題名  公開日   人数(男:女)  時間  こんな話  作者
 非常出口 2014/02/28  3(2:1) 10分  これが押せたら100万円!!  りり~

A  : 女
B  : 男
C  : 男
(面は舞台のツラ、舞台の正面のことです。ト書き部分は演技の雰囲気で加味しちゃってください)

「非常出口」


明転


Aが登場。中央面の方に何かあるのを気づき、近づき、じーっくり見ながら、目を細ませる。



A ん?んんん?何々? 『これが 押せたら 100万円』?うわーうさんうせぇ。何の企画だよこれ。



首をかしげながら、辺りを見回す。スイッチの周りの広告を見る。



A  周りには、テレクラ1分200円から!とか明らかに怪しいダイヤルQ2っぽい1234から始まる番号とか、ヤク個人販売受付しますとか
   違法性大ありの広告シールばっか貼ってあるし…うわぁ…さらにうさんくせぇ



一度Aは舞台をはけようとするが、戻ってくる。



A  でも、100万円かー…かなり大金。このスイッチ押すだけだしな…ちょっとやってみようかなー
   いやいや待て待て、明らかにおかしいし。でもでも!うーん悩むー



座り込み自分の膝を抱え込みちょっと考え込み、立ち上がる。



A  …1回くらいなら押しても…大丈夫…だよね



Aボタン押す。



A  ポチッ!(Aが言う)

B  ジリリリリリリリリリイッリイィィーーーーー!!!うをををを!火事か火事なのか緊急事態には間違いない!
   うををを非常ベルが鳴っている、逃げねばっどこかへっ、逃げるところは?!
   うをっををををやばいっやばいよーー、君もやばいよーー!



Bは台詞と共にAに徐々に近づき、台詞終わりごろにAの肩を持ちおもいっきり振っている様子。



A  落ち着いてくださいっ!!何ですか急に



A、Bを突き飛ばす。



B  あぁ、すまんつい混乱するとこうなってしまって、悪かった。
   でもでも今は緊急事態なんだ、こんな平凡な会話している場合じゃない、さぁ一緒に逃げる場を探しましょうよ、早く!

A  だから落ち着いてくださいって、もうちょっと冷静になってください

B  冷静になれるものか、命がかかってるんだぞ。よくあなたはそんなにのんきでいられますね。
   火事だったらもう下の階まで迫っていて、私たちは既に袋小路状態になってるかもしれないんですよ!
   …いやそうだ、そうなってるに違いない。あぁ、なんて私は今危機に陥っているんだ…これはもう飛び降りるしかない!
   パラシュートを探さなければ!!

A  なんでそこまで予想して、脳内で話が勝手に飛躍しているんですか。
   火事だったら煙のにおいの一つはすると思いますけど

B  うををををを、どこだどこに逃げればいいんだ!!!うあああああををををを

A  聞いてないし…



C登場。何かに警戒するような格好でかっこよく登場。



C  敵か?テロか?戦場か?!宣言せずに突然このようなことを行うとは醜行だな…とりあえず、敵を警醒しておくか。手榴弾、手榴弾っ



C登場した方向に投げる動作。



A  って何してるんですか!あ、あっちで何か今、悲鳴聞こえたんですけど

C  おぉ、こんな所に生存者が二名もいたか。
   若者達よ、ここは戦場だ。敵はこちらを確認すると見境なく襲ってくる冷徹な奴が多い。気を付けろ

A  だからってあんなことしていいんですか?!(指差して)

C  人には決めなければいけない時があるんだ。それが今だっただけだ

A  …

B  あの、先生!!それより早くここから脱出する方法を見つけましょう

C  先生!…言い響きだ二十年前を思い出すなぁ、あの自衛隊長官だった昔を…。
   おっと今は思い出に不照ってる時ではないな。こっちだ!先に脱出先は確保してある

B  さすが!!

C  戦士たる者、いつ何時でも後先のことは考えるように日頃から行っているのだよ。さぁ急げこっちだ!



Cに誘導されてAとB移動。
扉がある。



C  ここに脱出扉がある。(扉を開ける)見てみろ、二人とも

B  うわぁ、高っめっちゃ高

A  …

C  そしてここに二つのパラシュートがある。これを着てここから飛び降りる事になるのだが、今現在ここにいるのは三人。
   なので、ここに一人残らなければいけないことになる

B  僕はもちろん降りられるんですよね?こんなとこでみすみす死にたくないんですよ

C  まぁ落ち着け、この三人の中で生きる優先順位を決めることにしよう。男二人、女一人が残っているわけだから。
   ここは女の子にまず優先順位が行くべきだと私は考えておる。
   女性は、未来の子孫をつないでいく子孫繁栄能力を持ち備えているという点においては、
   このパラシュートを手に取る権利を持っていると言っても過言でないだろう

A  え…まぁ、女ですけど、私はそんなに興味は…

C  それ以上は言うな、遠慮はいらん君は決定。そして残った男二人。
   つまり君と私だが、年齢的に見て私の方が年は食っており、君は未来有望な若者…生きる権利は君にあると言える

B  やった!!じゃぁ僕にパラシュートをくれるんですね

C  本来はそうすべきなのだが…実はな、私には妻と娘二人いてな。
   その娘ときたら、ほんっと生まれたときからもうかわいくてかわいくて!…名前は愛と夢っていうんだよー。
   そんでもって愛と夢がさ「パパいつもお仕事ご苦労さまぁ」とか「将来パパのお嫁さんになるんだ」とかすごく嬉しいこと言ってくれちゃう訳よ。
   もう、それがたまんなくかわいくてもうメロメ…

AB …

C  …いや!別に君を責めてる訳じゃないし、助けを乞うてる訳でもないんだよ…じゃぁパラシュートを渡すぞ。はい、どうぞ(Aに渡す)

A  …あ、ありがとうございます(微妙な表情)

C  それでは、次に君(Bに)

B  …



C、Bに渡したパラシュートを離そうとしない。



B  …あの…

C  いや、分かっているんだ!君に私より生きる権利が絶大に大きく傾いているんだ。
   頭では分かってはいるんだけど、分かってはいるんだけど…愛と夢が幼稚園に通い出したばっかりなんだ。
   毎朝私が出勤の際に送ってあげるんだが、この前バレンタインデーに一緒に私にチョコレートを作ってくれてな。
   そこに「パパ大好き」って書いてあるんだよ…もうそんなこと考えてたら…こんな所で死ぬに死にきれなくてっそれで…

B  僕も生きたいんです離してくださいっ

C  私も元・自衛隊長官の身でありながら、こういう場では国民の安全性を考えた策を取る必要があるということは分かってるんだ
   …分かってはいるんだ



CがBに渡そうとしたパラシュートを離さない様子を見て、Aが自分のパラシュートを差し出しながら台詞。



A  いいですから、私のを使ってください!!(Cに)

C  だが、そうしたら君の未来が

A  私の未来なんてどうでもいいですから!むしろ気にしなくていいです

C  そんなこと言われても私の自衛官長官の身としてそんなことは決して…

B  もーらっい!!


B、AがCに差し出した方のパラシュートを奪う。


C  あ!

B  じゃぁ一足お先ーっ



B扉から飛び降りる。



C  あぁぁ…行ってしまった



C、Aに差し出したパラシュートを自身の胸に押し当て、どうしても渡したくない様子で台詞。



C  分かってはいるんだ、君は女性であり、私より生きる権利が大いにあるということを!
   …それでも私には妻と愛と夢が帰りを待っててくれていて、それをないがしろにしたくはないのだがそれには…

A  ごちゃごちゃ言わないで、さっさと行っちまえ!(蹴りを食らわす)

C  愛!夢!今パパいくよー!わーい!!(C落ちる)



C扉から飛び降りる。
Aは扉から二人の様子を見る。



A  うわー。さすがに五階からじゃ全然パラシュート開かないよね。
   二人共、木に引っかかちゃってるよ。辺りの人めっちゃ注目してるし



非常ベルが鳴り止む。



A  あ、ベル鳴り止んだや。ちょっとさっきの所に戻ってみよっと



スイッチのあった部屋に戻る。



A  『これが 押せたら 100万円』…あれよく見たら、あ



はがす動作。



A  これ…広告のシールが重なってるだけだ…何々。
   【これが非常スイッチです】【スタンプ全部押せたら豪華景品が当たる!】【即日貸し!電話1本で100万円】だって…
   何だ3つの広告が重なって勘違いしただけだったのか



パトカーの音が聞こえてくる。



A  やっば…パトカーまで集まってきちゃってるし。
   ん?あ…あっちが非常出口か。いこっと



Aはける。





暗転




   
 
       
inserted by FC2 system