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題名 |
公開日 |
人数(男:女:不問) |
時間 |
こんな話 |
作者 |
修理工とまじない屋の平凡な一日(志編) |
2015/11/08 |
5(1:2:2)or4(1:2:1) |
50分 |
自分の人生なんだから、自分で決めなきゃって…よく考えた上で決めたことなのに。 |
りり~ |
カナ : 女 …受験生。成績は優秀。夢があるが、タロウに話せていない。
ケイ : 不問(台詞少なめ) …修理工。手先が器用。
リサ : 女 …ケイの助手。まじないは使える。
モコ : 不問 …まじない師。リサに。こき使われている。肩の上に元依頼人のネズちゃんを乗せている。
タロウ : 男(台詞少なめ) …受験生。成績はあまりよくない。カナのことを大切に想っている。
※読み方
1月は、「ひとつき」でお願いします。
※ケイとタロウは、兼役できます(男性の場合)。
その場合は4人(1:2:1)です。
『修理工とまじない屋の平凡な一日(志編)』
ケイ: リサさーん、ちょっと手貸してくれるー?
リサ: んー…。
ケイ: リサさーん?……リサさん?
リサ: あ…ごめんなさい!ケイさん……もしかして…呼んでた?
ケイ: うん。…あ、今日のお昼どっちがいいか聞こうとしただけだから、気にしないで。
今日は、もうお客さん来ないみたいだし。今のうちに、料理の仕込みしようかなって思って
リサ: え?私も用意手伝うよー?
ケイ: いやいや大丈夫。そのまま勉強してていいよ?
リサ: え?違うよー!勉強なんてしてない!
ケイ: でもその本…
リサ: …ほら、これだよー。文字埋めていくやつ
ケイ: これは…クロスワード?
リサ: そうそう。ちょうど問題が目に入って、久しぶりにやってみたら…つい夢中になっちゃってね
ケイ: 懐かしいなー。学生の時に、僕もやってたなぁ。
後、1つが埋められない時、意地になって解こうとしてたなー
リサ: 分かります!でもいつも後一歩って所でやめるから、今回は最後までがんばろうって思って…。
でも…中々に難しくて…苦戦中だよ
ケイ: 机に向かってそうやって必死で問題を取り組んでる姿は、まるで試験前の学生みたいだね
リサ: うわーテストは勘弁。もう二度としたくないなあ…
ケイ: え?どうして?
リサ: あれって終わったら成績貼りだしたりしたでしょ?
それがすごく嫌だったー…あんなことしなくていいのに…
ケイ: リサさん、もうその時から賢かったんだ。あれって成績いい人しかのらないのに。
僕には縁のないイベントだったなー
リサ: テスト自体は好きだったけど、あーいう風に皆から見られるのは好きじゃなかったから…試験前はいつも憂鬱だったなぁ。
……あ、お客様がきましたよ?いらっしゃいませ
カナ: こんにちはー…今ここ、やってますかー…?
ケイ: 大丈夫ですよ。ちょっと、鍋の火を止めてきますので、待っててもらってよろしいでしょうか?
カナ: はい!あ…まだ1時だし、もしかしてお昼休み中でしたか?
リサ: 当ったりー!ああ、でもね。今日午前中一人もお客来なかったし。
いつでもケイさんの気分で臨時営業するので、気にしないで下さいね
カナ: すみません…。でもありがとうございます。
今日ぐらいしか、時間取れなかったもので…友達伝いに、噂を聞いてここに来ました
リサ: 噂…って?
ケイ: お待たせしてすみません。忙しいんですね?
…あ。もしかして、そろそろセンター試験の時期だから…ですか?
カナ: え?どうしてそれを?
ケイ: その鞄に付いている、ほら?お守りが見えましてね。
『学業成就』って書かれているし。
忙しくて時間がない…そして、鞄を重そうに持ってらっしゃったので、参考書でも入っているのかな…と予想してみました
カナ: …すごーい!…探偵さんだ
リサ: えっと…どんな噂を聞いて、ここに来たの?
カナ: あの…どんな願いでも叶えてくれる…って…
ケイ: うーん…どんな願いでも、とはいかないのですが…噂とは怖いものですね。
僕達のできる範囲で要望に応えれる様、最善は尽くします
カナ: 一緒に考えてくれるだけで十分です。それだけでありがたいです。
…今皆、受験前だから誰にも相談しづらくて、それでここに立ち寄らせて頂きました
ケイ: やっぱり皆さんピリピリしてますか?
カナ: はい…教室が全体的にあまり余裕がない雰囲気です
ケイ: 人生が掛かっていますからね。
…その試験の結果次第で将来変わっちゃいますし。
誰しも高3の時期はそういうものですからね
リサ: こっちの世界の試験って、そんなに必死にするものなのね
ケイ: リサさんの所は違うの?
リサ: 私の所は、そんなに時期限定のイベントはなかったなー。
試験自体はあったけど、実力ある子は、年齢関係なしに飛び級してたし。
レベルに応じて将来の職業も自動的に振り分けられるからね
ケイ: それでも自分の夢のために必死になってた子もいたでしょ?
リサ: うーん。そういう子も…いたかなぁ?でも、ほとんど、叶うことはなかったよ。
そんな意志が強い子もいなかったし、上には上がいて…難しい世界だからね。あきらめる子が大半だったよ
ケイ: そうなんだ…皆意外とあっさりとしてるんだね?
カナ: あきらめたくなる気持ちも分かるな…。本当に追いつかないんだもん。
頑張っても頑張っても、点数が上がらないと、結局ダメだってなって…全部投げ出したくなります
ケイ: …それでも今、夢のためにがんばってるんですよね?
あ、僕はここの店主をしている、ケイと言います。あちらが、リサさん。助手をしてもらっています
カナ: 私はカナです。夢のために…なんて、そんな大きな志は…正直私は持ってません
リサ: え?
カナ: 皆が受験しているから、私もするってだけです。
高卒ですぐ就職でも良かったんですけど、親が大学行けってうるさかったから…ただそれだけです
リサ: ふーん…
ケイ: …どこの大学受けるかは、決まっているんですか?
カナ: それは…一応決まっています
リサ: なーんだ決まってるんだ。なりたいものあるんじゃない
カナ: 違います
リサ: ??
どういうこと?ケイさん、ここの世界の大学って、確か自分のなりたい夢に沿った学部を選んだりするんだよね?
ケイ: その通りです
カナ: 皆はそうやって大学選んでいますね。
私は…成り行き任せで、何も決めれていません
リサ: ふーん?
ケイ: カナさんはここに…えっと?夢を見つけにきた?とかでしょうか?
カナ: 違います!全然、関係ないんです!ただ…友人と仲直りしたくて…ここに来ました
リサ: 仲直り?ケンカでもしたの?
カナ: それが…分からないんです。最近話すこともできなくて、いつも避けられてるんです
何か、私が怒らせることをしちゃったのかもしれません
ケイ: その友人さんも、受験生ですか?
カナ: はい。友人は…あ、タロウっていう奴なんですけど、近所に住んでて、昔からの幼馴染なんです
小さい頃から何でも相談できて、気心知れていて、仲良かったんですけど…。
1月(ひとつき)前くらいから…なぜか、ずっと話すことができなくて…
リサ: 直接話しかけても無視されるの?
カナ: いや…話しかけようとすると、いつも邪魔が入ると言うか…。
この前なんか、プリント渡そうとして、タロウの机の前に近づこうとしたら、
プリントが風に飛ばされて見事にタロウの机に綺麗に乗ってたり。
お昼を一緒に食堂で食べよって誘おうとしたら、ハトがいきなり飛んできて、私のアンパン取ってかれちゃって、
追いかけても追いつかなくてあきらめて帰ってきたら、机の上にカレーパン乗ってるし。
タロウって叫んで呼んだら、偶然クラス内に1~8組までのクラスのタロウが全員集合していたりするし…
リサ: …実害は被っていないけど、見事なかわしっぷりだね
カナ: 精神的には実害出まくりですよ…。
タロウに直接無視されている訳ではないんですが、結果的には避けられているという…
ケイ: 友達を介して頼んでみるとかはどうですか?
タロウくんと話したいって言えば協力してくれるのでは?
カナ: それもやってみたんですけど、偶然友人に急用ができたり、担任に呼ばれたり…ダメだったんですよね…
ケイ: ううむ…もはや打つ策なし、ですか
カナ: そうなんです。それで、こちらにお願いしにきました。
嫌われてるなら嫌われてるってはっきり言って欲しいし、勘違いなら勘違いで安心するし。
本当は本人に直接聞きたいんですが、それも難しい状況なので…お願いできますか?
ケイ: そうですね…このまま曖昧な気持ちのまま受験に挑むのも良くないですし…リサさん、どうですか?
リサ: うーん…。友達と仲直りできるか…まではわからないけど。
話せる機会を作れるようこちらでどうにかする…というのはどう?
いかがでしょうか?カナさん
カナ: それで大丈夫です!お願いします!
リサ: 分かりました。私の友人のモコに少し協力してもらう形になるので、少しご足労お願いしますね?
カナ: はい、問題ありません
ケイ: モコさんは、少し偏屈な性格している方ですが、根は良い方なので安心していいですよ
カナ: へ、偏屈…ですか
リサ: ふふふ、緊張しないで。じゃあ早速、日が暮れない内に事を済ませれる様、出発しますか!
カナ: あ、はい!よろしくお願いします!
ケイ: それじゃ、気をつけてね。タロウさんと仲直りできること、祈ってるよー
リサ: いってきまーす
カナ: ここって…なんか、さっきとは雰囲気違いますね?
リサ: そうかな?
カナ: いや…だって、この下、なんかぐるぐるしてて、ドロドロしてて…現実とは考えられないような色してますよ?
リサ: へぇ…貴方にはそう見えるんだー…
カナ: え?
リサ: あ、そろそろですね…。3秒ほど目瞑っててください!絶対途中で開かないでね!
開いちゃうと、そこのぐるぐるドロドロに落ちちゃうからね
カナ: えぇぇ?…分かりました。んっ!!
リサ: いっくよー。えいっ!!はいっ。着いたよ!
この中です。入っちゃってねー
カナ: あ、はい。お邪魔しまーす…
モコ: んーっと、どの色にしよっかなー。迷うなー。
青色は冷静になって集中できそうだし、
赤色は闘争本能が上がってパワー出そうだし、
黄色は良い緊張感で没頭できるようになりそうだし…。
あ~迷ったらレインボーにしたくなるけど、ダメかなー?
ネズちゃんはどれがいいと思うー?…っていかにも興味なさそうな顔しないでよー。
ほらほら、選んで。選んで。
カナ: あ…あのお…?
モコ: ん?あ、ちょうどいいや。君はどれがいいと思う?
カナ: え?ええ…っと急に、そう言われましても…
リサ: はいはい。モコー。お客さんを困らせないの
モコ: あ、リサさん
リサ: 知らない人が入ってきても、全く驚かないのね。初対面じゃないの?
モコ: いや?初対面だと思いますよ、多分
リサ: 多分って…相変わらずいい加減な性格してるわねー
カナ: えっと…
リサ: あ!ごめんね!これが今回協力してくれる、まじない師のモコです!
ほら、挨拶してっ
モコ: 人のこと「これ」扱いしてー。
はーい。まじない師やってますー。よろしくおねがいしますー
カナ: 私はカナです。宜しくお願いします
モコ: じゃあカナちゃんは、どれが好き?
カナ: え?
モコ: 今ね。一般人受けのするまじないでも作ろっかなって、思い立って作ってるんですよー。
ということで、ご意見頂戴したいなーって思いまして
カナ: は、はぁ…
リサ: モコー
モコ: お願いしますよーん
リサ: …仕方ないわね。じゃあそれ答えたら、こっちの話、ちゃんと聞いてくれる?
モコ: はい!もちろん!
リサ: すみません、カナさん。ちょっと協力してあげてくれる?
カナ: …私なんかで良いんですか?
モコ: はい!さぁさぁどれがいいです?
カナ: …あの
モコ: 何ですか?
カナ: どれも…あの…一緒に見えるんですが
モコ: え?それ…本当ですか?
カナ: はい。全部一緒に見えます
リサ: どれもインパクトない普通の色だからねー。そのせいだからかな?
カナ: いえ違うんです
リサ: え、どういうこと?
カナ: 私には…全部…真っ白に見えます、けど…違いましたか?
モコ: ほう…真っ白…ですか。あなたにはそう見える…か。貴重なご意見、ありがとうございました。
…あ、ネズちゃーん。この結果、あのツボの中に入れておいてくれるかなー?頼むねー
リサ: え?私にはそんな風に見えないけど…んー???
モコ: いいんですよ。あ、そういえば仕事の依頼で来られたんですよね?
今回はどういった用件ですか?
リサ: えっと…じゃあカナさん。話してくれる?
カナ: はい。あの…最近、友達となかなか会えなくって…。タロウっていう奴なんですけど。
ケンカしたわけでもなくて、お互い勉強とかで忙しくなっちゃって…すれ違っていまして…。
どうにか、少しの時間だけもいいので、話す機会を作ってもらいたいんです
モコ: ケンカもしていないのに、少しの時間も会えていないんですか?
カナ: はい。会おうとすると、いつも邪魔が入ってしまって、タイミングが悪いこと続きで、もう1月も話せてないんです
モコ: 1月ですか!それまでは会うことはできたんですか?
カナ: はい。毎日のように通学も一緒で、お昼休みも一緒に食べてました
モコ: タロウさんって、カナさんの彼氏さんですか?
カナ: え…いえ!そういう関係ではないですっ…
モコ: そうですか…。それでは、1月前頃に何か変わった出来事はありましたか?
カナ: …特には。ちょうど、進路とか決めるために、一緒に話してたりしてましたけど、もめたとかはなかったですね
リサ: カナさんとタロウさんは何ももめていないのに、いきなりあちらから避け出す原因もなさそうなのよね。
偶然の積み重ねが続いてるだけだとは思うんだけど、二人が話すきっかけ作れる?モコ?
モコ: そうですね…。うーん。
これが「相手を振り向かせて恋を成就させたいんです!」っていう要望なら、よくある話なんですがね…
カナ: そ…そういうのは、いらないです!
モコ: メロメロにするまじない、ありますよ?
カナ: 結構です!
モコ: なんだ、つまんないの
リサ: 恋の相談しにきた訳じゃないのよ
モコ: 分かってますよー。少しからかっただけです
リサ: お客さんにそんなことしないの
モコ: はいはーい、分かりましたよーお
リサ: 全く、思ってなさそうに、よくもそこまで表現できますこと
カナ: とにかく!私は、タロウと話が、少しだけでもいいので、できればいいんです。お願いできますか?
モコ: …分かりました
リサ: やってくれるのね
モコ: では『ちょっと近づケール』のまじないを、カナさんにかけますね
リサ: …分かりやすい名前ね
モコ: 今考えました
リサ: …本当に大丈夫なの?それ?
モコ: まじないなんてフィーリングですよ!大丈夫大丈夫!
カナ: 私、何だか不安になってきました…
リサ: ごめんね、こんな奴でも、一応腕だけは確かだと思うから…
モコ: 自信なさげに言わないでくださいよーもう。
じゃあいきますよー?
ちょっと近づケール~ちょっとちょっと近づケール~!ルルルル~ル~!!!
カナ: …えっと…かかったんでしょうか?
モコ: ありゃ…?あれれれ?
リサ: どうしたの?
モコ: おかしいなー?
リサ: なーに?モコ腕落ちちゃった?
モコ: 違いますよー!
カナ: うまくいかなかったんですか?
モコ: うーん
リサ: モコでもそういう時があるのね。意外
モコ: 僕のせいじゃないですよ!…いや僕のせいかもだけど、僕のせいじゃないですよ!!
カナ: えっと…どういう意味ですか?よく分からないんですが…
モコ: カナさん。僕のまじない屋には、初めて来たんだよね?
カナ: そうですけど…?それが何か?
モコ: まじないには、ルールがあってね。そのせいで『近づケール』はうまくいかなかったみたいなんだよね
カナ: ルール?ですか?
モコ: まじないは、重ねがけはできない。まじない師は対象に、一つしかまじないはかけることができないんだ
リサ: じゃあ、カナさんが既にモコのまじないにかかってたって訳?
モコ: そういうことー
カナ: 私、ここに来たの初めてなのに…おかしいです。そんなこと有り得るんですか?
モコ: まー実際こうやって、かけれなかった訳ですし、有り得るよね!
リサ: あ…もしかして…?
モコ: あ、リサさん分かっちゃいました?
リサ: 検討は付いたかも…あくまで予想だけどね
カナ: どういうことですか?私が、こうなった原因があるなら教えてください
リサ: カナさんが何度も何度も会おうとして、会えなかった彼、タロウくん。
モコ、会ったことあるんじゃないの?
モコ: タロウはタロウでも、どのタロウくんかは分かりませんが、ちょうど1月前ほどに会いましたね
カナ: え?まさか…
リサ: ちょうどカナさんがタロウくんに話せなくなった時期と一緒ね。
これは偶然にしたら、出来すぎてる話ね
モコ: 偶然は時に必然で、自然だね!
カナ: …タロウが…この店に来たんですか?
タロウが、何かまじないを頼みに来たってこと?
モコ: さて、それはどうでしょうか?
リサ: もったいぶらないで、白状しなさいよ
モコ: いやいや、僕にも守秘義務があるんですよ?簡単に話しちゃダメでしょ?
カナ: …その店に来たタロウは、どんなまじないをしたんですか?
モコ: だから守秘義務が…
リサ: どんなまじないをしたのか、ぐらいはいいでしょ?
モコ: …ま、仕方ないですか…。良いですよ?元より話すつもりでしたしね
カナ: タロウが…どうして?
リサ: カナさん…
モコ: タロウさんは「カナさんが自分に近づけないようにして欲しい」と、頼みに来られました
カナ: !!私、やっぱり…タロウに何か、嫌な事しちゃったのかもしれないですね
モコ: そうかもしれないですし、そうじゃないかもしれないですねー?
リサ: モーコ?あんた…これって、カナさんに何も知らせずに、まじないをかけてたってことよね?
モコ: …そうなりますね
リサ: そういうことあんまりするの好きじゃないって言ってたのに、今回どうしてそんなことしたのよ?
カナ: 私が、それだけのことをしちゃってたってことですよ、きっと
リサ: カナさん…
モコ: …あー!なんかこれじゃ、僕悪いことしてるみたいになってるー!
リサ: 実際してる、じゃないの
モコ: むー。なんか嫌だな、僕の健全なイメージが悪くなっちゃいそう。
僕も、何でもかんでもこういった、相手が知らない間にこそっとまじないかけちゃう!みたいな事はしないです!
リサ: ほんとかしらねー?
まぁ、いいわ。とりあえず、カナさんのまじない、早く解いちゃいなさいよ
モコ: え?!それは僕にはできないですよー?
カナさんが解こうとしないと解けないです
カナ: どういうことですか?私が解こうとしないとって…?
モコ: まじないをかける際に使用させて頂いたのが、あなたのヨリシロなのでね。
それ次第ってことです!
カナ: ヨリシロ…何ですか?それ?
モコ: 契約する際に必要なものなんですよ。
カナさんのまじないをかける際にも、きちんと使わせて頂きました
リサ: 一体何をヨリシロにしたの?
モコ: カナさんの『志』です
カナ: こころざし…ですか?
リサ: カナさんの心の一部をヨリシロにすることは、タロウくんが望んだことなのよね?
モコ: そうですよ。まじないのことについては、きちんと相談主と話した上できちんと決めてますからね
カナ: 私の中の…その『志』が変わらない限り、このまじないは解けないんですか?
モコ: はい。もちろんです
リサ: カナさんの中の『志』…難しいわね。
心や気持ちといった偶像めいたものだから、明確な解き方が私にも分からないわ
モコ: それは僕にも分からない!難しいね!
リサ: まじないをかけた本人が、それを言ってどうするのよ
モコ: 僕は作用と反作用の法則に従って、まじないをかけたら、解く方法も一緒にセットにしてるってだけですよー。
そうじゃないと、世界のバランスが乱れますからねー。大事大事
リサ: ほんといい加減な奴ね…
カナ: 私はどうしたら…
モコ: そう、深刻な顔しないで下さい。あ、そうそう、ちょっとかわいそうだから、一応言っておきますけど
『カナさんがタロウさんに近づけなくする』まじない、かけてますけど…
『タロウさんがカナさんに近づけなくする』まじないは、かけてないんですよ?
カナ: それは…つまり
モコ: タロウさんが望めば、カナさんに近づいて、話すことは可能ってことです
リサ: なーんだ!それなら話は早い!
私がタロウくんに言って、タロウくんから来てもらう様に話すから!
それで事情を早く聞きましょ!
ね!カナさん?
カナ: …でも
リサ: ん?どうしたの?
カナ: タロウが望んだら、私と話せるのに…今まで会おうとしなかった…。
つまり、会いたくなかったってことですよ?
会いたくないって思われてるって分かってるのに、無理やり頼むのも…悪いかなって思って…
リサ: カナさん…
カナ: 自信がないんです。目の前で「お前と話したくない」なんて言われたら…
私、多分、耐えられないです
モコ: おやおや、じゃあ会うのは難しそうですね?
リサ: モコ…。カナさんにかけたまじないは、カナさん次第で解けるものなのよね?
モコ: はい。そうじゃないと意味ないですからね。解けなくなっちゃったら、それただの『呪い』ですよ?
リサ: カナさん…。怖いかもしれないけど、タロウくんに直接聞かないと、何も分からないままだよ?
カナ: タロウは私の『志』をヨリシロにして、このまじないをかけた。
私の考えが嫌だったから、そうしたんですよね?
モコ: そうかもしれないですし、そうじゃないかもしれないですねー?
リサ: 又、それ…あんた、そうやっていい加減な返答ばかりする!
カナさんの気持ち、少しぐらい察することできないの?
モコ: 失敬な!僕だって、少しくらいは考えてますよ!
考えた上での、僕の正直な答えを返しているだけです!
カナ: あの。リサさん。私…
リサ: ん?モコなら殴っていいよ?
モコ: さりげなくひどい!
カナ: いえ…モコさんは何も悪くないですし、そんなことはしません。
全てタロウが望んでしたことですからね。
…私、あきらめようと思います
リサ: え?
カナ: タロウに会うの、あきらめます
リサ: …あんなに会いたがってたのに、あきらめるの?
カナ: はい。ちょうど、ほら…受験の時期だし、お互い集中しないといけないですしね。
だから、タロウも私の存在が邪魔だったんだと思います。
しょっちゅう、ここが分からない、どうすればいいのかって聞きに行ったりして…。
今思えば、すごく私は、煩わしい、嫌な存在だったのかも…しれません
リサ: そんなこと…まだ分からないじゃない!
カナ: いいんです。もういいんです…
モコ: 本当にあきらめちゃうんですね?
カナ: はい。それが、お互いのために良いんだと思います
モコ: …ほんとに、タロウくんの言ってた通りだなー…
カナ: え?
モコ: だから、あなたの『志』をヨリシロにしたいって、言ったんでしょうね
カナ: え…それはどういう意味で…?
モコ: あ!ネズちゃん…あ、あれさっきの届いた?それで?
うん。何々ー?連絡きた?うんうん、もういつでも大丈夫?うんうん
リサ: こんな大事な話をしてる最中に何よ?
モコ: あー。すみません。さっきネズちゃんに頼んでた分の返事が来てね
リサ: 返事?
モコ: はい。で、今着いたってことなので、ほら、来てますよ?
カナ: え?
タロウ:……カナ
カナ: …タロウ?どうして?
リサ: 本物なの?
モコ: そうですよ?僕がさっき、ネズちゃんに頼んで、呼んでもらいました。
良い子でちゅねー。うわ、そんなに嫌そうな顔しないの。傷つくでしょ?
リサ: 呼んでるなら呼んでるって早く言いなさいよ!びっくりするでしょ!!
モコ: いやいや同じくらい僕もびっくりしたんですよ?
さっきカナさんが、「タロウくんに会うの、あきらめる」って言うから!
タロウ:…カナ、本当にそんな事言ったの?
カナ: …うん
タロウ:そう…
カナ: …
タロウ:…
リサ: モコがそんな事言うから、二人共気まずそうでしょ!バカ!!
モコ: え?え?え?!でもー!!
タロウ:いいんです。なんとなく、こうなるんじゃないかなって、俺も思ってましたから
リサ: …タロウくん。どうして、カナさんにまじないをかけたんですか?
タロウ:それは…カナが、俺に近づかないようにしたかったからです
カナ: タロウ…やっぱり…
リサ: …もし、そうだったとしても、それなら直接本人に言えばよかったじゃない。
何も、こんなに回りくどいやり方で・・・カナさんを傷つけるとは考えなかったの?
カナ: リサさん、やめてください
リサ: でも…
カナ: いいんです。私が…こんなだから、タロウも気を遣ってくれたんだと思います…。
だから…だから…
タロウ:カナ…
カナ: タロウ…会いに来てくれて、ありがとね。
本当は嫌だっただろうに、モコさんから無理言ってお願いされたんでしょ?
タロウ:それは…
モコ: それは、僕から説明しマース!
タロウ:モコさん…
モコ: タロウくんから、最初に僕の店に来た時に「カナが来たら、知らせてくれ」と頼まれていました!
だから、さっきの無理言ってお願いされたわけじゃ決してありませーん!
後、タロウくん。君が今日見たかったもの、はい、これ
リサ: それって…最初にカナさんに、何色に見えるかって聞いてた奴?
モコ: そうです!一般受けのするまじない…俗に言う『お守り』って奴ですね!
実はね。最初来たとき、コレを作って欲しい って、タロウくんから頼まれてたんですよ?
カナ: タロウが?そんな物をどうして…?
モコ: これが、カナさんの見た『お守り』です。
彼女が見えたそのままの色が出るように調整しておきました
タロウ:これは…真っ白ですか
モコ: そうです!見事に真っ白!いやー驚きですね!
リサ: どういうこと…?
モコ: あの『お守り』はね。自分の目指す意志に反応して色が変わるんですよ
青色は冷静、赤色は闘争心、黄色は集中力とか。
大概混ざり合ったり、目指すものや夢によって変化していくものなんですが…
カナさんのには、色がない、真っ白!つまり…
リサ: 目指すものが、何もない…ってこと?
タロウ:カナ…お前。進路どうするの?
カナ: え…私は…前も言った通り、タロウと同じ大学…受けるよ?
タロウ:…学部は?
カナ: …特に決めてないけど…。タロウと同じ学部が良いかなー…行けたらだけど
タロウ:お前、俺より頭いいじゃん。そんなの…行けるに決まってるだろ
カナ: ははは…何言ってんの?ちょっとしない間に私どんどんダメになってるんだよ?この前も順位落ちたし
タロウ:それ、お前わざとだろ
カナ: …え?何、言ってんの?
タロウ:聞いたぞ。塾サボってんだってな?将来どーでもいーとかほざいてるって、お前と同じ塾通ってる奴から聞いた
カナ: …違うよ。私元々バカだし。最近皆どんどん成績上がっていくから、ついていけなくなったんだははは
タロウ:俺のせいか?
カナ: …え?
タロウ:俺のせいでそんなことしてんなら、ぶん殴るぞ
カナ: そんな訳ないんじゃん、何言ってんの?
タロウ:お前嘘バレバレ
カナ: 嘘じゃないもん!!勝手に決めつけないでよ!!
私のこと…何も分かってないくせに・・・っ。
私に近づいてほしくないなら、今日も会いに来なきゃよかったじゃん?
変な同情はやめてよ!!余計なことしないで…もうたくさんよ
タロウ:ああ!何も分からないさ!!
カナが何考えてんのかさっぱり分かんねーよ!分かるわけねーだろ?!
お前がしたいこと全部あきらめて、俺と一緒の大学行くとかいきなり言い出す奴の気持ちなんて全然わかんねーよ!!!
リサ: …え?
モコ: そーゆーこと、ですよ?
カナ: 何…言って…っ
タロウ:カナさ?言ってたよな?ちっちゃい頃から、なりたい夢があるって…
そのために勉強がんばるって言って、夜遅くまで塾まで通わせてもらって、親に感謝しなきゃって…
あれ、全部、嘘だったのかよ?!
カナ: それは…私が、思ったより、成績が伸びなくて…難しいから…
タロウ:………もう、嘘つくなよ。そうやってお前が、嘘の言葉ばっか積み重ねていくの、見てて、俺きつい
知ってるぞ…。お前の志望校、県外なんだろ?
カナ: え…
タロウ:こっから遠くに行くって、出て行くって…そのせいで、お前…あきらめるとか簡単に言いやがって…いい加減にしろよ…?
カナ: ごめんなさい
タロウ:あやまんなよ。
そうさせたのは、どうせ…俺のせいなんだろ?
カナ: 違うよ…私が…。私は、どうしたらいいのかって…ちゃんと向き合えてない、だけ
タロウ:…そうやって迷わせてんのは、俺が原因なんだろ?
カナ: …
タロウ:黙ってちゃ、分かんねーんだよ…。
それとも、あのまま俺から近づかないで、そのままずっとの方が、カナには良かったのか?
カナ: そんなこと、絶対嫌だ
タロウ:だったら、カナがどう考えてるのか、ちゃんと…俺も一緒に考えて、悩んでいきたいから…っ!
だから、一人で悩み抱え込んで、苦しむのだけは、もうやめてくれ
カナ: 私は…、私は…っ!!
リサ: あ…あのお守り…光ってる…?
カナ: タロウは、そんなに私のことよく見えてるのに…なんで私は、見えてないんだろ…
私だって…行きたい。だって夢だったんだもん。
痛いって伝えることができない…動物の痛みを…分かってあげて、治してあげれるような、そんな先生になろうって。
ずっと思って、勉強してきたよ?でも…それは、タロウが側にいてくれたから…頑張ろうって思えてたんだよ…
ちゃんと考えてなかったんだ…私の行きたい学部なんて、そんなに数多くないんだし。
しっかり考えてたら、もっと早くに気がつけてたのに。
いつも考えるのが遅いんだよね?願書書くまで…気がつかなかったんだよっ。
タロウと離れたくないし、夢も…本当はあきらめたくなんかない!!そんな風にしか考えられないんだよ!!!
一緒に叶えることなんてできないのに、必死にどうにかできないか良い方法を探したけど…。
見つけた答えが…これだったって訳…
タロウ:カナ…お前、そんな風に考えていたのか
カナ: 情けない話でしょ?
もうこうするって決めたはずなのに、突然タロウがいなくなったら…頭がぐちゃぐちゃになっちゃって…
訳が分からなくなっちゃった。タロウのせいじゃないよ?
自分の人生なんだから、自分で決めなきゃって…よく考えた上で決めたことなのに。
…どうしてこんなに心がもやもやするんだろうね?
離れたくないから、選んだのに…私、まだ迷って…後悔しちゃってて…何も、前に進めなくなっちゃった
タロウ:…ほんと、馬鹿だな、お前
カナ: へへへ…そうだよね。そう言われて、当然だと…思う
タロウ:あのな、カナ。
俺のことを大切に、その…想ってくれてるから、そうやって泣いて…苦しんで、今しなきゃいけないこと放っぽかして…
一生懸命、考えてくれてたんだな
カナ: …うん
タロウ:でもな?今俺、すっげー怒ってる
カナ: え?
タロウ:なんで一言も、その不安を俺に言ってくれなかったんだよ?
俺…馬鹿みたいじゃん?何も知らないで…お前に『大学生活も一緒に楽しもうな』とか言っちゃってさ。
…その言葉が、どんだけお前の重みになってたのかなんて全然考えもしないで…傷つけてたなんてな。
…そんなに、俺は頼り甲斐ないか?確かに頭もお前には負けてる、要領も悪い、考えなしな行動ばっかやっちまう。
分かってる…。カナに頼りきりな自分も自覚してる
カナ: そんなことない!私の方が、タロウに頼ってばかりだよ!!
タロウ:じゃあ!そんな簡単に、お前の夢あきらめるとか言うなよ!!
カナ: !!
タロウ:したいことするために、行きたい大学行けばいいだろ?
何迷ってんだよ?!俺なんかのことのために、今までがんばってきたことパーにしてどうすんだよ!!
カナ: でも!もうタロウに会えなくなるなんて、私は…!!
タロウ:そこが馬鹿だって言ってんの!!
カナ: …え?
タロウ:俺が、何度だってお前に会いに…行ってやるさ。
たかが、遠くに離れるって言ったって、海外に行くんじゃあるまいし…大げさなんだよ!
…受験終わって進学決まったら、すぐ免許取りに行くから…バイトして、車中古のん買って…すぐ会いにいけるようにするから…
だから、お前が心配することは何もねーんだよ!!
カナ: …嘘
タロウ:嘘じゃねーよ?俺、お前みたいに、そんな意志が弱くて、嘘つく人間じゃねーし。
ほんとのことしか言わねーよ
カナ: …じゃあ、ほんと…なの?
タロウ:…少しは、俺のこと…信じろっつーの…馬鹿カナ
カナ: だって…タロウが…そんなこと言ってくれるなんて夢にも思わなかった…から
タロウ:夢じゃねーよ。
でも…辛い思いさせて、ほんとごめんな
カナ: え?
タロウ:お前にちゃんと、自分の行きたい道、考えて欲しくってさ。
この店で、お前の『志』をヨリシロにしてもらって、俺に近づけないようにまじないを結んでもらったんだ。
…お前がちゃんと、本当にしたいことを、夢の道に進んで欲しかったから…、俺がいない方がって、その時は考えてた。
でも…俺はあきらめわりーんだよな。
カナがもしちゃんと自分の夢に行こうって言って、俺から離れるって決めたとしても…俺は手放したくないって思ったんだよ。
んで、俺もどーにか、俺のできる限りの範囲で、できそーなことを真剣に考えたって訳!
…それが、さっきの答えだよ
カナ: タロウ…嬉しいよ。
そんな風に考えてくれたんだ…私のために、必死に、考えてくれたんだね
タロウ:俺もなんだかんだ、一度決めても決め切れなかったって訳だ。
何度だってどーせ悩むときは悩むんだよ?どーしようもないんだ。
だからさ、もう二度と…一人で悩んだりするんじゃねーぞ?
迷惑?そんなこと考えんな!それが迷惑かどうかは俺自身が決めることだ!
お前の尺で物事を計んな!俺をちゃんと巻き込んで、しっかり考えさせろ!馬鹿
カナ: なんだか…怒られてるような気がしてきた
タロウ:さっきすっげー怒ってるって言っただろ!
少しは怒られとけ!反省しろ!
カナ: ずみまぜん…
タロウ:ったく…俺も、悪かった。
んで…もう答えは、ちゃんと出たか?
カナ: …うん。もう大丈夫
タロウ:そっか
カナ: 私、ちゃんと行きたい大学、受けるよ
タロウ:そっか。…じゃあ、ちゃんと塾行けよ?
お前サボってる間に、だーいぶ進んで付いていけねーかもよ?
目指してる大学、このせいで落ちたりしたら、今までの全部笑っち…
カナ: そんなこと絶対しない。
絶対合格する
タロウ:………はいはい。
絶対なんて、そんな軽々しく使うもんじゃないよ?
カナ: 絶対、だよ
タロウ:……分かった。
カナがそういうなら、もう俺心配しねーよ。
…いつもの、いい顔に戻ったな
カナ: あったりまえでしょ!…ありがとね、タロウ
タロウ:…あぁ、こちらこそ…な
リサ: …ほんと。二人共…ちゃんと話せてよかったね
モコ: ほーんっと!まじないも解けたし、悩みもなくなったし、これで勉強に集中できただろうねきっと!
ケイ: リサさんも、モコさんもお疲れ様。はいどうぞ。アールグレイのミルクティーです
リサ: ありがとう、ケイさん
モコ: 砂糖はモリモリ?
ケイ: もちろんですよ、モコさん
モコ: さっすがわかってるぅー
ケイ: それにしても…。
最初、タロウくんが来たとき、ほんとは『相手の意志の強さがわかる』まじないがないか尋ねてきただけだったんですよね?
モコ: んん?ええ。そうですよー?
カナさんが何か悩んでるけど、言葉で聞き出すにも、うまくかわされちゃって聞けないならって。
んで、意志を感じた色に反応するまじない…『お守りさん』を考えたってわけですよ!
リサ: なんで『さん』付けなのよ?
モコ: え?なんか、『さん』って付けた方が親近感沸くかなって?
リサ: …そんな理由なんだ。
モコ: それ…お守りとか、言ってるけど、自分の意志に反応して色が変わってるだけなら、直接的なパワーないんじゃないの?
モコ: まーそーですね
リサ: 詐欺じゃんそれ
モコ: いやいや!自分の望む色が呼応して出て、その色が自分の精神に何かパワーを与えるって信じ込めば!
人間なんでもやる気がでるもんですよ?
結局の所…気持ち次第なんですよ。
何事もやってのけるパワーは、気持ち…つまり『志』があるかないか、それだけなんです!
それの少し手助けをしてくれるのが、この『お守りさん』です
ケイ: 確かに、気持ちは大事ですね。
望んで…結果に辿り着くために、人は努力する。
何事も心次第ってことですね
カナ: まぁそうかもしれないですね。
あ、そういえばケイさん?今日、二人の結果発表ですね?
ケイ: あ!そうでしたね
モコ: それなら僕にまかして!ネズちゃん発表の掲示見てもらう様頼んでありますから!
ケイ: え?でも、ネズさんって…外出て歩いて行っても、すごくあの身体じゃ時間かかるのでは?
リサ: あ!もしかして、とうとう人間に戻った?
モコ: 戻るわけないですよー。だいぶあの身体気に入っちゃってるみたいですからね
リサ: は…はぁそうなの?じゃあ、どうやって?
モコ: 以前依頼を頼まれた猫ちゃんに協力してもらって、ネズちゃんを運んでもらいましたよ!助かる助かるー!!
ケイ: え?猫とネズミって…それって大丈夫なんですか?
モコ: ん?多分大丈夫じゃないですかねー?猫ちゃんの頭しっかりくくりつけてますし、多分ですけど
ケイ: かわいそうだな…なんか
モコ: 見たら、通信のこのまじないで連絡すぐくるはずなんですけど…あ!!来ました!!
リサ: え!!来たの?!結果はなんて?
モコ: えっと…えっと…ですね…
リサ: 何よ!もったいぶらないで早く言いなさいよ!
ケイ: 何だか、自分の受験の時を思い出しますよ…どきどきする
モコ: …
リサ: …え?どうしたの…まさか…え?え?
モコ: それが…
ケイ: ダメ…だったんですか?
モコ: 二人共…合格です!!!
リサ: あああああああもう!何よ心配しすぎて、モコ殴りそうになっちゃった
モコ: なんですかそれ!ひどいですよ!!
リサ: あんたが変な間作るからでしょーが!!馬鹿!
モコ: あー!!馬鹿って言った方が馬鹿なんだー!!
リサ: !!何ですって…
ケイ: はいはいストップー!けんかはやめて!
モコ: あーあ。あの二人も、離れ離れになっても、絶対けんかしまくるんだろうなー。
今週は来るって行ったのに!忙しかったんだよ!とかね!
うまくいくのかなー?
リサ: そればっかりはどうだろうね?
忙しくなると、余裕もなくなってくるし、なかなか会わなくなると、正直きついかも
ケイ: …でも、お互いけんかしても、一緒に悩んで話し合える関係が続けば…。
距離なんて、なんとかなるんじゃないですかね
モコ: …理想論だねー。
理想は空想で空虚でなかなかありえなーい夢物語ー
リサ: それでも夢は叶うためにあるって言うじゃない?
だったら私は願うわよ。カナさんとタロウくんの幸せを!
ケイ: そうですね…僕もリサさんに同じです
モコ: あーやだやだ!そんな不確かなもの、届くはずないのにー
でーも…僕も、そーゆー考え方嫌いじゃないです。
あーまじない解けたんだから、もう一回かけなおしておけばよかったー!
恋のまじない得意なのにー!!
ケイ: きっと…そんなまじないは、二人には必要ないですよ?
あ、今度合格祝いにケーキでも焼いて、二人招待しましょうか?
リサ: 賛成!さ!そうとなったらすぐ行動!
はい、モコ!二人に手紙送ってね!
モコ: え?!僕がですか?!
リサ: あんたはなんだかんだ二人に変なまじないかけたせいで苦労かけさせたんだから、それぐらいしなさいっ
モコ: いやーだってあれは?
しばらく会えないと、お互い考える時間ができるっていうか、ちゃんと冷静になることも大切かなーって僕なりに考えてー
リサ: 言い訳はいいの!はい!送る!
モコ: …はーい
ケイ: …モコさん。ミルクレープも作っておきますから…ファイト、ですよ
モコ: はい…ありがとうございます。
…はぁ、『お守りさん』?僕に救いをくれるのはケイさんだけなんです。
二人も合格できたし、万々歳な結果を生んだのは僕のまじないのおかげのはずなのになー?
あ、ネズちゃんおかえり。え?何息なんか切らしちゃって…え?猫ちゃんから逃げてきたの?
でもあの子、お菓子にしか興味ないはずだから、問題なかったでしょ?
あ、それでもやっぱり怖かったって…?ごめんねー…あ、でももう一回行ってもらうかも…
…って!あーなんでもないよ?!手紙届けるために、もう一回くくりつけるとか言ってないよ?
ああああ!逃げないで!ダメだよ?ってこらー待てー!!
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