよ、それだけでいいんだよ
B 目キラキラさせて言ってんじゃねーぞ…お前はサクラって奴なら何でもいいのかよ
C うん、だってサクラだもん、よし行ってくる!
B おい、ちょっと待てってば三神!!痛っ、このちっちゃい身体だと動きづらいな、ちくしょ
A あ、遅かったね?なんか奥にあったの?
C いやあ色々あったよ、わんだふるな物がね
A わんだふる?
B 何言ってんだ、俺!
C 君はサクラ、だよね?
A ん?サクラだよ。どうしたの?もう若ぼけ?
C あーサクラ!会いたかったよ!君と会うためにどれだけの時間を費やしたか!
A …はぁ
B サクラが引いてるじゃないか!やめろよ三神
C 僕はあきらめないよ!引いたって、押し迫るのみだよ
A 近いよ!どうしたの?そんなにテンション高いなんて、珍しいね
C そんなことはないさ
A お酒でも入ってるんじゃないかってくらいの勢いだよ?
C これが本来の僕の姿さ!今までのは仮の姿だったんだよ
A 大丈夫?熱でもあるの?
C うをーーーー!!
B どうした!三神!
A ん?子供の声?
C …サクラの手が…僕のおでこにタッチミー
B ちょっと!お前離せって
A あれ?なんでだろ?勝手に手離れちゃったや
C こらこら手出しちゃだめでしょ、そんな君にはえいっ
B うわ…何しやがった、お前
C 触れないようにしただけだよ。邪魔しちゃダメダメ、約束でしょ
B そんな約束してねーよ
A 誰と話してんの?
C あ。ただの独り言だよ。なぁサクラ何でここに来ることになったんだっけか?
A え?それを私に聞くの?あんたが誘ったんじゃない
C そうだったっけ?僕には、君がここに行きたいって言ってたようにも聞こえたけどな
A ん、何よそれ
C 当たってた?今日の僕勘がいいからなー
A 何も言ってないでしょ!
B サクラをイライラさせんなって、後で俺が戻ったときやばいだろ、おい
C ごめんね。お詫びにこれどーぞ
A え?これ、花束?
C 僕達出会って3年目でしょ?そのお祝いにね
B お前俺の頭を覗き見したな
A らしくないことしちゃって…そんなの私が覚えてる訳ないじゃん
C うーそだ。毎年この日が来るのを心待ちにしてる癖になー
B こいつがそんなこと思ってる訳ないじゃん、お前恥ずかしいやりとりは控えろよ
C やめないよー?サクラは今日僕と二人っきりになるの楽しみにしてたでしょ?
毎年いつもこの大切な日を多人数で過ごしちゃってたもんねー?
A 偶然でしょ!馬鹿馬鹿しい
C えー?そんな態度でいいの?珍しく僕が素直に思ってること言ってあげてるんだから、そっちもちゃんと返してよ
B うわー俺の姿のままでそんな台詞吐くなよ。サクラも気持ち悪がるぞ
A 分かってたなら、どうして3年も何も言ってくれなかったの
B え?…どういうこと?
C ビンゴってことかな
A またそうやって茶化すじゃない?…いつも私の気持ちをはぐらかすよね
期待しちゃいけないって思ってたのに、今頃何でそんな態度見せるのよ
C だってサクラの希望通り簡単に振り向いちゃったら、すぐに手元からするりと離れていきそうじゃない?
欲しいものは苦労して手に入れる方が価値あるでしょ?
A だからといって、ずっと私の気持ちをもて遊んでたっていうことなの?
C もて遊んでた、じゃないよ。こっちも慎重に狙いを定めていただけだよ
A 何それ、ずっと傍にいたのにそんなことしなくていいじゃない
C 僕とて完全な「人」ではないからね?
素敵なレディーの前では、君が僕に対しての確たる証拠めいたものがないと自信がなくなるもんなのさ
A 証拠って、探偵にでもなったつもり?
C 探偵か…それはいい表現かもね。
でも君という証人から得れた情報がないと、僕もこれからの身動きが取りづらいんだが?
A 卑怯な人。尋問するなんて悪趣味ね
C 黙秘したいならご自由にどうぞ。宣誓も行っていないし、裁判をしたいわけではないからね。
でも黙っていたら、何も気持ちは伝わらないんだよ?
A う…それは正しいけど
B え。何頬赤らめてんの、え
C ちゃんと目見て、本当のこと言ってみて
B ちょちょちょちょ何やってんだ!距離近すぎ!三神調子に乗ってんじゃねーぞ!
おい、サクラ!サクラ!!ちっくしょなんでこんなことに
A 君、いつもの君じゃないね
C え?
A あなたは誰?
C 何言ってんの?いつもの僕でしょ?
A うん、目も髪も顔も全部君だね
C なのに何でそんなこと聞くの?
A なんでだろう…私もよく分かんないや
C サクラは、こういう関係を望んでたんじゃないの?
A 望んでたよ。今日だって6億円当たりますように、なんて願ってなかったよ。
…君への想いがいつか伝わりますようにって願っていたよ
B サクラ…お前
C あっさりと言うんだね。三年も隠し通していた恋心なのに
A 彼をどこに連れていったの
C だから僕は僕だって言ってるじゃないか
A そうだね…そうなんだよね
C 何で拒絶した目で僕を見るの?
A そんな悲しそうな目で見つめないでよ。何を信じればいいの…私はどうすればいいの!
C 僕を信じてよ…今楽にしてあげるからね
B おい!おい!!馬鹿野郎!!!それは俺じゃないだろ!
中身が違うって気づいた癖して、身体委ねるのかよ。いい加減にしろ!
A あれ、声が?
B 「返せ」よ。…俺の身体を、サクラを!!
C はいはい、それじゃあ返しますよっと
A え?
B うわっ
A きゃっ
B 痛ててて…あれ?
A 何よいきなり、危ないじゃない!
B わぁ!ごめん
A あれ?…いつもの君に戻った
C そりゃー「返せ」って言われたら返すしかないよね。
元々貸してもらってるだけなんだから、それに従うまでですよ
B そんなあっさり返せるのかよ!何だよ全くもう
A この子…誰?何でこんな所に子供が?
C やあサクラさん。この姿では初めまして、かな
A え?
C どうも、僕が、神です
A は?何の冗談ですか
B はーこいつのせいで、もうどれだけ俺が気苦労させられたか。
噂とは大違いな場所だったな。「想いが伝わる場所」って聞いて…。
これを…お前に渡そうって決意して、ここに来たのにな
A ん?それって…
C サクラさん。君の願い、叶ったかな?
A え
C ほら、夏の太陽で?たんぽぽの綿毛のようにふわふわ?
B え?それって…もしかして
A わーーーー!!やめて!!え?なんで?神様って…?祠(ほこら)の噂は…本当だったんだ!
C 良かったね。ほら今君が馬乗りになっている相手に、ちゃんと思い伝えてね?
A え!あなた身体が消えて…きゃっ
B 待って離れないで!…俺から言わせて?
…さっきさ…サクラが言ってたこと、ぜーんぶ聞いてた
俺ばっかり嬉しいこと聞いちゃったけど、俺も…たくさん、たくさんサクラに伝えたいことがあるんだ
A え…それって…
B だからさ…その…。これから一緒に考えよ?二人のこと、未来のこと
A ………うん!
C ……うんいい笑顔だ。さーて次は誰の願いをかなえようかな
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