題名  公開日   人数(男: 女)  時間  こんな話 テキスト   作者
伝言屋 第01話 言ノ刃(コトノハ) 2014/04/22  4(2:2) 20分 確かに受け取ったぜ、アンタの言ノ刃。   ピンくま

登場人物 性別 その他
心実 慶一
(こころみ けいいち)
19歳
姫子が経営する広告会社の社員。
伝言屋のエースとして活動する元気な青年。
直情的だが、正義感に溢れる。

人の強い感情を固めナイフを作り出せる特殊な能力を有する。
鳳 姫子
(おおとり ひめこ)
27歳

広告会社 兼 伝言屋社長。
人情に厚く姉御肌の頼れる女性。

心実 慶一をいっちー という愛称で呼び、実の弟の様に可愛がっている。

大木戸 咲
(おおきど さき)
16歳

ピアニスト志望の女の子。
暴行事件に巻き込まれ、手に麻痺が残るであろう怪我を負う。
夢を奪われ絶望する彼女は伝言屋に依頼し、事件の犯人に自分の無念の思いを届けて欲しいという。

神代 裕也
(かみしろ ゆうや)
34歳
元プロボクサーだったが、試合中の怪我により引退。
引退後はヤクザの用心棒をし生活していたが、
ある日を境に、通り魔的に女性に暴行を行う様になる。

女性の苦悶の表情に興奮を覚える変態。


伝言屋 第01話 言ノ刃(コトノハ)」


【役表】
心実 慶一  ♂
神代 裕也  ♂
鳳 姫子    ♀
大木戸 咲 & ナレーション ♀





【都内病室】


咲   本当に・・・ 来てくれたんですね・・・・ 伝言屋さん・・・



ナレーション  とある病院の一室。
          横たわる少女とその傍に佇む男が一人。
          少女は男へと必死に語りかける。一言喋るたびに傷が痛むのか、
          少女の顔は苦痛にゆがみ、言葉と共に両の目に涙が溢れた。
          男はただ黙って少女の言葉に耳を傾ける



慶一  すまなかったな・・・ 酷い怪我してるのに無理を言って・・・
      俺は想いを伝えたい本人から、直に言葉を受け取らないといけないんだ




咲   ええ・・・  分かっています。 
     つ・・伝えて・・・下さい・ね・・・ 私の言葉・・・  
     必ず伝えてください! アイツに!! あの男に!!!





慶一  ああ・・・・ 確かに受け取ったぜ、アンタの言ノ刃。
     俺は依頼人から受け取った伝言は必ず届ける。
     アンタの言う、その男の心の奥深くに、しっかりと突き立ててやるよ。

     だから、今はゆっくりと休め・・・・ 





咲   ・・・・・はい




姫子  そうして、いっちーは格好良く病室を後にするのであった~~ 
     でっ、情報のあては有るの?




慶一  ひっ、姫姉!?一体いつからそこに?





姫子  うーん?いっちーが格好つけて、
     ”ああ・・・・ 確かに受け取ったぜ、あんたの言ノ刃” って言ってたところかな?
     この病室の外までしっかりと聞こえてたよ~





慶一  うぐぐぐ・・・ またそんなピンポイントで・・・





姫子  うふふふ~ いっちー カックイー!




慶一  くっ、もう、やめろよな!




姫子  アッハッハッハ・・・・・・・  でっ?  どうなの?




慶一  ああ・・・・ まあ、今回の件は少女暴行事件として新聞にも出てるし、
     警察が捜査している以上、いつも通り御堂の所に行けば情報は得られるだろう・・・




姫子  ふーん、じゃあ~ はい、これ!





慶一  これは?





姫子  クズ野郎の情報~ 神代 裕也 34歳。
     ボクサー崩れのチンピラで、今は【アンデルセン】ってクラブの地下格闘技場に潜伏してる。
     はぁ~あ、本当だったら私が始末をつけたい所だけど・・・ 
     私の力は今回みたいなのには向かないからさ・・・・





慶一  姫姉・・・ 大丈夫だよ。  
     俺が、きっちりとカタつけてくる。

   姫姉と同じ悲しみは、あの子には背負わせない・・・・





姫子  あったり前でしょ~~ しっかりとヤツに味あわせてやりな・・・ 
     自分が犯した罪がどれ程重いのかをね!





慶一  ああ、じゃあ、行ってくるぜ、ひめっ、っと・・・
     この言い方、まだ慣れねーな・・・
     
     行ってくるぜ、社長!





姫子  行ってこい、伝言屋社員1号・・・ 心実 慶一!





【クラブアンデルセン】



裕也  あ゛ぁーーー だりーー 地下での引きこもり生活ってーのはマジで退屈だぜ・・・・
     身を隠すためとはいえ、ショーに出て男と格闘しなきゃならねーし・・・・
     はぁーーー つまらねーーー 俺は女とやりてーんだっつーの・・・ 



ナレーション  裕也はラックから酒瓶を引っ張り出し、無造作に栓を開け口に流し込む。

          酒で不満を飲み下し溜飲を下げつつ、最近出会った少女の事を思い出す。
          怯えて逃げ惑う少女・・・  コブシを受け、苦痛に歪む少女の表情が脳裏をよぎり、
          裕也はいいしれぬ昂ぶりを覚え身震いした




裕也  ふっ、ふくくくはははははははははは!!
     はぁーーーー  あの表情だよ・・・ ああいう表情がみてーんだよ!!

     あー また拝みてーなーー 俺のコブシをやわらかい顔にめり込ませてよ!
     痛てーだろうなー 怖えーだろうなー はぁ~~穴蔵にいるのも飽きたし・・・
     やっぱり・・・ 



慶一  やっぱり・・・? やっぱり・・・ 今から女を殴りに行こうってか?



裕也  あ゛ぁー? 何だお前・・・・・?
     どこから入ってきやがった?ここは餓鬼の来るところじゃねーーー



慶一  神代裕也・・・ 大木戸咲からアンタに伝言だ・・・ 



裕也  大木戸・・・咲? 誰だ・・・そいつ?
     咲って言うことは女か・・・ あーーー 今回俺にボコられた女か~~!?



慶一  ああ・・・ 彼女は今ベットの上だ・・・ 

   

裕也  何だ?お前はそいつの恋人かなんかか?

     つーことは、復讐か!? 念入りにボコられた女がベットでお前に言ったのか~?
   
     俺に激しくされたあの夜が忘れられないの~ とかよぉぉおお!?
   
     ギャハハハハハハハ!!!!



慶一  下衆野郎が! お前にはしっかりと思い知らせてやるぜ!!



裕也  はっ、 ナイフか・・・ 餓鬼がのぼせやがって!
     そんな物で俺に勝てるとでも思ってるのかよぉぉおお!!!


慶一  なっ!? 早い!!



裕也  はっ、腕に覚えがあるのかしらねーが、俺の敵じゃねーーーな!!
     オラッ!オラ!オラァーーー!!!



慶一  ぐぅうッ!



裕也  ハッハ!! ボディーがお留守だぜー




慶一  ぐぅおぇ!! ゴホッ! ゴホッ!! 




裕也  どうしたどうしたーーー 粋がって来たくせに、殴られっぱなしかよ?



慶一  くそっ!!



裕也  おいおい・・・ なんだその大振りな攻撃は?
     お前ナイフの扱い方わかってんのかぁ~?



慶一  はぁー はぁー 予想以上だ・・・ こいつ・・・・




裕也  まったくよぉー とろすぎんだよ!



慶一  ぐあっ!!




裕也  ハッハッ! 俺がナイフの扱い方ってヤツを教えてやるよッ!




慶一  てめっ!返しやがれ!!




裕也  はーーー だりぃーんだよなー
     やっぱ、男なんて殴っても全然燃えてこねしー
     お前も全然いい表情みせねーし・・・・
   
     このナイフをお前にぶっ刺して終いだ・・・ 最後くらい良い表情見せろよぉ?



慶一  ハァ・・・ハァ・・・  なあ、お前は・・・ 彼女がどんな人間か知ってるか?



裕也  あ゛ぁー?その咲とかいうやつか?
     遺言タイムかと思いきや質問タイムかぁー?
  
     そんなもん知るかよ!!

     だいたい道で出逢って俺のアソコにビンビン来たらヤッテルんだからよ~~
     そいつがどんなヤツかなんか関係ねえよ!!




慶一  彼女の夢はピアニスト・・・
     彼女は、その夢のためにずっと努力してきたんだ・・・




裕也  でっ・・・? それがどうした?




慶一  何故だ?彼女の事を知らないお前が・・・ 
     何故、彼女の手を執拗に攻撃した!?





裕也  てめぇ・・・ 何が言いてえ? さっきからウダウダとよー
     あの女が指ひん曲げる度に良い表情するからよー!
   
     俺も興奮しちまって、念入りにやってやっただけの事だよぉおーー!!




慶一  本当に救えねーーー お前みたいなヤツには・・・ 
     絶対に!負けられねぇぇえええー!!



裕也  はっ!弱えーくせにペラペラとよー
     何にも出来ねー餓鬼はーーー そろそろ死んどけよ!!!




慶一  はぁぁあーーーー 帰って来い!!言ノ刃ぁぁああー!!




裕也  なッ!?ナイフが消えた!?




慶一  受け取れ!




裕也  グッ!!




慶一  ハァ・・ハァ・・ 油断したな・・・・ お前の負けだ・・・



裕也  俺の!?胸にッ ナイフが!?



慶一  はぁ・・ はぁ・・・・・



裕也  はっ・・・ ハハ・・・ハハハ! なーにが俺の負けだよ!?
    
    このナイフ心臓に刺さってんのに、痛くも痒くもねーぜッ!?
    
    どんな手品かしらねーが、今から改めてテメーをッ!?
    
    なっ・・・なんだ!?




咲   ヤメテヤメテヤメテ・・・ 





裕也  ッ!? なんだよッ!? この声はぁああー!?





慶一  やっぱり、俺の勝ちさ・・・・
     聞こえて来ただろ・・・ 彼女の声が・・・




咲   いやだーーー!!やめてぇ!!!!コワイコワイコワイコワイコワイ!!!!
    イタイ!イタイよ!! なんで私が!? この人誰!?いやだ!誰か!誰か!!タスケテヨー!!!!




裕也  なっ・・・ なんだこりゃ!? 何をしやがった・・・!?テメェーーーーー!!





慶一  これはただのナイフじゃない・・・ 言ノ刃(コトノハ)だ。
  
     俺は生まれつき、人の強い想いを刃物に出来るっていう能力が有るんだ・・・
     この能力で作られた刃で刺されると、その刃に宿る想いが一気にそいつの心に流れ込む




裕也  あっ、あ゛ぁぁああーー やめろ゛ぉぉおおお!!!
     俺の中に恐怖がぁ!痛みが流れ込んでくるぅぅうう!?




慶一  そして・・・ 強烈な想いを共有した者は、その時の出来事までも追体験する!!
     つまり・・・ 今回で言えば・・・・ 




裕也  うぐぅぅううわぁぁぁあああーーー!!なんだ!? やめろぉ・・・ やめてくれぇぇえええ!!!
     指がッ、指が捻じれるぅ!! いいぃぃいいでぇええええ!!!!!
     止めろ!!止めてくれ!!たのむぅぅうう!!!




慶一  お前が彼女にした行為そのままを自分で体験する事になる!!
     とうだ?少しは人の痛みが分かったかよ!?




裕也  わがっだ!わがったよーーー!!俺がわるがったーーー!!



慶一  そうか・・・ 反省が出来たところで 一つ思い出した。
     俺は他にもお前宛てに預かっている言ノ刃があるんだ・・・・



裕也  ぐっひゅ!!?




慶一  1・2・3・4・5・6・・・・ いやー沢山あるな・・・・
   
     よかったな・・・ 彼女達は、お前に激しくされた夜が忘れられなくて、夜毎お前への想いを募らせていたんだ。
   
     さあ、お前への熱烈なラブコールだ・・・受け取れよ!!




裕也  ひぃぃいいいいいいいーーーー!!!!





慶一  ふぅ・・・  アンタ達の言ノ刃・・・ 確かに届けたぜ





【都内病室】



咲   伝言屋さん・・・ 新聞見ました。
     お仕事は終わったんですね・・・



慶一  ああ・・・ アンタの言ノ刃は確かに届けた。
     あの人でなしは、二度とアンタの前には現れないだろう・・・

     っと、報告はそんな感じで、今日は別件でな・・・・

     アフターサービスに来たんだ



咲   アフターサービスですか?
    って、なっ・・・ ナイフ!?そっ、それで一体何を!?
    まっ、まさか・・・ 私を殺す気じゃ!?




慶一  いや、そんなつもりは毛頭無いけど・・・



ナレーション  流れるような動きで慶一の手にあったナイフが咲の胸へと突き刺される。
          あまりにも自然な動きに抵抗する間も無く、咲は自分の胸へと突き立てられた刃に視線を落とす



咲   きゃぁぁああーーーー 私の胸にナイフが!
     痛いッ!痛い!!いたっ・・・ くない?




慶一  落ち着けって・・・ もうすぐ聞こえてくる・・・




咲   えっ?こっ、これは・・・・ 声っ!?




慶一  そう、これはアンタ宛ての言ノ刃だ・・・




咲   ゆーちゃん、愛海ちゃん、緑ちゃん、それだけじゃない・・・ みんなッ!?
     クラスのみんなの声が聞こえてくる!!




慶一  ああ、その言ノ刃は、クラスメイトがアンタを心配している気持ちだ・・・ 




咲   あっ・・・ ああ・・・ ガンバレ!負けるなって!! みんなで待ってるって!!




慶一  みんなアンタを想ってる・・・ どうだ? 心に響くだろ?




咲   はっ、はい!! すっ、すごく・・・ やさしい気持ちが・・ うっ・・グスッ・・・ 溢れてきます!




慶一  アンタの傍にはこんなにもやさしい人たちが居る。
     この暖かな場所でなら、アンタはきっともう一度ッ・・・・

     いや、今は言えないが・・・・ いつか・・・




咲   伝言屋さん・・・ グスッ・・・ ありがとうございます。
     伝言屋さんもすごく優しいんですね・・・ グスッ・・・

     大丈夫です・・・・ 私・・・ 夢は諦めません!
  
     私の周りにはこんなに私を想ってくれている人達が居るんです!
  
     だから・・・・ 何年かかっても必ず・・・ 夢を叶えて見せます!!




慶一  そうか・・・・ その言ノ刃・・・ 確かに俺の心に届いたぜ。
     俺もアンタのピアノの音色が聞ける日を心待ちにしてる・・・・ じゃあ、またな




咲   はい・・・ 待っていてください!!




姫子  ふふふ~ん、ナイスなアフターサービスだね~~ いっちー?




慶一  まーた、姫姉は・・・ 覗き見なんて趣味が悪りーぜ?




姫子  弟兼社員兼下僕の仕事ぶりが心配でね~




慶一  はー?俺は姫姉とは家が近所で、たまたま姉弟みたいに育ったってだけだし、
     社員ではあるけど下僕じゃねーし



姫子  はーい、はい、 可愛い弟分だよ~ いっちーは~~
     あっ、いっちー ケーキ食べたい!ケーキ!!




慶一  えっ?ケーキ?





姫子  そう、ケーキ!いっちーもしっかり仕事したし、
     お姉ちゃんがご馳走してやろう~




慶一  でも、次の仕事の待ち合わせが・・・ 
     って、おい!姫姉! ひっぱんなって!!




姫子  さあ、さあーーー いくよーーー いっちー!!
     たまにはおねえちゃんに甘えてもいいんだよー?





慶一  へっ、まったく・・・・
     しょうがねーな~ 姫姉ーーー 
   
     俺はモンブランとレアチーズケーキとシュークリームとあと~~




姫子  いっちー 欲張りすぎだよーーー?




慶一  甘えてもいいんだろ? おねえーちゃん?




姫子  ぷっ・・・ いっちー キモイ!




慶一  なっ!? ひっでぇ!!




姫子  アハハハハ~ さあ、行こう、いっちーーー!!




慶一  ・・・・ おう!!





次回へ続く
 
 
 
 
     
 
           
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