題名  公開日   人数(男:女:不問)  時間  こんな話  作者
 修理工とまじない屋の平凡な一日(鈴編) 2015/06/04  5(1:1:3)or4(1:1:2) 40分 知り合いに特注して、リッツのためだけに作ってもらった鈴です  りり~

 カリヤ  : 男 …野良猫に追いかけられ困っている人。独身。
 ケイ    : 不問(台詞少なめ) …修理工。手先が器用。
 リサ    : 女 …ケイの助手。まじないは使える。
 モコ    : 不問 …まじない師。リサに。こき使われている。肩の上に元依頼人のネズちゃんを乗せている。
 リッツ   : 不問(台詞少なめ) …カリヤが飼っていた猫。プラチナの鈴をつけている。

※ケイとリッツは、兼役できます。
その場合は4人(1:1:2)です。

注意
※猫の鳴き声の台詞の箇所は、皆で適当に好きなだけニャーニャー鳴いてください。

  2箇所だけあります。




「修理工とまじない屋の平凡な一日(鈴編)」



カリヤ:…はぁはぁはぁあああ!!すみません!今、ここ開いてますか?

ケイ: いらっしゃいませ。おやおや、どうしました?そんなに急いで入ってこられて…。
    開店時間よりは少し早いですが、どうぞお掛けになってお待ちください。
    今、何か冷たい飲み物をご用意します

カリヤ:はい、じゃあ遠慮なく座らせて頂きます!ふぅー疲れた

リサ: …今日は、やけに外が騒がしいなー?何かあったの?
    ってお客様?まだ開店前なのに、珍しいなー
    おはようございます、お客様

カリヤ:おはようございます。ご無理言って、先に入らさせて頂きました…

リサ: すごい汗!その服、とりあえず脱いだほうがいいんじゃない?
    めっちゃくちゃ暑苦しそうに見えるんだけど…

ケイ: お待たせいたしました。
    どうぞ、はちみつレモンです

カリヤ:ありがたい!頂きます!
    ごくごくごく…んーキンキンに冷えてて美味しい!
    生き返ったー

リサ: …ケイさん

ケイ: ん?どうかした?リサさん?

リサ: あの人…店に入れちゃって、本当に大丈夫なの?

ケイ: え?どうして?

リサ: だって…見た目、明らかに不審者だよ?
    すごく急いで、ここに来たみたいだし、何ていうか…怪しさ全開の格好してるし…

ケイ: そうかな?僕には普通の人に見えるけど…

リサ: 普通の人が、あんな目だし帽なんて着る?全身真っ黒な服だし。
    まるで、漫画に出てくる銀行強盗の逃亡犯…

ケイ: 確かに…言われてみれば、すごい重装備してるね。
    でも、外見だけではどういう人かは判断できないよ

カリヤ:それは…こうやって、顔を隠して、服装を変えたら、追っかけて来られないかなと思って外に出たんですが…
    全く意味をなさずに、こうやって汗まみれでここに来ることになってしまいました。申し訳ないです

リサ: って…聞こえてた!失礼致しました!!

カリヤ:いえいえ、こんな暑い日に目出し帽と全身真っ黒の格好だったら、誰でも不審がると思います。
    当然の反応だと思いますので、別に気にしていないですよ

ケイ: それにしても…そんなに急いで、何か…逃げてきたと仰ってましたが…一体何から…?

   ニャー!!ニャーー!!ニャニャニャニャニャアアアア!!!(ドアの向こうから複数の猫の鳴き声)

リサ: もしかして…この声?わぁ!猫がたくさん!すごーい
    扉の前にたっくさんいる!!
    これ、全部貴方の家の猫ちゃんなの?

カリヤ:まさか!確かに、つい最近までは飼っていましたが、こんなにたくさんはさすがに無理です!
    1匹だけです!!

リサ: じゃあ、これ全部野良猫なの?
    随分、皆に好かれてるんだね

カリヤ:こんな事今まで一度もなかったのに、ここ、2、3日ずーっとこうなんです!
    初めは偶然後を付けてきてるだけかなって思ってたんですけど、どうやら何か様子が違うなって感じてきて…
    1匹2匹とみるみる増えてきちゃって、この有様です

ケイ: 何か…そうだ!猫の好物のマタタビでも持ち歩いている、とか?

カリヤ:持ってませんよー!このせいで、もう会社にも行きづらくって!
    とうとうこの前上司に猫を連れて会社に来るなー!って怒られたし…トホホ

リサ: うわあ、かわいそう。
    …それで、変装したら、付いてこないんじゃないかって考えて、その格好で出た結果が、それってこと

カリヤ:はい…。最初家を一歩出たときに、近づいて来なかったから…。
    よしいける!って思ったんですけど、三歩先でばれてしまって…。
    あわててこちらに来させて頂いて…
    以前から、何でも直してくれる修理工がいるって、噂には聞いていたんです。
    もう、頼るなら、ここしかない!と思い、こんな形でのお願いになってしまいました

ケイ: そういうことでしたか。んー、じゃあ…。
    まずは、とりあえず、この服使ってもらっていいんで、シャワー浴びてさっぱりしてきて下さい

カリヤ:え、いいんですか?

ケイ: はい。
    タオルは風呂場の横に置いてありますので、お好きなものをお使い下さいね

カリヤ:ありがとうございます。
    それじゃ、お借りしまーす!



リサ: …猫に追いかけられて困っている、か。
    今回の依頼は、又、私の出番かな?

ケイ: うーん。そうなる可能性が高いね。
    ま、話聞いてから一緒に考えよっか。
    じゃ、僕は朝ごはん作ってくるね。
    あ、今日は和食、洋食、どっちがいい?

リサ: んー…パンがいい

ケイ: はいはい、洋食ね。
    それじゃ、卵と牛乳もあるし、フレンチトーストにしますかねー。
    添え物はソーセージでサラダ付き、どう?

リサ: それで、おねがいします!






カリヤ:…ふー!ごちそうさまでした。
    いやあシャワーにご飯に、いたれりつくせりで…ありがとうございます

ケイ: いえいえ。
    それで……少しは気持ちもリラックスできましたか?

カリヤ:ええ、もちろん!
    …最近は落ち込んでる日々が続いてしまいまして、きちんとした食事もろくに摂ってなかったので…助かりました

ケイ: それはいけませんね。
    ご飯を食べないで、体力が落ちていくと、心も一緒に弱っていきますよ。
    心身一体ですからね

カリヤ:そうですね。でも僕の場合は、心から弱っていったパターンかもしれないです

ケイ: …先ほど、落ち込んでいる日々が続いていた…と話されていましたが。
    何かそうなってしまうきっかけがあったんですか?

カリヤ:それは…、あの。
    ちょうど…1週間前に飼い猫が…寿命でなんですけど、亡くなってしまいましてね。
    名前はリッツと言いまして、17年間一緒に暮らしてきた…僕にとっては相方というか…大切なパートナーだったんです。
    最近は動物の合同葬とかあるんですね、それに申し込みました。
    葬式が終わってから、普通にね、いつも通り翌日も仕事に行ったんですよ。
    そして、仕事終わってから、帰ってきた時に…リッツの鳴き声が聞こえないなって…。
    …いなくなったんだなって思ったら、急に悲しくなってしまいまして…
    次の日、有休使って、会社休んじゃいました

ケイ: 17年も一緒に居た猫ちゃんがお亡くなりに…ご愁傷様です。
    …その後から、あの猫の集団が付いて来る様になったんですか?

カリヤ:はい。
    …1日休んだ後、次の日会社に行く最中に、ふと…公園に立ち寄ったんですよ。
    すると1匹野良猫が僕の方に寄ってきましてね。
    リッツによく似た縞々のトラ猫がいたので、頭をなでていたら…にゃーにゃーと他にも猫が少しずつ集まってきて
    猫の集会か何かかな?って最初は気にも留めていなかったんですけど、どんどんどんどん集まってきて…
    これは…様子がいつもとおかしいな、と。
    公園から離れようとしても、ずっと皆で付いて来て…ついには、会社まで付いて来てしまって…。
    そして、先ほど言った通りの始末で、上司もカンカンな訳で…こちらに相談に参りました

リサ: 元々、猫に好かれやすい方なの?

カリヤ:今まで、こんなことは全くなかったです。僕に寄ってくるのは、家にいるリッツだけでした

ケイ: 猫にモテモテの体質かー。それが人間になら非常に嬉しい話なんですけどね

リサ: そういう問題じゃないでしょ

カリヤ:このままだと、会社に迷惑もかけますし、自宅にも最近は猫が集まってきちゃいまして
    ご近所トラブルになりかねないくらいの勢いでして。
    …何か解決する方法ありませんでしょうか?

ケイ: うーん。ここは、ただの修理工ですからね。
    物を直すのは僕の得意分野なのですが、特別、何かが壊れた訳でもないですものね…

カリヤ:多分…僕がリッツ以外の猫を撫でたりしたから…。
    リッツが怒って…こんなことになっちゃったんですかね…?
    リッツ…

リサ: ん?その鈴は?

カリヤ:あ、これはリッツの首輪の鈴です。
    リッツが亡くなってから、肌身離さずポケットにいれてたんですけど…
    この前、猫達から逃げるようとした時に、何かの弾みで、この…首輪の部分と鈴の部分が外れちゃって…

ケイ: 見せて下さい。
    どれどれ…んー。どうやら接合部分の紐が千切れてるだけですね。
    ちょっと待ってください。
    皮の紐で固定しますね
    …っと、これで良し!どうぞ

カリヤ:わぁ、ありがとうございます。
    さすがは修理工ですね、直すのが早い

ケイ: これぐらいの簡単な処置なら、修理する工具さえあれば誰にでもできますよ。
    それにしても…この鈴は、プラチナ製の鈴ですか?

カリヤ:そうです。知り合いに特注して、リッツのためだけに作ってもらった鈴です

リサ: そんな高価なもの!
    リッツちゃんも、さぞ喜んで付けてたんじゃない?

カリヤ:はい。最初、首輪つける時に鈴なんて…付けちゃったら、嫌がるかなーと思ったんですけど。
    付けたら気に入ってくれたみたいで。
    あ、僕にご飯がほしいーって言うときに、自分の鈴を手でくいくいって鳴らして、僕を呼んだりするんですよ
    ほんと…かわいい奴でした。あ、でもリッツが小さい頃に、一度だけ家出したことがありましてね!
    家の中でしか暮らしたことがないのに、どこに行っちゃったんだって、もう探しまくりまして!
    僕の不注意で扉を開けっ放しで、近所の人と話してたのが悪かったんですけど。
    …まさか、外に出るなんて思いもしなくて…
    すぐに辺りを探し回ったんですけど、全然見つからなくて…。
    夜遅くになって、外も暗くて見えなくなってしまって、
    あきらめて、家に戻ったら…にゃーって言っていつもの場所にいたんですよ!
    どこかに隠れてたんだか、もうほんっと人騒がせな奴で…でも、ほっとして…良い思い出です

リサ: …大事にしてたんだね

カリヤ:はい…僕の、唯一の家族でしたからね

ケイ: …そろそろ食器片付けますね。
    あ、そういえば、お客様のお名前は?

カリヤ:カリヤと申します。僕も手伝いますよ!

ケイ: いえいえカリヤさんは、そのままにしていて下さい。
    それに、リサさん…話、聞きたいんでしょ?

カリヤ:え…?貴方が?

ケイ: カリヤさん、彼女も修理工なんですよ。僕とは違う分野のね

リサ: 聞かせて!
    あ、今日はこれから何か予定はあるの?

カリヤ:…はい!是非!あ、後、今日と明日は仕事が休みなので、何も予定はないです
    貴方も修理工だったんですか…。
    女性の修理工なんて珍しい…

ケイ: ん?例のあそこにいくのかい?

リサ: うん。その鈴のことで…少し気になった点があるからね…。

ケイ: リサさんに全てお任せするよ

リサ: カリヤさん。私の知り合いの所まで、一緒にご足労お願いできますか?

カリヤ:いいですけれど…え?どこかへ行くんですか?

リサ: ちょっと変わった知り合いの店にね。それじゃケイさん行ってくるねー

ケイ: 夕飯作って待ってるから、あんまり遅くならないようにねー

リサ: はーい。じゃあ行きましょっか?
    表は猫達でいっぱいなので、裏口からこっそり行くよー

カリヤ:わかりました。ではいってきますー



リサ: ここの細い道を通ってー…茂みを抜けたらもうすぐだよ

カリヤ:こんな猫の通り道みたいな所を歩くんですね。
    わくわくしてきました

リサ: 結構怖がる人が多いんだけどなー、珍しい反応

カリヤ:え?そうなんですか?新しい道や場所を歩くと、どきどきしません?
    僕、この感覚、好きなんですよねー

リサ: ふふふ…それじゃ3秒間、目瞑っててねー。
    途中で開けたら、真っ逆さまに落っこちちゃうから気をつけてねー

カリヤ:わぁ怖い!はい!

リサ: んーーっえい!!
    …はい、着いたよ!

カリヤ:…もう開けていいんですか?
    …わぁあ!大きな木の中に家が!雲まで突き刺さってるみたい
    こんな場所…近くにあったんですね!
    あれ?でも、さっき目を瞑って…あれ?移動してる?

リサ: 細かいことは気にしない、気にしないー。
    この中に知り合いがいるんで、入りましょう



モコ: ふああ~今日はちょっと寝すぎたなぁ。昨日は何しながら寝てたんだっけな…?
    あーそうだ、ネズちゃんの回し車を改良しようと、色々してたんだっけー?
    おはよーネズちゃん。あれ?何げっそりしてるの?
    ランダムで逆転、角度を変えて旋廻するモードなど加えて、遊園地のアトラクションっぽくしたんだったなー。
    ネズちゃん、1回試乗しただけでそんな状態かー。
    年かー?まだまだ若いんでしょー
    ほらほら、元気出してー

リサ: おはようー。
    あ、太陽の位置的には、もうこんにちは?かなー

モコ: あ、いらっしゃい。
    ちょうどお昼頃ですね。
    って、ん?…あれ?ネズちゃん、いきなしそんなに震えてどうしたの?

カリヤ:お邪魔します…中、本当に部屋になっているんだー。すごいなー!!
    え?これ何入ってるんだろ?すごいなー!!

モコ: お、お客さんですか。
    あぁあ、勝手に触らないで下さい、触ると危ない液体もありますので

カリヤ:あ!すみません、つい好奇心で動いちゃって…

モコ: 危ない危ない。
    …普通のお客さんなら、大抵、この雰囲気だけで、怖がるのに珍しい人もいるんだなー

リサ: さっきの道でも怖がらなかったし、カリヤさんは、猫みたいに好奇心旺盛な人みたいね

カリヤ:あはは、よく言われます。
    興味が湧いちゃうと、後先考えずに突っ込んじゃうので…悪い癖ですね

モコ: で。そのカリヤさんは、今回はどのようなご用件で、こちらへ来たんです?

リサ: 実は…カリヤさんの飼い猫が亡くなった時から、ちょっと奇妙な現象に悩まされててね。
    多分、これは原因じゃないかなーって思うんだけど、何か見覚えある?
    カリヤさん、あの首輪を

カリヤ:はい。…えっと…。これです

モコ: …これは…。さっきから鳴ってたのは、この鈴の音かー。
    そのせいで、ネズちゃんが怖がってた訳か

カリヤ:この首輪は…僕が飼ってた猫の…リッツの遺品です

モコ: リッツ。
    …あぁ。プリッツ好きのあの猫ちゃんのか

カリヤ:?!どうしてそれを…?

リサ: モコ、何か知ってるのね?

モコ: はい。覚えていますよー今から10年以上も前ですけど。
    珍しいお客さんだった…というか、さっきの、ほら?
    まるで、そう…あなたみたいな猫ちゃんで…そっくりな反応をしてらっしゃいましたねー

カリヤ:え?どういうことですか?

モコ: あの時は大変だったんですよ…。
    ある日空気入れ替えるために、窓を開けてたら、子猫がぴょーんって入ってきて






リッツ:ニャーー!!!!ニャアアアアアアアア!!!

モコ: わあ!いきなり窓から入ってきて、何ですか?!貴方は!!
    わああやめてください!!新作のドリンクの瓶がああ!!
    ああああ…ひどい…ひどいよぉ…

リッツ:ニャア…ニャアー

モコ: 何か願いがある人しか入ってこれない様に、まじないの結界をちゃんと張ってたはずなのになー
    …もしかして、君みたいな猫ちゃんも、なにか『まじない』したいのかい?

リッツ:ニャー!!ニャニャニャニャ!!

モコ: ……何言ってるか全くわからないよ…。
    あ、ちょっと待っててね!えっと…ここだっけな?
    猫語の…翻訳の…えっとー…あったあった!
    ねぇ、君。これ、飲んでくれる?

リッツ:ニャー!!ペロペロペロ…。
    …!!
    ニャわあああ…すっごい不味いー…うええ
    ひどいもの飲まされた…死んじゃうぅ

モコ: お、聞こえるようになった。
    うん、味の改良は考えておきます。ペロっ…僕は美味しいと思うんだけどなー

リッツ:ひどい味覚の人だー、猫専用と銘売るなら、せめて魚味のラインナップをそろえてよね!
    あ!!私、鯖味がいい!ただのマサバもいいけど…。
    豊後水道の関サバや岬(はな)サバ、屋久島の首折れサバ、土佐清水市の清水サバ、三浦市松輪の松輪サバ!!
    あぁ!!よだれが出てきた!ねぇねぇ、鯖にしようっ!!

モコ: はいはい。考えておきます…で、どうしたんです?
    こんな所に、子猫ちゃんが迷い込んできて…ここが、どんな場所か分かってるのかいー?

リッツ:大体知ってる!だからここに来た!

モコ: おや?知ってるのかー。
    こうやって動物界にも評判が広がって、ついに僕も有名人かー!いやー参っちゃうなー!!

リッツ:いつも変なにおいしてて!変なとこー!って聞いた

モコ: はぁ…世間の評判なんて気にしないよね、そんなもんだもんね。
    …それで、君は何を聞きに来たのかな?どうしたいのかな?

リッツ:…お腹減った

モコ: ……あの…。それ、質問じゃないですよ?

リッツ:そーれ食べさせて!サラダのー!ちょーだいちょーだいちょーだい!!

モコ: あー勝手に棚に置いてある物を取ろうとする!!
    だーめです!これは僕のお昼のおやつです!
    あなたみたいな猫が食べちゃいけないものです!

リッツ:えーーー?!カリヤならいつも1本くれる!
    食ーべるーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

モコ: もー!!!
    …分ーかーりました!!分かりましたから!!1本だけですよ!

リッツ:わぁーい!!もぐもぐもぐ…カリカリしょっぱ甘!おいしー!

モコ: 器用に両手で抑えて食べるんですね…。
    そういえば、君、名前は何て言うの?

リッツ:リッツ

モコ: え?それは今食べてる、お菓子の名前でしょ、そうじゃなくて

リッツ:リッツ!!カリヤが付けてくれた大事な名前なの!!リッツなの!!!






モコ: その後、何度も『もう1本頂戴攻撃』にとことん負けて…僕の3時のおやつはなくなりましたとさ、しょぼん

カリヤ:リッツが…ここに来てたなんて…。
    それに言葉を話すことができるなんて信じられない!

モコ: へっへへーん。それだけ僕の力が偉大ってことだよ!

リサ: それで、リッツちゃんはは何故ここに来たの?
    直接聞いてたのなら、話が早いわね

カリヤ:そうです。
    リッツは何をしに、ここまで来たんですか?教えてください

モコ: ペラペラとまじない事を話すのは、本当は守秘義務があって…と言いたい所ですが。
    カリヤさんは知っておいた方がいいでしょうね。
    リッツさんは、お菓子を食べ終えた後、突然、神妙な面持ちになって黙りこくってしまいましてね。
    もしかして、お菓子食べすぎて、お腹でも痛くなったのかな、と思い心配してたら…






リッツ:ここは…どんなことも、願えば叶うって聞いた。ほんと?

モコ: んー何でもってのは難しいかなー。さすがに僕は神様じゃないし。
    でも、話を聞いてから、実現できるかどうか、一緒に考えるスタイルだよー

リッツ:じゃあ、私でも考えてくれる?

モコ: …人でも、動物でも、心があれば、何でも考えるよ。
    あ、ただし!代金は支払ってもらうからね!
    そうじゃないと、僕だって生きていけませーん

リッツ:だいきん?…それがないと死んじゃうの?

モコ: んー…そういうわけじゃないんだけど。死んじゃう可能性が高くなるというか…
    あれだ。お菓子、食べれなくなっちゃうんだよ、悲しいでしょ?

リッツ:それは、つらい…。
    ダイキンがなかったから、カリヤのお母さんもいなくなっちゃったのかな

モコ: …それはー…多分、全然違うかな?
    その、カリヤって人とリッツは一緒にいるのかい?

リッツ:うん!
    リッツがもっと小さい時であんまり覚えてないんだけど、死んじゃったって言ってた

モコ: それはおそらく…人間の寿命だね。
    誰にだって、生きている時間は限られているからね

リッツ:寿命…リッツにもあるの?

モコ: そうだね。いつか命は燃え尽きる

リッツ:こわい…それは、いつくるの?

モコ: それは分からないねー

リッツ:カリヤ…お母さんいなくなったとき、すごく泣いてた…のうっすら覚えてる。
    リッツがいなくなったら、カリヤ、泣いちゃうのかな?

モコ: おそらく…大事に想ってたら、泣くというよりも、何ていうんだろうな…色んな感情に苦しむと思うよ

リッツ:リッツは、カリヤを悲しませたくない。一人ぼっちになんかさせたくない

モコ: …それが、君の願いかい?

リッツ:うん。寂しくないようにしてあげたいの。
    リッツがいなくなっても、カリヤには元気でいてほしいの!

モコ: まだ若いんだから、まだまだ一緒にいれるよ?そんなに心配しなくても…

リッツ:でも!寿命はいつくるか分からないものなんでしょ?
    じゃあ、今のうちに、このもやもやをどうにかしたいの!だめ?

モコ: だめじゃないけど…うーん。
    でも代金をもらわないとなぁ…何もなしには…ちょっとなぁ。しかも子猫相手だし

リッツ:子猫じゃないもん!大きくなるもん!
    こんなにジャンプできるようになったもーん!

モコ: 暴れないの!!全く、そこが子猫なの!…ん?この鈴…え?!
    何これ、なんでこんな素材使ってんの?!馬鹿じゃないの?!

リッツ:えー?カリヤが、パートナーの証って言って付けてくれたの!
    かっこいいでしょ?キラキラしてて好きー!

モコ: …動物のペット如きに、こんな…プラチナ製なんて…どこの富豪だおい…

リッツ:ペットじゃなーいー!パートナーなの!!

モコ: はいはい、分かったから暴れないの!…じゃー取引だ!
    この鈴に君のまじないをかけるから、君にもし寿命がきたら、これ僕に頂戴!

リッツ:やだ!

モコ: 即答かよ!
    お願いだから、少しは迷ってる素振りくらい見せなさいよ…

リッツ:これはカリヤから貰った大事なものなの!渡さないの!!

モコ: でも、それじゃ、願いかなえられないよー?

リッツ:え!う…うぅぅ…うううーーーーーーーーーーーーーーーーーー

モコ: あーあー泣かないの。
    全くもう…あーあーあー分かりましたよ!
    後払いで君の…ええっと、パートナーのカリヤくんだっけ?
    請求するから!まじないかけたげるから…泣かないの!!

リッツ:やったー!!
    じゃあね…今から話すように、ちゃんとかけてね!
    にゃにゃにゃーふっふっふーん♪






モコ: 満面の笑みのリッツさんを見て、やられたなーって思いましたけど。
    でもまぁこうやってカリヤさんにも会えましたし!遅くなりましたが、請求の方を…

リサ: ちょっと待ちなさい。
    まだまじないの詳細を聞いてないんだから、そこちゃんと話しなさいよ

モコ: 先に料金をもらいたいのになーこっちも利がないと動けませんしー

リサ: …なぁに、モコは私に喧嘩でもうってるの?

モコ: いえいえいえいえいえ!!!そんなことありません!!ほんと…こわいなー
    あー…えーっと簡単なまじないですよ?その首輪貸して下さい

リサ: そのまま持ってくんじゃないでしょーね?

モコ: そこまで僕は姑息な奴ではありませんよー。
    えっと…じゃあまじないの内容を言いますよ?
    ……この首輪を、別の猫ちゃんに付けてあげたら、それでまじないは終了です

カリヤ:え…?そんなことでいいんですか?

モコ: はい。それが、リッツさんの願いでしたからね

カリヤ:リッツはなぜそんなことを…?

モコ: 『一人じゃ寂しいから、他の猫と一緒にいれば、カリヤは寂しくないから、そうしてほしい』って言ってました

カリヤ:え…

モコ: なので、猫に首輪を付けるまでは、鈴の音で色んな猫が集まってくるオプション付です。
    あ、これは僕がー付けたら猫探しも早くなるよって言って、付けたものなんですけどね!
    それが、今の猫に追っかけ回される状況を生んでいるわけですね!

リサ: つーまーり…モコのせいってことか

モコ: いやいやいや、リッツさんも賛成してくれましたよ?!
    静かでいるよりも、騒がしいくらいがちょうどいいから、それも付ける!って
    …ほんと、リッツさんに愛されていたんですね、カリヤさん

カリヤ:リッツが家からいなくなった時…まさか僕のために…こんなことをお願いしに、ここまで来てくれていたなんて…
    僕が寂しくならないように…考えていてくれてた…とか、全然知らなかった

モコ: そりゃ人間と猫は会話できませんからねー分かるはずもないないっ。
    まじないの内容と解き方、どっちもお教えしたんですからー…そろそろお代金の方をー

リサ: あんたって、ほんとにそれしかないのね…

モコ: 僕とネズちゃんの生活もかかってるんです!
    同じ飼い主のよしみで分かってくれるはず!

リサ: それペットじゃないでしょ!
    第一まだそのネズミ、戻る気ないの?ほんといつまで居候するつもりなんだか…

カリヤ:あの…代金は…おいくらでしょうか?
    僕の蓄えで足りればいいんですが、できる限り、分割になるかもしれませんが…払わせていただきます。
    リッツの頼みを聞いてくれて、貴方には感謝しています
    リッツの気持ちも、ここで聞けて…本当によかった

モコ: …そう。なら良かったです。
    初めは猫相手だし、どうしようかなって思ってたんですけどね-。
    その言葉が聴けただけで、やってよかったなって思えます…。
    …んじゃー料金の方は…えーっとあの時、壊れたドリンク代も含めないとなーうーん…

リサ: ボッたくるんじゃないわよ?

モコ: わかってますよーぉ。
    じゃあ、お値段は……そうだなぁ………100プリッツでいかがでしょう?

カリヤ:え…?100プリッツ…?
    それは…あの…?
    どこの国のお金の単位…でしょうか?

モコ: あれですよ!プリッツサラダ味100箱でケリを付けようってことです!
    あ、リサさんの所に送って下さい
    後で僕がリサさんの所にもらいにいきますので、それでおっけーです

カリヤ:それで…本当に宜しいのですか?

モコ: はい!

カリヤ:ありがとうございます…後日きちんと100箱!送らせていただきますね!

リサ: …モコにしては、すごく良心的な価格にしたじゃない?
    そんなにさっきの私の脅しが怖かったの?

モコ: いやぁ…元々子猫相手に料金請求したことなかったですし、動物価格なんて決めてなかったですからねー
    今回は貴重な体験もさせてもらって、こちらの価格改定見直しなども考えるきっかけになりましたし。
    だから、特別プライスということで!

リサ: そう…。まぁリッツちゃんの願いも分かったし。
    後はまじないどおり行動して、カリヤさんにようやく平穏が訪れるし、万事解決って感じかな!
    あ、そろそろ夕方か…それじゃ、カリヤさん。戻りましょっか

カリヤ:わ、もう夕方なんですか。
    ここに来て、まだそんなに経ってないと思ってたのに…早いですね

モコ: ここは、すこーしだけ時の流れが早かったり遅かったり変なところなんですよ。
    それじゃ、お気をつけて。これから出会う、新しい猫ちゃんともお幸せにね!

カリヤ:はい!ありがとうございます。
    さよなら!






ケイ: はい、コーヒー。今回も、無事解決して良かったね

リサ: ありがとう。
    …あの後こっちに戻ってきて、三人で夕飯食べたら、すぐにカリヤさん公園に行くって言っていっちゃって
    リッツちゃんの願い通り、新しいパートナーを探しに行っちゃったんだよねー

ケイ: おそらく、リッツちゃんの願いを早く叶えてあげたいって思ったんでしょ。
    あの鈴のおかげで猫の集まりは良さそうなので、すぐにカリヤさんの好みのパートナーは見つかりそうだね

リサ: そうだねー。
    …もうあれから1週間経つし。
    今は、まじないも解けて、あの首輪をつけた猫と幸せに暮らしてるんだろうなー

ケイ: リッツちゃんも、きっと喜んでくれてるよ

リサ: 自分がいなくなっても、相手に幸せでいてほしい、なんて…小さい頃から考えてるのは偉いなぁ

ケイ: 猫は、人間よりも時の流れが早いからね。
    見た目は子猫でも、ちゃんと物事を捉えらて考えられる子だったんだろうなー

リサ: 私も人相応に、そうなりたいものだけど、そんな立派な考えできないなー

ケイ: 大丈夫だよ、リサさんは

リサ: 本当?
    ケイさんはいつも優しいからなーそういうの甘々で、困っちゃう…

ケイ: えー事実を言っただけなのになー…

リサ: …

ケイ: あれ?なんか、僕怒らせちゃった?

リサ: いや、違うんだけど…。
    何か近づいてくる…あれ?この声って?

   …ニャー!!ニャーー!!ニャニャニャニャニャアアアア!!!(ドアの向こうから猫の鳴き声、複数の猫が走って近づいてくる)

ケイ: 先週にも聞いたような…ってうわあ!

カリヤ:おっと!!いつも飛び入りですみません!!

リサ: カリヤさん?!どうしてここに?
    そして、何ですかあの猫の集団!
    もしかして、まだまじないの作用消えてないの?

カリヤ:いや、そういう訳じゃないんです!ほら、首輪はまだここにあります

ケイ: まだ、首輪を付けてないんですか?…どうして?

カリヤ:こう、にぎやかなのも、いいかなって思ったんです。
    あの後、公園まで行って、リッツと同じトラ猫をたくさん見て、どの子をパートナーにするか考えたんですけど…
    決めきれなくって。
    それに、この鈴の音が猫を集めるだけなので、仕事行っている間は自宅に置いておけば付いてくることもないし…
    鈴の音で猫を集めて…何度か、この猫達と遊んでいる内に、皆に愛着が出ちゃって…

リサ: それで…まさかとは思うけど…全員と暮らしてる…とか?

カリヤ:はい。最近は鈴を鳴らさなくても、来てくれる様になりましてね。
    おかげで寂しくない所か、少し忙しくなって…そんなことなんて考えている暇もないくらいで、はは
    …リッツの願いとは、少し違う形になっているかもしれませんが…今僕は、幸せだなって感じてます

リサ: そうなんだ…。
    どういう形であれ、カリヤさんが幸せなら、リッツちゃんも喜んでると思うよ

カリヤ:そうだといいなぁ。
    …あ。でもさすがにこの数がどんどん増えていくのも大変なので、まずは皆を綺麗にして、猫カフェを開いて…
    その中で、この子達の新しい飼い主を探してあげようかなって考えてるんです。
    大変な道のりかもしれませんが、皆、幸せになってほしいですからね。
    がんばります!

ケイ: その猫カフェ…開店したら、是非僕達も呼んでください。
    リサさんと一緒に行きます

カリヤ:わあ、ありがとうございます!
    では、早くその報告ができる様がんばんなきゃ!
    又来ますね!では!!

リサ: …ふふ、すごく楽しそうに話してたし…前よりも元気だったね

ケイ: 良いことです。
    それじゃ、僕達もそろそろお店開けますか?

リサ: はい!
    …どんなものでも誠意を持って今日も修理しちゃいましょう!
    修理屋、本日も開店!



モコ: もぐもぐ…おいしいなー。
    100プリッツじゃなくて1000プリッツくらいに、上乗せしておけばよかったかなー?
    それにしても…サラダ味って、よく考えたらサラダじゃないよね、何なんだろうねこの味。でもおいしいなー
    あ、ネズちゃんも食べる?お、器用だねー。
    あー僕もプラチナ製の鈴が作れるくらい、お金持ちになりたいなー。
    金閣寺、銀閣寺、プラチナ寺!みたいな…
    んー…ちょっと安っぽい響きだな…。
    あー宝くじ当たんないかなー…あーあー。
    いいなぁ…はぁーあ…僕は地道にがんばろっと



     
 
           
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