題名  公開日   人数(男:女:不問)  時間  こんな話 テキスト   作者
蜘蛛の糸的遊戯 2015/10/05 2(1:1) 28分 え…?あっ…!  シン


登場人物 性別 その他


「蜘蛛の糸的遊戯」


男 「やぁやぁやぁ」

女 「え…っ!?」

男 「今日もいい天気だねー。こんなところで何をしているんだい?」

女 「何で…!?」

男 「ここの風、気持ちいいねー」

女 「お、とう…さん…」

男 「そうだね、お父さんだね」

女 「何で…」

男 「何が何で?」

女 「何で、ここにいるの…」

男 「ここに君がいるからさ」

女 「そういうことじゃないくて!」

男 「そんなに興奮しないでよー」

女 「だって!」

男 「ところで、僕の質問には答えてくれないのかな?」

女 「は?」

男 「こんなところで何をしているんだい?」

女 「何って…別に」

男 「何もなくてこんなところに来るのかな?」

女 「別に来たっていいでしょう」

男 「来てもいいんだけどさ、こーんなビルの屋上から足を投げ出して座ってたら危ないよ?」

女 「別に危なくてもいいじゃない」

男 「よくないでしょう。うっかり落ちたら死んじゃうよ?」

女 「…うっかり落ちる程マヌケじゃないわよ」

男 「まぁ確かに君は昔からしっかりしているからねー」

女 「…ていうか、本当にお父さん?」

男 「それ以外の何に見える?」

女 「……そっくりさんとか…」

男 「こんな、見るからに賢く美しくかっこかわいい僕のような人がこの世にもう一人いたら人類の宝として世界遺産指定すべきだね」

女 「え…本当に、お父さん、なんだ…」

男 「だから、それ以外の何に見えるって?」

女 「…そっくりさんとかもあり得るかと思ったんだけど、そんなこと真面目に言える人なんてお父さんくらいしかいないだろうし」

男 「本当の事なんだから真面目に言うに決まってるだろ」

女 「…やっぱりお父さんだ…何で…?」

男 「何でって?」

女 「だから!何でここにいるの!」

男 「さっきも言ったでしょ、君がこんな危ないところにいるからどうしたのかなーと思って」

女 「そうじゃなくて!」

男 「何がそうじゃないのさー」

女 「お父さん死んだじゃない!」

男 「そうだねー」

女 「三年も前に死んだのに何でこんな所に普通にいるのよ!」

男 「だからー君がこんな危ないところにいるのが見えて心配で来ちゃったのー」

女 「心配で来れる程あの世とこの世の境界線は薄いっていうの!?」

男 「普通は来れないよね」

女 「普通じゃないなら、お父さんは何なのよ!」

男 「俗に言う死神ってやつなんだよね、僕」

女 「…は?」

男 「人は死ぬと普通は死者の世界に行くんだけどね、たまーに死神になる人がいるんだよ」

女 「え…?」

男 「死神になると、死んだ人の魂を死者の世界に導くために現世に留まるんだ」

女 「しにがみ…?」

男 「そう。死神は普段は生きてる人には見えないんだけど、今回は特別に見えるように頑張ったんだー」

女 「え…頑張るって何…」

男 「ちょっと頑張ると見えるようになるってこと」

女 「頑張ってどうにかなるようなことなの…?」

男 「どうにかなっちゃうんだよねーこれが」

女 「意味わかんない…」

男 「まぁこればっかりは死神になってみないとわかんないよ」

女 「死神ってどうやってなるのよ」

男 「スカウトだよ」

女 「スカウト?」

男 「死神が自分の跡継ぎをスカウトするの」

女 「何が基準でスカウトなんかされるのよ」

男 「さぁ?それは死神それぞれじゃないの?
   きっと僕はかっこかわいいからスカウトされたんだろうねー」

女 「なにそれ、意味わかんないわよ」

男 「わかってもわかんなくても、僕は死神にスカウトされて死神になったってことさ」

女 「…お父さん、人殺すの…?」

男 「殺さないよー」

女 「だって死神なんでしょ?」

男 「君がどんな死神を想像してるか知らないけど、死神ってのは人を殺したりしないものなの」

女 「じゃあ何するの」

男 「死んだ人の魂を死者の世界へ導くってさっき言ったでしょ。
   死神は死にそうな人がわかるんだよ。そういう人の近くにいて死んだら魂を導く。だから僕たちが殺してるわけじゃないんだよ」

女 「死にそうな人が分かる…」

男 「そう。死にそうな人の近くに必ずいるから、極々たまーに僕ら死神が見える人が僕らが殺してるって勘違いしちゃうんだと思うよ」

女 「…お父さんがここに来たのは、私が死にそうだから?」

男 「…死にたいの?」

女 「質問したのは私よ。質問で返すのは卑怯だわ」

男 「そうだね、ごめんごめん」

女 「それで、私が死にそうだからお父さんはここにいるの?」

男 「さっき言ったでしょう。君が危ないところにいるからどうしたのかなーって思って来たんだよ」

女 「私が死にそうだからじゃないの?」

男 「違うよ、君の寿命はまだ先だ」

女 「…そっか…迎えに来てくれたわけじゃないんだ」

男 「今度は僕の番ね。君は、死にたいの?」

女 「死にたい、わけじゃないと思う」

男 「思う、ね」

女 「良くわかんないの」

男 「自分のことなのに?」

女 「うん。自分のことなのに自分がどうしたいのか分からない」

男 「死にたいわけじゃないなら、生きていたいの?」

女 「…どうなんだろう…。別に、生きていたいとも思ってないかも」

男 「どっちでもいいんだ」

女 「うん、別にここから落ちてもいいかなと思ってる」

男 「だから、ここにきた?」

女 「そうかも」

男 「もしかしたら、うっかり落ちれるかもしれないから」

女 「うん、多分、そんなこと考えた気がする」

男 「死にたいわけじゃないけど、生きていたわけでもない」

女 「うん。どっちでもいい。どうせ私がいなくなったて誰も気付かない」

男 「気付かないわけないでしょ」

女 「気付きはするか。邪魔者がいなくなって清々するかもね」

男 「…何があった?」

女 「別にそんな大したことじゃないよ。
   お父さん死んで一人になって、叔母さんが引き取ってくれたけど、世間体気にして仕方なくって感じだから居場所なんてない」

男 「そんなことないと思うよ」

女 「お父さんは叔母さんの態度を見てないからそんなこと言うのよ」

男 「うーん…友達とかいるでしょ?」

女 「いないよ。私暗いから」

男 「暗くはないでしょ」

女 「仲良くない人とはほとんどしゃべらない。
   でも、普通はしゃべらない人と仲良くなんてなれないでしょ。だから友達もいない」

男 「作ればいいじゃん」

女 「必要ない」

男 「そんなことないよ」

女 「…どうせ本当の意味で友達になんてなれない。裏切られるにきまってる」

男 「裏切られたの?」

女 「…私がいじめられたら離れていくような人たちだけだった」

男 「いじめられてるのかぁ」

女 「生意気なんだって。親いないくせに成績良くて、話しかけてもあんまり反応しないから」

男 「君は昔から人見知りだったもんねー」

女 「…別に人見知りなんかじゃない」

男 「みんなが楽しそうに遊んでるのが羨ましいのに、一緒に遊ぼうって言えなくて、よく泣いてた」

女 「そんなの覚えてない」

男 「ほんとはさみしがり屋なのに、一人でも大丈夫って強がるようになっていった」

女 「別に、強がってないし…」

男 「お母さんが死んだときも、目を真っ赤にして歯を食いしばって泣かないように我慢してた」

女 「…そんなの覚えてない」

男 「泣けばいいのに、泣きたいときも泣かないで、それで余計に泣けなくなっていってた」

女 「そんなんじゃない。泣くようなことがなかっただけ」

男 「また強がってー」

女 「強がってないよ!」

男 「はいはい」

女 「ほんとだから!」

男 「…泣いたっていいよ」

女 「だから…!」

男 「死ぬくらいなら、泣いたって喚いたって、いじめてくる奴にやり返したって、何でもできる」

女 「っ…」

男 「死なれるくらいなら、人を殺してでも生きてほしい」

女 「そんなこと…」

男 「僕は君の親だから。君が死ぬくらいなら、他の人が死んだって君に生きてほしいんだよ」

女 「そんなこと…できるわけないじゃない…」

男 「死ぬくらいなら、そうしてほしい」

女 「大切な人がいなくなる哀しみはわかってる。大切な人が傷付けられる辛さだって分かる」

男 「君は優しいからね」

女 「だったら、誰からも何とも思われてない私がいなくなるのが一番いい」

男 「…どんなに辛い思いをしても生きていて欲しいと思うのはエゴなんだろうね」

女 「…私にはもう、生きる理由がない」

男 「僕が生きてほしいと思うのは理由にならない?」

女 「…私には、大切な人も、大切に思ってくれる人もいない」

男 「僕も、お母さんも君が何より大切だよ」

女 「だから、わかるの。お父さんもお母さんも私を大切にしてくれたから、だから、他の人から疎まれていることがわかる」

男 「…人は変わるよ」

女 「そうね、よく知ってる。友達だと思っていた人が、どんどん離れていったもの」

男 「だから、生きていれば君を大切だと思う人も、君が大切だと思う人も、現れる」

女 「…そんなの想像つかない…」

男 「つかなくても、一生変わらないなんてことはない」

女 「…それは今を生きなきゃ来ない未来」

男 「そうだね。だから、生きてほしい」

女 「お父さんは私に辛い思いをしろっていうの?」

男 「優しい君も好きだけど、どんな君も僕は好きだよ。
   だから、嫌なら嫌だと主張して欲しいし、なんなら相手を傷つける勢いでやり返してもいいと思っている」

女 「そんなことしたらもっと酷くいじめられる」

男 「…世界は学校だけじゃない」

女 「え…?」

男 「学校なんか行かなくたって生きて行ける。多少人とは違う人生になるかもしれないけど、それは悪いことじゃない」

女 「…でも、そんなことしたら逃げるみたいだし…」

男 「そういえば君は負けず嫌いでもあったね」

女 「それに、そんなことしたら今まで学費出してくれてた叔母さんにも悪いし…」

男 「大丈夫、あいつはそういう細かい事気にしないタイプだから」

女 「いっつも私のことうっとおしそうに見るのに?」

男 「あいつは元々そういう顔なの。昔はそれでいじめられてたし」

女 「え、嘘…」

男 「嘘吐く必要ないだろ。聞いてみればいいよ」

女 「そう、なんだ…」

男 「あいつは君と違って自分が一番大事だから、容赦なくやり返してあっという間にいじめはなくなったけどね」

女 「叔母さん強そうだもんね」

男 「その代わり、元々友達もいないから、周りから誰もいなくなったけど。
   その方が楽でいいとか言って、一人で好きな事して過ごしてたな」

女 「ホントに強いなぁ」

男 「その強さの十分の一でも君にあればいいと思うよ」

女 「…学校、行かなくてもいいのかな…」

男 「いいと思うよ。僕は別に逃げてるとも思わないけど、逃げてるのだとしても、それが悪いことだとは思わない」

女 「逃げてもいいのかな…」

男 「向かってくるもの全部と戦う必要はないよ。戦うべき時に戦えばいい」

女 「…叔母さん、相談したら聞いてくれるかな…」

男 「さっきもちょっと言ったけど、あいつ興味ないことはとことん興味ないタイプだから。
   世間体とかも全く気にしないし。本当に疎ましく思ってたら、君を引き取ってないと思うよ」

女 「そうなのかな…」

男 「そういう奴だよ。だからちゃんと話してみな」

女 「私の話、聞いてくれるかな」

男 「よっぽど忙しい時じゃなきゃ、ちゃんと聞くよ」

女 「そうかな…」

男 「この僕の妹だからね。本質は綺麗だよ」

女 「根拠そこなの?」

男 「これ以上の根拠はないだろ」

女 「そっか…そうだね!お父さんの妹だもんね!」

男 「説得力あるだろ?」

女 「あはは!うん!すっごくある!」

男 「やっと笑った」

女 「あ…」

男 「ちょっとは元気になった?」

女 「…うん。笑ったのなんて久しぶり」

男 「笑うと気持ちが晴れるだろ?」

女 「うん、なんかちょっとすっきりした」

男 「死ぬ気もなくなった」

女 「うん…全部放り出して逃げるにはまだ早いっていう気になった。
   せめてちゃんと叔母さんに相談してみる」

男 「それは良かった。頑張って姿を現してみた甲斐があるよ」

女 「あ…そっか、普通はお父さんの姿見えないんだ…」

男 「今回は特別だね」

女 「もう会えないんだ…」

男 「見えなくても僕は近くにいるよ」

女 「近くに?」

男 「まぁ死神の仕事があるから常にって訳にはいかないけど、ちゃんと見てるよ」

女 「見ててくれるんだ…」

男 「当たり前だろ。僕は君の父親だから」

女 「そっか」

男 「そうだよ」

女 「うん、私頑張る」

男 「うん」

女 「お父さんに心配かけないように、ちゃんと生きる」

男 「心配はかけてくれてもいいけど、今回みたいなことは止めてほしいかな」

女 「うん。もうしない」

男 「うん、いい顔になった」

女 「…お父さん、ありがとう」

男 「どーいたしまして」

女 「びっくりしたけど、嬉しかった。
   私を大切に思ってくれる人がいて、ちゃんと見ててくれるってわかった。
   疎まれてるっていうのは思い込みかもっていうのもわかった。
   逃げたくないって言いながら、色んなことに立ち向かうことから逃げてた。
   叔母さんからも、いじめからも、友達からも…。
   私、ちゃんと自分の思ってること言うよ」

男 「うん、そうしな」

女 「うん、ありがとう」

男 「さ、もう日も暮れたしそろそろ帰らないと」

女 「あ、ほんとだ、叔母さん心配するかな…」

男 「危ないから気を付けて立つんだぞ」

女 「だーいじょうぶだよ」

男 「無防備にそんな端っこに立ったら危ないって」

女 「大丈夫だって」

男 「危ないよ。ちょっと押されたら落ちちゃうだろ?こんな風に…」


男がビルの端に立つ女を軽く押して、突き落す。


女 「え…?あっ…!」

男 「おー、見事に落ちたなー。まぁ押せば落ちるか。人間って驚きすぎると声が出なくなるって本当だったんだ。
   …うーん、まだ生きてるかなー。お、死んでるー魂出てるや。
   運いいなぁ即死だな。さーって、お迎えお迎え」


ビルから飛び降りるように落ちていく男。
地面に着く前にふわりと浮かび上がり、血を流して地面に横たわる女を覗き込む。


男 「やぁやぁやぁ、良かったねー苦しまずに死ねて」

女 『死んだ…?』

男 「うん、今の君は魂だよ。ほら、そこに身体があるだろ?」

女 『え…?あっ、わ、私…?』

男 「うん、君だよ」

女 『何で…』

男 「今の君は魂だよ。まぁ幽霊みたいなもの?」

女 『死んだ、の…?』

男 「さっきからそう言ってるでしょー」

女 『何で…?』

男 「そりゃあーんなとこから落っこちたら普通の人間は死ぬでしょ」

女 『違う!私、背中を押された』

男 「押したねー」

女 『何で?私もう死にたいなんて思ってなかった!ちゃんと生きて行こうって思ってたのに!』

男 「そうだねー、そう思ってくれるように話したのにそうじゃなかったら僕の苦労は何なのって感じだもんね」

女 『何で?何で私を突き落としたの!?』

男 「だって最初からそのつもりだったしー」

女 『最初から殺すつもりだったの?』

男 「そうだよー」

女 『何でよ!?』

男 「何でー?うーんと、殺してみたかったからかな」

女 『…は?』

男 「自分の血を分けて愛した娘を殺すのってどんな感じかなって思ってさ。
   気になったら試さずにはいられないタイプなんだよね、僕」

女 『え…?』

男 「うーん、思ったほど悲しくなかったなぁ。これなら君のお母さんの時のが悲しかったや」

女 『お、母さん…?』

男 「うん、お母さん」

女 『どういうこと…』

男 「君のお母さん、つまり僕の奥さんを、僕が殺したってこと」

女 『嘘…』

男 「嘘じゃないよー。
   あの時は自分でやったのにすっごく悲しくてさ。
   あんな感情初めてで凄く珍しくて、結構楽しかった。
   君は実の娘だし、あの時よりもっと悲くなるかと思ったんだけどなー」

女 『ころした…?』

男 「そうだよ。同じこと何回も言わせないでくれる?」

女 『だってお母さんは事故だって…』

男 「事故に見せかけるの、それなりに苦労したんだよね。
   タイミングとか色々と」

女 『何でそんな…』

男 「君とおんなじ理由。唯一愛して大切に思ってる人を壊すと自分はどう思うのかって気になったの」

女 『なにそれ…』

男 「まぁ今回は僕自身が死んじゃってるからそんなに悲しくないのかな。
   生きてる時にやってたらまた別の感情を持ったかもしれないなー残念残念」

女 『ほんとに、お父さんがお母さんを殺したの…?』

男 「しつこいなー。別に信じなくてもいいけど、現に君はこうして、ビルから突き落とされて殺されてるじゃないか」

女 『それもよ!何でよ!何で殺すのよ!
   折角頑張ろうって、生きようって…生きたいって思えたのに!
   殺すなら話なんてせずに最初から殺せばよかったじゃない!」

男 「そんなのつまらないだろ?」

女 『つまらないってなによ!』

男 「死にたいって思ってる奴殺したって絶対悲しくなんかならないし、つまらないだろ。
   生への執着のない人間を殺してやるのは単なる人助け。
   僕は別にそんなことしたいわけじゃないし」

女 『意味わかんない…!私が生きようって思ったから殺したって言うの!?』

男 「そうだよー。生きる気にならなかったらどうしようかと思ったよ」

女 『酷い…酷い!』

男 「そんな顔されるようなことかな
   君だって最期に楽しい気持ちになれてよかっただろ?」

女 『私!これからちゃんと生きようって!生きて行こうって思って…!』

男 「そうだねー。そういう気持ちになるように頑張って話した甲斐があるよ」

女 『いや!私まだちゃんと生きてない!ちゃんと向き合ってない!』

男 「いや、とか言われても君もう死んじゃったんだよね」

女 『なんで、何でよ!』

男 「そーそー、その感じ。自分が悲しくならないなら、せめて絶望した姿を見たいよね。
   珍しく泣いてるし、それなりに満足かな」

女 『いやだ!いや!』

男 「あはははは!いやって言っても、もう戻れないよー。
   僕は神は神でも『死神』だからね」

女 『いやだ!返して!生きたい!』

男 「無理だってーあはは」

女 『生きたいの!私まだやりたいことある!』

男 「そっかそっか、それは残念だね」

女 『何でよ!生きろって言ったのお父さんじゃない!』

男 「まぁ言うには言ったねー」

女 『いや!生きる!返して!返してよ!』

男 「あーうるさいなぁ。何度も言わせないでよ。無理だっていってるでしょ」


男がどこからか取り出した刃物で女を刺す。


男 「あ、やっちゃった」

女 『え…?…ごふっ』(口から血をふく)

男 「あーあ、刺すつもりなんか無かったのに、あんまりうるさいからうっかりやっちゃったじゃないか」

女 『な、んで…』

男 「何で刺したか?それともなんで刺せるか?」

女 『ど、して…』

男 「刺した理由はうるさいから。僕同じこと何回も言うの嫌いなんだよね。
   刺せる理由は僕が死神だから。
   死神って魂の管理者なんだよね。
   魂を死者の世界へ導くことの他に、増えすぎた魂を整理する役目もあるの。
   要するに多すぎる魂を減らすってことね。
   だから消す力も持ってるってわけ。死神に傷を負わされた魂は消えてしまう」

女 『お、とー…さ…』

男 「へぇ、最期まで僕のことちゃんとお父さんって呼んでくれるんだ。
   少し感動しちゃった。ありがと。
   ちゃーんと静かにしてたら死者の世界で穏やかに過ごせたのに、残念だったね。
   …て、もう消えちゃったか。
   まぁそこそこ楽しかったかなー。さて、次は何して遊ぼうかな」







 
 
   
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